第2節 処分
第2章 行政手続法
行政手続法の「処分」に関する規定は、申請に対する処分(第2章・5条〜11条)と不利益処分(第3章・12条〜31条)の2つに大別されます。試験では条文番号と内容の正確な対応が問われるため、各条文の義務の性質(法的義務か努力義務か)、原則と例外の区別を正確に押さえることが合格の鍵です。特に聴聞手続の詳細(通知事項・教示内容・手続の流れ・調書と報告書)は毎年のように出題される最重要分野です。
申請に対する処分
第2条3号、5条〜11条条申請とは、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(許認可等)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいいます(2条3号)。行政庁は申請に対して審査し、許認可等をするか拒否処分をするかの応答義務を負います。申請に対する処分の手続は5条から11条に規定されています。
具体例
【申請に対する処分の流れ】Aさんが飲食店の営業許可を保健所に申請しました。①保健所は審査基準を事前に公表しており(5条)、標準処理期間も公表しています(6条)。②申請が保健所に到達すると、遅滞なく審査を開始します(7条)。③審査の結果、施設基準を満たしていれば許可処分がなされます(理由提示不要)。施設基準を満たしていなければ、「食品衛生法○条の施設基準に適合しないため」と具体的理由を示して不許可処分をします(8条)。④Aさんは審査の進行状況や処分の時期の見通しについて情報提供を求めることもできます(9条)。
要件
- ・法令に基づく申請であること
- ・行政庁の許認可等を求める行為であること
- ・行政庁が諾否の応答をすべきこととされていること
効果・結論
- ・行政庁は申請に対して審査し応答する義務を負う
- ・許認可等をする場合→理由提示は不要
- ・拒否処分をする場合→理由提示が必要(8条)
条文(第2条3号、5条〜11条条)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
試験のポイント
- ・「申請」の定義のポイントは諾否の応答義務があること。応答義務のない単なる届出・報告は申請ではない
- ・許認可等(許可処分)には理由提示義務なし。拒否処分のみ理由提示が必要(8条)
- ・申請に対する処分の手続は5条〜11条の7条文。それぞれの義務の性質を正確に区別することが頻出
審査基準の設定(5条)
第5条条行政庁は、審査基準を定めるものとします(5条1項・法的義務)。審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければなりません(5条2項)。行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を公にしておかなければなりません(5条3項・原則義務)。
要件
- ・審査基準の設定:法的義務(5条1項「定めるものとする」)
- ・具体性の確保:できる限り具体的なものとする義務(5条2項)
- ・公表:原則義務。例外は行政上特別の支障があるとき(5条3項)
効果・結論
- ・国民は審査の判断基準を事前に知ることができる(予測可能性の確保)
- ・行政庁の恣意的な判断を防止する
- ・審査基準に反する処分は裁量の逸脱・濫用として違法となりうる
条文(第5条条)
第五条 行政庁は、審査基準を定めるものとする。 2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。 3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。
試験のポイント
- ・審査基準の設定は法的義務(「定めるものとする」)。処分基準の設定は努力義務(12条1項「努めなければならない」)との対比が超頻出
- ・審査基準の公表は原則義務。例外は「行政上特別の支障があるとき」のみ(5条3項)
- ・「できる限り具体的」であることが求められる(5条2項)
標準処理期間(6条)
第6条条行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに(努力義務)、これを定めたときは、申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければなりません(定めた場合の公表は義務)。
要件
- ・標準処理期間の設定:努力義務(「定めるよう努める」)
- ・定めた場合の公表:法的義務(「公にしておかなければならない」)
効果・結論
- ・申請者は処分までの見通しを知ることができる
- ・行政庁の審査の遅延を間接的に防止する
条文(第6条条)
第六条 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。
試験のポイント
- ・標準処理期間の設定は努力義務。定めた場合の公表は義務
- ・標準処理期間を超過しても処分が直ちに違法となるわけではない
- ・申請の提出先と処分権限を持つ行政庁が異なる場合は、提出先から行政庁に到達するまでの期間も含めて定める
審査の応答(7条)
第7条条行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければなりません。また、申請書の記載事項に不備がある場合等は、速やかに、申請者に対し相当の期間を定めて補正を求めるか、又は許認可等を拒否しなければなりません(7条)。
要件
- ・申請が事務所に到達したこと
- ・形式上の要件に適合する申請:遅滞なく審査開始
- ・形式上の要件に不備がある申請:速やかに補正を求めるか拒否
効果・結論
- ・行政庁は申請を受理せずに放置することはできない
- ・形式不備の申請を窓口で受け付けないこと(受理拒否)は許されない
条文(第7条条)
第七条 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは、遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。
試験のポイント
- ・申請の到達により審査開始義務が発生する。行政庁の「受理」行為は不要
- ・形式不備の場合は補正を求めるか拒否するかの選択。放置は不可
- ・窓口での受理拒否(申請書を受け取らない)は7条に違反する
理由の提示(8条)
第8条条行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければなりません(8条1項本文)。ただし、要件が客観的指標により明確に定められ、不適合が申請内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときに示せば足ります(8条1項ただし書)。理由は、書面でする処分の場合は書面で示さなければなりません(8条2項)。
具体例
Bさんが建築確認申請をしたところ不許可となりました。通知書には「建築基準法52条の容積率規定に違反するため」と具体的理由が記載されており、Bさんはこの理由を手がかりに不服申立てを検討できます。
要件
- ・拒否処分であること(許可処分には理由提示不要)
- ・処分と同時に理由を示すこと(8条1項本文)
- ・書面処分の場合は書面で理由を示すこと(8条2項)
効果・結論
- ・行政庁の恣意的な判断を防止する
- ・申請者の不服申立て・訴訟提起の便宜を図る
- ・理由不提示の処分は違法となり取消事由となりうる
条文(第8条条)
第八条 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。 2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。
試験のポイント
- ・原則:拒否処分と同時に理由を示す(8条1項本文)
- ・例外:要件が客観的指標で明確+不適合が申請内容から明らか→申請者の求めがあったときに示せば足りる(8条1項ただし書)
- ・書面処分→書面で理由提示(8条2項)
- ・理由の程度は「どの事実にどの法規を適用したか判明する程度」が必要(判例)
- ・理由の事後的な追完は原則として認められない(判例)
情報の提供(9条)
第9条条行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければなりません(9条1項・努力義務)。また、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければなりません(9条2項・努力義務)。
要件
- ・1項:申請者の求めがあること→審査の進行状況・処分時期の見通しの提示努力義務
- ・2項:申請をしようとする者又は申請者の求め→申請に必要な情報の提供努力義務
効果・結論
- ・申請者は審査の進行状況を把握できる
- ・申請前の段階でも必要な情報を得ることができる
条文(第9条条)
第九条 行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。 2 行政庁は、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない。
試験のポイント
- ・9条1項・2項ともに努力義務
- ・9条1項は「申請者」のみが対象。9条2項は「申請をしようとする者又は申請者」が対象(申請前の者も含む)
- ・情報提供の対象範囲の違いが出題される
公聴会の開催等(10条)
第10条条行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければなりません(10条・努力義務)。
要件
- ・申請者以外の者の利害を考慮すべきことが法令上の要件とされていること
- ・必要に応じて意見聴取の機会を設けること
効果・結論
- ・第三者の利害が適正に反映される
- ・処分の公正性が確保される
条文(第10条条)
第十条 行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。
試験のポイント
- ・努力義務である点に注意
- ・「法令において許認可等の要件とされている」ことが前提。単に第三者に影響があるだけでは対象外
- ・公聴会に限らず「その他の適当な方法」でもよい
複数の行政庁が関与する処分(11条)
第11条条行政庁は、申請の処理をするに当たり、他の行政庁において同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることをもって自らすべき許認可等をするかどうかについての審査又は判断を殊更に遅延させてはなりません(11条1項・審査の遅延防止)。また、行政庁は、申請の処理をするに当たり、他の行政庁の許認可等を要件とする場合は、当該他の行政庁と相互に連絡をとり、当該申請者からの申請が当該行政庁の事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでの期間の短縮に努めなければなりません(11条2項・審査の促進)。
要件
- ・11条1項:他の行政庁で関連申請が審査中であることを理由に殊更に遅延させないこと(法的義務)
- ・11条2項:複数の行政庁が関与する場合に相互連絡をとり期間短縮に努めること(努力義務)
効果・結論
- ・複数の行政庁が関与する場合の審査の遅延防止
- ・行政庁間の連携による審査の効率化
条文(第11条条)
第十一条 行政庁は、申請の処理をするに当たり、他の行政庁において同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることをもって自らすべき許認可等をするかどうかについての審査又は判断を殊更に遅延させるようなことをしてはならない。 2 一の申請又は同一の申請者からされた相互に関連する複数の申請に対する処分について複数の行政庁が関与する場合においては、当該複数の行政庁は、必要に応じ、相互に連絡をとり、当該申請者からの申請が当該行政庁の事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでの期間の短縮に努めるものとする。
試験のポイント
- ・11条1項(審査の遅延防止)は法的義務(「してはならない」)。11条2項(審査の促進)は努力義務(「努めるものとする」)
- ・他の行政庁の審査が終わっていないことを「口実に」自分の審査を遅らせることを禁止する趣旨
- ・1項と2項の義務の性質の違いが出題される
不利益処分とは
第2条4号、12条〜31条条不利益処分とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいいます(2条4号本文)。ただし、事実上の行為、申請に基づく処分(拒否処分を含む)、名あて人の同意に基づく処分、許認可等の基礎事実消滅の届出を理由とする処分は除外されます(2条4号ただし書イ〜ニ)。不利益処分の手続は12条から31条に規定されています。
具体例
【不利益処分の流れ】Cさんが経営する飲食店で食中毒が発生しました。①保健所長は処分基準(12条)に照らして処分内容を検討します。②Cさんに聴聞又は弁明の機会を付与するため通知を送ります(15条又は30条)。③聴聞又は弁明の手続を経た後、「食品衛生法○条に基づき7日間の営業停止」と理由を示して処分します(14条)。
要件
- ・行政庁が法令に基づいて行うこと
- ・特定の者を名あて人とすること
- ・直接に義務を課し又は権利を制限すること
- ・除外事由(イ〜ニ)に該当しないこと
効果・結論
- ・原則として聴聞又は弁明の機会の付与が必要(13条)
- ・理由の提示が必要(14条)
- ・処分基準の設定・公表の努力義務(12条)
条文(第2条4号、12条〜31条条)
第二条 四 不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。 イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分 ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分 ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分 ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの
試験のポイント
- ・不利益処分の除外事由が頻出。特に「申請に対する拒否処分」は不利益処分ではなく申請に対する処分として扱われる(ロ)
- ・「事実上の行為」(立入検査等)も不利益処分から除外される(イ)
- ・不利益処分の手続の全体像:処分基準(12条)→意見陳述手続(13条)→理由提示(14条)→聴聞(15条〜28条)又は弁明の機会の付与(29条〜31条)
処分基準の設定(12条)と審査基準との比較
第12条条行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければなりません(12条1項・設定も公表も努力義務)。処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければなりません(12条2項)。
要件
- ・処分基準の設定:努力義務(「努めなければならない」)
- ・処分基準の公表:努力義務
- ・具体性の確保:できる限り具体的なものとする義務(12条2項)
効果・結論
- ・行政庁の不利益処分の判断基準が明確化される
- ・国民の予測可能性が向上する
条文(第12条条)
第十二条 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。 2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
試験のポイント
- ・審査基準との比較が超頻出。以下の対比を正確に押さえること
- ・処分基準が努力義務にとどまる理由は、処分基準を公表すると脱法行為を助長するおそれがあるため
不利益処分の理由の提示(14条)
第14条条行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければなりません(14条1項本文)。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りではありません(14条1項ただし書)。この場合、処分後相当の期間内に理由を示さなければなりません(14条2項)。理由は、書面でする処分の場合は書面で示さなければなりません(14条3項)。
要件
- ・不利益処分であること
- ・原則:処分と同時に理由を示すこと(14条1項本文)
- ・例外:差し迫った必要がある場合は処分後相当の期間内に示す(14条1項ただし書・2項)
効果・結論
- ・行政庁の恣意的判断の防止と慎重な判断の促進
- ・名あて人の不服申立て・訴訟提起の便宜
- ・理由不提示は処分の取消事由となりうる
条文(第14条条)
第十四条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。 2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。 3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。
試験のポイント
- ・原則:不利益処分と同時に理由提示(14条1項本文)
- ・例外:差し迫った必要がある場合→処分後相当の期間内に提示(14条1項ただし書・2項)。ただし名あて人の所在不明等で困難な場合は不要
- ・8条(申請拒否処分)の例外(客観的指標で明確+申請者の求め)とは異なる点に注意
- ・書面処分→書面で理由提示(14条3項)
意見陳述手続の振り分け(13条)
第13条条行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、聴聞又は弁明の機会の付与のいずれかの意見陳述手続を執らなければなりません(13条1項)。聴聞が必要な場合は、①許認可等を取り消す不利益処分、②名あて人の資格又は地位を直接に剥奪する不利益処分、③行政庁が相当と認めるとき、の3つです(13条1項1号イ〜ハ)。これら以外は弁明の機会の付与が必要です(13条1項2号)。ただし、公益上緊急に不利益処分をする必要がある場合等は意見陳述手続を省略できます(13条2項)。
要件
- ・不利益処分をしようとすること
- ・聴聞が必要:許認可等の取消し(イ)、資格・地位の直接剥奪(ロ)、行政庁が相当と認めるとき(ハ)
- ・弁明の機会の付与:上記以外の不利益処分
- ・意見陳述手続の省略:13条2項各号のいずれかに該当するとき
効果・結論
- ・聴聞を経ずにした処分は違法となり取消事由となりうる
- ・弁明の機会を付与せずにした処分も違法となりうる
- ・意見陳述手続の省略事由に該当する場合は適法に手続を省略できる
条文(第13条条)
第十三条 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。 一 次のいずれかに該当するとき 聴聞 イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。 ロ イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。 ハ イ及びロに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。 二 前号イからハまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与 2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない。 一 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、前項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないとき。 二 法令上必要とされる資格がなかったこと又は失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分をしようとするとき。 三 施設若しくは設備の設置、維持若しくは管理又は物の製造、販売その他の取扱いについて遵守すべき事項が法令において技術的な基準をもって明確にされている場合において、専ら当該基準が充足されていないことを理由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分をしようとするとき。 四 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき。 五 当該不利益処分の性質上、それによって課される義務の内容が当事者の意見をきいて決定すべきものとは認められないものであるとき。
試験のポイント
- ・聴聞が必要な場合の3類型(イ〜ハ)を正確に記憶すること
- ・13条2項の省略事由も頻出。特に「公益上緊急に必要」(1号)、「資格がなかったことの判明」(2号)、「技術的基準の不充足」(3号)、「金銭の額の確定等」(4号)
- ・営業停止命令は許認可等の「取消し」ではないので弁明の機会の付与が原則
聴聞手続(15条〜28条)
第15条〜28条条聴聞は、不利益処分の中でも特に重大な処分(許認可等の取消し等)について、名あて人に意見陳述・証拠提出・資料閲覧の機会を保障する手続です。行政庁による通知(15条)に始まり、主宰者による審理(19条・20条)、聴聞調書・報告書の作成(24条)を経て、行政庁が調書と報告書を十分に参酌して処分を決定します(26条)。
要件
- ・聴聞が必要な不利益処分であること(13条1項1号)
- ・聴聞期日までに相当な期間をおいて書面で通知すること(15条1項)
- ・主宰者を指名すること(19条)
- ・当事者に意見陳述・証拠提出・質問の機会を保障すること(20条)
効果・結論
- ・当事者の防御権が手続的に保障される
- ・行政庁は聴聞調書と報告書を十分に参酌して処分を決定する(26条)
- ・聴聞手続を経ずにした処分は違法となりうる
試験のポイント
- ・聴聞通知の記載事項(15条1項):①予定される不利益処分の内容及び根拠法令の条項、②不利益処分の原因となる事実、③聴聞の期日及び場所、④聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
- ・教示すべきこと(15条2項):①聴聞期日に出頭して意見を述べ証拠書類等を提出できること(又は陳述書・証拠書類等の提出で出頭に代えられること)、②聴聞終結時までの間、不利益処分の原因事実を証する資料の閲覧を求められること
- ・名あて人の所在不明の場合(15条3項):行政庁の事務所の掲示場に掲示。掲示開始日から2週間経過で到達したものとみなす
- ・聴聞手続の流れ(詳細):①行政庁が名あて人に聴聞通知(15条1項)→②当事者は代理人を選任可能(16条)→③主宰者が関係人の参加を許可(17条)→④当事者等は資料の閲覧を請求可能(18条・閲覧拒否は第三者の利益を害するおそれがあるとき等の正当な理由があるときのみ)→⑤主宰者を行政庁が指名(19条)→⑥最初の期日冒頭で行政庁職員が処分内容等を説明(20条1項)→⑦当事者・参加人が意見陳述・証拠提出・行政庁職員への質問(20条2項・主宰者の許可が必要)→⑧必要に応じて続行(22条)→⑨当事者の不出頭の場合の聴聞終結(23条)→⑩主宰者が聴聞調書(審理経過の記録・陳述要旨)及び報告書(主宰者の意見)を作成し行政庁に提出(24条)→⑪当事者・参加人は調書及び報告書の閲覧が可能(24条4項)
- ・不利益処分の決定(26条):行政庁は聴聞調書の内容及び報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌して処分を決定する。ただし主宰者の意見に拘束されるわけではない
- ・聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、非公開(20条6項)
- ・聴聞を経てされた不利益処分については、当事者は当該処分について審査請求をすることができない(27条2項。ただし法律に特別の定めがある場合を除く)
弁明の機会の付与(29条〜31条)と聴聞手続の準用
第29条〜31条条弁明の機会の付与は、聴聞に比べて簡易な手続です。弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書の提出によって行います(29条1項)。行政庁は、弁明書の提出期限までに相当な期間をおいて、名あて人に対し通知しなければなりません(30条)。聴聞手続の一部の規定が弁明の機会の付与に準用されます(31条)。
要件
- ・弁明は原則として弁明書の提出による。口頭は行政庁が認めた場合のみ(29条1項)
- ・弁明書の提出期限までに相当な期間をおいて書面で通知(30条)
- ・通知の記載事項:①予定される不利益処分の内容及び根拠法令の条項、②不利益処分の原因となる事実、③弁明書の提出先及び提出期限
効果・結論
- ・名あて人に弁明の機会が保障される
- ・証拠書類等を提出することができる(29条2項)
条文(第29条〜31条条)
第二十九条 弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。 2 弁明をするときは、証拠書類等を提出することができる。 第三十条 行政庁は、弁明書の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その日時)までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。 一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項 二 不利益処分の原因となる事実 三 弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)
試験のポイント
- ・弁明は原則書面。口頭は行政庁が認めた場合のみ(29条1項)。聴聞は原則口頭
- ・弁明の通知の記載事項(30条)は聴聞の通知(15条1項)と比較して覚える。弁明では「聴聞の期日及び場所」ではなく「弁明書の提出先及び提出期限」が通知される
- ・弁明の通知には聴聞のような教示(15条2項)の規定はない
- ・弁明には資料閲覧権がない(18条は準用されない)。これが聴聞との最大の手続的差異
- ・聴聞手続の準用(31条):15条3項(所在不明の場合の掲示による通知)と16条(代理人の選任)が弁明の機会の付与に準用される
まとめ
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