第2節 処分
第2章 行政手続法
行政手続法の対象となる「処分」を扱う節です。処分は申請に対する処分(5条〜11条)と不利益処分(12条〜31条)に分かれ、ルールがまったく違います。前半では、審査基準・標準処理期間・審査の応答・理由の提示・情報の提供・複数行政庁の関与という申請側の手続を、後半では、処分基準・意見陳述手続・聴聞・弁明の機会の付与という不利益処分側の手続を学びます。条文を正確に覚えることも重要ですが、常に手続の流れを意識してください。申請に対する拒否処分は不利益処分ではない、という区別が全体の出発点になります。
申請に対する処分とは
第2条簡単にいうと
処分は「申請に対する処分」と「不利益処分」に分かれます。まずは申請した側に返ってくるほうから見ていきます。
よく「行政処分」という言葉を聞きますが、処分には大きく分けて申請に対する処分と不利益処分があります。行政手続法はこの2つを別々のルールで規律しています。
申請に対する処分とは
法令に基づき、行政庁の許認可等を求める行為であって、それに対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの、それが申請です(2条3号)。その申請に対して出される処分が申請に対する処分になります。
飲食店の営業許可申請に対する許可処分も拒否処分も、どちらも申請に対する処分です。
拒否処分は不利益処分ではない
ここが最初のひっかけになります。申請に対する拒否処分は不利益処分ではありません。
不利益処分は「特定の者を名あて人として、直接に義務を課し、またはその権利を制限する処分」(2条4号)です。申請を断られただけでは、もともと持っていなかった権利が与えられなかったにすぎず、権利を制限されたわけではありません。
そのため、拒否処分をするときに聴聞や弁明の機会の付与は要りません。過去問では「処理業の許可申請を拒否する処分をする場合には、申請者に弁明の機会を付与すべきこととされる」という記述が出題され、誤りとされました。
申請に対する処分の流れ
1. 行政庁が審査基準を設定する(5条) 2. 申請者が申請をする 3. 行政庁が審査をする(7条) 4. 行政庁が処分(許可・拒否)の決定をする(8条)
この流れに沿って、5条から11条までのルールを順に見ていきます。
具体例
Aが飲食店の営業許可を申請して許可された場合も拒否された場合も申請に対する処分ですが、すでに営業しているAの許可を取り消すのは不利益処分です。

申請に対する処分の流れ
重要メモ
- ・申請に対する処分と不利益処分は別のルールで規律されている。まずどちらかを見分ける
- ・申請に対する拒否処分は不利益処分ではない。聴聞も弁明の機会の付与も不要(12-11-4 ×)
- ・申請とは、許認可等を求める行為で行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの(2条3号)
- ・不利益処分とは、特定の者を名あて人として直接に義務を課し、または権利を制限する処分(2条4号)
- ・申請に対する処分の流れは、審査基準の設定→申請→審査→処分の決定
審査基準(5条)
第5条簡単にいうと
審査基準は「どんな申請なら許可を出すか」の判断基準です。行政庁はこれを定めることも、公表することも、法的義務として課されています。後述の処分基準(努力義務)との対比が試験の核心です。
審査基準とは(5条)
審査基準とは、「どのような場合に許可処分を出すのか」を判断する際の基準となるものです。申請に対する処分を審査する際の判断基準であり、以下の2つの義務が課されています。
①審査基準を定めること → 法的義務(「定めなければならない」) 審査基準を設定することは法律上の義務であり、行政庁は審査基準を定めなければなりません。この際、できる限り具体的なものとしなければならないとされています。「できる限り具体的」という限定が付いているのは、行政の裁量に一定の幅を認めつつも、恣意的な判断を防ぐためです。
②審査基準を公にすること → 法的義務(「公にしておかなければならない」) 定めた審査基準は公表(公にしておく)することも法的義務です。申請者が事前に審査基準を知ることができるようにするためです。ただし、審査基準を書面で申請者に交付する義務は課されていません(あくまで「公にしておく」義務であり、積極的な交付義務ではありません)。
不利益処分に適用される処分基準(12条)と対比すると、処分基準は定めること・公にすることがいずれも努力義務にとどまります。この違いは試験の最頻出論点の一つです。
具体例
A市が飲食店の営業許可申請を審査する場面を例にとりましょう。A市は「食品衛生上の基準を満たしていること」「施設基準に適合していること」といった審査基準を事前に定め(法的義務)、市のホームページや窓口に掲示して公表しておかなければなりません(法的義務)。申請者は審査基準を事前に確認することができますが、行政庁には審査基準の書面を個別に交付する義務はありません。
重要メモ
- ・「審査基準は定めることも公にすることも両方法的義務で、処分基準(努力義務)と真逆のセットとして覚える」がポイント
- ・審査基準(5条):定めること → 法的義務(義務)、公にすること → 法的義務(義務)
- ・審査基準はできる限り具体的なものとしなければならない
- ・審査基準を書面で申請者に個別交付する義務はない(「公にしておく」義務であり積極的な交付義務ではない)
- ・審査基準(申請処分)は定め・公表ともに法的義務 ⇔ 処分基準(不利益処分・12条)は定め・公表ともに努力義務(最頻出対比)
標準処理期間(6条)
第6条簡単にいうと
標準処理期間は「申請からどのくらいで処理するか」の目安です。審査基準と違い、定めること自体は努力義務ですが、定めた場合の公表は法的義務になります。この非対称な義務の構造を押さえましょう。
標準処理期間とは(6条)
標準処理期間とは、申請が当該行政庁の事務所に到達してから、許可・不許可等の処分が出されるまでにかかる通常の期間の目安です。これは申請者が処理の見通しを立てられるようにするためのものです。
①標準処理期間を定めること → 努力義務(「定めるよう努めるものとする」) 標準処理期間を設定すること自体は努力義務にとどまります。ただし、行政の迅速性・効率性の観点から、定めることが望ましいとされています。
②標準処理期間を公にすること → 法的義務(「公にしなければならない」) 定めた場合には、公にすることは法的義務となります。
このように、標準処理期間には「定めること=努力義務、定めた場合の公表=法的義務」という非対称な構造があります。審査基準(定めること・公にすること、いずれも法的義務)と比較して整理しておくことが大切です。
標準処理期間が公にされているにもかかわらず、行政庁が標準処理期間内に処分をしなかった場合でも、直ちに違法となるわけではありません。あくまで「通常の目安」であるため、超過した場合でも申請者に対する賠償責任が自動的に生じるわけではありませんが、行政の適切な管理が求められます。
具体例
A市が「飲食店営業許可申請は受理から30日以内に処理する」と標準処理期間を定めた場面を考えましょう。この場合、標準処理期間を定めること自体は努力義務でしたが、一度定めた以上はそれを市のホームページや窓口で公表することは法的義務です(公にしなければならない)。30日を超えても直ちに違法になるわけではありませんが、合理的理由なく大幅に超過すれば行政の不作為として問題になりえます。
重要メモ
- ・「標準処理期間は定めること=努力義務・定めたら公にすること=法的義務という非対称な構造」がポイント
- ・標準処理期間(6条):定めること → 努力義務、公にすること → 法的義務(定めた場合のみ)
- ・「定めること」と「公にすること」で義務の強度が異なる点に注意(審査基準はどちらも法的義務と対比)
- ・標準処理期間を超過しても直ちに違法とはならない(あくまで通常の目安)
- ・3つの基準の義務対比:審査基準(定め・公表ともに法的義務)>標準処理期間(定め=努力義務・公表=法的義務)>処分基準(定め・公表ともに努力義務)
審査の応答と理由の提示(7条・8条)
第7,8条簡単にいうと
申請が届いたら行政庁は遅滞なく審査を始め(7条)、拒否する場合は必ず理由を示さなければなりません(8条)。どちらも法的義務です。申請に不備があった場合の扱いも7条の重要論点です。
審査の応答(7条)
申請が当該行政庁の事務所に到達したとき、行政庁は遅滞なく当該申請の審査を開始しなければなりません(法的義務)。これは申請者を長期間放置することを禁じる規定です。
申請に不備があった場合(申請の形式上の要件に適合しない場合)、行政庁は申請者に補正を求めるか、申請を拒否する処分をしなければなりません。つまり、不備があっても無視したり放置したりすることは許されません。また、補正期間を設定して申請者に補正を求めることができます。
理由の提示(8条)
申請に対して拒否処分をする場合には、その理由を示さなければなりません(法的義務)。これは申請者が「なぜ拒否されたのか」を理解し、適切な対応(補正・再申請等)を取れるようにするためです。
理由の提示の時期・方法については以下のとおりです。 - 原則:書面で処分をするときは書面で理由を示す - 例外:審査基準が数量的な指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、申請書の記載または添付書類等から明らかに審査基準に適合しないことが判明するときは、申請者の求めがあったときに理由を示せばよい(例外的に事後的理由提示が許容)
なお、許可処分(申請を認める場合)には理由の提示義務はありません。拒否処分をする場合のみ理由の提示義務が課される点に注意が必要です。
具体例
A社が廃棄物処理施設の設置許可を申請した場面を例にとりましょう。行政庁は申請書が届いたら遅滞なく審査を開始し(7条)、申請書に不備があれば補正を求めるか拒否処分を下さなければなりません。もし不許可処分を下す場合は「○○法○条の基準を満たしていないため」という理由を書面で示します(8条)。一方、許可処分を下す場合は理由の提示は必要ありません。
重要メモ
- ・「申請が届いたら遅滞なく審査開始(7条・義務)で、拒否するときだけ理由提示義務(8条)が生じる」がポイント
- ・審査の応答(7条):申請が到達したら遅滞なく審査を開始する義務(法的義務)
- ・申請に形式上の不備がある場合は補正を求めるか申請を拒否しなければならない(放置・無視は禁止)
- ・申請拒否処分をするときは理由を示す義務(8条・法的義務)があり、書面処分は書面で理由を示す
- ・許可処分(申請を認める場合)には理由の提示義務はない(拒否処分の場合のみ義務)
- ・重要判例・一般旅券発給拒否処分事件(最判平4.12.10):理由の記載は「いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したか」を申請者が了知できる程度でなければならない
情報の提供と公聴会(9条・10条)
第9,10条簡単にいうと
申請者からの問い合わせに答えること(9条)と、第三者の意見を聴く公聴会を開くこと(10条)はどちらも努力義務です。法的義務ではない点で7条・8条と区別しましょう。
情報の提供(9条)
行政庁は、申請者からの質問(申請に必要な書類は何か、処分の状況はどうなっているかなど)に対して、できる限り回答する努力義務が課されています。具体的には、当該申請に係る審査の進行状況および処分の時期の見通しを示すよう努めなければなりません。また、申請をしようとする者または申請者の求めに応じ、申請書の記載や添付書類に関する事項などの情報提供に努めなければなりません(努力義務)。
9条は法的義務ではなく努力義務である点が重要です。7条(審査開始義務)・8条(理由提示義務)がいずれも法的義務であるのとは対照的です。
公聴会の開催(10条)
申請に対して許可処分が出されることで、申請者以外の者(第三者)に影響が出る場合があります。このような場合、行政庁は公聴会を開くよう努力義務が課されます。公聴会とは、申請者以外の者の意見を聴く機会を設ける手続で、例えば大規模施設の建設許可など、周辺住民に影響が及ぶ許可処分の際に活用されます。ただし、公聴会の開催はあくまで努力義務であり、必ず開催しなければならないわけではありません。
具体例
A社が廃棄物処理施設の設置許可を申請した場面を例にとりましょう。A社から「今どの段階か」と問い合わせがあれば、行政庁は審査の進行状況や処分の時期の見通しをできる限り伝えるよう努めます(9条・努力義務)。また、施設建設が近隣住民への影響が大きいため、公聴会を開いて周辺住民の意見を聴く機会を設けるよう努めます(10条・努力義務)。どちらも「しなければならない」ではなく「努める」にとどまります。
重要メモ
- ・「情報提供(9条)も公聴会(10条)も努力義務にとどまり、7条・8条の法的義務とは対照的」がポイント
- ・情報の提供(9条):審査の進行状況・処分時期の見通しを示すよう努める → 努力義務(法的義務ではない)
- ・公聴会の開催(10条):申請者以外の者の利害を考慮すべき場合に公聴会を開くよう努める → 努力義務
- ・7条(審査開始)・8条(理由提示)は法的義務 ⇔ 9条(情報提供)・10条(公聴会)は努力義務(対比頻出)
- ・公聴会は申請者以外の者(第三者)の意見を聴くための場であり、許認可等の要件として個別法に定めがある場合に活用される
複数行政庁の関与(11条)
第11条簡単にいうと
同じ申請に複数の行政庁が関与するとき、A庁の審査遅延をB庁の審査遅延の理由にしてはいけない、という規定です。たとえばバーやスナックを開業するには保健所と警察署の両方から許可をもらう必要がありますが、そのような場合のルールです。
バーやスナックを開業しようとする場合、保健所(食品衛生上の許可)と警察署(風俗営業の許可)の両方に申請し、それぞれから許可を受ける必要があります。このように、一人の申請者が複数の行政庁に対して関連する申請を同時並行で行うケースがあります。
このような複数行政庁の関与が生じる場合、申請者にとって不利益な状況が起こりやすくなります。例えば「保健所がまだ審査中だから、うちも審査を進めなくていいだろう」と警察署が判断してしまうと、両方の処理が遅延してしまいます。行政手続法11条はこのような事態を防ぐための規定です。
11条が定めるルールは以下の2点です。
①審査の遅延防止(法的義務):行政庁は、申請の処理をするにあたり、他の行政庁において同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることをもって、自らすべき許可処分または許可処分に係る審査を漫然と遅延させることをしてはなりません。つまり、他の行政庁の審査中を理由に自庁の審査を止めることは禁止されます。これは法的義務です。
②審査の促進(努力義務):複数の行政庁は、必要に応じ、相互に連絡をとり、当該申請者からの説明の聴取を共同して行う等により、審査の促進に努めるものとします。これは努力義務です。
具体例
Cさんがバーを開業しようと、保健所と警察署に同時に申請を提出した場面を例にとりましょう。警察署が「保健所の審査がまだ終わっていないから、うちも審査を保留しよう」として処理を遅延させることは、11条違反となります。各行政庁は独立して迅速に審査を進めなければなりません。また、必要に応じて保健所と警察署が共同でCさんから説明を聴取するなど、連携して審査促進に努めることが望まれます。

複数行政庁の関与(審査の遅延防止)
重要メモ
- ・「複数行政庁が関与するとき他庁待ちを理由に自庁の審査を遅らせることは禁止(法的義務)、連絡・協力は努力義務」がポイント
- ・複数行政庁が関与する申請において、他庁の審査中を理由に自庁の審査を遅延させることは禁止(法的義務)
- ・複数行政庁が連絡をとり審査を促進すること(共同での説明聴取等)は努力義務
- ・典型例:バー・スナック開業の場合、保健所(食品衛生)と警察署(風俗営業)の両方に申請が必要
不利益処分とは
第2条簡単にいうと
不利益処分とは行政庁が「特定の人の権利を制限する処分」のことです。申請に対する処分が「申請者の求めへの応答」であるのとは対照的に、不利益処分は行政庁の側から一方的に権利を制限するものです。
不利益処分の定義(2条4号)
不利益処分とは、行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に①その権利を制限し、または②その権利に制限を課する処分をいいます(2条4号)。典型例は飲食店の営業停止処分や、営業許可の取消処分です。
申請に対する処分(5条〜11条)が「申請者が自ら申し出た行為に対する応答」であるのに対し、不利益処分(12条〜31条)は「行政庁の側から特定人に対して制裁・規制を課す行為」です。申請者の意思に関わりなく(むしろ反して)行われるため、より厳格な手続保障が求められます。
不利益処分に該当しないケース
申請に対する拒否処分は、「申請に対する処分」であって「不利益処分」には分類されません。したがって、拒否処分については意見陳述手続(聴聞・弁明の機会)の適用はなく(ただし理由の提示義務はある)、不利益処分の手続保障の枠組みとは別に扱われます。
また、不特定多数の者に対して一般的・抽象的に義務を課す法令(行政立法)は、特定の者を名あて人とするものではないため、不利益処分には該当しません。
不利益処分に関する手続の全体像(12条〜31条)
不利益処分の手続は以下の流れで規律されています。①処分基準の設定・公示(12条)→②意見陳述手続(聴聞または弁明の機会の付与)(13条〜31条)→③理由の提示(14条)。この流れを意識しながら各制度を学ぶことが大切です。
具体例
飲食店Dの店主が食品衛生法に違反したため、保健所が「30日間の営業停止処分」を検討している場面を例にとりましょう。これは行政庁が特定の者(飲食店D)を名あて人として、直接その権利(営業権)を制限する処分であり、典型的な不利益処分です。一方、飲食店Dが「新たに食材倉庫を増設したい」と申請した場合の審査・拒否は、申請に対する処分であって不利益処分には該当しません。

不利益処分の流れ
重要メモ
- ・「不利益処分は特定の名あて人の権利を制限する処分で、申請拒否処分は不利益処分に含まれない」がポイント
- ・不利益処分の定義(2条4号):行政庁が法令に基づき特定の者を名あて人として直接その権利を制限する処分
- ・申請に対する拒否処分は「不利益処分」ではなく「申請に対する処分」に分類される(意見陳述手続の対象外)
- ・不特定多数に一般的・抽象的に義務を課す行政立法は特定の者を名あて人とするものではないため不利益処分に該当しない
- ・不利益処分の手続の流れ:処分基準の設定・公示(12条)→意見陳述手続(13〜31条)→理由の提示(14条)
処分基準の設定・公表(12条)
12条簡単にいうと
不利益処分をするかどうか判断する際の基準(処分基準)を定め公表することは、行政庁の「努力義務」にとどまる点が最大のポイントです。審査基準(申請に対する処分)とは義務の強さが異なることを必ず押さえてください。
処分基準とは、行政庁が不利益処分をするかどうか、またはどのような不利益処分をするかについて判断するために必要な基準をいいます(行政手続法12条1項)。
処分基準の設定・公表についての義務の内容は次のとおりです。①処分基準を定めること:定めるよう努めなければならない(努力義務)。②処分基準を公にすること:定めたときは公にするよう努めなければならない(努力義務)。また、処分基準を定めるにあたっては、できる限り具体的なものとしなければならない(12条2項)。
申請に対する処分の判断基準である審査基準(5条)と比較すると、審査基準は設定・公表ともに法的義務である(5条1項・3項)のに対して、処分基準は設定・公表ともに努力義務にとどまります。この違いは試験で頻繁に問われる重要な論点です。
処分基準が努力義務にとどまる理由は、不利益処分は申請とは異なり、処分される側が基準を事前に知ることで基準をすり抜けるような行動をとるおそれがあるためです。処分の実効性を確保するために、必ずしも公表を義務付ける必要がないとされています。
なお、処分基準は不利益処分の手続における処分基準の設定・公表に関する規定であり、行政庁が定めた処分基準から逸脱した処分をした場合は、特段の合理的理由のない限り、その処分が裁量の逸脱・濫用として違法になることがあります。
【審査基準と処分基準の比較】
具体例
飲食店の営業許可申請に対して行政庁が許可するかどうかを判断する基準(食品衛生法に基づく施設基準の適合要件など)は審査基準であり、設定・公表が法的義務です。一方、すでに営業許可を受けた飲食店を営業停止にするかどうかの判断基準は処分基準であり、定めること・公表することはともに努力義務にとどまります。
重要メモ
- ・「処分基準は定め・公表ともに努力義務(審査基準は法的義務)」という対比が最頻出
- ・処分基準の設定は努力義務(審査基準は法的義務)。行政手続法12条1項
- ・処分基準の公表も努力義務(審査基準は法的義務)。両者の違いは最頻出論点
- ・処分基準を定めるにあたってはできる限り具体的なものとしなければならない(12条2項)
- ・処分基準が努力義務にとどまる理由:相手方が基準を事前に知ることで基準をすり抜けるおそれがあるため
- ・処分基準から逸脱した処分は特段の合理的理由のない限り裁量の逸脱・濫用として違法となる
- ・過去問:処分基準を定め公にすることは担当行政庁の努力義務にとどまり義務ではない(○)[16-12-3]
- ・審査基準は申請に対する処分→法的義務・法的義務、処分基準は不利益処分→努力義務・努力義務と整理する
意見陳述手続の種類(13条)
13条簡単にいうと
不利益処分をしようとする場合には、処分の重さに応じて①聴聞(重い処分→口頭)か②弁明の機会の付与(軽い処分→書面)のいずれかの意見陳述手続を経なければなりません。どちらの手続が必要かは処分の種類で決まるため、その対応関係を正確に覚えることが重要です。
行政庁は、不利益処分をしようとするときは、処分の名あて人となるべき者に対して意見陳述の機会を与えることとしています(行政手続法13条)。意見陳述手続には2種類あります。
【❶ 聴聞(慎重な手続・口頭)】 聴聞は、口頭で意見を述べる機会を与える慎重な手続です。以下の処分に適用されます。 - ①許可取消処分:資格・事業の許可を取り消す処分(例:営業許可の取消処分) - ②資格・地位の直接剥奪:名あて人が直接有する資格または地位を直接に剥奪する処分(例:医師免許の取消) - ③法人役員の解任:名あて人が法人である場合における役員の解任処分など、重い処分の場合
【❷ 弁明の機会の付与(簡易迅速な手続・書面)】 弁明の機会の付与は、書面で意見を述べる機会を与える簡易な手続です。上記①〜③以外の処分(営業停止処分など、比較的軽い処分)に適用されます。
【聴聞・弁明の機会の付与が不要な場合(13条2項)】 たとえ上記の処分であっても、以下の場合は意見陳述手続が不要です。 - 公益上緊急に不利益処分をする必要がある場合(1号) - 名あて人の所在が不明な場合(2号) - その他当該不利益処分の性質に照らして意見陳述手続を要しない旨の特別の規定がある場合(3号)
【重要な過去問論点】 一度なされた処理業の許可を知事が取り消す場合には、相手方に対して聴聞を実施しなければなりません(申請を拒否する処分をする場合は弁明の機会の付与で足ります)[12-11-4]。
また、聴聞手続の付与が義務付けられるのは、あくまでも不利益処分をしようとする場合ですから、申請に対して拒否処分をする場合には、聴聞の手続や弁明の機会の付与を行う必要はありません(申請拒否については申請に対する処分の章(8条等)が適用される)。
具体例
飲食店の営業許可の取消処分をしようとする場合は聴聞(重い処分)が必要です。一方、同じ飲食店への営業停止処分は比較的軽い処分のため弁明の機会の付与(書面)で足ります。産業廃棄物処理業の許可を取り消す場合は許可取消処分ですから聴聞が必要であり、単なる行政指導を行う段階では意見陳述手続は不要です。
重要メモ
- ・「聴聞(重大処分:許認可取消・役員解任等)と弁明(軽微処分:営業停止等)の振り分け」(13条)
- ・聴聞が必要な処分:①許可取消②資格・地位の直接剥奪③法人役員の解任等。重い処分(13条1項1号)
- ・弁明の機会の付与で足りる処分:上記①〜③以外。比較的軽い処分(営業停止等)(13条1項2号)
- ・聴聞・弁明が不要な場合:公益上緊急・所在不明・法令の特別規定(13条2項各号)
- ・申請拒否処分をする場合に聴聞・弁明の機会の付与を行う必要はない
- ・処理業許可の取消→聴聞必要、申請を拒否する処分→弁明の機会の付与(○)[12-11-4]
- ・聴聞は口頭が原則・文書閲覧権あり、弁明は書面が原則・文書閲覧権なし。この差異も重要
- ・期日の公示はどちらも不要(試験で誤りとして問われる)
理由の提示(14条)
14条簡単にいうと
不利益処分をする場合には、なぜその処分をするのかという理由を名あて人に示さなければなりません。原則として処分と同時に・書面で示すことが必要です。申請拒否処分の場合も同様に理由の提示が求められますが(8条)、不利益処分との細かな違いもあります。
行政庁は不利益処分をする場合、その名あて人に対し、処分と同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない(行政手続法14条1項本文)。この理由の提示は原則として書面で行われます。
【例外】ただし、当該理由を示さずに処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りではなく、処分後相当の期間内に理由を書面で示さなければなりません(14条1項但書)。なお、名あて人の所在が判明しなくなったときや、その他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときはこの限りではありません(14条1項但書)。
【口頭でされる処分の場合】行政庁が口頭で処分をする場合に、当該理由を示さずに処分をすべき差し迫った必要があるときは、処分後相当の期間内に、書面により理由を示さなければなりません(14条2項)。
【理由の提示の趣旨】理由の提示が求められる趣旨は、①処分の慎重・公正・合理性の確保と、②名あて人に不服申立ての機会を保障するためです。したがって、単に根拠法条を示すだけでは足りず、具体的な事実と法令の当てはめを示すことが求められます(最判平成23年6月7日:一般旅券発給拒否処分事件では、理由提示が不十分であったとして処分が違法とされた)。
理由の提示義務は申請に対する処分(8条)にも定められており、両者を区別しながら理解することが重要です。8条では申請に対する拒否処分について、14条では不利益処分についての理由提示が規定されています。
具体例
飲食店の営業停止処分を行う場合、行政庁は処分と同時に「○年○月○日、食品衛生法第○条に違反する食品を提供した事実に基づき、同法第○条により○日間の営業停止処分に処する」という具体的な理由を書面で示さなければなりません。単に「法令違反のため」などという抽象的な記載では不十分です。
重要メモ
- ・「不利益処分の理由は処分と同時・書面が原則、差し迫った必要がある場合のみ事後可」(14条)
- ・不利益処分の理由は名あて人に処分と同時に示さなければならない(14条1項本文)。[17-12-3]
- ・理由の提示は書面が原則(口頭で処分する場合の特則あり)
- ・差し迫った必要がある場合の例外:処分後相当の期間内に書面で提示(14条1項但書)
- ・名あて人の所在不明等の場合は書面提示の例外あり(14条1項但書)
- ・理由の内容:根拠法条の引用だけでは不十分。いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかが記載から了知できる程度が必要
- ・理由の提示が不十分な場合は処分が違法となる(最判平23.6.7・旅券発給拒否処分の理由付記)
- ・申請拒否処分の理由提示(8条)と不利益処分の理由提示(14条)を区別して整理する
聴聞の事前通知(15条)
15条簡単にいうと
聴聞を行う前には名あて人となるべき者に書面で事前通知しなければなりません。通知の方法(書面限定)・記載すべき4事項・事前の余裕期間の確保を正確に把握しておきましょう。口頭による通知は原則として認められない点が頻出です。
行政庁は、聴聞を行うにあたっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に関わる事項を書面により通知しなければなりません(15条1項)。
【通知すべき事項(15条1項)】 - ①予定される不利益処分の内容および根拠となる法令の条項 - ②不利益処分の原因となる事実 - ③聴聞の期日および場所 - ④聴聞に関する事務を所掌する組織の名称および所在地
聴聞の通知は書面で行わなければならず、口頭での通知は原則として認められません。過去問でも「差し迫った必要がある場合は書面によらず口頭で行うことができる」という出題がありましたが、これは誤りです[11-11-2]。行政庁が口頭で通知することは認められていません(15条1項は書面のみ)。
通知は聴聞の期日までに相当な期間をおいて行わなければならず、直前の通知では名あて人が準備する時間が確保されないため認められません。
通知を受けた名あて人は、聴聞が終結するときまでの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができます(15条2項)。
具体例
X市が飲食店Aの営業許可を取り消す処分をしようとする場合、聴聞の期日の相当前に、Aに対して「①食品衛生法○条に基づく営業許可取消処分を予定する、②○年○月○日に食品衛生基準に違反する食品を提供した事実がある、③聴聞は○月○日○時に○○庁舎会議室で行う、④担当は○○市保健所衛生指導課(○○所在)」という内容の書面を送付しなければなりません。

聴聞手続の流れ(15〜28条)
重要メモ
- ・「聴聞通知は必ず書面・口頭不可(差し迫った場合でも例外なし)」「相当期間前に通知」(15条)
- ・聴聞の通知は書面が必須。口頭による通知は認められない(15条1項)[17-11-2]
- ・差し迫った必要がある場合でも口頭による通知は認められない(×)[11-11-2]。頻出誤りパターン
- ・通知内容4項目:①予定処分の内容・根拠法令、②原因事実、③期日・場所、④担当組織名・所在地
- ・通知は聴聞期日までに相当な期間をおいて行う必要がある(15条1項)
- ・通知を受けた名あて人は聴聞終結までの間、原因事実を証する資料の閲覧を求めることができる(15条2項)
- ・閲覧の範囲:不利益処分の原因となる事実を証する資料(処分が行われるまでの間)
聴聞の公示送達(15条3項)
15条3項簡単にいうと
名あて人の所在が不明で書面通知ができない場合は、庁舎の掲示場に通知内容を掲示する公示送達という方法が使えます。掲示から2週間経過で通知が到達したとみなされます。この2週間という数字は試験でよく問われます。
聴聞の通知は原則として書面を名あて人に送付することで行いますが、名あて人の所在が判明しない場合は通常の書面通知ができません。このような場合のために公示送達の制度が設けられています(15条3項)。
【公示送達の手続(15条3項)】 - ①必要事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示する。 - ②掲示を始めた日から2週間を経過したとき、当該通知がその者に到達したとみなされる。
公示送達によって名あて人に通知できなくても聴聞手続を進めることができ、不利益処分を行うことが可能になります。これにより、名あて人が意図的に所在を隠して手続を妨害しても行政が適切な対応をとれるように設計されています。
なお、この2週間という期間は試験で頻繁に問われる数字ですので確実に覚えておきましょう。また、弁明の機会の付与の場合も、31条による準用によって同様の公示送達が認められています(15条3項→31条)。
具体例
X市が飲食店Aの営業許可を取り消そうとしているが、Aの現住所が不明で書面を送付できない場合、X市はAへの聴聞通知の内容を「いつでもAに交付できる状態にある」旨を庁舎の掲示場に掲示します。掲示を始めた日から2週間が経過すると、Aへの通知が到達したとみなされ、聴聞手続を進めることができます。
重要メモ
- ・「所在不明の場合は事務所掲示場に掲示→2週間で到達とみなし」(15条3項)この2週間は頻出数字
- ・公示送達:名あて人の所在が不明な場合、事務所の掲示場に掲示する(15条3項)
- ・掲示を始めた日から2週間経過で到達とみなされる。この「2週間」は頻出数字
- ・弁明の機会の付与の場合も31条により公示送達規定が準用される
- ・公示送達は「所在不明」の場合の例外的送達方法。通常は書面送付
- ・公示送達後も名あて人は聴聞期日に出頭する権利を持つ(所在不明が解消された場合)
代理人・参加人と聴聞の終結(16〜18条)
16〜18条簡単にいうと
当事者は聴聞に代理人を立てることができますが、代理人が聴聞の終結に同意するには特別の委任が必要です。また、利害関係のある第三者は参加人として手続に加わることができます。代理人の終結同意には特別委任が必要な点が頻出です。
【代理人の選任(16条)】 当事者は、聴聞手続において代理人を選任することができます(16条1項)。代理人は本人のために聴聞に関するすべての行為ができます。ただし、特別の委任を受けなければ聴聞の終結に同意することができません(16条2項)。
「聴聞の終結に同意すること」は本人の重大な利益に関わる行為であるため、包括的な代理権だけでは足りず、特別の委任が必要とされています。
代理人の資格について法令に特段の定めはなく、弁護士に限らず誰でも代理人になることができます。
【参加人(17条)】 行政庁は、必要があると認めるときは、当事者以外の関係人を参加人として聴聞手続に参加させることができます(17条1項)。また、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者(関係人)は、行政庁の許可を得て、当該聴聞に関する手続に参加人として参加することができます(17条2項)。
参加人も当事者と同様に、期日において意見を述べ、証拠書類等を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員に質問することができます(20条2項・3項の準用)。
【聴聞の終結(23条)】 主宰者は、次の場合には聴聞を終結することができます。 - 期日における審理が十分に行われたと認めるとき - 当事者の全員が聴聞の終結に同意したとき - 当事者が正当な理由なく期日に出頭せず・陳述書等も提出しないとき(聴聞を終結できる)
具体例
飲食店Aの営業許可取消聴聞において、AはAの代わりに弁護士Cを代理人として選任して聴聞に関する一切の行為を行わせることができます。ただし、弁護士Cが「もう反論することはありません。聴聞を終結して構いません」と聴聞の終結に同意するためには、Aから特別の委任を受けている必要があります(16条2項)。また、この取消処分に利害関係を持つ食品衛生協会などの第三者は、行政庁の許可を得て参加人として参加することができます(17条)。
重要メモ
- ・「代理人は終結同意に特別委任が必要・参加人も意見陳述権あり・正当理由なき欠席で終結可」(16〜18条)
- ・代理人は特別の委任なく聴聞の終結に同意できない(16条2項)。包括代理権だけでは不足
- ・代理人の資格に制限なし。弁護士でなくてもよい
- ・参加人:利害関係を有する者が行政庁の許可を得て参加できる(17条2項)
- ・参加人も当事者と同様の権利(意見陳述・証拠提出・主宰者許可で職員への質問)を持つ
- ・当事者が正当な理由なく欠席・陳述書不提出のときは主宰者が聴聞を終結できる(23条)
- ・18条:当事者は行政庁に対し処分原因を記した文書等の閲覧を請求できる(弁明手続には準用されない)
聴聞の期日における手続(20〜22条)
19〜22条簡単にいうと
聴聞の期日では主宰者が選ばれて司会進行を務め(19条)、当事者は意見陳述・証拠提出・質問の権利を持ちます。補佐人の同行には主宰者の許可が必要であること、審理は原則非公開であることが試験のポイントです。
聴聞手続では、行政庁が主宰者(聴聞を主宰する者)を指名し(19条)、主宰者が司会進行役を務めます。
【聴聞の開始(20条1項)】 主宰者は、行政庁の職員に予定される不利益処分の内容および事実を説明させます。
【当事者・参加人の権利(20条2項)】 当事者または参加人は、聴聞の期日に出頭して次のことができます。 - 意見を述べること - 証拠書類等を提出すること - 主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問すること
【補佐人の同行(20条3項)】 当事者または参加人は、主宰者の許可を得て、補佐人とともに出頭することができます。補佐人の同行には主宰者の許可が必要な点に注意が必要です。
【陳述書等の提出(21条1項)】 当事者または参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、期日前に陳述書および証拠書類等を提出することができます。期日に出頭できない場合の代替手段です。
【続行期日の指定(22条)】 主宰者は、聴聞の期日における審理が十分でないと認めるときは、続行期日を定めることができます。また、さらに続行が必要と認めるときはあらたな期日を定めることができます。
【聴聞の非公開原則(20条6項)】 聴聞の審理は原則として非公開で行われます。ただし、主宰者は、当事者の申請があった場合には、第三者の傍聴を許可することができます。
具体例
X市が飲食店Aの営業許可を取り消そうとする聴聞の期日を考えましょう。主宰者(Y職員)が選ばれ(19条)、聴聞期日に行政庁職員が「○月○日に食品衛生基準違反の事実があった」と説明します(20条1項)。Aは意見を述べ、証拠書類を提出して反論することができます(20条2項)。Aが弁護士Bを補佐人として連れてきている場合は、主宰者の許可があれば同席できます(20条3項)。AがどうしてもA自身が期日に出席できない場合は、事前に陳述書を提出することも可能です(21条1項)。

聴聞手続のイメージ(原則非公開)
重要メモ
- ・「聴聞は非公開・補佐人同行には主宰者許可・書面陳述も可・続行期日の設定も可」(20〜22条)
- ・聴聞の審理は原則として非公開(20条6項)。主宰者の許可があれば傍聴可
- ・補佐人の同行には主宰者の許可が必要(20条3項)。代理人(16条)の選任は許可不要との違いに注意
- ・当事者は期日出頭に代えて事前に陳述書・証拠書類を提出できる(21条1項)
- ・主宰者は各期日の審理が不十分なときは続行期日を指定できる(22条)
- ・聴聞では行政庁の職員が最初に不利益処分の内容・事実を説明する(20条1項)
- ・当事者・参加人は意見陳述・証拠提出・主宰者の許可を得て行政庁職員への質問ができる(20条2項)
- ・主宰者は行政庁の職員の中から指名される(19条1項)。処分に関与した者は不可(19条2項)
聴聞調書・報告書と不利益処分の決定(24〜26条)
24〜26条簡単にいうと
聴聞が終結すると主宰者は調書(各期日の経過記録)と報告書(当事者の主張に理由があるかの意見)を作成して行政庁に提出します。行政庁はこれらを十分に参酌して不利益処分を決定しなければなりません(26条)。調書・報告書の作成義務と参酌義務は最頻出論点です。
聴聞が終結した後、主宰者は調書と報告書を作成して行政庁に提出する義務を負います(24条)。この調書・報告書が不利益処分の決定に実質的な影響を与えることが制度の趣旨です。
【聴聞調書の作成(24条1項)】 主宰者は、各期日ごとに聴聞の経過を記載した調書を作成しなければなりません(24条1項)。各期日の経過を詳細に記録することで、手続の正当性が担保されます。
【報告書の作成(24条2項)】 聴聞が終結した後、主宰者は、速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する当事者の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、調書とともに行政庁に提出しなければなりません(24条2項)。
主宰者の意見は法的拘束力を持つわけではありませんが、行政庁は必ず参酌しなければなりません(26条)。
【調書・報告書の閲覧(24条4項)】 当事者または参加人は、行政庁に対し、聴聞調書および報告書の閲覧を求めることができます(24条4項)。聴聞の結果がどのように記録されているか確認することで、名あて人の権利保護が図られています。
【不利益処分の決定と参酌義務(26条)】 行政庁は不利益処分の決定をするときは、調書の内容および報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければなりません(26条)。これにより、聴聞の結果が処分決定に実質的に反映されることが担保されています。
参酌義務があるということは、主宰者の意見が「理由あり」であっても行政庁は必ずしも処分を取り消す必要はありませんが、十分に検討したことを示さなければなりません。
具体例
X市が飲食店Aの営業許可取消聴聞を終結した後、主宰者Yは速やかに「①○月○日の聴聞期日でAはBの事実について違反がないと主張した、②○月○日の続行期日でAは証拠書類Cを提出した」という調書と、「Aの主張には合理的な理由がある(または理由がない)」という意見を記載した報告書を作成し、X市(行政庁)に提出しました。X市はこの調書・報告書を十分に参酌した上で営業許可取消の最終判断をしなければなりません(26条)。
重要メモ
- ・「調書(各期日)+報告書(終結後速やか)→行政庁へ提出、行政庁は十分に参酌して処分決定」(24〜26条)
- ・主宰者は各期日ごとに調書を作成し、終結後速やかに報告書を作成して行政庁に提出する(24条1項・2項)
- ・行政庁は不利益処分決定の際に調書の内容および報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌しなければならない(26条)
- ・当事者・参加人は聴聞調書・報告書の閲覧を求めることができる(24条4項)。処分が行われるまでの間
- ・報告書には「当事者の主張に理由があるかどうか」についての主宰者の意見を記載する
- ・主宰者の意見(報告書)は法的拘束力なし。しかし行政庁は必ず「十分に参酌」する義務
- ・過去問:主宰者は聴聞終結後、速やかに報告書を作成して調書とともに行政庁に提出しなければならない(○)[17-13-2]
弁明の機会の付与(29〜31条)
29〜31条簡単にいうと
営業停止処分など比較的軽い不利益処分をする際には、聴聞より簡易な「弁明の機会の付与」という手続をとります。弁明は原則として書面(弁明書)で行い、聴聞と違って主宰者の選定は不要です。聴聞との相違点が試験のポイントです。
弁明の機会の付与は、聴聞手続と比べて簡易迅速な意見陳述手続であり、比較的軽い不利益処分をしようとする場合に採用されます(13条1項2号)。
【弁明の機会の付与の通知(30条)】 行政庁は弁明書の提出期限までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、書面により通知しなければなりません。通知すべき事項は次のとおりです。 - ①予定される不利益処分の内容および根拠となる法令の条項 - ②不利益処分の原因となる事実 - ③弁明書の提出先および提出期限
重要な相違点(聴聞との比較):弁明手続の通知において教示すべきこと(参加人等への告知)はありません(聴聞の場合は15条において教示義務あり)。
【弁明の方式(29条)】 弁明は原則として書面(弁明書)を提出することにより行います(29条1項)。ただし、行政庁が口頭による弁明を認める場合には、口頭で弁明を行うことができます(29条1項但書)。弁明の機会の付与においては、主宰者の選定は不要であり、これも聴聞との大きな違いです。
弁明書の提出にあたっては、証拠書類等を提出することもできます(29条2項)。
【名あて人が所在不明の場合(公示送達)】 弁明の機会の付与の場合も、名あて人の所在不明のときは、公示送達(書面を事務所の掲示場に掲示)によります。掲示から2週間経過で到達とみなされます(15条3項→31条により準用)。
【聴聞手続規定の準用(31条)】 弁明の機会の付与においても、聴聞手続の規定の一部が準用されます。準用されるのは次の2つのみです。 - ①代理人の選任(16条):当事者は代理人を選任することができます。 - ②公示送達(15条3項):名あて人の所在不明の場合の送達方法。
聴聞には準用されないもの(弁明に特有の相違):主宰者の選定・期日における口頭での意見陳述・調書・報告書の作成等、聴聞に特有の手続は弁明には準用されません。
【過去問論点】弁明の機会の付与における弁明は行政庁が用意した書式によって書面で行われる(×→29条1項では「書面(弁明書)を提出することにより行う」とされており、行政庁の書式に限定されていない)[11-11-4]。
具体例
X市が飲食店Aに対して3日間の営業停止処分(比較的軽い不利益処分)をしようとする場合を考えましょう。X市は弁明書の提出期限前に相当な期間をおいて、Aに「食品衛生法○条に基づく3日間の営業停止処分を予定している。○年○月○日に○○の違反事実があった。弁明がある場合は○月○日までに○○あて弁明書を提出すること」という内容を書面で通知します。Aは弁明書と証拠書類を提出することで意見を述べることができます。主宰者は選定されません。
重要メモ
- ・「弁明は書面が原則(口頭も可)・主宰者不要・準用は代理人と公示送達の2つのみ」(29〜31条)
- ・弁明は書面(弁明書)提出が原則。ただし行政庁が認める場合は口頭での弁明も可(29条1項)
- ・弁明の機会の付与には主宰者の選定は不要。聴聞との最大の違い
- ・31条による準用規定:代理人(16条)・公示送達(15条3項)の2つのみ。調書・報告書・文書閲覧は準用されない
- ・弁明通知の内容3項目:①予定処分内容・根拠法令、②原因事実、③弁明書提出先・提出期限
- ・名あて人所在不明の場合:公示送達(掲示から2週間で到達とみなし)。聴聞と同様
- ・弁明書の提出のほか証拠書類等の提出もできる(29条2項)
- ・弁明手続では文書等の閲覧請求規定(18条)は準用されない。聴聞との重要な差異
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