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テキスト/行政法/第1節 行政事件訴訟法総説

第1節 行政事件訴訟法総説

第4章 行政事件訴訟法

行政事件訴訟法は、国民が行政の違法な活動から自らの権利を守るための裁判手続を定めた法律です。行政法規の実体的なルールを学んでも、それを実現する訴訟の仕組みを知らなければ権利救済は実現できません。この節では行政事件訴訟の全体像と基本的な枠組み(訴訟類型・処分性・原告適格・出訴期間)を理解し、具体的な訴訟類型を学ぶ準備をします。

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行政事件訴訟の意義と種類

簡単にいうと

簡単にいうと、行政活動に不服がある場合の救済手段として、簡易迅速な行政不服審査だけでなく、慎重な裁判所による解決を求める行政事件訴訟があります。行政事件訴訟には4つの種類があり、個人の権利救済を目的とする主観訴訟(抗告訴訟・当事者訴訟)と行政の適法性確保を目的とする客観訴訟(民衆訴訟・機関訴訟)に大別されます。訴訟類型の区別は記述式でも頻出の最重要論点です。

行政事件訴訟とは、行政不服審査と並ぶ事後的な権利救済制度のひとつで、行政庁の違法な行為等について慎重な裁判所の審理のもとで解決を求める制度です。行政事件訴訟法2条は、行政事件訴訟として抗告訴訟・当事者訴訟・民衆訴訟・機関訴訟の4類型を列挙しています。

まず大きな分類として、主観訴訟客観訴訟があります。主観訴訟とは個人の権利利益の救済を目的とする訴訟で、抗告訴訟と当事者訴訟がこれに該当します。客観訴訟とは個人の権利利益とは別に、行政の適法性や客観的な法秩序の維持を目的とする訴訟で、民衆訴訟と機関訴訟がこれに該当します。

抗告訴訟は「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」(3条1項)であり、行政事件訴訟の中心をなします。抗告訴訟には法定された5類型があります。①取消訴訟(処分・裁決の取消しを求める訴訟、3条2項・3項)、②無効等確認訴訟(処分・裁決の無効または不存在の確認を求める訴訟、3条4項)、③不作為の違法確認訴訟(行政庁が法令上の申請に対して相当の期間内に何らかの処分をすべきにもかかわらず、これをしないことの違法確認を求める訴訟、3条5項)、④義務付け訴訟(行政庁が処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟、3条6項)、⑤差止訴訟(行政庁が処分をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟、3条7項)です。なお、これら法定5類型以外の無名抗告訴訟の余地も解釈上論じられています。

当事者訴訟は、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」(形式的当事者訴訟、4条前段)と、「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」(実質的当事者訴訟、4条後段)の2種類があります。後者の実質的当事者訴訟は2004年改正で積極的に活用する方向が示され、たとえば日本国籍の確認訴訟や在外邦人選挙権確認訴訟がその例に挙げられます。

民衆訴訟は「国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの」(5条)です。住民訴訟・選挙訴訟(選挙無効訴訟・当選訴訟)が代表例です。選挙無効訴訟は選挙権という個人の権利に関係しますが、民衆訴訟に分類される点に注意が必要です(当事者訴訟ではありません)。

機関訴訟は「国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟」(6条)です。国と地方公共団体の機関間の紛争が典型例です。

民衆訴訟・機関訴訟はいずれも客観訴訟であり、法律に特別の定めがある場合に限り(法律で定められた者のみ)提起することができます(42条)。これは客観訴訟が本来的な権利救済を目的としないため、濫訴を防ぐ趣旨です。

具体例

具体例をいくつか挙げましょう。Aさんが不当な課税処分を受けた場合、その取消しを求める訴訟は取消訴訟(抗告訴訟)です。Bさんが市に営業許可申請を出したのに何の応答もなければ、応答を求めて不作為の違法確認訴訟(抗告訴訟)を提起できます。収用裁決における補償金額が不当に低い場合に補償金の増額を求める訴訟は、処分の内容を直接争うのではなく当事者間で争う形式的当事者訴訟です。日本国籍の確認を求める訴訟や在外邦人の選挙権確認訴訟は実質的当事者訴訟にあたります。国の関与に不服な県が起こす訴訟は機関訴訟、市議会議員が市の予算の私的流用について返還を求める訴訟や選挙の無効を争う訴訟は民衆訴訟です。

ポイント整理

  • 主観訴訟(抗告訴訟・当事者訴訟)は自己の権利利益の救済を目的とする訴訟であること
  • 客観訴訟(民衆訴訟・機関訴訟)は法律に特別の定めがある場合に限り、法律に定める者のみが提起できること(42条)
  • 抗告訴訟は行政事件訴訟法3条の定める取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟・義務付け訴訟・差止訴訟の5類型に該当すること

効果

  • 抗告訴訟(取消訴訟等)・当事者訴訟は主観訴訟として個人の権利救済を目的とする
  • 民衆訴訟・機関訴訟は客観訴訟として法律に特別の定めがある場合のみ、法律で定めた者のみ提起できる(42条)

条文

【行政事件訴訟法2条】この法律において「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいう。 【3条1項】この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。 【4条】この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。 【5条】この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。 【42条】民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。

種類
性質
根拠条文
内容・例
抗告訴訟
主観訴訟
3条
行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟。取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟・義務付け訴訟・差止訴訟の5類型
当事者訴訟
主観訴訟
4条
形式的当事者訴訟(補償金増額訴訟等)と実質的当事者訴訟(国籍確認訴訟・選挙権確認訴訟等)
民衆訴訟
客観訴訟
5条・42条
住民訴訟・選挙訴訟(選挙無効訴訟・当選訴訟)。法律に定める場合のみ・法律で定めた者のみ提起可
機関訴訟
客観訴訟
6条・42条
国と地方公共団体の機関相互間の権限争い訴訟。法律に定める場合のみ・法律で定めた者のみ提起可

重要メモ

  • 「4類型(抗告・当事者・民衆・機関)+主観訴訟か客観訴訟か」の分類が最重要ポイント
  • 行政事件訴訟の4類型:抗告訴訟(3条)・当事者訴訟(4条)・民衆訴訟(5条)・機関訴訟(6条)。2条がこれを列挙
  • 主観訴訟(抗告訴訟・当事者訴訟)は個人の権利利益の救済が目的。客観訴訟(民衆訴訟・機関訴訟)は行政の適法性確保が目的
  • 民衆訴訟・機関訴訟(客観訴訟)は法律に特別の定めがある場合にのみ、法律で定めた者のみ提起できる(42条)。濫訴防止の趣旨
  • 抗告訴訟の法定5類型(3条2〜7項):取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟・義務付け訴訟・差止訴訟
  • 当事者訴訟の2種類:形式的当事者訴訟(4条前段・例:収用補償金増額訴訟)と実質的当事者訴訟(4条後段・例:日本国籍確認訴訟・在外邦人選挙権確認訴訟)
  • 選挙無効訴訟は選挙権という個人の権利に関わるが、民衆訴訟に分類される(当事者訴訟ではない)点が頻出の落とし穴
  • 住民訴訟(地方自治法)は民衆訴訟の代表例。国と地方公共団体の機関間の権限争いは機関訴訟の代表例
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取消訴訟の対象(処分性)

簡単にいうと

簡単にいうと、取消訴訟で争えるのは「処分性のある行為」だけです。処分の定義(公権力性・直接性・法律上の根拠)を理解し、判例での具体的な当てはめができるようにしましょう。処分性の有無に関する判例は行政書士試験で非常によく出題されます。

取消訴訟の対象は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(3条2項)です。処分性があるかどうかが取消訴訟の訴訟要件の第一番目の問題です。

処分の定義について、判例(最判昭39.10.29)は「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」と定義しています。この定義から、処分性の判断基準として①公権力性(公権力の主体による行為)、②直接性(直接国民の権利義務を形成・確定すること)、③法律上の根拠(法律上認められていること)の3つが挙げられます。

行政庁が行う行為のうち、原則として処分性が否定されるものとして以下があります。

通達は、上級行政機関が下級行政機関に対して発する命令・指示であり、国民の権利義務を直接形成・確定するものではないため、原則として処分性がありません。

行政指導は、行政機関が任意の協力を求める非権力的事実行為であり、国民の権利義務を直接形成・確定するものではないため、原則として処分性がありません。ただし、行政指導の形式をとっていても実質的に処分に該当する場合があります。

行政計画(都市計画決定等)は、行政内部の計画にとどまり、直接国民の権利義務を形成・確定するものではないとして、原則として処分性が否定されます。

しかし、判例は個別の事案において、例外的に処分性を認める場合があります。重要な判例を以下に整理します。

病院開設中止勧告(最判平17.7.15):医療法上の勧告は行政指導であるが、勧告を無視して開設すると保険医療機関の指定を受けられないという重大な事実上の不利益が生じるため、処分性あり。

土地区画整理事業計画決定(最大判平20.9.10):従来は行政計画として処分性なしとされていたが、大法廷判決で判例変更し、処分性ありと判断。計画決定により換地処分を受ける地位に立たされるため。

保育所廃止条例(最判平21.11.26):条例という立法行為であっても、特定の保育所の廃止という効果が直接発生するため、処分性あり。

輸入禁制品該当通知(最判昭54.12.25):税関長の通知は関税定率法に基づく行政処分として処分性あり。

一方、処分性なしとされた主な判例として、住民票の続柄記載(最判平11.1.21)、登録免許税の納付通知書への過誤納金還付の拒否通知(最判平17.4.14)、都市計画法上の用途地域の指定(最判昭57.4.22)、上納庁への通知(最判昭53.12.8)などがあります。

処分性に関する判例まとめ(参考書の表): - 輸入禁制品該当の通知(最判昭54.12.25)→処分性あり - 反則金の納付通告(最判昭57.7.15)→処分性あり - 開発許可に係る公共施設管理者の同意(最判平7.3.23)→処分性なし - 住民票の続柄記載(最判平11.1.21)→処分性なし - 登録免許税の過誤納金還付の拒否(最判平17.4.14)→処分性なし - 病院開設中止の勧告(最判平17.7.15)→処分性あり - 都市計画法に基づく都市計画区域内での用途地域指定(最判昭57.4.22)→処分性なし - 2項道路の一括告示(最判平14.1.17)→処分性あり - 公立学校の学長解任に至る定める条例制定行為(最判平14.4.25)→処分性あり - 保育所廃止条例(最判平21.11.26)→処分性あり - 第二種市街地再開発事業計画決定(最判平4.11.26)→処分性あり - 農地・建築等整備事業計画(最判平20.9.10)→処分性あり - 上紙庁への通知(最判昭53.12.8)→処分性なし - 国家賠償法に関する通達・職務命令(最判平24.2.9)→処分性なし

具体例

具体例を挙げましょう。Aさんが市に病院を開設しようとしたところ、医療法に基づき都道府県知事から「開設中止勧告」が出されました。この勧告に従わずに病院を開設すると、保険医療機関の指定を受けられません。この「中止勧告」は形式上は行政指導(勧告)ですが、実質的に保険医療機関指定を受けられなくなるという重大な不利益が生じるため、判例(最判平17.7.15)は処分性ありと判断しました。一方、Bさんの土地が特定用途地域に指定されても、その指定自体は抽象的な制限であり、直接の権利義務変動が生じないとして、原則処分性は否定されます。

ポイント整理

  • 公権力の主体(国・地方公共団体等)が行う行為であること(公権力性)
  • その行為により直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定すること(直接性)
  • その権利義務の形成・確定が法律上認められていること(法律上の根拠)

効果

  • 処分性が認められれば取消訴訟の対象となり、処分の違法を争うことができる
  • 処分性が否定されれば取消訴訟は不適法として却下され、当事者訴訟など他の訴訟類型の活用を検討する必要がある

条文

【行政事件訴訟法3条2項】この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

行為
処分性
根拠判例
許可・免許の拒否処分
あり
当然
建築確認・開発許可
あり
当然
病院開設中止勧告
あり(例外)
最判平17.7.15
土地区画整理事業計画決定
あり(判例変更)
最大判平20.9.10
保育所廃止条例
あり
最判平21.11.26
輸入禁制品該当の通知
あり
最判昭54.12.25
2項道路の一括告示
あり
最判平14.1.17
通達・行政指導(原則)
なし
原則
都市計画決定(原則)
なし
原則
住民票の続柄記載
なし
最判平11.1.21
上級行政庁への通知
なし
最判昭53.12.8

重要メモ

  • 「公権力性・直接性・法律上の根拠」の3要件を満たすか、判例の具体例で処分性あり/なしを正確に覚えることが核心
  • 処分の定義(最判昭39.10.29):公権力の主体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの
  • 通達・行政指導・行政計画(都市計画決定等)は原則として処分性なし
  • 【処分性あり・判例変更】土地区画整理事業計画決定(最大判平20.9.10):大法廷判決で判例変更し処分性を肯定。換地処分を受ける地位に立たされることを理由とする
  • 【処分性あり・例外】病院開設中止勧告(最判平17.7.15):行政指導だが保険医療機関指定を受けられなくなる重大な不利益があるため処分性あり
  • 【処分性あり・条例】保育所廃止条例(最判平21.11.26):条例という立法行為でも特定保育所の廃止という効果が直接発生するため処分性あり
  • 【処分性あり】輸入禁制品該当の通知(最判昭54.12.25)・反則金の納付通告(最判昭57.7.15)・2項道路の一括告示(最判平14.1.17)
  • 【処分性なし】上級行政庁への通知(最判昭53.12.8)・住民票の続柄記載(最判平11.1.21)・都市計画法上の用途地域指定(最判昭57.4.22)
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原告適格

簡単にいうと

簡単にいうと、取消訴訟は誰でも提起できるわけではありません。「法律上の利益を有する者」だけが提起できます。処分の名宛人以外の第三者(近隣住民・競業者等)の原告適格は、9条2項の考慮要素を使って判断します。試験では判例の理解と9条2項の考慮要素が問われます。

原告適格とは、取消訴訟を提起できる者の資格のことをいい、行政事件訴訟法9条1項は「処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」に限り提起できると定めています。

「法律上の利益を有する者」の解釈について、判例は「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」と解しています。単なる事実上の利益反射的利益(法令が公益として保護することの反射として偶然に受ける利益)では不十分です。

処分の名宛人(処分を受けた当事者本人)については、原則として当然に原告適格が認められます。

問題は処分の名宛人以外の第三者(近隣住民・競業者・周辺環境の影響を受ける者等)の原告適格です。2004年の行政事件訴訟法改正により、9条2項が新設され、第三者の原告適格判断の考慮要素が明文化されました。9条2項は、裁判所が第三者の原告適格を判断する際に以下の事項を考慮しなければならないと定めています。

①当該法令の趣旨・目的、②当該法令と目的を共通にする関係法令の趣旨・目的、③当該処分において考慮されるべき利益の内容・性質、④当該処分によって害される利益の態様・程度。

これにより、単に法令の文言のみから解釈するのではなく、関係法令全体を総合的に考慮して第三者の法律上の利益を判断することが求められています。

重要な判例として、新潟空港訴訟(最判平元.2.17)は、定期航空運送事業免許に対し騒音被害を受ける周辺住民の原告適格を認めました。法令が騒音被害を個々人の個別的利益として保護していると解釈したためです。小田急訴訟(最大判平17.12.7)は、鉄道の高架化事業認可に関して周辺住民の原告適格を認めました。

9条2項の考慮要素は、取消訴訟の原告適格だけでなく、義務付け訴訟(37条の2第4項)および差止訴訟(37条の4第4項)の原告適格判断にも準用されています。

なお、訴えの利益(狭義)の問題として、処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においても、なお処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者は、取消訴訟を提起できます(9条1項かっこ書)。

具体例

新潟空港訴訟を例にとりましょう。国が新潟空港に対して航空会社に定期航空運送事業免許を付与した場合、その免許の取消しを求める訴えを空港周辺の住民が提起できるかが問題になりました。裁判所は、航空法等の趣旨から、飛行場周辺住民が受ける航空機騒音による障害を、一般的公益としてではなく個々人の個別的利益として保護しているものと解釈し、周辺住民の原告適格を認めました(最判平元.2.17)。また、競業者についても、法令が競業者の保護を目的とする個別利益の保護を含む場合には原告適格が認められます。

ポイント整理

  • 当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあること
  • 処分の名宛人以外の第三者の場合、当該法令と関係法令の趣旨・目的、考慮されるべき利益の内容・性質・態様・程度を考慮して判断する(9条2項)
  • 単なる事実上の利益・反射的利益では原告適格が認められないこと

効果

  • 原告適格が認められれば本案審理に入り、処分の違法性を審査できる
  • 原告適格が否定されれば訴えは不適法として却下され、本案審理は行われない

条文

【行政事件訴訟法9条1項】処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。 【9条2項】裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たっては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。

申立人
原告適格
根拠・判例
処分の名宛人
原則として認められる
当然
近隣住民(騒音・健康被害のおそれ)
法令が個別利益として保護する場合に認められる
新潟空港訴訟・小田急訴訟
競業者・競争関係者
法令の趣旨から個別保護される場合に認められる
9条2項
一般消費者・一般市民
単なる反射的利益にとどまる場合は認められない
原則

重要メモ

  • 「名宛人以外の第三者の原告適格は9条2項の4つの考慮要素で総合的に判断する」が核心
  • 原告適格の根拠:「処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」(9条1項)。単なる事実上の利益・反射的利益では不十分
  • 処分の名宛人は原則として当然に原告適格あり
  • 第三者(近隣住民・競業者等)の原告適格は9条2項の考慮要素で判断:①当該法令の趣旨・目的、②関係法令の趣旨・目的、③考慮されるべき利益の内容・性質、④害される利益の態様・程度(2004年改正で新設)
  • 9条2項の考慮要素は義務付け訴訟(37条の2第4項)・差止訴訟(37条の4第4項)の原告適格判断にも準用される
  • 新潟空港訴訟(最判平元.2.17):定期航空運送事業免許に対し、騒音被害を受ける周辺住民の原告適格を肯定。法令が騒音被害を個別的利益として保護していると解釈
  • 小田急訴訟(最大判平17.12.7):鉄道高架化事業認可に対する周辺住民の原告適格を肯定した重要大法廷判決
  • 処分の効果が消滅した後でも取消しによって回復すべき法律上の利益がある場合は訴えを提起できる(9条1項かっこ書)
  • 【原告適格あり】公衆浴場法に基づく営業許可処分→既存業者(最判昭37.1.19)、保安林指定解除処分→地域住民(最判昭57.9.9)
  • 【原告適格なし】鉄道特急料金値下げ認可→鉄道利用者(最判昭43.4.13)、史跡指定解除→学術研究者(最判平5.6.20)
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取消訴訟の訴訟要件(6つの必須要件)

簡単にいうと

簡単にいうと、取消訴訟を提起するには6つの訴訟要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると裁判所は本案審理に進まず、訴えを却下します。試験では6要件の名称と内容を正確に列挙できるようにしましょう。

取消訴訟を提起するためには、裁判所への訴状の提出が必要です。裁判所はまず正しい訴訟提起がされているかをチェックします(要件審理)。訴訟要件が一つでも欠ければ訴訟却下判決が出され、本案審理(口頭弁論)には進めません。

取消訴訟の6つの訴訟要件は以下のとおりです。

①処分性(3条2項):取消訴訟の対象となる行政活動なのか。行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為であることが必要です。

②原告適格(9条):訴える資格のある人なのか。処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者であることが必要です。

③狭義の訴えの利益(9条1項かっこ書):争い続ける必要があるのか。処分の効果がすでに消滅している場合等に問題となります。処分の効果がなくなった後でも取消しによって回復すべき法律上の利益がある場合は訴えの利益が継続します。

④被告適格(11条):訴えた相手は正しいのか。取消訴訟の被告は、処分をした行政庁の所属する国または公共団体です(11条1項)。行政庁自体ではなく、その行政庁が属する国・地方公共団体が被告となる点に注意が必要です。

⑤管轄裁判所(12条):訴えた裁判所は正しいのか。原則として処分をした行政庁の所在地を管轄する地方裁判所が管轄します。国を被告とする場合は東京地方裁判所にも提起できます。また2004年改正により、原告の普通裁判籍の所在地(住所地)を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判所にも提起できます(12条4項)。

⑥出訴期間(14条):訴えを起こせる期間内なのか。主観的出訴期間(処分があったことを知った日から6か月・14条1項)かつ客観的出訴期間(処分の日から1年・14条2項)の両方を満たす必要があります。出訴期間の詳細は「出訴期間」テーマを参照してください。

訴訟の流れは「訴訟の提起→要件審理(訴訟要件)→6要件すべて充足→本案審理(口頭弁論)→認容判決(原告勝ち)または棄却判決(原告負け)」、6要件のいずれか欠缺→「却下判決」となります。

具体例

Aさんが不当な課税処分を受けたとして取消訴訟を提起した場合を考えます。①処分性:課税処分は国民の権利義務を直接形成する処分なので、処分性あり。②原告適格:Aさん本人が課税処分の名宛人なので、原告適格あり。③訴えの利益:まだ処分の効力が残っているので、訴えの利益あり。④被告適格:処分庁(税務署長)の所属する国を被告として提起。⑤管轄裁判所:税務署の所在地を管轄する地方裁判所(または東京地裁・原告住所地管轄地裁)に提起。⑥出訴期間:処分を知った日から6か月以内かつ処分の日から1年以内に提起。すべての要件を満たせば本案審理へ進みます。

ポイント整理

  • ①処分性:取消訴訟の対象となる行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為であること
  • ②原告適格:処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者であること(9条)
  • ③狭義の訴えの利益:取消しによって回復すべき法律上の利益が現存すること
  • ④被告適格:処分をした行政庁の所属する国または公共団体を被告とすること(11条)
  • ⑤管轄裁判所:適法な管轄裁判所に提起すること(12条)
  • ⑥出訴期間:主観的出訴期間(知った日から6か月・14条1項)かつ客観的出訴期間(処分の日から1年・14条2項)内に提起すること

効果

  • 6つの訴訟要件を全て満たす場合のみ本案審理(口頭弁論)に進み、認容判決(原告勝ち)または棄却判決(原告負け)が出される
  • 訴訟要件を一つでも欠くと訴訟却下判決が出され、本案審理は行われない

条文

【行政事件訴訟法11条1項】処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。 【12条1項】取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。 【12条4項】国又は独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人若しくは別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(次項において「特定管轄裁判所」という。)にも、提起することができる。

訴訟要件
根拠条文
要点
①処分性
3条2項
行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為か
②原告適格
9条
法律上の利益を有する者か(名宛人以外は9条2項で判断)
③訴えの利益(狭義)
9条1項かっこ書
取消しによって回復すべき法律上の利益が現存するか
④被告適格
11条
処分行政庁の所属する国または公共団体を被告としているか
⑤管轄裁判所
12条
行政庁所在地の地方裁判所・東京地裁・原告住所地管轄地裁のいずれか
⑥出訴期間
14条
知った日から6か月以内・処分の日から1年以内(二重制限)

重要メモ

  • 「6つの訴訟要件を全て満たさないと本案審理に進めず却下判決になる」という構造を押さえること
  • 訴訟要件6つ(①処分性・②原告適格・③狭義の訴えの利益・④被告適格・⑤管轄裁判所・⑥出訴期間)を一つでも欠くと却下判決
  • 被告適格(11条):被告は処分をした行政庁ではなく、その行政庁の所属する国または公共団体。例:A県知事の処分→被告はA県
  • 行政庁が国または公共団体に所属しない場合は処分をした行政庁自体が被告(11条)
  • 管轄裁判所(12条):原則は被告の普通裁判籍の所在地または行政庁の所在地を管轄する地方裁判所
  • 国を被告とする場合は東京地裁にも提起可(12条)。2004年改正で原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判所にも提起可(12条4項)
  • 出訴期間(14条):主観的(知った日から6か月)かつ客観的(処分の日から1年)の二重制限。どちらか早い方が有効期限
  • 無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟・義務付け訴訟・差止訴訟には出訴期間の制限なし(取消訴訟のみ出訴期間あり)
  • 取消事由の制限(10条1項):自己の法律上の利益に関係のない違法は取消事由にできない→この場合は棄却判決(却下ではない)
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出訴期間(主観的・客観的期間制限)

簡単にいうと

簡単にいうと、取消訴訟には「処分を知った日から6か月」と「処分の日から1年」という二重の期間制限があります。どちらも同時に守らなければなりません。この数字を正確に覚えることが最重要です。

取消訴訟の出訴期間は、二重の期間制限が課されています。両方の期間内でなければなりません。いずれか一方でも徒過した時点で出訴期間が満了し、訴えは不適法として却下されます(正当な理由がない限り)。

主観的出訴期間(14条1項):処分があったことを知った日から6か月以内に提起しなければなりません。「知った日」とは、原告が処分の存在を現実に了知した日です。「正当な理由」がある場合はこの限りではありません。

客観的出訴期間(14条2項):処分の日から1年以内に提起しなければなりません。処分の日を起算点とするため、たとえ処分の存在を知らなかった場合でも1年経過すれば出訴できなくなります。「正当な理由」がある場合はこの限りではありません。

審査請求を経た場合の出訴期間(14条3項):審査請求前置主義により審査請求を経て訴訟を提起する場合は、裁決があったことを知った日から6か月以内かつ裁決の日から1年以内が出訴期間となります。

出訴期間の制限がない訴訟類型:無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟・義務付け訴訟・差止訴訟には出訴期間の制限はありません。取消訴訟のみに出訴期間制限があります。取消訴訟の出訴期間が徒過した場合、無効等確認訴訟の提起や当事者訴訟の活用を検討することになります。

自由選択主義(8条1項):行政庁の処分に不服がある者は、行政不服審査請求をするか取消訴訟を提起するかを国民が自由に選択できます(自由選択主義、8条1項本文)。審査請求の裁決を待たずに直接取消訴訟を提起することができます。ただし、個別の法律で審査請求前置主義が定められている場合は、審査請求を先に行う必要があります(8条1項ただし書)。同じ処分に対して審査請求と取消訴訟を同時並行で進めることも可能です。

原処分主義(10条2項):取消訴訟において、裁決の取消しの訴えでは、原処分の違法を理由として取消しを求めることができません。これを原処分主義といいます。原処分の違法を争いたい場合は原処分の取消訴訟を、裁決固有の違法(手続違法・権限越脱等)を争いたい場合は裁決の取消訴訟を提起する必要があります。

具体例

Aさんは4月1日に営業許可取消処分を受け、同日に処分を知りました。主観的出訴期間(知った日から6か月)は10月1日、客観的出訴期間(処分の日から1年)は翌年4月1日です。Aさんはより早い10月1日までに取消訴訟を提起しなければなりません。仮にAさんが5月1日に審査請求を申立て、8月1日に棄却裁決を受けたとしましょう。この場合、裁決を知った日(8月1日)から6か月以内(翌年2月1日まで)かつ裁決の日から1年以内(翌々年8月1日まで)に取消訴訟を提起できます。ただし、審査請求前置主義の場合を除き、裁決を待たずに審査請求中でも取消訴訟を提起することも可能です。

ポイント整理

  • 主観的出訴期間:処分があったことを知った日から6か月以内(14条1項)
  • 客観的出訴期間:処分の日から1年以内(14条2項)
  • 審査請求を経た場合:裁決があったことを知った日から6か月以内かつ裁決の日から1年以内(14条3項)
  • 正当な理由がある場合は期間の制限が緩和される(14条1項・2項ただし書)

効果

  • 出訴期間を徒過すると訴えは不適法として却下される(正当な理由がない限り)
  • 出訴期間が徒過した場合は無効等確認訴訟や当事者訴訟の活用を検討する

条文

【行政事件訴訟法14条1項】取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から6箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。 【14条2項】取消訴訟は、処分又は裁決の日から1年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。 【14条3項】処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があったときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、これに対する裁決があったことを知った日から6箇月を経過したとき又は当該裁決の日から1年を経過したときは、提起することができない。 【8条1項】処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに処分の取消しの訴えを提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。 【10条2項】処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。

出訴期間の種別
起算点
期間
根拠条文
主観的出訴期間
処分があったことを知った日
6か月以内
14条1項
客観的出訴期間
処分の日
1年以内
14条2項
審査請求経由の場合(主観的)
裁決があったことを知った日
6か月以内
14条3項
審査請求経由の場合(客観的)
裁決の日
1年以内
14条3項
無効等確認訴訟・義務付け訴訟等
制限なし
(取消訴訟のみ出訴期間あり)

重要メモ

  • 「知った日から6か月・処分の日から1年」の二重制限の数字を正確に覚え、審査請求経由の場合の切り替えも押さえること
  • 出訴期間の二重制限:主観的(処分があったことを知った日から6か月・14条1項)かつ客観的(処分の日から1年・14条2項)を両方満たす必要がある
  • 「正当な理由」がある場合は期間の制限が緩和される(14条1項・2項ただし書)
  • 審査請求を経由した場合の出訴期間(14条3項):裁決があったことを知った日から6か月以内かつ裁決の日から1年以内
  • 行政不服審査法の審査請求と比較:審査請求は「知った翌日から3か月・処分日から1年」、取消訴訟は「知った日から6か月・処分日から1年」と数字が異なる
  • 自由選択主義(8条1項本文):審査請求を経なくても取消訴訟を直接提起可。ただし法律が審査請求前置主義を定める場合は例外(8条1項ただし書)
  • 原処分主義(10条2項):裁決の取消訴訟では原処分の違法を理由とすることができない。原処分の違法は原処分取消訴訟で、裁決固有の違法(手続違法・権限越脱等)は裁決取消訴訟で争う
  • 出訴期間を徒過した場合は無効等確認訴訟(出訴期間制限なし)や当事者訴訟の活用を検討する
  • 教示制度(行政事件訴訟法):処分をする際、相手方に取消訴訟の被告・出訴期間・審査請求前置規定の有無を教示する義務がある。行政不服審査法と異なり、口頭処分の場合の教示義務・誤った教示の救済規定はない

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
行政事件訴訟の種類
抗告訴訟・当事者訴訟(主観訴訟)と民衆訴訟・機関訴訟(客観訴訟)の4類型
民衆訴訟・機関訴訟は法律に特別の定めがある場合のみ
処分性
公権力性・直接性・法律上の根拠の3要件(最判昭39.10.29)
通達・行政指導・行政計画は原則処分性なし。例外判例に注意
原告適格
法律上保護された利益を有する者。9条2項により法令の趣旨・目的等を考慮
第三者の原告適格は9条2項の考慮要素に従って判断
出訴期間
知った日から6か月(14条1項)、処分日から1年(14条2項)の二重制限
無効等確認訴訟・不作為違法確認訴訟等には出訴期間なし

関連判例

警察予備隊違憲訴訟

最大判昭27.10.8

1952年、日本社会党の党首が警察予備隊の設置・維持に関する一切の行為の無効確認を最高裁に直接提訴した事件。最高裁は、わが国の司法権は具体的な争訟事件が提起されて初めて発動されるものであり、抽象的に法律等の合憲性を判断する権限は裁判所にないと判示した。行政事件訴訟における「主観訴訟の原則」(客観訴訟は法律の特別の定めが必要)の根拠として頻出。

宝塚市パチンコ条例事件

最判平14.7.9

宝塚市がパチンコ店建設業者に対し、条例違反を理由に建築工事の中止命令を発し、業者が従わないため工事続行禁止を求めて民事訴訟を提起した事件。最高裁は、国・地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対し行政上の義務履行を求める訴訟は「法律上の争訟」に当たらず不適法と判示した。行政上の義務の司法的強制の限界を問う重要判例。

医薬品ネット販売権利確認請求訴訟

最判平25.1.11

改正薬事法施行規則により一般用医薬品のインターネット販売が規制されたことに対し、事業者が販売する地位の確認等を求めた事件。最高裁は、省令による一律販売禁止は法律の委任の範囲を超え違法無効と判断した。公法上の実質的当事者訴訟(地位確認訴訟)の活用例として重要で、2004年改正後の当事者訴訟の受け皿機能を示す判例。

在外選挙権制限事件

最大判平17.9.14

在外邦人に国政選挙の選挙権行使を認めない公職選挙法の規定の違憲性を争い、併せて次回選挙で投票できる地位の確認を求めた事件。最高裁は、当該規定を違憲とし、公法上の確認訴訟(実質的当事者訴訟)としての地位確認の訴えを適法と認めた。2004年改正で明記された公法上の確認訴訟の活用例として頻出。

パチンコ球遊器事件

最判昭33.3.28

国税庁長官の通達によりパチンコ球遊器が物品税の課税対象とされ、業者が課税処分の取消しを求めた事件。最高裁は、通達は原則として国民に対して法的拘束力を持たず、課税処分自体が法律に基づく以上、通達の内容が法の正しい解釈と合致する限り課税処分は適法と判示した。通達自体の処分性は否定される原則の根拠判例。

通達に対する取消訴訟

墓地埋葬法に関する厚生省通達について、宗教法人が取消訴訟を提起した事件。最高裁は、通達は上級行政機関が下級機関に対して発する内部的指示にすぎず、国民の権利義務を直接形成するものではないため、抗告訴訟の対象となる処分に当たらないと判示した。通達の処分性を原則否定した判例として頻出。

病院開設中止勧告の処分性

最判平17.7.15

県知事が医療法に基づき病院開設中止勧告を行い、業者がその取消しを求めた事件。最高裁は、勧告自体は行政指導だが、これに従わないと相当程度の確実さで保険医療機関の指定を受けられなくなり、実際上病院開設が困難になるため、処分性が認められると判示した。形式は行政指導でも実質的効果から処分性を認めた重要判例。

みなし道路の一括指定

最判平14.1.17

建築基準法42条2項による特定行政庁の一括指定(告示)により、個別の道路が建築基準法上の道路とみなされることの処分性が争われた事件。最高裁は、一括指定であっても、指定によって個々の土地所有者に建築制限等の具体的法的効果が生じるから、処分性が認められると判示した。告示形式であっても処分性が認められ得ることを示す重要判例。

新潟空港訴訟

最判平元.2.17

新潟空港の定期航空運送事業免許について、航空機騒音の被害を受けるおそれのある周辺住民が免許取消しを求めた事件。最高裁は、航空法の関係法令の趣旨・目的を参酌すると、飛行場周辺住民の生活利益を個別的に保護していると解され、著しい騒音被害を受ける周辺住民に原告適格が認められると判示した。原告適格を関連法令から広く解釈した先駆的判例。

小田急高架化訴訟

最大判平17.12.7

小田急線の高架化を内容とする都市計画事業認可について、周辺住民が取消しを求めた事件。最高裁大法廷は、行政事件訴訟法9条2項の考慮要素(関係法令の趣旨・目的、被害の内容・性質・程度等)に照らし、騒音・振動等による著しい被害を直接的に受けるおそれのある周辺住民に原告適格を認めた。従来判例を変更し、原告適格を拡大した記念碑的判例で頻出。

もんじゅ訴訟

最判平4.9.22

高速増殖炉「もんじゅ」の原子炉設置許可に対して、周辺住民が無効確認訴訟を提起した事件。最高裁は、原子炉等規制法の趣旨は周辺住民の生命・身体の安全を個別的利益としても保護していると解し、重大な事故の危険にさらされる周辺住民に原告適格を認めた。**無効等確認訴訟(36条)**の原告適格の基準を示した判例として重要。

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