第1節 行政手続法総説
第2章 行政手続法
行政手続法は、行政が処分や行政指導などを行う際に守るべき共通のルールを定める法律です。行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的としています。本節では、行政手続法の全体像として、行政手続とは何か、行政手続法がどのような内容を規律しているか、そしてその目的を学びます。行政手続法は行政書士試験の最重要分野の一つであり、各章の規律対象と手続の違いを正確に理解することが合格の鍵となります。
行政手続とは
行政手続とは、行政機関が処分や行政指導などの行政活動を行う際に踏むべき手順・プロセスをいいます。行政手続法が制定される以前は、行政活動の手続について統一的なルールがなく、行政庁の恣意的な判断により国民の権利利益が侵害されるおそれがありました。行政手続法は、行政が活動する際の共通ルールを定めることで、行政の公正性と透明性を確保し、国民が予測可能な形で行政と関わることができるようにしたものです。
具体例
Aさんが飲食店の営業許可を申請したところ、行政庁は理由も示さず、Aさんに反論の機会も与えないまま不許可処分としました。このような恣意的な行政を防ぐため、行政手続法は、審査基準の設定・公表(5条)、拒否処分の理由提示(8条)などの手続を定めています。もし行政手続法がなければ、Aさんは「なぜ不許可なのか」「どうすれば許可されるのか」を知ることすらできません。
要件
- ・行政機関が行政活動を行う際のプロセスであること
- ・事前の手続(処分がされる前の手続)であること
- ・国民の権利利益の保護に資するものであること
効果・結論
- ・行政の恣意的な判断を防止する
- ・国民に行政の意思決定過程を明らかにする(透明性の確保)
- ・国民に反論・意見陳述の機会を保障する(公正性の確保)
- ・国民の予測可能性を確保する(審査基準・処分基準の公表等)
試験のポイント
- ・行政手続法は事前の手続を定める法律。事後の手続(不服申立て)は行政不服審査法、裁判は行政事件訴訟法が規律する
- ・行政手続法の対象は処分・行政指導・届出・命令等の4つ。行政計画・行政契約・行政強制は対象外
- ・行政手続法は憲法31条(適正手続の保障)の趣旨を行政手続に具体化した法律と位置づけられる
行政手続法の内容
行政手続法は、行政活動の各場面に応じた手続ルールを章ごとに定めています。大きく分けると、処分に関するルール(申請に対する処分・不利益処分)、行政指導に関するルール、届出に関するルール、命令等を定める手続に関するルール(意見公募手続)の4分野を規律しています。各分野で行政庁に求められる手続が異なるため、場面ごとの手続の違いを正確に押さえることが重要です。
具体例
【処分に関するルールのイメージ】Bさんが建築確認を申請しました。行政庁は審査基準(5条)を公表しており、Bさんはどのような基準で審査されるか予め知ることができます。申請が到達すると行政庁は遅滞なく審査を開始し(7条)、不許可の場合は「建築基準法○条に適合しない」と理由を示します(8条)。一方、Cさんの飲食店で食中毒が発生し営業停止処分を検討する場合、行政庁はCさんに事前に聴聞の通知を送り(15条)、Cさんは聴聞の場で意見を述べ、証拠書類を閲覧することができます(18条)。処分の際には理由を提示しなければなりません(14条)。 【行政指導に関するルールのイメージ】市の職員が飲食店Dさんに「衛生管理を改善してください」と指導しました。行政指導は処分ではないのでDさんに従う義務はなく(32条1項)、従わないことを理由に不利益な取扱いをすることも禁止されます(32条2項)。口頭で行政指導がされた場合、Dさんは書面の交付を求めることができます(35条3項)。
要件
- ・行政手続法の規律対象は4分野:処分・行政指導・届出・命令等
- ・処分はさらに「申請に対する処分」と「不利益処分」に分かれる
- ・各分野で手続の内容が異なる
効果・結論
- ・申請に対する処分:審査基準の設定義務・公表義務、標準処理期間の設定努力義務、拒否処分の理由提示義務
- ・不利益処分:処分基準の設定・公表努力義務、聴聞又は弁明の機会の付与、理由提示義務
- ・行政指導:任意性の原則、不利益取扱い禁止、方式の明確化、中止等の求め
- ・届出:到達主義(形式要件を満たせば到達時に義務履行完了)
- ・命令等を定める手続:意見公募手続(パブリックコメント)
試験のポイント
- ・審査基準:設定義務あり(5条1項)。公表は行政上特別の支障がない限り義務(5条3項)
- ・処分基準:設定・公表ともに努力義務(12条1項)
- ・標準処理期間:設定は努力義務。定めた場合は公表義務(6条)
- ・聴聞と弁明の区別:許認可等の取消しや資格・地位の直接剥奪→聴聞。それ以外→弁明の機会の付与(13条1項)
- ・届出は到達主義:行政庁の受理行為は不要。形式要件を満たせば到達時に義務履行完了(37条)
- ・意見公募手続(パブリックコメント):命令等を定める際に広く国民の意見を求める手続(39条)。意見提出期間は原則30日以上
行政手続法の目的
第1条条行政手続法は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とします(1条1項)。「透明性」とは、行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいいます。他の法律に特別の定めがある場合はそちらが優先します(1条2項・一般法としての性格)。
具体例
食品衛生法に基づき飲食店の営業停止処分を行う場合、食品衛生法に特別の手続規定がなければ行政手続法の不利益処分の規定(聴聞・弁明、理由提示等)が適用されます。食品衛生法に特別の定めがあれば、そちらが優先します(1条2項)。行政手続法はこのように行政手続の一般法としての性格を持ちます。
要件
- ・処分・行政指導・届出に関する手続、命令等を定める手続が対象
- ・共通する事項を定める一般法であること
- ・他の法律に特別の定めがある場合はそちらが優先
効果・結論
- ・行政運営における公正の確保と透明性の向上が図られる
- ・国民の権利利益が保護される
- ・行政の意思決定の内容と過程が国民に明らかになる
条文(第1条条)
第一条 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。 2 処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。
試験のポイント
- ・最終目的は「国民の権利利益の保護」。「公正の確保」と「透明性の向上」はそのための手段
- ・「透明性」の定義:行政上の意思決定の内容及び過程が国民にとって明らかであること
- ・一般法としての性格:他の法律に特別の定めがある場合はそちらが優先(1条2項)
- ・適用除外(3条):刑事事件関係、学校教育関係、公務員の身分関係等は適用除外
- ・地方公共団体の適用関係(3条3項):条例・規則に根拠を置く処分・届出・行政指導・命令等の手続は適用除外。ただし法律に根拠を置く処分・届出には適用される。地方公共団体は行政手続法の趣旨にのっとり必要な措置を講ずるよう努めなければならない(46条)
まとめ
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