第1節 行政事件訴訟法総説
第4章 行政事件訴訟法
行政事件訴訟法は、国民が行政の違法な活動から自らの権利を守るための裁判手続を定めた法律です。行政法規の実体的なルールを学んでも、それを実現する訴訟の仕組みを知らなければ権利救済は実現できません。この節では行政事件訴訟の全体像と基本的な枠組みを理解し、具体的な訴訟類型を学ぶ準備をします。
行政事件訴訟の意義と種類
第2条行政事件訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟等をいいます。行政事件訴訟法は、抗告訴訟(処分の取消訴訟等)、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の4類型を定めています。このうち抗告訴訟が最も重要で、国民の権利救済の中核を担います。
具体例
Aさんは建築確認を申請したが市から不許可処分を受けた。これを争うため取消訴訟(抗告訴訟の一種)を提起する。一方、Bさんは市との公営住宅契約の解除を争うが、これは当事者訴訟となる。
要件
- ・行政庁の公権力の行使に関する不服その他公法上の法律関係に関する訴訟であること
- ・法律で特別の定めがある場合を除き、行政事件訴訟法の定める訴訟類型に該当すること
効果・結論
- ・抗告訴訟には処分の取消訴訟、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟がある
- ・各訴訟類型ごとに異なる訴訟要件と審理方法が適用される
条文(第2条)
第2条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
試験のポイント
- ・抗告訴訟・当事者訴訟・民衆訴訟・機関訴訟の区別は頻出。特に当事者訴訟との境界が問われる
- ・取消訴訟が原則的な訴訟類型であり、他の抗告訴訟は補充的な位置づけである点を理解すること
- ・民衆訴訟・機関訴訟は法律に特別の定めがある場合に限られる(住民訴訟等)
取消訴訟の対象(処分性)
第3条処分性とは、取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するか否かの問題です。処分とは、公権力の主体たる国・公共団体が行う行為のうち、その行為により直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいいます(最高裁判例)。
具体例
Aさんは保育所入所不承諾通知を受けた。これは処分性が認められる。Bさんは市の都市計画決定に反対するが、判例上この段階では処分性が否定される場合が多い。
要件
- ・公権力の主体(国・地方公共団体等)が行う行為であること
- ・その行為により直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定すること
- ・その権利義務の形成・確定が法律上認められていること
効果・結論
- ・処分性が認められれば取消訴訟の対象となり、処分の違法を争うことができる
- ・処分性が否定されれば取消訴訟は不適法却下となり、他の訴訟類型を検討する必要がある
条文(第3条)
第3条 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟は、その処分又は裁決をした行政庁を被告として提起しなければならない。
試験のポイント
- ・処分性の3要件(公権力性・直接性・法律上の根拠)を正確に暗記し、事例で当てはめができること
- ・通達、行政指導、行政計画は原則として処分性なし。ただし例外的に認められる場合もある
- ・段階的な手続の場合、どの段階で処分性が認められるかが頻出(都市計画決定と事業認可等)
原告適格
第9条原告適格とは、取消訴訟を提起できる者の資格をいいます。法律上の利益を有する者、すなわち当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者に限り原告適格が認められます。単なる事実上の利益や反射的利益では不十分です。
具体例
Aさんの隣地に産業廃棄物処理施設の許可が出た。Aさんは生活環境悪化を理由に取消訴訟を提起できるか。判例は関係法令が健康被害等を個別的利益として保護していれば原告適格を認める。
要件
- ・当該処分の根拠法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、個々人の個別的利益としても保護していること
- ・当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあること
- ・処分の相手方以外の第三者の場合、根拠法令の趣旨・目的、考慮されるべき利益の内容・性質等を考慮する
効果・結論
- ・原告適格が認められれば本案審理に入り、処分の違法性を審査できる
- ・原告適格が否定されれば訴えは却下され、本案審理は行われない
条文(第9条)
第9条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
試験のポイント
- ・単なる事実上の利益・反射的利益では原告適格なし。法律上保護された利益が必要
- ・処分の名宛人以外の第三者(近隣住民等)の原告適格が頻出。根拠法令が個別的利益を保護しているかを判断
- ・判例は原告適格を拡大傾向。関係法令を広く参酌し、実質的に個別保護する趣旨があるか検討する
出訴期間と訴訟要件
第14条出訴期間とは、取消訴訟を提起できる期間制限をいいます。処分があったことを知った日から6か月以内、かつ処分の日から1年以内に提起しなければなりません。これは行政処分の早期安定と法的安定性を確保するための制度です。正当な理由があれば例外的に期間経過後も提起できます。
具体例
Aさんは4月1日に営業許可取消処分を受け、その日に処分を知った。Aさんは10月1日までに取消訴訟を提起しなければ、出訴期間を徒過し訴えは却下される。
要件
- ・処分又は裁決があったことを知った日から6か月以内に提起すること
- ・処分又は裁決の日から1年以内に提起すること
- ・期間を経過した場合でも正当な理由があるときは提起できる
効果・結論
- ・出訴期間内に提起すれば適法な訴えとして本案審理される
- ・出訴期間を徒過すると訴えは不適法として却下される(正当な理由がない限り)
- ・出訴期間は訴訟要件であり、欠缺すると本案審理に入れない
条文(第14条)
第14条 取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から6箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
試験のポイント
- ・6か月と1年の二重の期間制限があることに注意。両方を満たす必要がある
- ・無効等確認訴訟には出訴期間の制限がない点と対比して理解すること
- ・正当な理由の有無は個別具体的に判断される。単なる過失では認められない
まとめ
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