第5節 命令等制定手続
第2章 行政手続法
命令等を定めるときに国民の意見を募る手続(意見公募手続・パブリックコメント)を扱う節です。対象となる命令等は、法律に基づく命令または規則・審査基準・処分基準・行政指導指針の4つです。実施が法的義務であること、意見提出期間が原則30日以上であること、提出意見は「考慮」すればよく必ず取り入れる必要はないこと、そして意見がゼロでもその旨を公示しなければならないことが問われます。
命令等の種類
簡単にいうと
「命令等」とは、法律ではなく行政が定めるルールのことです。政令・省令などの法規命令と、審査基準・処分基準・行政指導指針の4種類が意見公募手続の対象となります。
命令等とは、内閣または行政機関が定める①法律に基づく命令(政令・府省令等の法規命令)、②審査基準、③処分基準、④行政指導指針の4種類をいいます(2条8号)。これらが意見公募手続(パブリックコメント手続)の対象です。通達・訓令などの行政規則は命令等に含まれず、意見公募手続の対象外です。
具体例
国が「食品衛生法施行令」を改正して食品添加物の基準を変更しようとする場合(法規命令)、その改正案を事前に国民に公表し意見を募集しなければなりません。一方、省内の「通達」を改正する場合は意見公募手続は不要です。
重要メモ
- ・「命令等=行政機関が定める法規命令+審査基準・処分基準・行政指導指針の4種類。通達・訓令など行政規則は含まれず、閣議決定も含まれない」(行手法2条8号)
- ・命令等の定義(2条8号):内閣または行政機関が定める①法律に基づく命令・規則(政令・省令・規則等の法規命令)、②審査基準、③処分基準、④行政指導指針。この4種類に限定されている
- ・命令等に含まれるもの:政令・省令・規則・告示(法律に基づくもの)、審査基準・処分基準・行政指導指針
- ・命令等に含まれないもの:閣議決定、通達・訓令(行政内部の行政規則)、個別の処分、特定の者に対する行政指導
- ・意見公募手続(パブリックコメント、39条)の対象は「命令等」。審査基準・処分基準・行政指導指針も対象となる点が重要
- ・比較:申請に対する処分の「審査基準」は命令等に含まれるため、改定する際は意見公募手続が必要となる場合がある
意見公募手続(パブリックコメント)の概要
簡単にいうと
命令等をつくる前に国民の意見を募る手続です。実施しないで定めると、その命令等は違法になります。
意見公募手続とは、命令等を定めようとする場合に、命令等の案と関連資料をあらかじめ公示し、広く一般の意見を求める手続です(39条)。パブリックコメントとも呼ばれます。
実施は法的義務
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案およびこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見の提出先および意見提出期間を定めて広く一般の意見を求めなければなりません(39条1項)。
39条は法的義務です。そのため意見公募手続を実施しないで定めた命令等は、原則として違法になります。
ここは「無効になる」と書かれていたら誤りと判断します。違法であることと無効であることは別です。行政行為の瑕疵のところで学んだとおり、違法な行為が当然に無効になるわけではありません。
実施しなくてよい場合
公益上、緊急に命令等を定める必要がある場合などは、意見公募手続が不要となります(39条4項各号)。
災害が起きてすぐに規則を定めなければならないような場面まで、30日以上かけて意見を募っていては間に合わないからです。
命令等とは(2条8号)
意見公募手続の対象となる命令等は次の4つです。
審査基準・処分基準・行政指導指針という、これまで学んできた3つの基準がすべて命令等に含まれる点を押さえます。行政の内部だけで完結する通達や訓令は命令等にあたりません。
具体例
ある省が新しい省令を定めようとする場合、案と関連資料を公示して30日以上の意見提出期間を設け、広く一般の意見を求めなければなりません。

命令等制定手続・意見公募手続(39〜43条)
ポイント整理
- ・命令等の案および関連資料の公示
- ・意見提出期間は30日以上(原則)
- ・提出意見の十分な考慮(42条)
- ・命令等の公布と同時期に結果を公示(43条)
効果
- ・意見公募手続を実施しないで定めた命令等は原則無効
重要メモ
- ・意見公募手続の実施は法的義務(39条1項)。実施しないで定めた命令等は原則として違法になる
- ・「無効になる」とする記述は誤り。違法であることと無効であることは別
- ・公益上、緊急に命令等を定める必要がある場合などは意見公募手続が不要(39条4項各号)
- ・命令等は、法律に基づく命令または規則・審査基準・処分基準・行政指導指針の4つ(2条8号)
- ・通達や訓令は命令等にあたらず、意見公募手続の対象にならない
意見公募手続の流れ
簡単にいうと
周知は努力義務、公示と意見募集は法的義務。どこが努力義務かを押さえるところです。
意見公募手続は、周知 → 案の公示・意見募集 → 国民による意見提出 → 提出意見の考慮 → 命令等の制定 → 結果の公示、という順に進みます。
手続の内容
周知だけが努力義務
41条の周知と情報提供が努力義務で、39条の公示・意見募集と42条の考慮は法的義務です。努力義務なのは入口の周知だけ、と整理すると迷いません。
「考慮」であって「反映」ではない
42条は提出意見を十分に考慮しなければならないと定めているだけです。必ず提出意見を取り入れなければならないわけではありません。
意見を出したとおりに命令等が定められるわけではなく、考慮したうえで採用しないという判断も許されます。「提出意見に従わなければならない」という形の記述は誤りになります。
30日を下回れる場合がある
意見提出期間は原則30日以上ですが、やむを得ない理由があれば短縮できます。ただし短縮した場合は、案の公示の際に理由を明らかにする必要があります。「必ず30日以上でなければならない」とする記述は誤りです。
具体例
ある府省が省令案を公示して30日間の意見提出期間を設け、寄せられた意見を十分に考慮したうえで、採用しない意見があっても省令を定めることができます。
ポイント整理
- ・意見公募手続の周知(41条):努力義務
- ・案の公示・意見募集(39条1・2項)
- ・意見提出期間:30日以上(39条3項)
- ・提出意見の十分な考慮(42条):法的義務
- ・結果の公示(43条):法的義務(命令等公布と同時期)
重要メモ
- ・案の公示と意見募集(39条1項)・提出意見の考慮(42条)は法的義務、周知と情報提供(41条)は努力義務
- ・意見提出期間は原則として公示の日から起算して30日以上(39条3項)
- ・やむを得ない理由があれば30日を下回る期間を定められるが、公示の際に理由を明らかにする(40条1項)
- ・42条は「十分に考慮」であって、提出意見を必ず取り入れなければならないわけではない
- ・努力義務なのは入口の周知だけ、という形で整理する
結果の公示(43条)
簡単にいうと
意見を公募してもしなくても、行政側は公示する義務があります。意見がゼロでも公示します。
命令等を定めたあと、その結果を公示する手続です。意見を公募してもしなくても公示義務がある点が中心の論点になります。
3つの場面
意見がなかった場合も公示する
最も問われるのがここです。提出意見がなかった場合でも、「提出意見がなかった」ということを公示しなければなりません。
過去問では「意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、結果を公示しなければならないが、意見の提出がなかったときは、その旨の公示は必要とされない」という記述が出題され、誤りとされました。意見がゼロだったという事実も公示の対象です。
公示のタイミング
43条1項と5項はいずれも命令等の公布と同時期です。公布より前でも後でもありません。
実施しなかった場合も公示する
意見公募手続を実施しなかったからといって、何も公示しなくてよいわけではありません。実施しなかった旨とその理由を公示する必要があります。手続を省いたことを国民に説明させる仕組みです。
具体例
ある府省が省令案に意見を公募したところ1件も意見が来なかった場合でも、省令の公布と同時期に「提出意見がなかった旨」を公示しなければなりません。
ポイント整理
- ・命令等の公布と同時期に結果を公示(43条1項)
- ・公示内容:命令等の題名・案公示日・意見提出件数・提出意見の概要・考慮した結果・理由
- ・提出意見がなかった場合:その旨の公示(公示は必要)
- ・意見公募手続を実施しなかった場合:その旨・理由の公示(43条4項)
- ・意見公募手続を実施したが命令等を定めなかった場合:その旨・理由の公示(43条5項)
重要メモ
- ・提出意見がなかった場合でもその旨を公示しなければならない(16-12-2 ×)
- ・意見公募手続を実施した場合の公示は、命令等の公布と同時期に行う(43条1項)
- ・公示事項は、題名・案の公示の日・提出意見(なければその旨)・考慮した結果およびその理由
- ・意見公募手続を実施しなかった場合も、その旨と理由を公示する(43条5項)
- ・実施したが命令等を定めなかった場合も公示が必要(43条4項)
まとめ
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
行政上の義務違反に対して制裁として科される罰のこと。刑事罰である行政刑罰と、金銭罰である秩序罰の2種類がある。
法律行為的行政行為
行政庁の意思表示によって法律効果を発生させる行政行為のこと。許可や認可など、意思の内容どおりに効果が生じる点が特徴。
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