第3節 再調査の請求・再審査請求
第3章 行政不服審査法
審査請求は行政不服申立ての原則的な手続ですが、個別法律に特別の定めがある場合に限り、再調査の請求(審査請求の前に処分庁に対して行う手続)や再審査請求(審査請求の裁決後にさらに行う手続)が認められます。これらはいずれも法律に定めがある場合にのみ利用できる例外的制度です。2014年の全部改正(2016年施行)により、審査請求と再審査請求の二重前置が解消され、現在では審査請求の裁決後は、再審査請求をするか直接取消訴訟を提起するかを自由に選択できます。本節では、再調査の請求と再審査請求の制度概要と、それぞれと審査請求・取消訴訟との関係を学びます。
再調査の請求
第5条条簡単にいうと
簡単にいうと、税務署長の処分など大量に行われる処分については、審査請求の前に「再調査の請求」という簡易な手続が設けられています。これは法律で特に定められた場合にのみ使える制度で、審査請求と選択的に利用できる点が試験の最頻出ポイントです。
行政不服申立ては、原則として審査請求ひとつの制度に統一されていますが、例外として再調査の請求(5条)と再審査請求(6条)という制度が設けられています。このうち再調査の請求は、本節の中心となる制度です。
再調査の請求とは何か(5条)
再調査の請求とは、処分庁そのものに対して不服申立てを行い、処分のやり直しを求める制度です。国税通則法など個別法律が特に定めている場合に限り利用できます(5条3項)。典型例として、国税庁長官の指示のもとで税務署長が行った課税処分に対し、同じ税務署長に再度確認させる手続きが挙げられます。審査請求のように上級庁・外部機関に持ち込む前に、より簡易な手続きで迅速にチェックを受けられる点が特徴です。
審査請求との関係(選択制と排他性)
再調査の請求と審査請求は、不服申立人が選択できます。どちらを選ぶかは自由です。ただし、「審査請求をした場合は、再調査の請求をすることができない」という排他的関係にあります(5条1項ただし書)。一度審査請求を選んだならば、再調査の請求には戻れません。
また、この選択性には非常に重要な注意点があります。「個別法律により再調査の請求の対象とされている処分」は、行政不服審査法に基づく審査請求の対象にもなります。つまり再調査の請求が設けられていても、審査請求の権利が失われるわけではありません(過去問[17-14-5]でも問われた論点です)。
再調査の請求の対象
審査請求の対象は「処分」と「不作為」の双方ですが、再調査の請求の対象は「処分」のみであり、不作為に対しては再調査の請求をすることができません(5条1項かっこ書き)。この点で審査請求とは異なります。
第三者機関・審理員の不関与
審査請求においては、審査の公正性を担保するために審理員(行政不服審査法9条)や行政不服審査会等(第三者機関)への諮問(43条)が設けられています。これに対して、再調査の請求では審理員制度は適用されず、第三者機関への諮問も行われません。これは、再調査の請求がより簡易な手続であることと整合しています。
再調査の請求後の審査請求(5条2項)
再調査の請求を経た後でも、その決定を経た後に改めて審査請求を行うことができます(5条2項)。ただし、審査請求の提起期間(処分を知った日から3か月、または処分があった日から1年)とは別に、再調査の請求の決定を経た後であれば、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して1か月以内に審査請求をしなければなりません(5条2項)。なお、決定があった日から1年を経過したときも審査請求はできなくなります(正当な理由がある場合を除く)。
適用場面の典型例と「大量処分」の背景
再調査の請求が認められている典型的な場面は、税務署長による課税処分など、行政庁が大量に行う処分です。このような場面では、すべての不服申立てが一度に審査請求に持ち込まれると上級庁・審査機関の負担が膨大になります。そこで、法律により処分庁自身に再確認させることで、より迅速かつ簡便に問題を解決する仕組みとして再調査の請求が設けられています。
まとめ(5条のポイント整理)
再調査の請求は、①個別法律の根拠が必要、②処分のみが対象(不作為は不可)、③審査請求との選択制(ただし一方を選んだら他方は使えない)、④審理員・第三者機関の関与なし、⑤再調査の請求後でも審査請求は可能(提起期間に注意)、という5つのポイントで整理できます。
具体例
具体例を挙げましょう。税務署長(処分庁)から確定申告の内容が誤りとして追加課税の処分を受けた場合を考えます。Aさんは、①まず税務署長に対して再調査の請求を行うことができます(国税通則法に根拠あり)。これは「より簡易な手続で処分をもう一度チェックしてもらう」ものです。一方、Aさんはこの再調査の請求をせず、最初から②国税不服審判所長に対して審査請求を行うことも自由です。ただし、②の審査請求を選んだ瞬間、①の再調査の請求は使えなくなります(5条1項ただし書)。もし①の再調査の請求をして決定が出たものの納得できなければ、さらに国税不服審判所長への審査請求に進むことができます(5条2項)。

再調査の請求
重要メモ
- ・「法律の根拠がある場合のみ・処分限定・審査請求と選択制・審理員なし・第三者機関諮問なし・決定後に審査請求可」がまるごとポイント(5条)
- ・再調査の請求は個別法律に特に定めがある場合にのみ利用できる(5条3項)——根拠法のない処分には使えない
- ・再調査の請求の対象は「処分」のみ——「不作為」に対しては再調査の請求は不可(5条1項かっこ書き)。審査請求は処分・不作為の双方が対象であり、ここが重要な違い
- ・審査請求と再調査の請求は不服申立人が選択できる(選択制)——ただし審査請求を選んだ場合は再調査の請求は不可(5条1項但書)。逆に再調査の請求後に審査請求は可能
- ・再調査の請求には審理員制度が適用されない——審査請求・再審査請求には適用あり(三者比較の最頻出)
- ・再調査の請求には第三者機関(行政不服審査会等)への諮問がない——審査請求のみ諮問あり、再審査請求もなし
- ・再調査の請求の決定後、さらに審査請求ができる(5条2項)——提起期間は決定書謄本送付日の翌日から起算して1か月以内。また決定があった日から1年を経過すると審査請求不可(正当な理由がある場合を除く)
- ・出訴期間(取消訴訟への切替):処分があったことを知った日の翌日から3か月以内(行政不服審査法上の「再調査の請求」とは別に行政事件訴訟法上の期間に注意)
- ・典型的な利用場面は税務署長による課税処分など大量処分——大量処分を処分庁に再確認させることで審査機関の負担を軽減する趣旨
再審査請求
第6条条簡単にいうと
簡単にいうと、審査請求の裁決が出た後でも「やっぱり納得できない」という場合に、法律で特に認められているときだけ、別の行政庁にもう一度審査請求(再審査請求)ができる制度です。審理員制度はありますが、第三者機関への諮問がない点が審査請求との大きな違いです。
再審査請求とは何か(6条)
再審査請求とは、審査請求に対する裁決(一次裁決)に不服がある場合に、さらに別の行政庁に対してもう一度審査請求を行う制度です(6条1項)。これは、審査請求を2段階に積み重ねる制度であり、個別の法律が認める場合にのみ利用できます。
再審査請求ができる要件(6条1項)
再審査請求は、法律で特に定められている場合に限りすることができます(6条1項)。これは再調査の請求(5条)と同様の要件です。根拠となる法律の定めがなければ、たとえ審査請求の裁決に不服があっても再審査請求はできません。
審理員制度の適用(再審査請求にはあり)
再審査請求においては、審査請求と同様に審理員制度(行政不服審査法9条)が適用されます。つまり、再審査請求を受けた審査庁は、担当職員(審理員)を指名して審理手続きを進めさせなければなりません。この点は再調査の請求と異なり、再審査請求では公正な審理が確保されています。
第三者機関への諮問はない
審査請求では、審査庁は原則として行政不服審査会等(第三者機関)に諮問し、その答申を踏まえて裁決を行います(43条)。これに対して、再審査請求では第三者機関への諮問は行われません(行政不服審査法上の再審査請求に関する特則)。これが審査請求と再審査請求の重要な違いです。一方、再調査の請求も第三者機関への諮問はないため、「第三者機関への諮問あり」は審査請求だけという整理になります。
審査請求・再調査の請求・再審査請求の三者比較
試験上は、この3制度を横断的に比較できることが重要です。別個の法律の根拠については、審査請求は不要(行政不服審査法で一般的に認められる)、再調査の請求と再審査請求はいずれも必要です。審理員制度は、審査請求と再審査請求では適用あり、再調査の請求ではなしです。第三者機関への諮問は、審査請求のみありで、再調査の請求と再審査請求はどちらもなしです。
再審査請求の期間・手続
再審査請求の提起期間は、原則として審査請求の裁決書の謄本の送付を受けた日の翌日から起算して1か月以内です。また、裁決があった日から1年を経過した場合も再審査請求はできなくなります(正当な理由がある場合を除く)。手続の詳細(審理員の指名、証拠書類の提出等)は審査請求の規定が準用されます(66条)。
実務上の典型例
再審査請求が法律上認められている典型例として、雇用保険法や労働保険徴収法に基づく処分があります。たとえば、公共職業安定所長(処分庁)の処分に不服があれば都道府県労働局長(審査庁)に審査請求をし、その裁決にさらに不服があれば労働保険審査会(再審査庁)に再審査請求を行うという2段階の仕組みが設けられています。
具体例
具体例を挙げましょう。雇用保険の不支給決定(処分庁:ハローワーク所長)に不満があったBさんは、都道府県労働局長に審査請求を行いました(第1段階)。しかし裁決の内容に納得できなかった場合、Bさんは労働保険審査会に対して再審査請求をすることができます(第2段階)。これは雇用保険法が再審査請求を認めているからこそ利用できる制度であり、根拠法律のない処分についてはこのような2段階申立ては許されません。
重要メモ
- ・「法律の根拠がある場合のみ・審査請求の裁決が対象・審理員制度あり・第三者機関諮問なし」の4点セットで覚える(6条)
- ・再審査請求は個別法律で特に定められている場合にのみ可能(6条1項)——再調査の請求と同様に根拠法が必須
- ・再審査請求の対象は「審査請求の裁決」のみ——処分や不作為を直接争うものではない
- ・再審査請求には審理員制度が適用される(9条)——再調査の請求には適用なしであり、ここが三者比較の核心
- ・再審査請求には第三者機関(行政不服審査会等)への諮問がない——第三者機関への諮問があるのは審査請求だけ
- ・三者比較まとめ——別個法の根拠:審査請求=不要 / 再調査の請求=必要 / 再審査請求=必要
- ・三者比較まとめ——審理員制度:審査請求=あり / 再調査の請求=なし / 再審査請求=あり
- ・三者比較まとめ——第三者機関への諮問:審査請求=あり / 再調査の請求=なし / 再審査請求=なし
- ・三者比較まとめ——対象:審査請求=処分・不作為 / 再調査の請求=処分のみ / 再審査請求=審査請求の裁決
- ・再審査請求の提起期間は裁決書謄本送付日の翌日から1か月以内——裁決から1年経過後は不可(正当な理由がある場合を除く)
- ・手続は審査請求の規定が原則として準用される(66条)——典型例は雇用保険法・労働保険徴収法に基づく処分(ハローワーク所長→都道府県労働局長→労働保険審査会の2段階構造)
まとめ
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
行政上の義務違反に対して制裁として科される罰のこと。刑事罰である行政刑罰と、金銭罰である秩序罰の2種類がある。
法律行為的行政行為
行政庁の意思表示によって法律効果を発生させる行政行為のこと。許可や認可など、意思の内容どおりに効果が生じる点が特徴。
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