第5節 命令等制定手続
第2章 行政手続法
行政機関が法律を具体化するために定める「命令等」のルールについて学びます。国民の権利義務に直接影響する重要な規範であるため、適正な手続が求められます。行政手続法第6章が定める意見公募手続(パブリックコメント)を中心に理解しましょう。
命令等の種類
簡単にいうと
「命令等」とは、法律ではなく行政が定めるルールのことです。政令・省令などの法規命令と、審査基準・処分基準・行政指導指針の4種類が意見公募手続の対象となります。
命令等とは、内閣または行政機関が定める①法律に基づく命令(政令・府省令等の法規命令)、②審査基準、③処分基準、④行政指導指針の4種類をいいます(2条8号)。これらが意見公募手続(パブリックコメント手続)の対象です。通達・訓令などの行政規則は命令等に含まれず、意見公募手続の対象外です。
具体例
国が「食品衛生法施行令」を改正して食品添加物の基準を変更しようとする場合(法規命令)、その改正案を事前に国民に公表し意見を募集しなければなりません。一方、省内の「通達」を改正する場合は意見公募手続は不要です。
重要メモ
- ・「命令等=行政機関が定める法規命令+審査基準・処分基準・行政指導指針の4種類。通達・訓令など行政規則は含まれず、閣議決定も含まれない」(行手法2条8号)
- ・命令等の定義(2条8号):内閣または行政機関が定める①法律に基づく命令・規則(政令・省令・規則等の法規命令)、②審査基準、③処分基準、④行政指導指針——この4種類に限定されている
- ・命令等に含まれるもの:政令・省令・規則・告示(法律に基づくもの)、審査基準・処分基準・行政指導指針
- ・命令等に含まれないもの:閣議決定、通達・訓令(行政内部の行政規則)、個別の処分、特定の者に対する行政指導
- ・意見公募手続(パブリックコメント、39条)の対象は「命令等」——審査基準・処分基準・行政指導指針も対象となる点が重要
- ・比較:申請に対する処分の「審査基準」は命令等に含まれるため、改定する際は意見公募手続が必要となる場合がある
意見公募手続(パブリックコメント)の概要
簡単にいうと
行政がルール(命令等)を作るとき、国民に事前に案を見せて意見を募集する手続が「意見公募手続(パブリックコメント)」です。国民の声をルール作りに反映させる民主主義的な仕組みです。
意見公募手続とは、命令等を定めようとする場合に、命令等の案と関連資料をあらかじめ公示し、広く一般の意見を募集する手続です(39条〜45条)。意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合、その命令等は原則として無効となります。ただし、緊急に命令等を定める必要がある場合など、例外的に省略できる場合があります(40条2項各号)。
具体例
環境省が「廃棄物処理法施行規則の一部改正案」を作成した場合、その案をホームページ等で公表し、30日以上の意見募集期間を設けて国民・事業者から意見を広く募集します。これが意見公募手続です。
ポイント整理
- ・命令等の案および関連資料の公示
- ・意見提出期間は30日以上(原則)
- ・提出意見の十分な考慮(42条)
- ・命令等の公布と同時期に結果を公示(43条)
効果
- ・意見公募手続を実施しないで定めた命令等は原則無効
重要メモ
- ・「命令等を定めようとするとき、案を公示して30日以上意見を募集し、提出意見を十分考慮したうえで結果を公示する」という流れ(38条〜45条)
- ・意見公募手続の根拠:行政手続法38条〜45条(2005年改正で新設、2006年施行)
- ・実施義務の主体:命令等制定機関(内閣または行政機関)——地方公共団体は適用除外だが、各自治体の条例で独自に定める場合がある
- ・意見提出期間:公示日から30日以上確保しなければならない(39条3項)——「30日以上」は頻出数字
- ・やむを得ない理由がある場合:30日を下回る期間も設定可能だが、その理由を公示しなければならない(40条1項)
- ・提出意見の考慮義務:命令等制定機関は提出意見を十分考慮しなければならない(42条)——努力義務ではなく法的義務
- ・意見公募手続を実施しないで定めた命令等は無効となりうる(判例・通説)
意見公募手続の流れ
簡単にいうと
意見公募手続は「公示→意見募集(30日以上)→考慮→命令等制定→結果公示」という流れで進みます。それぞれのステップに法的義務や努力義務が設定されています。
意見公募手続の流れは、①命令等制定機関が意見公募手続の実施を他の機関に関知させる努力義務(41条)、②命令等の案と関連資料の公示・意見募集(39条1項・2項)、③30日以上の意見提出期間(39条3項)、④提出された意見の十分な考慮(42条・法的義務)、⑤命令等の制定、⑥結果の公示(43条・法的義務)という段階を踏みます。
具体例
①省内で意見公募の実施を周知→②改正省令案をホームページで公表し意見募集開始→③30日以上の募集期間→④提出された意見を審査して内容を検討→⑤改正省令を制定→⑥意見提出状況・考慮した結果・理由を公示
ポイント整理
- ・意見公募手続の周知(41条):努力義務
- ・案の公示・意見募集(39条1・2項)
- ・意見提出期間:30日以上(39条3項)
- ・提出意見の十分な考慮(42条):法的義務
- ・結果の公示(43条):法的義務(命令等公布と同時期)
重要メモ
- ・「①案・理由の公示(39条1・2項)→②30日以上の意見提出期間(39条3項)→③提出意見の十分な考慮(42条・義務)→④結果の公示(43条・命令等公布と同時期)」の4ステップ
- ・Step1:命令等の案と理由その他の関連情報を公示(39条1・2項)——インターネット等で広く公示
- ・Step2:意見提出期間は公示日から30日以上(39条3項)——郵便・FAX・電子情報処理組織等の多様な方法で意見提出可
- ・Step3:提出された意見を十分に考慮して命令等を策定(42条)——法的義務(「十分に」という文言に注意)
- ・Step4:命令等の公布と同時期に考慮した結果・理由等を公示(43条1項)——「同時期」であり「公布後」ではない
- ・意見公募手続の周知努力義務(41条):命令等制定機関は他の機関・国民に対し意見公募手続の実施を周知するよう努めなければならない——努力義務
- ・意見公募手続を実施しなかった場合でも、命令等の題名・理由等の公示義務がある(43条4項)
結果の公示(43条)
簡単にいうと
意見公募手続を経た後は、どんな意見が出てどう反映されたかを公表しなければなりません。提出意見がなかった場合でもその旨の公示が必要です。
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、①命令等の題名、②案の公示日、③意見提出件数、④提出意見の概要、⑤意見を考慮した結果・理由を公示しなければなりません(43条1項)。意見公募手続を実施しなかった場合はその旨・理由、意見公募手続を実施したが命令等を定めなかった場合もその旨・理由を公示しなければなりません。
具体例
改正省令を制定した省庁は、省令公布と同じタイミングで「○件の意見が寄せられ、そのうち○件の意見を反映して案を修正しました。○件は採用しませんでした(理由:〜)」という情報をホームページ等で公示します。
ポイント整理
- ・命令等の公布と同時期に結果を公示(43条1項)
- ・公示内容:命令等の題名・案公示日・意見提出件数・提出意見の概要・考慮した結果・理由
- ・提出意見がなかった場合:その旨の公示(公示は必要)
- ・意見公募手続を実施しなかった場合:その旨・理由の公示(43条4項)
- ・意見公募手続を実施したが命令等を定めなかった場合:その旨・理由の公示(43条5項)
重要メモ
- ・「命令等の公布と同時期に、①命令等の題名②案の公示日③提出意見の要旨④考慮した結果と理由を公示しなければならない」(43条1項)
- ・結果公示の内容(43条1項):①命令等の題名、②命令等の案を公示した日、③提出意見の要旨(または提出意見がなかった旨)、④提出意見を考慮した結果とその理由
- ・結果公示のタイミング:命令等の公布(公表)と同時期(43条1項)——「公布後」ではなく「同時期」である点が出題ポイント
- ・提出意見がゼロだった場合:「提出意見がなかった旨」を公示しなければならない(43条1項)——意見ゼロでも公示義務あり
- ・意見公募手続を実施しなかった場合:命令等の題名・制定した日・適用除外の根拠・理由を公示する義務(43条4項)
- ・意見公募手続を実施したが命令等を定めなかった場合:その旨と理由を公示する義務(43条5項)
- ・過去問:行政機関は提出意見を考慮した結果とその理由を、命令等の公布と同時期に公示しなければならない(○)[H17-14-4]
まとめ
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
行政上の義務違反に対して制裁として科される罰のこと。刑事罰である行政刑罰と、金銭罰である秩序罰の2種類がある。
法律行為的行政行為
行政庁の意思表示によって法律効果を発生させる行政行為のこと。許可や認可など、意思の内容どおりに効果が生じる点が特徴。
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