第4節 届出
第2章 行政手続法
行政手続法の対象となる届出を扱う節です。届出は、行政庁に一定の事項を通知する行為で、申請と違って行政庁の返事を待つ必要がありません。形式上の要件に適合した届出書が事務所に到達した時点で義務が果たされる(37条)という到達主義が中心の論点です。出題頻度は高くないため、37条の内容と申請との違いを押さえておけば足ります。
届出とは(37条)
簡単にいうと
出生届のように、出したら終わりの手続です。行政の返事を待つ必要がありません。
市役所に提出する出生届は、飲食店の営業許可申請と異なり、提出した後に何か返事を期待するものではありません。これが申請と届出の違いです。
届出とは(2条7号)
行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているものをいいます。
「申請に該当するものを除く」と書かれているとおり、申請と届出は排他的な関係にあります。行政庁の諾否の応答を求めるものが申請、求めないものが届出です。
到達したときに義務が履行される(37条)
届出が形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとされます(37条)。
ここで問われるのは到達主義です。受理された時点でも、行政庁が内容を確認した時点でもなく、事務所に到達した時点で義務が果たされます。
そのため行政庁は、事実上の不受理によって届出義務の履行を拒むことができません。届出には受理・不受理という概念がないことになります。
形式上の要件を欠くとどうなるか
届出書の記載事項に形式上の不備がある場合は、届出義務を尽くしたことにはなりません。到達しさえすればよいわけではなく、形式上の要件に適合していることが前提です。
過去問では「形式上の要件に適合する届出については、提出先とされる機関の事務所に届出書が到達したときに届出の義務が履行されたものとする」という記述が正しいものとして出題されています。
なお、届出は行政手続法のなかでは出題可能性の低いテーマです。37条の内容を押さえておけば足ります。
具体例
Aが開業したことを税務署に届け出る場合、税務署が許可を出すわけではなく、形式上の要件を満たした届出書が事務所に到達した時点で義務を果たしたことになります。

届出の到達主義(37条)
ポイント整理
- ・法令により直接通知が義務づけられていること
- ・行政庁の諾否の応答を求めるものではないこと
- ・形式上の要件に適合していること
- ・届出先機関の事務所に到達すること
効果
- ・形式要件を満たして事務所に到達した時点で手続上の義務が履行されたものとみなされる
条文
【行政手続法37条】 届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。
重要メモ
- ・届出は形式上の要件に適合した届出書が事務所に到達したときに義務が履行される(37条、16-13-5 ○)
- ・届出とは、法令により直接に通知が義務付けられているもので、申請に該当するものを除く(2条7号)
- ・受理・不受理という概念がない。行政庁が事実上の不受理で義務の履行を拒むことはできない
- ・届出書の記載事項に形式上の不備がある場合は、届出義務を尽くしたことにならない
- ・到達主義であり、受理された時点でも内容が確認された時点でもない
届出と申請の違い
簡単にいうと
返事を求めるかどうかが分かれ目です。ここを間違えると、あとの手続が全部ずれます。
申請と届出はどちらも国民から行政庁へ出す書類ですが、行政手続法上の扱いはまったく違います。
2つの違い
見分け方
行政庁の返事を待つ必要があるかどうかで判断します。
営業許可を申請した人は、許可が出るまで営業できません。行政庁の応答が必要だからです。これに対し出生届を出した人は、市役所からの返事を待つ必要がありません。出した時点で終わりです。
条文上も、届出の定義から「申請に該当するものを除く」と明記されており、両者が重なることはありません。
混同しやすいところ
申請には審査基準の設定(5条)や標準処理期間(6条)、理由の提示(8条)といったルールが並んでいますが、届出にはこれらの規定が及びません。届出について審査基準を定める義務があるとする記述は誤りになります。
具体例
Aが飲食店の営業許可を申請する場合は許可が出るまで営業できませんが、Aが開業届を出す場合は提出した時点で手続が終わります。

届出と申請の違い
重要メモ
- ・申請は許認可等を求め諾否の応答を要する行為、届出は通知するだけで応答を求めない行為
- ・届出の定義には「申請に該当するものを除く」と明記されており、両者は重ならない(2条7号)
- ・申請には5条〜11条のルールが及ぶが、届出に及ぶのは37条のみ
- ・届出について審査基準を定める義務があるとする記述は誤り
- ・見分け方は、行政庁の返事を待つ必要があるかどうか
届出に関する行政指導
簡単にいうと
届出書に形式不備があっても、行政はそれを理由に「受け付けない」とはできません。届出に関連して行政指導をすることはできますが、届出の提出を妨げてはならないルールがあります。
届出は形式要件を満たして到達した時点で義務が履行されます。そのため、届出書の記載に不備があったとしても、行政庁は届出の提出そのものを拒否することはできません。ただし、届出に関して行政指導(補正の求め等)をすることは可能です。この場合も、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明した場合には、当該行政指導を継続することや届出の提出を妨げることをしてはなりません。
具体例
Aさんが廃業届を税務署に提出した際、書式に軽微な不備があった。税務署が「不備があるから受け付けられない」と言っても、形式要件を満たした届出は到達した時点で効力を持ちます。補正を求めることはできますが、届出の効力は左右されません。

届出に関する行政指導の限界
重要メモ
- ・「形式要件に適合した届出書が到達した後は、行政指導を理由に届出の効力を妨げることは許されない」(37条の趣旨・33条)
- ・届出義務が履行された後(形式要件適合の届出書が到達後)は、行政指導を口実に届出の効力を否定・遅延させることはできない
- ・申請に関連する行政指導(33条):申請者が行政指導に従う意思がない旨を示した場合、継続して申請者が不当に困難な状況に置かれないようにしなければならない(届出も同趣旨で解釈される)
- ・行政指導の不利益取扱禁止(32条2項):行政機関は、行政指導に従わないことを理由として不利益な取扱いをしてはならない
- ・行政指導が任意性を失い事実上の強制となる場合は違法(32条1項の任意性原則に反する)
- ・行政指導への書面交付請求(35条):相手方から行政指導の趣旨・内容・責任者を記載した書面の交付を求められたときは、交付しなければならない(その場で完了する行政指導は除く)
- ・過去問頻出:届出に関して補正を求める行政指導は可能だが、届出の提出自体を妨げることは不可
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
行政上の義務違反に対して制裁として科される罰のこと。刑事罰である行政刑罰と、金銭罰である秩序罰の2種類がある。
法律行為的行政行為
行政庁の意思表示によって法律効果を発生させる行政行為のこと。許可や認可など、意思の内容どおりに効果が生じる点が特徴。
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