第2節 審査請求
第3章 行政不服審査法
行政処分や不作為に不服がある場合、国民は審査請求により行政庁に再考を求めることができます。2014年の全部改正(2016年施行)により、審理員制度や行政不服審査会への諮問制度が導入され、公正性と利便性が大きく向上しました。本節では、審査請求の流れ・請求人・期間・方式などの概要、審理員による審理手続、行政不服審査会への諮問、裁決の種類と効力、そして執行停止制度について学びます。記述式・択一式ともに頻出の重要分野です。
審査請求の概要・申立先
第4条簡単にいうと
簡単にいうと、審査請求は「どこに・誰が・いつまでに」申し立てるかが試験の核心です。処分庁ではなく最上級行政庁(審査庁)に申し立てることが最重要ポイントです。
審査請求とは、行政庁の処分や不作為に不服がある者が、上級行政庁等に審査を求める行政上の不服申立て制度です。行政不服申立てには審査請求のほか、再調査の請求と再審査請求があります(行政不服審査法5条・6条)。
審査請求先(4条)について、最も重要な原則は「処分を出した行政庁(処分庁)ではなく、最上級行政庁(審査庁)に対して行う」という点です(4条4号)。ただし例外として、国の機関が行う処分について処分庁に上級行政庁が存在しない場合は、当該処分庁に審査請求します(4条1号)。また、法律に特別の定めがある場合はその定めによります。
審査請求の対象については、処分だけでなく、不作為(申請をしたのに行政庁から何も応答がない状態)も審査請求の対象となります(2条・3条)。不作為についての審査請求は、当該不作為に係る処分についての申請をした者に限られます(3条)。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが運輸支局長(処分庁)から「営業停止処分」を受けた場合、運輸支局長の上級行政庁は国土交通大臣(審査庁)なので、Aさんは国土交通大臣に対して審査請求書を提出します。処分庁に審査請求するのではなく、最上級行政庁への申立てが原則です。

審査請求の流れ(❶審査請求の概要)
重要メモ
- ・「審査請求先は原則として最上級行政庁(4条4号)・上級行政庁がない場合は処分庁自身(4条1号)」がポイント
- ・審査請求先は原則として最上級行政庁(処分庁ではない)(4条4号)
- ・国の機関の処分で上級行政庁が存在しない場合は当該処分庁に審査請求する(4条1号)[17-15-2]
- ・不作為の審査庁:不作為庁の直近上級行政庁(上級行政庁がない場合は不作為庁自身)
- ・審査請求の対象:処分だけでなく不当な処分・不作為も含まれる(2条・3条)
- ・不作為についての審査請求:処分の申請をした者に限られる(3条)
- ・行政不服審査法の審査対象は違法な処分のみならず不当な処分にも及ぶ(行政事件訴訟法との違い)
審査請求の全体の流れ(7ステップ)
簡単にいうと
簡単にいうと、審査請求は「審査請求書提出→審理員指名→審理→審理員意見書→行政不服審査会諮問→答申→裁決」という7ステップで進みます。全体像をつかんでおくと各論点が整理しやすくなります。
審査請求の全体の流れは次の7段階で進みます。①審査請求人が審査請求書を提出する(原則として書面による:19条1項)。②審査庁が所属職員の中から処分に関わっていない者を審理員として指名する(9条)。③審理員が審理を行う(弁明書収受・反論書収受・証拠調べ等)。④審理員が審理員意見書を作成し審査庁に提出する(41条・42条)。⑤審査庁が行政不服審査会等に諮問する(43条)。⑥行政不服審査会等が答申を行う。⑦審査庁が裁決を行う(44条)。
審査庁の公正性担保の仕組みとして、審査請求を受けた行政庁(審査庁)が独断で判断するのではなく、審理員という第三者的な立場の審理を経た上で、さらに行政不服審査会という第三者機関の判断も踏まえて判断するという点が公正性担保の仕組みとなっています。
なお、審査請求が不適法で却下される場合は、②〜⑥の手続は不要で、審査庁が直接却下裁決を行うことができます。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが運輸支局長から「営業停止処分」を受けた場合、Aさんは国土交通大臣(審査庁)に審査請求書を提出します。国土交通大臣は審理員を指名し、審理員はAさんから反論書等を受け取りながら審理を進め、意見書を国土交通大臣に提出します。国土交通大臣は行政不服審査会に諮問し、答申を受けた後に裁決を下します。
重要メモ
- ・「審査請求書提出→審理員指名→審理→審理員意見書→行政不服審査会への諮問→答申→裁決」の7ステップが試験の骨格
- ・審査請求は原則として審査請求書(書面)を提出して行う(19条1項)
- ・審査庁が審理員を指名→審理員が審理を主宰→審理員意見書を審査庁に提出(9条・42条)
- ・審査庁が行政不服審査会等に諮問→答申を受けて裁決(43条・44条)
- ・審査請求が不適法で却下される場合は審理員指名・行政不服審査会への諮問の手続不要
- ・7ステップ全体の順序:審査請求書提出→審理員指名→審理→審理員意見書→諮問→答申→裁決
- ・処分庁が審査庁の場合も審理員指名が不要になる例外がある
審査請求人と総代・代理人
簡単にいうと
簡単にいうと、審査請求ができるのは処分に不服がある者と不作為の申請者です。多数人が共同する場合は「総代」、本人の代わりに申し立てる「代理人」を利用できます。総代と代理人の「取下げ」に関する違いが試験頻出です。
行政庁の処分や不作為について審査請求ができる者について、行政不服審査法に規定があります。
審査請求できる者(審査請求人)は次の2種類です。①処分についての審査請求(2条):行政庁の処分に不服がある者。②不作為についての審査請求(3条):法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者(申請をしていない者は不作為の審査請求ができません)。
総代(11条)について、多数人が共同して審査請求をしようとするときは、3人を超えない総代を互選することができます。総代は、審査請求の取下げを除いて、審査請求に関する一切の行為ができます(取下げは個別の授権が必要)。これは民事訴訟の選定当事者に類似した制度です。なお、総代が選出された場合でも、共同審査請求人は総代を通じて手続に関与することになります。
代理人(12条)について、審査請求人は代理人によって審査請求をすることができます。代理人は、各自が審査請求人のために審査請求に関する一切の行為ができます。ただし、審査請求の取下げについては、特別の委任がある場合に限り行うことができます。代理人は取下げについて特別委任が必要という点で、総代(取下げ不可)と異なります。
具体例
例を挙げましょう。工場団地内の50社が共同して審査請求をしようとする場合、50社の代表者として3人の総代を互選し、3人が審査請求に関する一切の行為を行います。ただし審査請求を取り下げる場合は総代ではできないため、50社全員の意思確認が必要となります。
重要メモ
- ・「総代は取下げ不可・代理人は特別委任があれば取下げ可」という対比が頻出(11条・12条)
- ・審査請求人の種類:処分に不服がある者(2条)と処分の申請をした者(不作為・3条)の2種類
- ・総代(11条):多数人が共同して審査請求するとき3人以内を互選・取下げを除く一切の行為ができる
- ・代理人(12条):審査請求人は代理人によって審査請求ができる・取下げは特別委任がある場合のみ可
- ・総代と代理人の違い:総代は取下げ一切不可、代理人は特別委任があれば取下げ可
- ・総代の上限人数:3人を超えない(3人以内)(11条1項)
利害関係人の参加と審理員の資格
簡単にいうと
簡単にいうと、審査請求の審理に関心のある第三者(利害関係人)は「参加人」として審理に加わることができます。また公正性確保のため、処分に関与した職員は審理員になれません。
利害関係人(13条)について、利害関係人は審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができます(参加人)。また、審理員は、必要があると認める場合には、利害関係人に対し、当該審査請求に参加することを求めることができます(職権参加)。参加人となった利害関係人は、審理において意見を述べたり証拠を提出したりすることができます。
審理員となることができない者(9条2項)として、以下の者は審理員となることができません。①審査請求に係る処分に関与した者(処分に直接携わった職員)。②当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者。③当該処分についての不作為に係る処分に関与し・関与する見込みのある者。これらの要件により、処分に関与した者が自ら審理する「自己審査」が排除されています。
具体例
例を挙げましょう。A社の競合他社であるB社が、A社の許可処分に対する審査請求を知った場合、B社は利害関係人として審理員の許可を得れば参加人になることができます。一方、その許可処分の審査を担当する審理員には、当初その許可処分の決裁に携わった職員は指名できません。
重要メモ
- ・「利害関係人は審理員の許可または職権で参加可・処分に関与した者は審理員になれない」(13条・9条2項)
- ・利害関係人(13条):審理員の許可を得て参加人になれる・審理員から職権参加を求められることも
- ・審理員となれない者(9条2項):①処分に関与した者②再調査の決定に関与した者③不作為に関与・関与見込みの者
- ・参加人は審理において意見書提出・口頭意見陳述・証拠提出の機会が与えられる
- ・審理員制度は2016年改正で新設された公正性確保のための仕組み
- ・自己審査排除の趣旨:処分に関与した者が自ら審理することを防ぐ
審査請求期間
第18条簡単にいうと
簡単にいうと、審査請求には「知った日の翌日から3か月」と「処分のあった日の翌日から1年」という2つの期間制限があります。どちらか一方でも経過したら審査請求できなくなるため、両方を覚えることが必須です。不作為については期間制限なしという違いも重要です。
処分に対する審査請求には期間制限があり、一定の期間を過ぎると審査請求ができなくなります(18条)。この期間制限は、行政の法的安定性を確保するために設けられています。
主観的審査請求期間(知った日基準:18条1項)について、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内にしなければなりません。正当な理由があるときはこの限りでありません(宥恕規定)。「知った日」とは、処分があったことを現実に知った日を指します。なお、過去問では「処分があったことを知った日から60日以内」という誤りの選択肢が出題されていますが、正しくは「知った日の翌日から3か月以内」です(04-15-3改)。
客観的審査請求期間(処分日基準:18条2項)について、処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは審査請求をすることができません。正当な理由があるときはこの限りでありません。客観的期間は主観的期間と独立して進行するため、たとえ処分があってから5年後に知ったとしても、そこから3か月以内であっても審査請求はできません(客観的期間1年がすでに経過しているため)。
2つの期間の関係として、主観的期間(3か月)と客観的期間(1年)のいずれかが先に経過した時点で審査請求ができなくなります。両方に正当な理由による例外(宥恕規定)があります。
不作為についての審査請求(18条3項)については、期間制限がありません。不作為は継続的な状態であるため、申請が放置されている間はいつでも審査請求することができます。
正当な理由については、天災など不可抗力によって期間内に申立てができなかった場合などが該当します。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが令和5年4月1日に行政庁から許可の拒否処分を受け、それを知ったのが令和5年4月10日の場合、主観的期間(知った日4月10日の翌日から3か月)は令和5年7月11日まで、客観的期間(処分日4月1日の翌日から1年)は令和6年4月2日までです。この場合、令和5年7月11日までに審査請求しなければなりません。一方、Bさんが令和5年4月1日の処分を令和7年1月1日(1年以上後)に知った場合は、客観的期間(1年)が既に経過しているため、審査請求はできません。
重要メモ
- ・「主観的期間:知った日の翌日から3か月(旧法60日より延長)・客観的期間:処分日の翌日から1年」(18条)
- ・主観的審査請求期間:処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内(18条1項)
- ・客観的審査請求期間:処分があった日の翌日から起算して1年以内(18条2項)
- ・「知った日から60日」は誤り、正しくは「知った日の翌日から3か月」[04-15-3改]
- ・両期間ともに正当な理由(天災等の不可抗力)があれば期間経過後も審査請求可能(宥恕規定)
- ・不作為についての審査請求は期間制限なし(不作為は継続的状態のため:18条3項)
- ・2つの期間はどちらか早く経過した方で審査請求不能になる(両方が独立して進行)
- ・行政事件訴訟法の出訴期間(知った日から6か月・処分の日から1年)との比較:主観的期間が短い
標準審理期間
第16条簡単にいうと
簡単にいうと、標準審理期間は「定めるのは努力義務・公示するのは法的義務」というセットです。行政手続法の標準処理期間とまったく同じパターンなので、比較して覚えましょう。
標準審理期間(16条)は、行政手続法の標準処理期間と同様の趣旨で設けられた制度です。審査請求が審査庁に到達してから裁決が出るまでの目安となる期間を標準審理期間といいます。
標準審理期間の設定・公示については次の2段階になっています。①標準審理期間を定めること:定めるよう努めるものとする(努力義務)。②標準審理期間を定めたときに公にすること:公にしなければならない(法的義務)。つまり、定めるかどうかは任意(努力義務)ですが、いったん定めたら必ず公示する義務が生じます。
行政手続法の標準処理期間(設定:努力義務・公示:法的義務)と全く同じ構造です。この対比は試験で頻出します。
具体例
例を挙げましょう。国土交通省がある種類の許可の審査請求について「審査請求受理から裁決まで3か月を標準審理期間とする」と定めた場合、これを公示する法的義務が生じます。一方、標準審理期間をそもそも定めないことは努力義務に反するに留まりますが、定めた以上は必ず公示しなければなりません。

審理手続の流れ・証拠調べ(❸審理手続)
重要メモ
- ・「標準審理期間の設定は努力義務・公示は法的義務」(16条)——行政手続法の標準処理期間と同パターン
- ・標準審理期間の設定:定めるよう努めるものとする(努力義務)(16条)
- ・標準審理期間の公示:定めた場合は必ず公示しなければならない(法的義務)(16条)
- ・行政手続法の標準処理期間(行政手続法6条)とまったく同じ構造(設定:努力義務・公示:法的義務)
- ・定めるかどうかは任意だが、いったん定めたら公示義務が生じる点を押さえること
審査請求の方式・審査請求書
第19条簡単にいうと
簡単にいうと、審査請求は書面(審査請求書)が原則で、口頭は例外的にしか認められません。審査請求書に何を記載しなければならないか、補正はどうなるかも押さえておきましょう。
審査請求の方式(19条1項)について、審査請求は、原則として審査請求書という書面を提出して行います。書面主義を採用することで、審査内容を明確にし、後の審理の基礎とする趣旨です。ただし例外として、法律または条例で「口頭でできる」と定められている場合には、口頭で審査請求をすることができます(19条1項ただし書)。法律や条例による個別の根拠がある場合のみ例外として口頭が認められるということです。
審査請求書の記載事項(19条2項・3項)としては、①審査請求人の氏名・住所、②審査請求に係る処分の内容、③審査請求に係る処分があったことを知った年月日、④審査請求の趣旨・理由、⑤処分庁の教示の有無・内容、⑥審査請求の年月日、などが必要となります。不作為についての審査請求書の場合は、処分についての申請の内容と年月日等が記載事項となります(19条3項)。
審査請求書の補正(23条)について、審査請求書の記載事項が適法でない場合、審査庁は相当の期間を定めて補正を命ずることができます。補正命令に従わない場合は却下されることがあります。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが行政庁の処分に対して審査請求をしようとする場合、原則として審査請求書を作成して提出しなければなりません。審査請求書には処分の内容・知った年月日・趣旨と理由などを記載します。記載に不備があれば審査庁から補正命令が来ます。
重要メモ
- ・「書面(審査請求書)が原則・口頭は法律または条例で認められた場合のみ例外」(19条)
- ・審査請求の方式:書面(審査請求書)の提出が原則(19条1項)
- ・口頭による審査請求:法律または条例で認められた場合のみ例外的に可(19条1項ただし書)
- ・審査請求書の記載事項:①氏名・住所②処分の内容③知った年月日④趣旨・理由⑤教示の有無・内容⑥審査請求年月日(19条2項)
- ・不作為についての審査請求書:処分の申請内容・申請年月日等が記載事項(19条3項)
- ・審査請求書の補正命令:記載事項が不適法な場合に審査庁が相当期間を定めて命じることができる(23条)
- ・補正命令に従わない場合は却下裁決が出される
審理員の指名と審理員名簿
第9条簡単にいうと
簡単にいうと、審理員は「審査庁に所属する職員のうち処分に関与していない者」の中から指名されます。審理員名簿の設定は努力義務・公示は法的義務というパターンも標準審理期間と同じです。
審理員の指名(9条)について、審査請求の審理は、審査庁自身が直接行うのではなく、審査庁に所属する職員の中から処分に関わっていない者等の要件を満たす者を審理員として指名して行います。この制度は、審理の公正性・中立性を確保するための仕組みです。
審理員となることができない者(9条2項)として、以下の者は審理員となることができません。①審査請求に係る処分に関与した者(処分に直接携わった職員)。②当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者。③当該処分についての不作為に係る処分に関与し、もしくは関与することとなる見込みの者。これらの要件により、処分に関与した者が自ら審理する「自己審査」が排除されています。
審理員名簿(17条)について、審査庁は、審理員となるべき者の名簿を作成するよう努めるものとされており(努力義務)、名簿を作成したときは公にしなければなりません(法的義務)。標準審理期間と同じ「設定:努力義務・公示:法的義務」というパターンです。
具体例
例を挙げましょう。国土交通大臣(審査庁)に審査請求が申し立てられた場合、国土交通大臣は直轄組織の職員の中からその処分に関与していない者を審理員として指名します。処分の決裁に携わった職員は審理員になれません。

裁決の種類
重要メモ
- ・「審理員は審査庁が所属職員から指名・処分に関与した者は不可・名簿設定は努力義務・公示は法的義務」(9条・17条)
- ・審理員:審査庁が所属職員の中から指名(処分に関与した者は審理員になれない:9条1項・2項)
- ・審理員名簿の設定:努力義務(定めるよう努める)(17条)
- ・審理員名簿の公示:法的義務(定めた場合は必ず公示)(17条)
- ・審理員名簿のパターン:設定:努力義務・公示:法的義務(標準審理期間・行政手続法と同じ)
- ・審理員指名が不要な場合:審査請求が不適法で却下するとき・処分庁が審査庁のとき等
- ・過去問:審理員は審査庁に所属する職員から指名される(○)[16-15-2]
審理の方式(書面審理・口頭意見陳述)
第31条簡単にいうと
簡単にいうと、行政不服審査の審理は裁判と違って「書面審理」が原則です。ただし審査請求人または参加人が申立てをすれば口頭で意見を述べる機会が与えられます。
審理の方式(書面審理:29条等)について、行政不服審査は「簡易迅速」に国民を救済するための制度です。そのため、審理手続は裁判のような口頭審理ではなく、書面審理という形式をとっています。
弁明書の提出要求(29条)として、審理員は審査請求書等の写しを処分庁等に送付し(29条1項)、処分庁等に対して弁明書の提出を求めます(29条2項)。審理員が処分庁に求める書面は「弁明書」であり、「反論書」ではありません(過去問頻出)。反論書は審査請求人が提出するものです(30条1項)。
口頭意見陳述(31条)として、書面審理が原則ですが、審査請求人または参加人から申立てがあれば、審理員は口頭で意見を述べる機会を与えなければなりません(31条1項)。この口頭意見陳述は、①誰もが自動的に受けられるわけではなく(申立てが必要)、②申立てがあった場合には必ず与えなければならないという点を押さえてください。口頭意見陳述の場では、審査請求人・参加人は審理員の許可を得て、処分庁等の職員に対し質問することもできます(31条5項)。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが審査請求書を提出した場合、審理員は運輸支局長(処分庁)に弁明書の提出を求めます。弁明書が提出されると、審理員はその写しをAさんに送付します。Aさんは「弁明には誤りがある」という反論書を提出できます。さらにAさんが口頭での意見陳述を申し立てると、審理員は口頭意見陳述の機会を設けなければなりません。

裁決の種類(事情裁決・変更裁決)
重要メモ
- ・「書面審理が原則・口頭意見陳述は申立てがあれば必ず機会を与える・処分庁職員への質問も可」(28条・31条)
- ・審理は書面審理が原則(裁判のような口頭審理ではない)
- ・審理員が処分庁に求める書面は「弁明書」(「反論書」は審査請求人が提出するもの)[06-14-3改]
- ・口頭意見陳述(31条1項):審査請求人または参加人の申立てがあれば審理員は機会を与えなければならない
- ・口頭意見陳述の場で審理員の許可を得て処分庁職員への質問も可(31条5項)
- ・審査請求人・参加人は証拠書類・証拠物の提出ができる(32条1項)
- ・審査請求人・参加人は行政庁保有文書の閲覧・謄写を求めることができる(38条1項)
審理手続の流れと証拠調べ
簡単にいうと
簡単にいうと、審理は「弁明書(処分庁)→反論書(審査請求人)→意見書(参加人)」という書面のキャッチボールで進みます。証拠調べの種類(物件提出要求・参考人・検証・質問)も覚えておきましょう。
審理手続の具体的な流れについて、詳しく確認していきます。
審査請求書の送付と弁明書の要求(29条)として、審理員は審査請求書等の写しを処分庁等に送付し(29条1項)、処分庁等に対して相当の期間を定めて弁明書の提出を求めます(29条2項)。処分庁等は、弁明書の提出の際には弁明書とともに処分の原因となる事実を証する書類等を添付します(29条5項)。
反論書・意見書(30条)について、審理員は処分庁等から弁明書の提出があったときは、これを審査請求人および参加人に送付します(30条1項)。審査請求人は弁明書に対する反論書を提出することができ(任意)、参加人は意見書を提出することができます(30条1項)。反論書と意見書の提出期間は審理員が定めます(30条2項)。提出された弁明書・反論書・意見書はすみやかに関係当事者に送付しなければなりません。
証拠調べ(33〜36条)として、審理員の職権または審査請求人等の申立てによって、審理に必要な証拠を調べることができます。証拠調べの種類は以下の4つです。①物件の提出要求(33条):審理員が処分庁等に対し、関係書類等の物件の提出を求める。②参考人の陳述・鑑定の要求(34条):参考人に陳述させ、または鑑定を求める(申立てまたは職権)。③検証(35条):物件・場所を審理員が実際に確認する(申立てまたは職権)。④審理関係人への質問(36条):審理員が審理関係人に対し質問する(申立てまたは職権)。
審理手続の流れの概要は以下の通りです。①審査庁が審査請求書の写しを処分庁等に送付(29条1項)→②処分庁等が弁明書を提出(29条2項・5項)→③審理員が審査請求人に弁明書を送付(30条1項)→④審査請求人が反論書を提出(任意)・参加人が意見書を提出(30条1項・2項)→⑤必要に応じて証拠調べ(33〜36条)→⑥審理員が審理手続を終結→⑦審理員意見書を審査庁に提出(41条・42条)。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが運輸支局長の処分に対して審査請求書を提出した場合、審理員は運輸支局長(処分庁)に弁明書の提出を求めます。運輸支局長が弁明書を提出すると、審理員はその写しをAさんに送付します。Aさんは反論書を提出し、必要があれば審理員が物件提出要求や検証を行います。

義務付け裁決の分類
重要メモ
- ・「弁明書(処分庁)→反論書(審査請求人)→意見書(参加人)の順・証拠調べは4種類」(29〜36条)
- ・審理は「弁明書(処分庁:29条)→反論書(審査請求人:30条)→意見書(参加人:30条)」の順
- ・反論書・意見書の提出は任意(提出する義務はない)
- ・処分庁は弁明書とともに処分の原因となる事実を証する書類等を添付する(29条5項)
- ・証拠調べ4種類:物件提出要求(33条)・参考人陳述鑑定(34条)・検証(35条)・審理関係人への質問(36条)
- ・証拠調べは審理員の職権または審査請求人等の申立てによって行われる
- ・提出された弁明書・反論書・意見書はすみやかに関係当事者に送付しなければならない
審理手続の終結と審理員意見書
第42条簡単にいうと
簡単にいうと、審理員が審理を終えると「審理員意見書」を作成して審査庁に提出します。その後、審査庁が行政不服審査会に諮問するという流れです。審理員意見書を提出するのも、諮問するのも、それぞれの主体(審理員・審査庁)を混同しないようにしましょう。
審理手続の終結(41条)について、審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結します(41条1項)。審理員が独自の判断で終結を決定します。
審理員意見書の提出(42条)として、審理員は審理手続を終結したときは、遅滞なく、審理員意見書を作成し、審査請求書等とともにこれを審査庁に提出しなければなりません(42条1項・2項)。審理員意見書は、審理員が審理を通じて得た心証をまとめたもので、審査庁はこれを参考に最終判断(裁決)を行います。
具体例
例を挙げましょう。審理員が審理を終えて「この処分には違法な点がある、認容すべき」という審理員意見書を作成し国土交通大臣(審査庁)に提出します。この後、国土交通大臣は行政不服審査会に諮問します(諮問するのは審理員ではなく審査庁です)。
重要メモ
- ・「審理員が審理終結を決定→審理員意見書を作成→審査庁に提出→審査庁が行政不服審査会に諮問」(41条・42条)
- ・審理終結:審理員が必要な審理を終えたと認めるときに決定する(41条1項)
- ・審理員意見書:審理員が作成し、審査請求書等とともに審査庁に提出(42条1項・2項)
- ・審理員意見書を提出するのは審理員・諮問するのは審査庁(主体の混同に注意)
- ・審理員意見書は審査庁が最終判断(裁決)を行う際の参考となる
- ・審理員意見書で「不適法却下すべき」とされた場合は、審査庁は行政不服審査会への諮問不要(43条1項2号)
行政不服審査会への諮問
第43条簡単にいうと
簡単にいうと、審理員意見書が提出された後は、審査庁が行政不服審査会に諮問します。「誰が諮問するか」(審査庁が諮問、審理員ではない)という点が試験頻出の誤りポイントです。
行政不服審査会への諮問(43条)について、審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、原則として行政不服審査会等に諮問しなければなりません(43条1項)。ここで重要なのは、諮問するのは「審理員」ではなく「審査庁」だという点です(過去問頻出の誤りポイント)。
諮問が不要な例外(43条1項各号)として、以下の場合には行政不服審査会への諮問は不要です。①審査請求人から行政不服審査会等への諮問を希望しない旨の申出があった場合(43条1項1号)。②審理員意見書において、審査請求が不適法で却下すべきとされている場合(43条1項2号)。③審査庁が主任大臣等一定の行政庁である場合で審査請求に理由がないと認める場合(43条1項3号・4号)等。
行政不服審査会(67条等)については、総務省に設置される第三者機関で、委員は国会の同意を得て任命されます。都道府県・市区町村については、各自治体の行政不服審査会等がこれに相当します。行政不服審査会は審査庁の諮問を受けて審議し、「答申」を行います。審査庁は答申の内容を尊重して裁決を行いますが、答申に法的拘束力はなく、審査庁が独自に判断して裁決することも制度上は可能です(ただし答申との乖離は実務上は稀)。
具体例
例を挙げましょう。審理員意見書が審査庁(国土交通大臣)に提出された後、国土交通大臣は行政不服審査会に諮問します。行政不服審査会が答申を行い、国土交通大臣はこれを踏まえて裁決を下します。「審理員が諮問する」という記述は誤りです。

執行停止の仕組みと種類
重要メモ
- ・「諮問するのは審査庁(審理員ではない)・答申は法的拘束力なし・諮問不要の例外3つを押さえる」(43条)
- ・行政不服審査会への諮問:審査庁が行う(審理員ではない)[16-15-5]
- ・諮問が不要な例外①:審査請求人から諮問を希望しない旨の申出があった場合(43条1項1号)
- ・諮問が不要な例外②:審理員意見書が「不適法却下すべき」とする場合(43条1項2号)
- ・諮問が不要な例外③:審査庁が主任大臣等一定の行政庁で審査請求に理由がないと認める場合(43条1項3号・4号)
- ・行政不服審査会の答申は審査庁を法的に拘束しない(参考意見にとどまる)
- ・行政不服審査会:総務省に設置される第三者機関・委員は国会の同意を得て任命
- ・過去問:「審理員は行政不服審査会等に諮問しなければならない」は誤り(×→審査庁が諮問)
裁決の種類(却下・棄却・認容)
簡単にいうと
簡単にいうと、裁決には「却下・棄却・認容」の3種類があります。却下は形式的な要件チェックで弾かれるもの、棄却は中身を審査した上で理由なしとされるもの、認容は審査請求人の勝ちです。裁決書(書面)でしか行えないという形式的要件も重要です。
審査庁が行政不服審査会等から答申を受けたときは、遅滞なく裁決を行います(44条)。裁決は行政不服審査法上の最終的な判断であり、必ず裁決書(書面)によって行われなければならず、口頭で裁決を行うことはできません(50条)。
裁決の種類は大きく3つに分かれます。
①却下(45条1項)は、要件審理(形式面のチェック)において審査請求が不適法と判断された場合に行われます。例えば、審査請求期間を経過していた場合、審査請求の資格がない者が申し立てた場合などが該当します。却下の場合は本案(実質的な内容)の審理に入らず、入口で弾かれます。
②棄却(45条2項)は、本案審理(請求内容のチェック)において審査請求に理由がないと判断された場合に行われます。つまり、形式的要件は満たしているが、実質的に処分が適法・正当であると認められた場合です。棄却裁決は審査請求人の負けを意味します。
③認容(46条1項)は、本案審理において審査請求に理由があると判断された場合に行われます。処分が違法または不当であると認められた場合に出される裁決で、審査請求人の勝ちを意味します。認容裁決が出された場合、原則として処分が取り消される(または変更される)ことになります。
裁決書の記載事項(50条)として、裁決書には①主文、②事案の概要、③審理関係人の主張の要旨、④理由を記載しなければなりません。裁決書に記名押印した後、審査請求人等に裁決書の謄本を送達します(51条1項)。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが処分を知ってから3か月を経過した後に審査請求した場合、審査請求期間を徒過しているとして「却下裁決」が出ます。一方、期間内に審査請求したBさんに対して「この処分は適法・正当だ」と判断された場合は「棄却裁決」、「この処分は違法・不当だ」と判断された場合は「認容裁決」が出ます。
重要メモ
- ・「却下=形式的不適法・棄却=実質的理由なし・認容=実質的理由あり」裁決は必ず書面(裁決書)(45〜50条)
- ・裁決の3種類:却下(45条1項)・棄却(45条2項)・認容(46条1項)
- ・却下:形式的要件(適法性)を欠く場合(要件審理段階)→本案審理に入らない
- ・棄却:形式的要件は満たすが実質的に理由がない場合(本案審理)→審査請求人の負け
- ・認容:実質的に理由がある場合(本案審理)→処分が取消等・審査請求人の勝ち
- ・裁決は必ず裁決書(書面)による・口頭による裁決は不可(50条)
- ・裁決書の記載事項:主文・事案の概要・審理関係人の主張の要旨・理由(50条)
- ・審査庁は答申を受けたら遅滞なく裁決しなければならない(44条)
- ・裁決書に記名押印後、審査請求人等に裁決書の謄本を送達する(51条1項)
事情裁決
第45条簡単にいうと
簡単にいうと、「違法・不当だが公益のために取り消せない」という特殊な棄却裁決が事情裁決です。行政事件訴訟法の事情判決と「違法のみ vs 違法・不当両方」という点で異なり、試験頻出の比較論点です。
事情裁決(45条3項)は、審査請求に係る処分が違法または不当であるにもかかわらず、これを取り消しまたは撤廃することにより公の利益に著しい障害を生じる場合に出される特殊な棄却裁決です。
事情裁決の要件(45条3項前段)は、①審査請求に係る処分が違法または不当であること(取消事由の存在)、②処分を取り消し・撤廃することにより公の利益に著しい障害を生じること、③審査請求人の受ける損害の程度・賠償・防止の程度・方法、その他一切の事情を考慮した上で、④処分を取り消し・撤廃することが公共の福祉に適合しないと審査庁が認めること、の4要件です。これら要件を満たすとき、審査庁は裁決で当該審査請求を棄却することができます。
事情裁決の主文での宣言義務(45条3項後段)として、事情裁決をする場合には、審査庁は、裁決の主文で、当該処分が違法または不当であることを宣言しなければなりません。この宣言は、審査請求人が国家賠償請求等を行う際の根拠となります。
行政事件訴訟法の事情判決との違いとして、行政事件訴訟法の事情判決は処分が違法である場合にのみ適用されますが、行政不服審査法の事情裁決は処分が違法または不当である場合に適用されます(行政不服審査法の方が広い)。この違いは試験頻出です[12-15-5改]。
具体例
例を挙げましょう。ダムの建設許可処分が違法であるとして審査請求がなされた場合、既にダムの建設工事が大幅に進行し、ダムを解体することでかえって周辺都市への水供給ができなくなるなど公益上の重大な問題が生じる場合があります。このような場合、審査庁はダムの建設許可処分を「違法または不当」と宣言しつつも、審査請求を棄却する事情裁決を下すことができます。Aさんはこの宣言を根拠に国家賠償請求をすることができます。
重要メモ
- ・「事情裁決は違法・不当どちらにも適用(事情判決は違法のみ)・主文で違法/不当の宣言が必要」(45条3項)
- ・事情裁決(45条3項):処分が違法または不当でも公益上取り消せない場合に行う特殊な棄却裁決
- ・事情裁決の要件:①処分が違法・不当②取消しにより公の利益に著しい障害を生じること③一切の事情考慮④取消しが公共の福祉に適合しないこと
- ・事情裁決の主文:当該処分が違法または不当であることを必ず宣言しなければならない(45条3項後段)
- ・事情裁決 vs 事情判決:事情裁決は違法・不当両方に適用、事情判決(行訴法31条)は違法のみ[12-15-5改]
- ・主文での宣言は審査請求人が国家賠償請求を行う際の根拠となる
- ・事情裁決は「公益上の必要性」と「審査請求人の不利益」のバランスで判断される
変更裁決
第47条簡単にいうと
簡単にいうと、「処分の内容を別の内容に変える」のが変更裁決です。審査庁が処分庁または上級行政庁の場合のみ可能で、しかも審査請求人に不利な変更はできません。
変更裁決(47条)は、審査庁が認容裁決を行う際に、処分を取り消すだけでなく、処分を別の内容に変更する裁決です。変更裁決ができるのは次の場合に限られます。①審査庁が処分庁自身である場合、②審査庁が処分庁の上級行政庁である場合。審査庁が処分庁でも上級行政庁でもない場合(第三者機関が審査庁の場合等)は、変更裁決をすることができません(47条但書)。
変更裁決の制限(48条)として、変更裁決においては、審査請求人に不利益となる変更をすることはできません(不利益変更の禁止)。例えば「6か月の営業停止処分→3か月に短縮」という変更はできますが、「3か月の営業停止処分→6か月に延長」という審査請求人に不利な変更はできません。また、申請を拒否する処分(例:営業許可の拒否)を認容した場合に、その申請の一部しか許可しないとする変更裁決(一部変更による不利益)もできません。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが6か月の営業停止処分を受けて審査請求をした場合、審査庁が処分庁の上級行政庁であれば「3か月に短縮する」という変更裁決が可能です。しかし「9か月に延長する」という審査請求人に不利な変更は禁止されています。
重要メモ
- ・「変更裁決は処分庁本体または上級行政庁が審査庁の場合のみ可・審査請求人に不利益な変更は禁止」(47条・48条)
- ・変更裁決:審査庁が①処分庁自身または②処分庁の上級行政庁の場合のみ可能(47条)
- ・変更裁決ができない場合:審査庁が処分庁でも上級行政庁でもない場合(第三者機関等)(47条但書)
- ・不利益変更の禁止(48条):変更裁決で審査請求人に不利益な変更は不可
- ・例:6か月の営業停止→3か月短縮は可、3か月→6か月延長は不可(48条)
- ・申請拒否処分の認容時に一部のみ許可する変更裁決も不利益変更として禁止
義務付け裁決
第46条簡単にいうと
簡単にいうと、申請拒否処分が取り消されても、それだけでは許可は出ません。そこで審査庁が処分庁に「許可処分をしなさい」と命じる義務付け裁決が登場します。記述式問題でも問われる最重要論点です。
義務付け裁決(46条2項)は、申請に対する拒否処分や却下処分の認容裁決において、単に処分を取り消すだけでなく、さらに申請に対して一定の処分をするよう義務付ける裁決です。
義務付け裁決が必要な理由を具体的に説明します。例えば、営業許可申請の拒否処分に対して審査請求がなされ、認容裁決が出された場合、拒否処分は取り消されることになります。しかしそれだけでは許可処分は自動的には出されません。認容裁決で拒否処分が取り消されても、処分庁が再び拒否処分を出してしまうと、申請者はいつまでも営業を開始できません。そこで、認容裁決と同時に「許可処分をすべき」旨を義務付けるのが義務付け裁決です(46条2項)。
義務付け裁決の要件(46条2項)として、法令に基づく申請を却下または棄却する処分の全部または一部を取り消す場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときに、当該各号に定める措置を取ります。①処分庁の上級行政庁である審査庁:当該処分庁に対し、当該申請に対する処分をすべき旨を命ずること。②処分庁である審査庁:当該処分をすること。
義務付け裁決の条文(46条2項の構造):「法令に基づく申請を却下し、又は棄却する処分の全部又は一部を取り消す場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置を講ずる。一 処分庁の上級行政庁である審査庁:当該処分庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。二 処分庁である審査庁:当該処分をすること。」これは記述式問題でも問われる重要条文です。
具体例
例を挙げましょう。Aさんがラーメン店の営業許可を申請したところ、保健所長(処分庁)に拒否処分を受けました。Aさんが都道府県知事(処分庁の上級行政庁・審査庁)に審査請求をしたところ、審査庁が「この拒否処分には理由がない」と認容裁決を出した場合、審査庁は同時に保健所長(処分庁)に対して「Aさんの申請に対して営業許可処分をすべき旨を命ずる」義務付け裁決を行います(46条2項1号)。これによりAさんは確実に営業許可を受けることができます。
重要メモ
- ・「申請拒否処分の認容裁決+義務付け裁決をセットで行う・審査庁が上級行政庁か処分庁かで措置の内容が異なる」(46条2項)
- ・義務付け裁決(46条2項):申請拒否・却下処分の取消と同時に一定の処分をすべき旨を義務付ける
- ・審査庁が処分庁の上級行政庁→「処分庁に対し処分をすべき旨を命ずる」措置(46条2項1号)
- ・審査庁が処分庁自身→「当該処分をすること」(46条2項2号)
- ・義務付け裁決が必要な理由:認容裁決で拒否処分が取り消されても許可処分は自動的に出ないため
- ・義務付け裁決の要件:「一定の処分をすべきものと認めるとき」(常に義務付け裁決が出るわけではない)
- ・過去問:審査庁は処分庁に対して当該申請処分をすべき旨を命ずる措置をとる(○)[16-14-5]
- ・義務付け裁決は記述式試験でも出題される最重要論点
裁決の効力(形成力・拘束力)
第52条簡単にいうと
簡単にいうと、裁決には「形成力(遡及的に処分をなかったことにする)」と「拘束力(処分庁・関係行政庁を縛る)」という2つの特別な効力があります。拘束力の「同一事情では再び拒否できない」という内容と、裁決が効力を生じる時期(謄本送達時)を確実に押さえましょう。
裁決は行政行為の一つであるため、公定力や不可変更性が認められますが、さらに行政不服審査法が定める特別の効力として形成力と拘束力という2つが認められます(52条)。
形成力(52条1項)について、認容裁決によって処分が取り消されると、その処分の効力が直ちに・遡及的に(はじめから)なかったことになります。つまり、処分時点に遡って法的効果が消滅します(遡及効)。例えば、「6か月の営業停止処分」が認容裁決で取り消された場合、その処分は最初からなかったことになるため、営業停止期間中の損害についても法的に保護されることになります。形成力は認容裁決が出た場合に直ちに生じ、別途手続を要しません。
拘束力(52条2項)について、認容裁決(または事情裁決)は、処分庁および関係行政庁を拘束します。具体的には、①取消裁決があった場合、処分庁は裁決の趣旨に従って、改めて申請に対する処分を行う義務があります(52条2項)。②拘束力の限界(不可反復効)として、処分が取り消された場合、処分庁はまったく同じ事情や理由で再び拒否処分をすることはできません。ただし、事情や理由が異なれば、再び拒否処分をすることができます(拘束力の限界の限界)。拘束力は棄却裁決(理由なしの場合)には生じず、認容裁決・事情裁決に生じます。
裁決の効力発生時期(51条1項・2項)として、裁決は、審査請求人に裁決書の謄本が送達されたときに効力を生じます(51条1項)。
公定力・不可変更性として、裁決自体も行政行為であるため公定力があり、正式な取消手続によらなければ効力を否定できません。また、裁決が確定した後は、審査庁自身もその内容を変更することができません(不可変更性)。
具体例
例を挙げましょう。運輸支局長がAさんに対して「6か月の営業停止処分」を行い、Aさんが審査請求をして認容裁決が出た場合、この処分はさかのぼって最初からなかったことになります(形成力)。さらに、運輸支局長は同じ「無許可営業」という理由では再び営業停止処分を出すことができません(拘束力)。ただし、その後Aさんが別の違反(例えば「安全基準違反」)を犯せば、それを理由に処分を出すことは可能です。
重要メモ
- ・「形成力=遡及的消滅・拘束力=処分庁・関係行政庁を拘束(同一理由での再拒否不可)・棄却裁決には拘束力なし」(52条)
- ・形成力(52条1項):認容裁決により処分効力が遡及的に消滅(はじめからなかったことになる)
- ・拘束力(52条2項):認容裁決・事情裁決が処分庁・関係行政庁を拘束する
- ・拘束力の限界(不可反復効):同一事情・同一理由での再度の拒否処分は不可
- ・拘束力の限界の限界:事情・理由が異なれば再び処分可能
- ・裁決の効力発生時期:裁決書の謄本が審査請求人に送達されたとき(51条1項)
- ・拘束力は棄却裁決には生じない(認容裁決・事情裁決に生じる)
- ・裁決の不可変更性:確定後は審査庁も内容を変更できない(行政行為一般の効力)
- ・行政事件訴訟法の取消判決の拘束力(33条)と対比して覚えること
執行不停止の原則と執行停止の種類
第25条簡単にいうと
簡単にいうと、審査請求をしても処分の効力は自動では止まりません(執行不停止の原則)。これでは不都合な場合があるため「執行停止」を申し立てる制度があります。執行停止の4種類と、審査庁の種類による違いを整理しておきましょう。
執行不停止の原則(25条1項)として、審査請求は、処分の効力・処分の執行・手続の続行を妨げません。つまり、審査請求をしても処分の効力は自動的には停止しません。例えば、営業許可の取消処分を受けた者が審査請求をしたとしても、認容裁決によって取り消されるまでは営業をすることはできません。
執行停止制度(25条)は、このような不都合を解消するため、審査請求の審理中に処分の効力を停止するよう申し立てることができる制度です。
執行停止の種類(25条)として、以下の4つがあります。①処分の効力の停止(例:営業停止処分の効力を止め→営業可能な状態にする)。②処分の執行の停止(処分の実際の執行を止める)。③手続の続行の停止(処分に続く手続の進行を止める)。④その他の措置(例:営業許可の取消処分を営業停止処分に変える等)。
審査庁の種類による違い(25条2項・3項)として、執行停止のルールは審査庁が誰かによって変わります。①審査庁が上級行政庁または処分庁の場合:職権による執行停止ができ、「その他の措置」をとることも可能。また、処分庁への意見聴取義務はありません。②審査庁がそれ以外の行政庁(第三者機関等)の場合:職権による執行停止のみ可能、「その他の措置」は不可。さらに、処分庁への意見聴取義務があります(処分庁に意見を聴かなければならない)。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが保健所長から「飲食店の営業許可取消処分」を受け、審査請求を申し立てた場合を考えます。認容裁決が出るまでは処分の効力が続くため、Aさんは営業できません。そこでAさんは都道府県知事(審査庁・上級行政庁)に対して執行停止を申し立てます。
重要メモ
- ・「審査請求しても処分は自動停止しない(25条1項)・停止できる範囲は審査庁の地位によって異なる」(25条)
- ・執行不停止の原則:審査請求しても処分効力・執行・手続は自動停止しない(25条1項)
- ・執行停止の種類4つ:①処分の効力停止②処分の執行停止③手続続行停止④その他の措置(25条)
- ・上級行政庁・処分庁の審査庁:職権執行停止可・「その他の措置」可・処分庁への意見聴取義務なし(25条2項)
- ・それ以外の審査庁:職権執行停止のみ可・「その他の措置」不可・処分庁への意見聴取義務あり(25条3項)[06-15-5]
- ・内閣総理大臣の異議(27条):執行停止申立てがあった場合に異議可・異議があれば審査庁は執行停止不可
- ・行政事件訴訟法との違い:行政不服審査法には必要的執行停止の規定あり(行訴法にはない)
必要的執行停止と執行停止の取消し
第25条簡単にいうと
簡単にいうと、「重大な損害を避けるために緊急の必要がある」と認めるときは審査庁は必ず執行停止しなければなりません(必要的執行停止)。ただし本案に理由がないとみえる場合は例外です。執行停止後の取消しルールもセットで覚えましょう。
必要的執行停止(25条4項)として、一定の状況下において執行停止の申立てがなされた場合、審査庁は必ず執行停止しなければなりません。具体的には、処分の効力・執行・手続の続行により重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は職権または申立てにより、執行停止をしなければなりません(原則)。ただし例外として、本案について理由がないとみえるとき(明らかに審査請求に理由がないとき)は、必要的執行停止の義務は生じません(25条4項但書)[06-15-2]。
過去問ポイントとして、審査庁が上級行政庁である場合、審査請求人の申立てによることなく職権で執行停止をすることが許されます(25条2項)。一方、上級行政庁でない審査庁が職権で執行停止をすることは認められません[06-15-5]。
執行停止の取消し(26条)として、執行停止をした後に、執行停止が公の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかになったとき、またはその他事情が変更したときは、審査庁はその執行停止を取り消すことができます。
行政事件訴訟法の執行停止との比較として、行政事件訴訟法では「重大な損害を生ずるおそれ」がある場合に執行停止ができます(行政事件訴訟法25条)。行政不服審査法の執行停止は「重大な損害を避けるために緊急の必要」という要件で、用語が若干異なります。
具体例
例を挙げましょう。Aさんが営業許可取消処分を受けて審査請求を申し立てた場合、重大な損害を避けるために緊急の必要があると認められれば、審査庁は執行停止をしなければなりません(必要的執行停止)。これにより営業停止が一時解除され、Aさんは審理中も営業を続けることができます。ただし、明らかに審査請求に理由がない場合は執行停止の義務は生じません。
重要メモ
- ・「重大な損害回避に緊急の必要がある場合は必ず執行停止(25条4項)・ただし本案に理由がないとみえるときは例外」
- ・必要的執行停止(25条4項):重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき→審査庁は必ず執行停止
- ・必要的執行停止の例外:本案について理由がないとみえるときは義務なし(25条4項但書)[06-15-2]
- ・任意的執行停止(25条2項):審査庁が必要と認めるときに職権で行える(義務ではない)
- ・執行停止の取消し(26条):公の福祉に重大な影響が明らかになった場合等に審査庁が職権で取消し可
- ・行政事件訴訟法の執行停止との比較:行訴法は「重大な損害を生ずるおそれ」、行政不服審査法は「重大な損害を避けるために緊急の必要」
- ・執行停止取消しは行政不服審査法では職権で可・行政事件訴訟法では申立てで行う(逆の構造)
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期限
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公用制限
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