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テキスト/行政法/第1節 行政法の基本原理

第1節 行政法の基本原理

第1章 総論

行政法は、国や地方公共団体が行う行政活動全般を規律する法分野です。この節では、行政活動の基本ルールである法律による行政の原理を中心に、行政がどのような原則に従って活動すべきかを学びます。試験では、この基本原理が具体的な制度でどう現れるかが繰り返し問われます。

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法律による行政の原理

法律による行政の原理とは、行政活動は法律に基づき、法律に従って行われなければならないという近代法治国家の基本原則です。これは法律の優位法律の留保の2つの内容から構成されます。

具体例

市役所職員のAさんが、違法駐車したBさんの車を撤去しようとしています。Aさんは「市民の迷惑だから」という理由だけでは撤去できず、道路交通法という法律の根拠が必要です。これが法律による行政です。

要件

  • 法律の優位:行政活動は法律に反してはならない(消極的側面)
  • 法律の留保:行政活動は法律の根拠を必要とする(積極的側面)

効果・結論

  • 法律に反する行政活動は違法となり、取消訴訟等の対象となる
  • 特に国民の権利を制限し義務を課す行為には法律の根拠が必須(侵害留保説が通説)
場合
効果
法律に違反する行政活動
法律の優位により違法・無効
法律の根拠なく権利制限する行政活動
法律の留保により違法・無効
法律の根拠ある権利制限
適法(ただし裁量濫用等がなければ)

試験のポイント

  • 法律の優位と法律の留保の区別が頻出。優位は「法律違反の禁止」、留保は「法律根拠の必要性」
  • 法律の留保の範囲について、侵害留保説(権利制限・義務賦課に限定)と全部留保説(すべての行政活動)の対立を理解
  • 行政立法(命令・規則)も法律の範囲内でのみ制定可能という優位原則の適用場面に注意
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行政行為の分類と効力

行政行為とは、行政庁が法の下に優越的地位に基づき一方的に行う公権力の行使です。具体的には許可(禁止の解除)、認可(法律行為の補充)、特許(権利設定)、確認(事実・権利の確認)、下命(義務づけ)、禁止などに分類されます。

具体例

Aさんがレストラン開業のため保健所に申請し、営業許可を得ました。これは法律で原則禁止されている飲食店営業の禁止を解除する「許可」です。一方、Bさんが発明した技術に特許庁が与える特許権は「特許」(権利設定)にあたります。

要件

  • 行政庁による公権力の行使であること
  • 法令に基づく行為であること
  • 国民の権利義務に直接影響を与える行為であること

効果・結論

  • 公定力:違法でも権限ある機関が取り消すまで有効として扱われる
  • 不可争力:出訴期間経過等で争えなくなる
  • 不可変更力:行政庁自身も撤回に制限を受ける
  • 執行力:強制的に実現できる
  • 拘束力:名宛人及び関係者を拘束する
場合
効果
許可(例:営業許可、建築許可)
法令による一般的禁止を特定の場合に解除
特許(例:特許権、公務員任命)
新たな権利・地位を設定・付与
認可(例:農地売買の許可)
私人の法律行為を補充して効力発生
確認(例:当選確認、伝染病認定)
特定の事実・法律関係の存否を公権的に確認

試験のポイント

  • 許可と特許の区別が頻出。許可は「禁止の解除」、特許は「新たな権利の設定」
  • 公定力の意味を誤解しないこと。違法な処分も取消しまで「有効として扱われる」だけで、真に適法になるわけではない
  • 違法性の承継との関連:先行処分が違法でも公定力により後行処分で争えないのが原則(最判昭和48年の成田新法事件参照)
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行政裁量

行政裁量とは、行政庁が法の枠内で一定の判断の余地を認められることです。覊束裁量(要件・効果が厳格に定められる)と自由裁量(行政の判断余地が広い)に分かれ、裁量権の逸脱・濫用があれば違法となります。

具体例

警察官Aさんは、制限速度を10km超過したBさんの車を発見。交通違反の「事実認定」は覊束裁量ですが、「その場で注意のみか、反則切符を切るか」の判断には自由裁量が認められます。ただし、Bさんへの個人的感情で切符を切れば裁量濫用です。

要件

  • 法令が行政庁に判断の余地を認めていること
  • 裁量の範囲内であること(逸脱がないこと)
  • 裁量権の行使が公益目的であること(濫用がないこと)

効果・結論

  • 適法な裁量の範囲内であれば、司法審査は抑制される
  • 裁量権の逸脱・濫用があれば違法として取消しの対象
  • 裁量判断の合理性は、処分時の事情を基準に判断される(伊方原発訴訟最判平成4年)
場合
効果
覊束裁量(例:年齢による受給資格)
要件充足で必ず一定の処分、司法審査は全面的
自由裁量・要件裁量(例:公益認定)
行政の判断余地大、著しい不合理性がなければ適法
自由裁量・効果裁量(例:許可・不許可の選択)
行政の選択余地大、逸脱・濫用がなければ適法
裁量権の逸脱・濫用
違法として取消対象

試験のポイント

  • 裁量権の「逸脱」と「濫用」の区別:逸脱は裁量の範囲外、濫用は範囲内だが目的違反
  • 伊方原発訴訟:原子炉設置許可の安全審査には高度な科学技術的判断が必要で、行政に広い裁量が認められるが、現在の科学技術水準に照らし著しく不合理な場合は違法
  • オウム真理教解散命令事件(最決平成8年):宗教法人解散命令に司法審査が及ぶが、裁量の幅は考慮される
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行政行為の附款

附款とは、行政行為の主たる内容に付加される従たる定めです。条件(成就により効力発生・消滅)、期限(到来により効力発生・消滅)、負担(付随的義務)、取消権の留保(後に取り消せる旨の留保)などがあります。

具体例

Aさんは海岸でのイベント許可を市役所から得ましたが、「雨天中止」という条件、「来年3月末まで」という期限、「終了後の清掃義務」という負担が付されました。雨が降ればイベントは中止、期限が来れば許可は失効します。

要件

  • 主たる行政行為が存在すること
  • 附款を付す法令上の根拠があること(法律の留保)
  • 附款が主たる行政行為と両立可能であること

効果・結論

  • 条件:成就により効力発生(停止条件)または消滅(解除条件)
  • 期限:到来により効力発生(始期)または消滅(終期)
  • 負担:義務不履行の場合、許可取消し等の制裁の根拠となる
  • 取消権の留保:留保された事由が生じれば行政が取り消せる
場合
効果
停止条件(例:〜の場合に許可)
条件成就で効力発生
解除条件(例:違反時は許可取消)
条件成就で効力消滅
始期(例:4月1日から有効)
期限到来で効力発生
終期(例:来年3月末まで)
期限到来で効力消滅
負担(例:月次報告義務)
不履行時に許可取消等の制裁

試験のポイント

  • 附款を付すには法令上の根拠が必要(法律の留保)。自由に付せるわけではない
  • 条件と期限の区別:条件は成就が不確定、期限は到来が確定的
  • 負担と下命の区別:負担は主たる行為に付随、下命は独立した行政行為

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
法律による行政の原理
法律の優位(違反禁止)と法律の留保(根拠必要)の2本柱
優位と留保を混同しない。侵害留保説が通説
行政行為の分類
許可(禁止解除)≠特許(権利設定)≠認可(補充)
公定力は違法処分も取消まで有効扱いするだけ
行政裁量
逸脱(範囲外)・濫用(目的違反)は違法
裁量あっても無制限ではない。伊方原発判例重要
附款
条件(不確定)≠期限(確定)、負担は付随義務
附款を付すにも法令上の根拠が必要

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