第6節 適用除外
第2章 行政手続法
行政手続法は、行政の透明性・公正性を確保するため、申請や不利益処分などの手続を定めた法律です。しかし、すべての行政活動にこの法律が適用されるわけではありません。この節では、行政手続法が適用されない場面(適用除外)について学び、どのような場合に手続保障が不要とされるのか、その理由と範囲を理解します。
適用除外の意義
簡単にいうと
行政手続法は全ての行政活動に適用されるわけではなく、「ここには適用しない」という例外が多数あります。国会・裁判所関係や地方公共団体の条例に基づく行為などが除外されています。
行政手続法は様々な適用除外を定めています(3条・4条)。適用除外は大きく、①処分・行政指導についての適用除外(3条1項各号)、②地方公共団体における適用除外(3条3項)、③行政機関相互間の処分についての適用除外(4条)に分類されます。適用除外があっても、別途個別法の手続規定が適用される場合があります。
具体例
国会の議決による処分や裁判所の判決は行政手続法の適用外です。また、地方公共団体が独自の条例に基づいて行う行政指導には行政手続法の行政指導の規定が適用されません。これらは性質上、行政手続法になじまないからです。
重要メモ
- ・「行政手続法の適用除外は3条・4条に列挙されており、性質上なじまない処分や個別法で手続が定められているものが対象」
- ・行政手続法は処分・行政指導・届出・命令等制定手続の一般法として広く適用される(原則)
- ・3条1項:特定の処分・行政指導について第2章(申請処分)・第3章(不利益処分)・第4章(行政指導)・第5章(届出)の適用が除外される(全16号)
- ・3条3項:地方公共団体の機関がする処分・行政指導・届出について、条例・規則を根拠とする場合は適用除外
- ・4条:行政機関相互間の処分(国・自治体間の許認可等)に関する特別な適用除外
- ・適用除外の趣旨は主に3つ:①当該行政作用の性質上行政手続法の一般的手続になじまない、②特別法(個別法)に手続が定められている、③行政とはいえない機関によるもの
- ・適用除外があっても、別途個別法の手続規定が適用される場合があることに注意(例:国家公務員法上の意見陳述手続)
処分・行政指導の適用除外①(1〜5号:国会・裁判所・刑事等)
簡単にいうと
1〜5号の適用除外は、本来の行政権限の行使ではない国会・裁判所関係や、刑事事件関係の処分です。これらには行政手続法の手続はなじみません。
行政手続法3条1項は処分・行政指導について多くの適用除外を定めています。1〜5号の主なものとして、①国会(両院または一院)または議会の議決によってされる処分(1号)、②裁判所・裁判官の裁判により、または裁判の執行としてされる処分(2号)、③国会の両院・一院・議会の議決を経て、またはこれらの承認・同意を経るべきものとされている処分(3号)、④検査院会議で決すべきものとされている処分・行政指導(4号)、⑤刑事事件に関する法律に基づき検察官・検察事務官・司法警察職員がする処分・行政指導(5号)があります。
具体例
衆議院の同意を要する国家公務員の罷免処分(3号関係)や、検察官が刑事訴訟法に基づいて行う処分(5号)には行政手続法は適用されません。議会民主主義・司法制度の観点から別のルールが適用されます。
重要メモ
- ・「国会・議会(1号)・裁判所(2号)は行政機関でないため除外、国会の承認を要する処分(3号)・検査院会議(4号)・刑事事件に係る検察官等の処分(5号)も除外」(3条1項1〜5号)
- ・1号:国会の両議院・各議院・地方議会の議決・決定によってされる処分——国会・議会は行政機関でないため
- ・2号:裁判所・裁判官の裁判により、または裁判の執行としてされる処分——司法機関であるため適用外
- ・3号:国会の両院・一院・議会の議決を経て、またはこれらの承認・同意を経るべきものとされている処分——国会が関与するものは行政手続法になじまない
- ・4号:会計検査院の検査官会議で決すべきものとされている処分・行政指導——独立した憲法機関であるため
- ・5号:刑事事件に関する法律に基づき検察官・検察事務官または司法警察職員がする処分・行政指導——刑事訴訟法等の手続が適用される
- ・過去問頻出:「裁判所が行う処分には行政手続法は適用されない」(○)——2号による除外
処分・行政指導の適用除外②(6〜10号:税務・教育・外国人等)
簡単にいうと
6〜10号は、外国人入管、税務の犯則調査、学校教育、矯正施設内の処分など、特別の専門的ルールが適用される領域への適用除外です。
3条1項6〜10号の適用除外として、⑥国税・地方税の犯則事件に関する法律に基づき行われる処分・行政指導(6号)、⑦学校・訓練施設での学生・生徒・訓練生に対してされる処分・行政指導(7号)、⑧刑務所・少年院等での収容目的達成のためにされる処分・行政指導(8号)、⑨公務員の職務または身分に関してされる処分・行政指導(9号)、⑩外国人の出入国・難民認定・補完的保護対象者の認定等(10号)があります。
具体例
国税局の犯則調査(6号)、大学の学生に対する停学処分(7号)、刑務所内での懲罰処分(8号)には行政手続法が適用されません。これらにはそれぞれ固有の法律による手続が適用されます。
重要メモ
- ・「国税・地方税の犯則調査(6号)・学校教育(7号)・施設収容目的(8号)・公務員の身分(9号)・外国人出入国(10号)が適用除外」(3条1項6〜10号)
- ・6号:国税通則法や地方税法の犯則事件に関する法律に基づき行われる処分・行政指導——税務調査には国税通則法等の特別手続が適用
- ・7号:学校・専修学校・各種学校・職業能力開発施設等において、その教育の目的を達成するために学生・生徒・訓練生にされる処分・行政指導——教育機関内の指導活動は行政手続法になじまない
- ・8号:刑事施設・留置施設・少年院・少年鑑別所等での収容目的達成のためにされる処分・行政指導——施設内規律・秩序の維持の観点
- ・9号:公務員(国家公務員・地方公務員・自衛官等)の職務または身分に関してされる処分・行政指導——国家公務員法・地方公務員法等の特別法が適用
- ・10号:外国人の出入国・難民認定・補完的保護対象者の認定・帰化に関する処分・行政指導——出入国管理及び難民認定法が特別法として適用
- ・公務員の懲戒処分・免職処分(9号)には行政手続法の聴聞・弁明の機会の付与の規定は適用されない——頻出重要
- ・過去問:「国家公務員に対する懲戒処分には行政手続法の不利益処分の手続は適用されない」(○)——9号による除外
行政手続法になじまない手続の適用除外(11〜16号)
簡単にいうと
11〜16号は、行政手続法の仕組みになじまない手続の適用除外です。試験・検定の結果、裁定的処分、緊急措置、審査請求への裁決などが該当します。
3条1項11〜16号の適用除外として、⑪専ら人の学識技能に関する試験・検定の結果についてされる処分(11号)、⑫相反する利益を有する者の間の裁定として法律上の根拠に基づいてされる処分(12号)、⑬公衆の安全・環境保全・海上保安等に関する事件等で緊急を要する場合に行われる処分等(13号)、⑭報告・物件提出を命ずる処分等(14号)、⑮審査請求・再調査の請求等に対する処分(15号)、⑯前置手続(法律に基づき事前に第三者に弁明や聴聞の手続が規定されている場合)(16号)があります。
具体例
司法書士試験の合格・不合格の通知(11号)や、行政不服申立ての裁決(15号)には行政手続法の申請に対する処分の規定は適用されません。
重要メモ
- ・「試験・検定の結果(11号)・裁定的処分(12号)・緊急措置(13号)・報告命令(14号)・審査請求への裁決(15号)・前置手続がある場合(16号)が適用除外」(3条1項11〜16号)
- ・11号:専ら人の学識技能に関する試験・検定の結果についてされる処分——合否判定の性質上、審査基準の設定・理由提示等になじまない
- ・12号:相反する利益を有する者の間の裁定として、法律上の根拠に基づいてされる処分——対立当事者双方に対して手続保障がなされているため
- ・13号:公衆衛生・安全・環境の保全・交通の安全・海上の安全・緊急措置等で緊急を要する場合にされる処分——緊急性ゆえ手続を経る時間的余裕がない
- ・14号:審査請求その他の不服申立ての結果としてされる処分——14号は本来「報告や物件提出命令等」であり、不服申立てに対する処分は15号
- ・15号:審査請求・再調査の請求等の不服申立てに対する裁決・決定——不服申立て手続自体が行政手続法よりも上位の手続として聴聞等を保障
- ・16号:事前に法律に基づき聴聞等が別途行われる場合(前置手続がある場合)——二重の手続を避けるため
- ・過去問:「審査請求に対する裁決には行政手続法の不利益処分の規定は適用されない」(○)——15号による除外
- ・11号(試験・検定)の例:司法試験・国家資格試験の合否通知——行政手続法の理由提示義務なし
地方公共団体における適用除外
簡単にいうと
地方公共団体が条例・規則に基づいて行う処分・行政指導・届出には、行政手続法の多くの規定が適用されません。ただし法律・政令に基づく処分には適用されます。この根拠法令による違いが試験のポイントです。
地方公共団体の機関がする処分・行政指導・届出については、根拠法令が何かによって適用関係が異なります(3条3項)。法律・政令に基づく処分・行政指導・届出には行政手続法が適用されますが、条例・規則を根拠とする処分・行政指導・届出には行政手続法は適用されません。命令等(条例・規則を含む)を定める手続についても行政手続法は適用されません(地方公共団体は行政手続条例等で別途対応)。
具体例
A市が建築基準法(法律)に基づいて行う建築確認処分には行政手続法が適用されます。しかし、A市が独自の条例に基づいて行う開発許可処分には行政手続法は適用されません。A市が独自の行政手続条例を持っている場合はそちらが適用されます。
重要メモ
- ・「地方公共団体では『法律に基づく処分・届出』のみ行政手続法が適用され、行政指導は法律根拠でも適用なし、条例・規則根拠はすべて適用なし」(3条3項)
- ・地方公共団体の機関がする処分・行政指導・届出の適用関係(3条3項):根拠が「法律または法律に基づく命令(政令・省令)」→処分・届出には適用あり、行政指導には適用なし
- ・条例・規則を根拠とする処分・行政指導・届出——行政手続法の適用なし(すべて除外)
- ・地方公共団体の行政指導——根拠が法律であっても条例であっても行政手続法の行政指導規定(第4章)は適用されない(3条3項)——最頻出
- ・命令等(条例・規則を含む)を定める手続についても行政手続法の意見公募手続(第6章)は適用されない——地方公共団体は行政手続条例等で別途対応
- ・地方公共団体は行政手続条例を制定することが期待されている(46条)——条例で行政手続法に準じた手続を定めることが趣旨
- ・整理表:法律根拠→処分○届出○行政指導×、条例根拠→処分×届出×行政指導×、命令等制定→常に×
- ・過去問:「地方公共団体の機関が法律に基づいて行う行政指導には行政手続法の行政指導の規定は適用されない」(○)——3条3項により法律根拠でも行政指導は除外
- ・過去問:「都道府県が条例に基づいて行う処分には行政手続法の申請に対する処分の規定は適用されない」(○)——条例根拠は処分も除外
まとめ
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
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