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テキスト/行政法/第2節 審査請求

第2節 審査請求

第3章 行政不服審査法

行政処分に不服がある場合、国民は審査請求により行政庁に再考を求めることができます。この節では、審査請求の対象・手続・審理員制度・執行停止・裁決など、不服申立制度の中核となる仕組みを学びます。取消訴訟との関係や教示制度も頻出論点です。

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審査請求の対象と審査請求先

1条の2、2条、4条

審査請求とは、行政庁の処分または不作為について、処分庁等とは異なる行政庁に対して不服を申し立てる制度です。原則として処分庁等の最上級行政庁(国の場合は主任の大臣、地方の場合は知事等)が審査庁となります。

具体例

Aさんは県知事から飲食店営業許可を取り消されました。Aさんは県知事に対して審査請求をします(知事が処分庁であり最上級行政庁のため)。一方、市長の処分であれば知事に審査請求することもできます。

要件

  • 処分または不作為が存在すること
  • 処分性が認められる行為であること
  • 審査請求期間内であること(原則として処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内)
  • 正当な理由があれば処分日から1年以内でも可

効果・結論

  • 審査請求が適法に提起されると、審査庁は審理手続を開始する
  • 執行不停止原則により、審査請求をしても処分の効力は停止されない(例外あり)
  • 審査請求前置が法定されていなければ、直ちに取消訴訟を提起することも可能

条文(第1条の2、2条、4条条)

第2条 行政庁の処分に不服がある者は、第4条及び第5条第2項の定めるところにより、審査請求をすることができる。

場合
効果
処分庁=最上級行政庁(例:大臣、知事)
その処分庁自身に審査請求
処分庁≠最上級行政庁(例:市長)
処分庁等の最上級行政庁(知事等)に審査請求
法律で審査庁が個別に定められている場合
その法律の定める審査庁に審査請求

試験のポイント

  • 再調査の請求が前置されている場合、審査請求期間の起算点が再調査決定を知った日の翌日となる点に注意
  • 処分性がなければ審査請求できない。通達・行政指導は原則として対象外
  • 審査請求と取消訴訟は原則として自由選択(審査請求前置主義は廃止が原則)
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審理員制度

9条

審理員とは、審査請求の審理手続を公正に行うため、審査庁が指名する職員です。ただし処分に関与した者は審理員になることができません。審理員は、審査請求人・参加人の意見陳述、証拠書類の提出などを経て審理員意見書を作成し審査庁に提出します。

具体例

Bさんは市長の営業停止処分に不服があり知事に審査請求しました。知事は県職員Cさんを審理員に指名。Cさんは口頭意見陳述を実施し、審理終結後に審理員意見書を作成して知事に提出しました。

要件

  • 審査庁が職員の中から審理員を指名すること
  • 処分に関与した者または審査請求に係る不作為に係る処分に関与する者は審理員となることができない
  • 審理員は審理手続の主宰者として、証拠調べ・意見陳述などを実施

効果・結論

  • 審理員は審理終結後に審理員意見書を作成し審査庁に提出する
  • 審査庁は審理員意見書を尊重しなければならない
  • 審理手続の透明性・公正性が確保される

条文(第9条条)

第9条 審査庁は、審査請求がされたときは、審理員を指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等に通知するものとする。ただし、審査庁が主宰する公開の審理手続により審理を行う場合その他政令で定める場合は、この限りでない。2項 前項の規定により指名される審理員は、次に掲げる者以外の者でなければならない。一 審査請求に係る処分若しくは不作為に関与した者

試験のポイント

  • 審理員は処分に関与していない者でなければならない点が重要(公正性の確保)
  • 審理員意見書は参考とされるが、審査庁を法的に拘束するものではない
  • 審理員制度は平成26年改正で導入された制度であり、従前の審査庁による直接審理とは異なる
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執行停止

25条

執行停止とは、審査請求がなされた場合に、処分の効力・執行・手続の続行を停止する制度です。原則は執行不停止原則ですが、一定の要件を満たせば審査庁が職権または申立てにより執行停止できます。

具体例

Dさんは運転免許停止処分を受け審査請求しました。しかし仕事で車が必要なため執行停止を申し立てたところ、審査庁は重大な損害を避けるため緊急の必要があると認め、処分の執行を停止しました。

要件

  • 審査請求が適法に係属していること
  • 重大な損害を避けるため緊急の必要があると認められること
  • 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと
  • 本案について理由がないとみえるときには執行停止できない

効果・結論

  • 執行停止が認められると、処分の効力・執行・手続の続行が停止される
  • 執行停止の決定に不服がある場合、取消訴訟において仮の差止め・仮の義務付けを求めることができる
  • 執行停止は審査庁の裁量により判断される

条文(第25条条)

第25条 審査請求人の申立てにより又は職権で、処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求に対する裁決があるまでの間、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をとることができる。2項 処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、審査請求に対する裁決があるまでの間、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をとることができる。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。

場合
効果
処分庁の上級行政庁または処分庁が審査庁の場合
必要があると認めるときに執行停止可能(要件緩やか)
上記以外の審査庁の場合
重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに限り執行停止可能(要件厳格)

試験のポイント

  • 原則は執行不停止であり、執行停止は例外的措置である点を押さえる
  • 重大な損害緊急の必要性の2要件が審査される(行政事件訴訟法の執行停止と類似)
  • 執行停止の申立てが却下されても審査請求本案には影響しない
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裁決・決定と教示

45条、50条、82条

裁決とは、審査請求に対する審査庁の最終的な判断です。裁決には認容裁決(処分の取消・変更等)と棄却裁決があります。決定は審査請求が不適法な場合の却下判断です。教示とは、処分の相手方に審査請求ができる旨と審査請求先・期間を書面で知らせる制度です。

具体例

Eさんは建築確認を受けられず、市長に審査請求しました。審査庁である知事は審理の結果、処分を取り消す認容裁決をしました。なお、当初の処分時に市はEさんに審査請求先を教示していました。

要件

  • 裁決は書面で行い、理由を付記しなければならない
  • 裁決書は審査請求人・参加人に送達する
  • 教示は書面で行い、審査請求期間・審査請求先を明示する
  • 教示がなかった場合または誤った教示があった場合は、審査請求期間が延長される

効果・結論

  • 認容裁決により処分が取り消されまたは変更される
  • 裁決には不可変更力があり、審査庁は原則として同一事件について再度裁決できない
  • 裁決に不服がある場合、取消訴訟を提起できる(裁決主義の場合は裁決を被告適格とする)
  • 教示がなかったまたは誤っていた場合、正当な理由により審査請求期間が1年に延長される

条文(第45条、50条、82条条)

第45条 審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、裁決をする。 第50条 審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。 第82条 行政庁は、審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立て(略)をすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならない。

場合
効果
審査請求が適法かつ理由がある場合
認容裁決(処分の取消・変更等)
審査請求が適法だが理由がない場合
棄却裁決
審査請求が不適法な場合
却下決定

試験のポイント

  • 教示義務違反があった場合、審査請求期間が処分日から1年に延長される点が重要
  • 裁決の拘束力により、処分庁・関係行政庁は裁決に拘束される(行政事件訴訟法の判決の拘束力と類似)
  • 再審査請求が認められている場合は、裁決後さらに不服申立てができる(国税不服審判所など)

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
審査請求の対象と審査請求先
処分・不作為について最上級行政庁に請求
処分性がなければ審査請求不可
審理員制度
処分に関与していない職員が公正に審理
審理員意見書は審査庁を拘束しない
執行停止
原則は執行不停止、例外的に停止可能
重大な損害と緊急の必要性が要件
裁決・決定と教示
認容・棄却・却下の3類型、教示義務あり
教示がないと期間が1年に延長

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