第6節 適用除外
第2章 行政手続法
行政手続法の対象にならない場面を扱う節です。除外規定は、処分・行政指導についての3条1項各号(全16号)、地方公共団体についての3条3項、国の機関等についての4条の3か所に置かれています。一見すると覚えることが多く見えますが、試験で問われる論点は限られています。特に地方公共団体の適用除外は出題が多く、何を根拠に行うかで処分と届出は分かれる一方、行政指導と命令等は根拠を問わず一律に適用がない、という整理が要点になります。
適用除外の意義
簡単にいうと
行政手続法にも適用されない場面があります。まずどこに除外規定が置かれているかを押さえます。
これまで処分や行政指導に関する基本ルールを学習してきましたが、すべての処分や行政指導にこの基本ルールが適用されるわけではありません。
除外規定の置き場所
3条1項の考え方
1〜16号は、性質の違いで3つのグループに分かれます。
- ・1〜5号:本来の行政権の行使とはやや異質な手続(国会・裁判所・検査官会議・刑事事件)
- ・6〜10号:特別の規律で律せられるべき手続(犯則事件・教育・収容・公務員・外国人)
- ・11〜16号:処分の性質上、行政手続法の適用になじまない手続
3条3項の考え方
地方公共団体については、何を根拠に行うかで適用の有無が決まります。ただし行政指導と命令等は、法律に根拠があっても一律に適用されません。条例に基づく場合だけが除外されるわけではない点に注意します。
覚え方
適用除外は一見すると覚えることが多く見えますが、試験で問われる論点は限られています。ほかの論点の学習が落ち着いてから確認すれば十分です。いきなり16号すべてを覚えようとする必要はありません。
具体例
A県議会の議決による処分には行政手続法が適用されず、A県知事が建築基準法に基づいてする行政指導にも適用されません。
重要メモ
- ・適用除外は3条1項各号(処分・行政指導)、3条3項(地方公共団体)、4条(国の機関等)の3か所に置かれている
- ・3条1項は、1〜5号が異質な手続、6〜10号が特別の規律による手続、11〜16号がなじまない手続という3グループ
- ・地方公共団体の行政指導と命令等は、法律に根拠があっても一律に行政手続法の適用がない
- ・条例に基づく場合だけが適用除外になるわけではない
- ・出題される論点は限られているため、ほかの論点の学習後に確認すれば足りる
処分・行政指導の適用除外①(1〜5号:国会・裁判所・刑事等)
簡単にいうと
国会や裁判所は「行政」ではないので、そもそも行政手続法が及びません。
行政手続法3条1項は、処分・行政指導について適用除外を定めています。1号から5号までは本来の行政権の行使とはやや異質な手続が並びます。
1号〜5号
除外される理由
国会や裁判所などは、そもそも「行政」ではありません。行政手続法は行政運営における公正の確保と透明性の向上を図る法律なので、行政以外の機関の活動には及びません。
3号は、行政機関が行う処分ではあるものの、国会の議決や同意という民主的なチェックをすでに経ているため、重ねて行政手続法の手続を課す必要がないという趣旨です。
4号の検査官会議は会計検査院の意思決定機関です。「検査院会議」ではありません。処分だけでなく、会計検査の際にされる行政指導も除外される点に注意します。
5号は刑事手続に関するもので、刑事訴訟法という別の手厚い手続法が用意されているため除外されています。
学習の順序
適用除外は一見すると覚えることが多く見えますが、試験で問われる論点は限られています。ほかの論点の学習が落ち着いてから本節を意識すれば十分です。いきなり16号すべてを覚えようとする必要はありません。
具体例
A県議会の議決によってされる処分には行政手続法が適用されず、処分基準の設定や理由の提示といったルールは及びません。
重要メモ
- ・1号から5号は、本来の行政権の行使とはやや異質な手続がまとめられている
- ・国会や裁判所は「行政」ではないため、そもそも行政手続法が適用されない
- ・4号は検査官会議。「検査院会議」ではなく、会計検査の際にされる行政指導も除外される
- ・3号は国会の議決や同意という民主的チェックをすでに経ているため除外される
- ・5号は刑事訴訟法という別の手続法があるため除外される
処分・行政指導の適用除外②(6〜10号:税務・教育・外国人等)
簡単にいうと
別の法律に詳しいルールが用意されている分野です。行政手続法が重ねて出る必要がありません。
3条1項6号から10号までは、特別の規律で律せられるべき手続が並びます。
6号〜10号
よく問われるのは9号
公務員の懲戒処分に行政手続法の不利益処分の規定が適用されるか、という形で出題されます。
過去問では「公務員の懲戒処分には、行政手続法の定める不利益処分の規定が適用されるので、これを行うに当たっては、行政手続法の定める聴聞を行わなければならない」という記述が出題され、誤りとされました。公務員に対してその職務または身分に関してされる処分には、行政手続法の処分に関する規定は適用されません(9号)。
7号は保護者も含む
7号の対象は学生・生徒・児童・幼児だけではありません。これらの保護者も含まれます。範囲を狭く覚えていると誤ります。
10号は入管法などがある
外国人に関する処分については、入管法(出入国管理及び難民認定法)などに詳しいルールが設けられているため、行政手続法は適用されません。
具体例
A市が職員Bを懲戒処分する場合、これは公務員の身分に関する処分なので、行政手続法の聴聞や弁明の機会の付与の規定は適用されません。
重要メモ
- ・6号から10号は、別の法律に特別の規律が用意されている分野がまとめられている
- ・公務員に対してその職務または身分に関してされる処分には、処分に関する規定が適用されない(9号、13-26-5 ×)
- ・7号の対象には学生・生徒・児童・幼児のほか、これらの保護者も含まれる
- ・6号は犯則事件に関するもので、金融商品取引の犯則事件も含まれる
- ・10号は入管法などに詳しいルールがあるため除外される
行政手続法になじまない手続の適用除外(11〜16号)
簡単にいうと
処分の性質そのものが、行政手続法の想定する手続になじまないものです。
3条1項11号から16号までは、処分の性質上、行政手続法の適用になじまない手続が並びます。
11号〜16号
11号の理由
試験や検定の結果は、採点者の学識に基づく判断です。理由を提示させたり意見を述べる機会を与えたりするのになじみません。
15号は行政不服審査法がある
審査請求に関する裁決(処分)については行政不服審査法に詳しいルールが設けられているため、行政手続法は適用されません。行政不服審査法のほうで審理員や行政不服審査会といった手厚い仕組みが用意されていたことを思い出せば納得しやすいところです。
16号は手続のなかの処分
16号は、聴聞や弁明の機会の付与という手続の内部でされる処分や行政指導を除外するものです。聴聞のなかでさらに聴聞を行うことになってしまうため除外されています。
「法律に基づき事前に第三者に弁明や聴聞の手続が規定されている場合」というような読み方をすると誤ります。
12号は双方が名宛人の場合に限る
12号は「その双方を名宛人とするものに限る」という限定が付いています。利害が対立する双方を名宛人とする裁定でなければ除外されません。この限定を落として覚えないようにします。
具体例
Aの審査請求に対してA県知事がした裁決は、行政不服審査法に手続が定められているため、行政手続法の処分に関する規定は適用されません。
重要メモ
- ・11号から16号は、処分の性質上、行政手続法の適用になじまない手続がまとめられている
- ・審査請求などの不服申立てに対する裁決・決定は、行政不服審査法があるため除外される(15号)
- ・12号には「その双方を名宛人とするものに限る」という限定が付いている
- ・13号は現場においてされる処分・行政指導。「緊急を要する場合」という要件ではない
- ・16号は聴聞や弁明の機会の付与という手続の内部でされる処分・行政指導を除外するもの
地方公共団体における適用除外
簡単にいうと
地方公共団体には行政手続条例があります。だから行政手続法の出番は、法律に基づく処分と届出だけです。
地方公共団体の機関が行う処分や行政指導などについても、行政手続法の適用が除外されるケースがあります(3条3項)。
何を根拠に行うかで決まる
結局のところ、法律・命令に基づく処分と届出だけ、行政手続法の適用があることになります。
行政指導は法律に基づくものでも適用されない
ここが最も間違えやすいところです。地方公共団体の機関がする行政指導は、法律に根拠があっても行政手続法の適用を受けません。
過去問では「地方公共団体の機関として行政指導に携わる者は、法令に根拠を有する処分に関する行政指導の場合と条例に根拠を有する処分に関する行政指導の場合のいずれについても、行政手続法の行政指導に関する規定の適用を受けない」という記述が正しいものとして出題されています。
処分と届出は根拠によって分かれますが、行政指導と命令等は根拠を問わず一律に適用なしです。
なぜ除外されるのか
地方公共団体には、行政手続条例を制定する努力義務が課されています(46条)。現実に各地方公共団体がその実情に即した行政手続条例を定めているため、行政手続法の規定が適用除外されても問題がありません。
条例を根拠に処分をするのであれば、その手続も行政手続法ではなく行政手続条例に従えばよい、ということです。
具体例
A県知事が建築基準法に基づいて処分する場合は、法律に基づく処分なので行政手続法の適用があります。これに対しA県知事が建築基準条例に基づいて処分する場合は、条例に基づく処分なので行政手続法の適用はありません。
具体例
A県知事が建築基準法に基づいてBに処分をする場合は行政手続法が適用されますが、建築基準条例に基づく処分であれば適用されません。

地方公共団体における適用除外
重要メモ
- ・地方公共団体の機関がする行政指導は、法律に根拠があっても行政手続法の適用を受けない(10-13-1 ○)
- ・適用があるのは、法律・命令に基づく処分と届出だけ
- ・処分と届出は根拠により分かれるが、行政指導と命令等は根拠を問わず一律に適用なし
- ・地方公共団体には行政手続条例を制定する努力義務が課されている(46条)
- ・条例に基づく処分の手続は、行政手続法ではなく行政手続条例に従う
まとめ
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
行政上の義務違反に対して制裁として科される罰のこと。刑事罰である行政刑罰と、金銭罰である秩序罰の2種類がある。
法律行為的行政行為
行政庁の意思表示によって法律効果を発生させる行政行為のこと。許可や認可など、意思の内容どおりに効果が生じる点が特徴。
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