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テキスト/行政法/第1節 行政手続法総説

第1節 行政手続法総説

第2章 行政手続法

行政手続法は、行政が処分や行政指導などを行う際に守るべき共通のルールを定める法律です。行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的としています。本節では、行政手続法の全体像として、行政手続とは何か、行政手続法がどのような内容を規律しているか、そしてその目的を学びます。行政手続法は行政書士試験の最重要分野の一つであり、各章の規律対象と手続の違いを正確に理解することが合格の鍵となります。

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行政手続法とは

簡単にいうと

簡単にいうと、飲食店の営業許可を突然取り消されないように、行政活動のルールを事前に決めたのが行政手続法です。不適切な行政活動が起きてから裁判で争うのではなく、そもそも起きないようにするための「事前手続ルール」を定めた法律です。

行政機関が国民に対して行政処分を下したり、行政指導を行ったりする場合には、その手続の公正さと透明性を確保する必要があります。しかし、行政手続法が制定される以前は、各行政機関がそれぞれ独自のやり方で行政活動を行っており、統一的な手続基準が存在していませんでした。

このような状況を改善するために制定されたのが行政手続法(平成5年制定、平成6年施行)です。行政手続法の根本的な考え方は「事前手続規制」にあります。つまり、不適切な行政活動によって国民の権利利益が侵害された後に、行政不服審査法や行政事件訴訟法によって「事後的に救済する」のではなく、そもそも不適切な行政活動が行われないよう、行政機関の活動に手続的なルールを課す点に特徴があります。

行政手続法の位置づけを理解するには、行政活動の全体像を把握することが大切です。行政活動に対する法的コントロールには大きく「事前コントロール」と「事後コントロール」の二種類があります。行政手続法は事前コントロールの代表例であり、行政処分等を行う際の手続を適正に規律します。一方、行政不服審査法(行政審判手続)と行政事件訴訟法(裁判所による司法審査)は、処分等がなされた後の事後コントロールの手段です。

また、行政手続法は「行政手続に関する一般法」として機能しており、他の個別法に特別の規定がある場合にはそちらが優先されますが(法律の特別法優先原則)、個別法に規定がない事項については行政手続法が適用されます。

なお、参考書では「処分に関する手続が行政手続法の中心テーマ」とされており、処分には大きく「申請に対する処分(5条〜11条)」と「不利益処分(12条〜31条)」の2種類があることを最初に意識しておくことが、この章全体を理解する鍵となります。

具体例

飲食店を開業しようとするAさんを例にとりましょう。Aさんが保健所に営業許可申請を提出した場合、行政手続法により保健所は審査基準を公表しておく義務があり、一定期間内に許可・不許可の判断を示さなければなりません。また、既にAさんの飲食店が営業中であるところ、行政庁が営業停止処分(不利益処分)を下そうとする場合には、事前にAさんへ意見陳述の機会を与えなければなりません。このように、行政手続法はAさん(国民)の立場を守るための「行政活動のルール集」なのです。

行政手続法とは

行政手続法とは

法律名
機能
タイミング
行政手続法
行政活動の事前手続規制
行政処分等を行う前
行政不服審査法
行政機関への不服申立て
処分を受けた後(事後)
行政事件訴訟法
裁判所への行政訴訟
処分を受けた後(事後)

重要メモ

  • 「行政手続法は処分を受ける前の事前手続ルールを定めた一般法で、事後救済(行政不服審査法・行政事件訴訟法)とは役割が異なる」がポイント
  • 行政手続法(平成5年制定・平成6年施行)は行政手続に関する一般法で、個別法に特別の規定がある場合は個別法が優先される
  • 事前コントロール(行政手続法)と事後コントロール(行政不服審査法・行政事件訴訟法)の対比を整理して覚える
  • 処分には「申請に対する処分(5〜11条)」と「不利益処分(12〜31条)」の2種類があることを最初に把握する
  • 行政手続法は行政契約・行政計画には適用されない(手続規定が置かれていない)
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行政手続法の内容

簡単にいうと

簡単にいうと、行政手続法は処分・行政指導・届出・命令等制定の手続を定めています。行政契約と行政計画は対象外という点が試験でよく問われます。

行政手続法が規律する行政活動の範囲は明確に定められています。行政手続法の主な内容(規律対象)を整理すると、以下の4つに分類されます。

処分に関する手続:処分はさらに「申請に対する処分(5条〜11条)」と「不利益処分(12条〜31条)」の2種類に分かれます。申請に対する処分とは、法令に基づき行政庁の許認可等を求める行為(申請)に対して行政庁が諾否の応答をするものです(2条3号)。これに対して不利益処分とは、行政庁が法令に基づき特定の者を名あて人として、直接にその権利を制限し、またはその権利に制限を課する処分です(2条4号)。

行政指導に関する手続(32条〜36条の2):行政指導とは、行政機関がその任務や所掌事務の範囲内において、一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為・不作為を求める指導・勧告・助言等のことをいいます。強制力はありませんが、行政実務では頻繁に用いられます。

届出に関する手続(37条):届出とは、行政庁に対して一定の事項を通知する行為であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているものです。申請と異なり、諾否の応答を求めるものではありません。

命令等を定める手続(38条〜45条):命令等(法律に基づく政令・省令等の行政立法)を制定する際の手続を規定しています。パブリックコメント(意見公募手続)が代表例です。

重要な点として、行政契約(国や地方公共団体が私人と結ぶ契約)および行政計画(まちづくり計画等)については、行政手続法上の手続規定が置かれていません。これは試験で頻繁に問われる論点ですので確実に押さえてください。

また、行政手続法は国の行政機関だけでなく、地方公共団体の機関が処分・行政指導・届出に関する手続を行う場合も一部適用されます(ただし命令等の制定手続については地方公共団体は含まれず、各地方公共団体が条例で定める)。

具体例

行政手続法の適用対象を具体例で考えましょう。飲食店営業許可申請(申請に対する処分)・営業停止処分(不利益処分)・建築指導(行政指導)・廃業の届出(届出)・厚生労働省令の制定(命令等)はすべて行政手続法の対象です。一方、国有地の売却契約(行政契約)や都市計画決定(行政計画)については行政手続法に手続規定がなく、対象外となります。

行政手続法の内容

行政手続法の内容

対象
条文範囲
行政手続法の適用
申請に対する処分
5〜11条
適用あり
不利益処分
12〜31条
適用あり
行政指導
32〜36条の2
適用あり
届出
37条
適用あり
命令等制定手続
38〜45条
適用あり
行政契約
規定なし
適用なし(対象外)
行政計画
規定なし
適用なし(対象外)

重要メモ

  • 「行政手続法が規律する対象は①申請処分②不利益処分③行政指導④届出⑤命令等制定手続の5つで、行政契約・行政計画は対象外」がポイント
  • 行政手続法の規律対象:①申請に対する処分(5〜11条)、②不利益処分(12〜31条)、③行政指導(32〜36条の2)、④届出(37条)、⑤命令等制定手続(38〜45条)
  • 行政契約・行政計画は行政手続法の対象外(過去問頻出論点)
  • 行政指導は強制力がないが行政手続法の適用対象である(2条6号)
  • 地方公共団体の機関が行う命令等の制定手続については行政手続法は適用されず、各地方公共団体が条例で定める
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行政手続法の目的

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簡単にいうと

簡単にいうと、行政手続法の目的条文は試験で直接問われます。「公正の確保」と「透明性の向上」の2つがキーワードで、その先にある「国民の権利利益の保護」が最終目的です。条文をそのまま覚えてしまいましょう。

行政手続法の目的は1条1項に定められており、試験でも頻出の重要条文です。

行政手続法第1条1項(目的等) 「この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第46条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。」

この条文の構造を整理すると、「共通事項を定める」→「公正の確保・透明性の向上」→「国民の権利利益の保護」という目的の連鎖になっています。

透明性の定義が条文中に明示されている点は重要です。「行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであること」と定義されており、単に結果だけでなく、意思決定の過程(プロセス)も明らかにすることが求められています。この定義は第46条でも同じ意味で使われます。

目的として挙げられているのは「公正の確保」と「透明性の向上」の2つですが、最終的な目的(「もって」以下)は「国民の権利利益の保護」です。つまり、公正・透明な行政手続は国民の権利利益を守るための手段と位置づけられています。

なお、1条2項は、行政手続法の解釈・運用にあたって当事者の利益保護のみを目的とするのではなく、公益との調整も考慮するという趣旨を定めています(試験ではやや発展的な内容)。

具体例

A市が市民Bさんに対して不利益処分を下す場面を例にとりましょう。処分に至るまでの理由(なぜその処分をするのか)や、審査の経過(どのような判断プロセスを経たのか)を国民に明らかにすることが「透明性の向上」の実践です。こうした手続的な透明性の確保が、最終的にBさんの権利利益を守ることにつながるのです。

条文(第1条)

この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第46条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。

重要メモ

  • 「目的条文(1条1項)は公正の確保・透明性の向上→国民の権利利益の保護という目的の連鎖を覚える」がポイント
  • 目的条文(1条1項)のキーワードは「公正の確保」「透明性の向上」「国民の権利利益の保護」の3つ
  • 透明性の定義(1条1項括弧書き):「行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであること」
  • 最終目的は「国民の権利利益の保護」で、公正の確保・透明性の向上はそのための手段と位置づけられる
  • 透明性の定義は第46条でも同じ意味で使われる(1条1項括弧書きが46条を参照する形)
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審査基準(5条)

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簡単にいうと

簡単にいうと、審査基準は「どんな申請なら許可を出すか」の判断基準です。行政庁はこれを定めることも、公表することも、法的義務として課されています。後述の処分基準(努力義務)との対比が試験の核心です。

審査基準とは(5条)

審査基準とは、「どのような場合に許可処分を出すのか」を判断する際の基準となるものです。申請に対する処分を審査する際の判断基準であり、以下の2つの義務が課されています。

①審査基準を定めること → 法的義務(「定めなければならない」) 審査基準を設定することは法律上の義務であり、行政庁は審査基準を定めなければなりません。この際、できる限り具体的なものとしなければならないとされています。「できる限り具体的」という限定が付いているのは、行政の裁量に一定の幅を認めつつも、恣意的な判断を防ぐためです。

②審査基準を公にすること → 法的義務(「公にしておかなければならない」) 定めた審査基準は公表(公にしておく)することも法的義務です。申請者が事前に審査基準を知ることができるようにするためです。ただし、審査基準を書面で申請者に交付する義務は課されていません(あくまで「公にしておく」義務であり、積極的な交付義務ではありません)。

不利益処分に適用される処分基準(12条)と対比すると、処分基準は定めること・公にすることがいずれも努力義務にとどまります。この違いは試験の最頻出論点の一つです。

具体例

A市が飲食店の営業許可申請を審査する場面を例にとりましょう。A市は「食品衛生上の基準を満たしていること」「施設基準に適合していること」といった審査基準を事前に定め(法的義務)、市のホームページや窓口に掲示して公表しておかなければなりません(法的義務)。申請者は審査基準を事前に確認することができますが、行政庁には審査基準の書面を個別に交付する義務はありません。

項目
対象
定めること
公にすること
審査基準(5条)
申請に対する処分
法的義務
法的義務
処分基準(12条)
不利益処分
努力義務
努力義務

重要メモ

  • 「審査基準は定めることも公にすることも両方法的義務で、処分基準(努力義務)と真逆のセットとして覚える」がポイント
  • 審査基準(5条):定めること → 法的義務(義務)、公にすること → 法的義務(義務)
  • 審査基準はできる限り具体的なものとしなければならない
  • 審査基準を書面で申請者に個別交付する義務はない(「公にしておく」義務であり積極的な交付義務ではない)
  • 審査基準(申請処分)は定め・公表ともに法的義務 ⇔ 処分基準(不利益処分・12条)は定め・公表ともに努力義務(最頻出対比)
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標準処理期間(6条)

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簡単にいうと

簡単にいうと、標準処理期間は「申請からどのくらいで処理するか」の目安です。審査基準と違い、定めること自体は努力義務ですが、定めた場合の公表は法的義務になります。この非対称な義務の構造を押さえましょう。

標準処理期間とは(6条)

標準処理期間とは、申請が当該行政庁の事務所に到達してから、許可・不許可等の処分が出されるまでにかかる通常の期間の目安です。これは申請者が処理の見通しを立てられるようにするためのものです。

①標準処理期間を定めること → 努力義務(「定めるよう努めるものとする」) 標準処理期間を設定すること自体は努力義務にとどまります。ただし、行政の迅速性・効率性の観点から、定めることが望ましいとされています。

②標準処理期間を公にすること → 法的義務(「公にしなければならない」) 定めた場合には、公にすることは法的義務となります。

このように、標準処理期間には「定めること=努力義務、定めた場合の公表=法的義務」という非対称な構造があります。審査基準(定めること・公にすること、いずれも法的義務)と比較して整理しておくことが大切です。

標準処理期間が公にされているにもかかわらず、行政庁が標準処理期間内に処分をしなかった場合でも、直ちに違法となるわけではありません。あくまで「通常の目安」であるため、超過した場合でも申請者に対する賠償責任が自動的に生じるわけではありませんが、行政の適切な管理が求められます。

具体例

A市が「飲食店営業許可申請は受理から30日以内に処理する」と標準処理期間を定めた場面を考えましょう。この場合、標準処理期間を定めること自体は努力義務でしたが、一度定めた以上はそれを市のホームページや窓口で公表することは法的義務です(公にしなければならない)。30日を超えても直ちに違法になるわけではありませんが、合理的理由なく大幅に超過すれば行政の不作為として問題になりえます。

項目
定めること
公にすること
審査基準(5条)
法的義務
法的義務
標準処理期間(6条)
努力義務
法的義務(定めた場合)
処分基準(12条)
努力義務
努力義務

重要メモ

  • 「標準処理期間は定めること=努力義務・定めたら公にすること=法的義務という非対称な構造」がポイント
  • 標準処理期間(6条):定めること → 努力義務、公にすること → 法的義務(定めた場合のみ)
  • 「定めること」と「公にすること」で義務の強度が異なる点に注意(審査基準はどちらも法的義務と対比)
  • 標準処理期間を超過しても直ちに違法とはならない(あくまで通常の目安)
  • 3つの基準の義務対比:審査基準(定め・公表ともに法的義務)>標準処理期間(定め=努力義務・公表=法的義務)>処分基準(定め・公表ともに努力義務)
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審査の応答と理由の提示(7条・8条)

7,8

簡単にいうと

簡単にいうと、申請が届いたら行政庁は遅滞なく審査を始め(7条)、拒否する場合は必ず理由を示さなければなりません(8条)。どちらも法的義務です。申請に不備があった場合の扱いも7条の重要論点です。

審査の応答(7条)

申請が当該行政庁の事務所に到達したとき、行政庁は遅滞なく当該申請の審査を開始しなければなりません(法的義務)。これは申請者を長期間放置することを禁じる規定です。

申請に不備があった場合(申請の形式上の要件に適合しない場合)、行政庁は申請者に補正を求めるか申請を拒否する処分をしなければなりません。つまり、不備があっても無視したり放置したりすることは許されません。また、補正期間を設定して申請者に補正を求めることができます。

理由の提示(8条)

申請に対して拒否処分をする場合には、その理由を示さなければなりません(法的義務)。これは申請者が「なぜ拒否されたのか」を理解し、適切な対応(補正・再申請等)を取れるようにするためです。

理由の提示の時期・方法については以下のとおりです。 - 原則:書面で処分をするときは書面で理由を示す - 例外:審査基準が数量的な指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、申請書の記載または添付書類等から明らかに審査基準に適合しないことが判明するときは、申請者の求めがあったときに理由を示せばよい(例外的に事後的理由提示が許容)

なお、許可処分(申請を認める場合)には理由の提示義務はありません。拒否処分をする場合のみ理由の提示義務が課される点に注意が必要です。

具体例

A社が廃棄物処理施設の設置許可を申請した場面を例にとりましょう。行政庁は申請書が届いたら遅滞なく審査を開始し(7条)、申請書に不備があれば補正を求めるか拒否処分を下さなければなりません。もし不許可処分を下す場合は「○○法○条の基準を満たしていないため」という理由を書面で示します(8条)。一方、許可処分を下す場合は理由の提示は必要ありません。

重要メモ

  • 「申請が届いたら遅滞なく審査開始(7条・義務)で、拒否するときだけ理由提示義務(8条)が生じる」がポイント
  • 審査の応答(7条):申請が到達したら遅滞なく審査を開始する義務(法的義務)
  • 申請に形式上の不備がある場合は補正を求めるか申請を拒否しなければならない(放置・無視は禁止)
  • 申請拒否処分をするときは理由を示す義務(8条・法的義務)があり、書面処分は書面で理由を示す
  • 許可処分(申請を認める場合)には理由の提示義務はない(拒否処分の場合のみ義務)
  • 重要判例・一般旅券発給拒否処分事件(最判平4.12.10):理由の記載は「いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したか」を申請者が了知できる程度でなければならない
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情報の提供と公聴会(9条・10条)

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簡単にいうと

簡単にいうと、申請者からの問い合わせに答えること(9条)と、第三者の意見を聴く公聴会を開くこと(10条)はどちらも努力義務です。法的義務ではない点で7条・8条と区別しましょう。

情報の提供(9条)

行政庁は、申請者からの質問(申請に必要な書類は何か、処分の状況はどうなっているかなど)に対して、できる限り回答する努力義務が課されています。具体的には、当該申請に係る審査の進行状況および処分の時期の見通しを示すよう努めなければなりません。また、申請をしようとする者または申請者の求めに応じ、申請書の記載や添付書類に関する事項などの情報提供に努めなければなりません(努力義務)。

9条は法的義務ではなく努力義務である点が重要です。7条(審査開始義務)・8条(理由提示義務)がいずれも法的義務であるのとは対照的です。

公聴会の開催(10条)

申請に対して許可処分が出されることで、申請者以外の者(第三者)に影響が出る場合があります。このような場合、行政庁は公聴会を開くよう努力義務が課されます。公聴会とは、申請者以外の者の意見を聴く機会を設ける手続で、例えば大規模施設の建設許可など、周辺住民に影響が及ぶ許可処分の際に活用されます。ただし、公聴会の開催はあくまで努力義務であり、必ず開催しなければならないわけではありません。

具体例

A社が廃棄物処理施設の設置許可を申請した場面を例にとりましょう。A社から「今どの段階か」と問い合わせがあれば、行政庁は審査の進行状況や処分の時期の見通しをできる限り伝えるよう努めます(9条・努力義務)。また、施設建設が近隣住民への影響が大きいため、公聴会を開いて周辺住民の意見を聴く機会を設けるよう努めます(10条・努力義務)。どちらも「しなければならない」ではなく「努める」にとどまります。

条文
内容
義務の種類
7条
審査の開始(申請到達後遅滞なく)
法的義務
8条
拒否処分の理由の提示
法的義務
9条
情報の提供(審査状況の通知等)
努力義務
10条
公聴会の開催
努力義務

重要メモ

  • 「情報提供(9条)も公聴会(10条)も努力義務にとどまり、7条・8条の法的義務とは対照的」がポイント
  • 情報の提供(9条):審査の進行状況・処分時期の見通しを示すよう努める → 努力義務(法的義務ではない)
  • 公聴会の開催(10条):申請者以外の者の利害を考慮すべき場合に公聴会を開くよう努める → 努力義務
  • 7条(審査開始)・8条(理由提示)は法的義務 ⇔ 9条(情報提供)・10条(公聴会)は努力義務(対比頻出)
  • 公聴会は申請者以外の者(第三者)の意見を聴くための場であり、許認可等の要件として個別法に定めがある場合に活用される
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複数行政庁の関与(11条)

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簡単にいうと

簡単にいうと、同じ申請に複数の行政庁が関与するとき、A庁の審査遅延をB庁の審査遅延の理由にしてはいけない、という規定です。たとえばバーやスナックを開業するには保健所と警察署の両方から許可をもらう必要がありますが、そのような場合のルールです。

バーやスナックを開業しようとする場合、保健所(食品衛生上の許可)と警察署(風俗営業の許可)の両方に申請し、それぞれから許可を受ける必要があります。このように、一人の申請者が複数の行政庁に対して関連する申請を同時並行で行うケースがあります。

このような複数行政庁の関与が生じる場合、申請者にとって不利益な状況が起こりやすくなります。例えば「保健所がまだ審査中だから、うちも審査を進めなくていいだろう」と警察署が判断してしまうと、両方の処理が遅延してしまいます。行政手続法11条はこのような事態を防ぐための規定です。

11条が定めるルールは以下の2点です。

審査の遅延防止(法的義務):行政庁は、申請の処理をするにあたり、他の行政庁において同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることをもって、自らすべき許可処分または許可処分に係る審査を漫然と遅延させることをしてはなりません。つまり、他の行政庁の審査中を理由に自庁の審査を止めることは禁止されます。これは法的義務です。

審査の促進(努力義務):複数の行政庁は、必要に応じ、相互に連絡をとり、当該申請者からの説明の聴取を共同して行う等により、審査の促進に努めるものとします。これは努力義務です。

具体例

Cさんがバーを開業しようと、保健所と警察署に同時に申請を提出した場面を例にとりましょう。警察署が「保健所の審査がまだ終わっていないから、うちも審査を保留しよう」として処理を遅延させることは、11条違反となります。各行政庁は独立して迅速に審査を進めなければなりません。また、必要に応じて保健所と警察署が共同でCさんから説明を聴取するなど、連携して審査促進に努めることが望まれます。

重要メモ

  • 「複数行政庁が関与するとき他庁待ちを理由に自庁の審査を遅らせることは禁止(法的義務)、連絡・協力は努力義務」がポイント
  • 複数行政庁が関与する申請において、他庁の審査中を理由に自庁の審査を遅延させることは禁止(法的義務)
  • 複数行政庁が連絡をとり審査を促進すること(共同での説明聴取等)は努力義務
  • 典型例:バー・スナック開業の場合、保健所(食品衛生)と警察署(風俗営業)の両方に申請が必要
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不利益処分とは

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簡単にいうと

簡単にいうと、不利益処分とは行政庁が「特定の人の権利を制限する処分」のことです。申請に対する処分が「申請者の求めへの応答」であるのとは対照的に、不利益処分は行政庁の側から一方的に権利を制限するものです。

不利益処分の定義(2条4号)

不利益処分とは、行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に①その権利を制限し、または②その権利に制限を課する処分をいいます(2条4号)。典型例は飲食店の営業停止処分や、営業許可の取消処分です。

申請に対する処分(5条〜11条)が「申請者が自ら申し出た行為に対する応答」であるのに対し、不利益処分(12条〜31条)は「行政庁の側から特定人に対して制裁・規制を課す行為」です。申請者の意思に関わりなく(むしろ反して)行われるため、より厳格な手続保障が求められます。

不利益処分に該当しないケース

申請に対する拒否処分は、「申請に対する処分」であって「不利益処分」には分類されません。したがって、拒否処分については意見陳述手続(聴聞・弁明の機会)の適用はなく(ただし理由の提示義務はある)、不利益処分の手続保障の枠組みとは別に扱われます。

また、不特定多数の者に対して一般的・抽象的に義務を課す法令(行政立法)は、特定の者を名あて人とするものではないため、不利益処分には該当しません。

不利益処分に関する手続の全体像(12条〜31条)

不利益処分の手続は以下の流れで規律されています。①処分基準の設定・公示(12条)→②意見陳述手続(聴聞または弁明の機会の付与)(13条〜31条)→③理由の提示(14条)。この流れを意識しながら各制度を学ぶことが大切です。

具体例

飲食店Dの店主が食品衛生法に違反したため、保健所が「30日間の営業停止処分」を検討している場面を例にとりましょう。これは行政庁が特定の者(飲食店D)を名あて人として、直接その権利(営業権)を制限する処分であり、典型的な不利益処分です。一方、飲食店Dが「新たに食材倉庫を増設したい」と申請した場合の審査・拒否は、申請に対する処分であって不利益処分には該当しません。

区分
内容
手続保障
申請に対する処分
申請者の求めへの応答(許可・拒否)
審査基準・理由提示・標準処理期間(5〜11条)
不利益処分
特定人の権利を制限・制裁する処分
処分基準・意見陳述・理由提示(12〜31条)

重要メモ

  • 「不利益処分は特定の名あて人の権利を制限する処分で、申請拒否処分は不利益処分に含まれない」がポイント
  • 不利益処分の定義(2条4号):行政庁が法令に基づき特定の者を名あて人として直接その権利を制限する処分
  • 申請に対する拒否処分は「不利益処分」ではなく「申請に対する処分」に分類される(意見陳述手続の対象外)
  • 不特定多数に一般的・抽象的に義務を課す行政立法は特定の者を名あて人とするものではないため不利益処分に該当しない
  • 不利益処分の手続の流れ:処分基準の設定・公示(12条)→意見陳述手続(13〜31条)→理由の提示(14条)
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処分基準(12条)

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簡単にいうと

簡単にいうと、処分基準は「どんな場合に不利益処分を出すか」の基準ですが、審査基準と違い、定めることも公表することも努力義務にとどまります。この対比が試験の最頻出論点です。

処分基準とは(12条)

処分基準とは、「どのような場合に不利益処分を出すか」を判断する基準です。不利益処分に関する処分基準については以下のとおりです。

①処分基準を定めること → 努力義務(「定めるよう努めるものとする」) 審査基準(5条)とは異なり、処分基準を定めること自体は努力義務にとどまります。営業停止などの不利益処分は行政の裁量が広く、案件の多様性に対応するため、一律の基準設定が困難な面があることが考慮されています。ただし、できる限り具体的なものとしなければならないという要請は審査基準と同様です。

②処分基準を公にすること → 努力義務(「公にするよう努めるものとする」) 定めた場合でも、処分基準を公にすることは努力義務にとどまります。これは審査基準(公にすることが法的義務)との大きな違いです。

審査基準と処分基準の比較

審査基準(申請に対する処分の基準)は定めること・公にすることがいずれも法的義務、処分基準(不利益処分の基準)は定めること・公にすることがいずれも努力義務です。この対比は試験の最頻出論点の一つですので確実に押さえてください。

過去問(16-12-3)では「不利益処分について、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくことは、担当行政庁の努力義務にとどまり、義務とはされていない」として正しいとされています。

具体例

飲食店Dの店主が食品衛生法に違反したため、保健所が営業停止処分(不利益処分)を検討している場面を例にとりましょう。保健所は「どの程度の違反で何日間の営業停止にするか」という処分基準を設けるよう努力はしますが、法的義務ではありません。また、処分基準を公表することも努力義務です。なお、処分基準を公にしていない場合でも、処分基準に基づく処分自体は適法に行うことができます。

基準
対象
定めること
公にすること
審査基準(5条)
申請に対する処分
法的義務
法的義務
処分基準(12条)
不利益処分
努力義務
努力義務

重要メモ

  • 「処分基準は定めることも公にすることも努力義務で、審査基準(法的義務)と真逆のセットとして覚える」がポイント
  • 処分基準(12条):定めること → 努力義務、公にすること → 努力義務
  • 審査基準(申請処分)は定め・公表ともに法的義務 ⇔ 処分基準(不利益処分)は定め・公表ともに努力義務(最頻出対比)
  • 処分基準もできる限り具体的なものとしなければならない(具体化の要請は審査基準と同様)
  • 処分基準を公にしていなくても、処分基準に基づく処分自体は適法に行うことができる
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意見陳述手続の概要(13条)

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簡単にいうと

簡単にいうと、不利益処分をする前には相手方に弁明の機会を与えなければなりません。処分が重い場合は「聴聞」という正式な手続、比較的軽い処分の場合は「弁明の機会の付与」という簡易な手続をとります。どちらを使うかの区別が試験の核心です。

意見陳述手続の意義(13条)

不利益処分をしようとする場合、行政庁は事前に処分の名あて人となるべき者に意見陳述の機会を与えなければなりません(13条)。これは「処分を受ける当事者に事前に弁明させる」という手続的公正の核心的な保障です。

意見陳述手続には2種類あります。

①聴聞(重大な不利益処分の場合) 聴聞は、口頭で意見を述べる機会を与える「慎重な手続」です。以下の処分を行う場合に実施されます。 - 許認可等の取消し(例:営業許可の取消処分) - 名あて人が法人である場合の役員の解任を命ずる処分 - 名あて人が法人でない社団または財団である場合の構成員の除名を命ずる処分 - その他、行政庁が「相当と認める処分」として聴聞を実施すると判断した場合

聴聞は審判的な手続であり、主宰者が選ばれて進行されます(15条〜28条に詳細な規定)。

②弁明の機会の付与(比較的軽い不利益処分の場合) 弁明の機会の付与は、書面で意見を述べる機会を与える「簡易迅速な手続」です。聴聞が必要な場合以外の不利益処分(例:営業停止処分など)に実施されます。書面による弁明が原則ですが、行政庁の裁量により口頭での弁明を認めることもできます。

意見陳述手続を要しない場合(13条2項) 以下の場合には意見陳述手続を行わなくてよいとされています。 - 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため当該手続を経る暇がないとき - 当該不利益処分の性質上、当該手続を経ることができないとき - 当該処分の相手方の所在が判明しないとき - 名あて人が当該不利益処分について既に十分な意見陳述の機会を得たと認められるとき

重要な注意点:申請に対する拒否処分をする場合は意見陳述手続の対象外です(申請への拒否は意見陳述手続の対象となる不利益処分ではない)。

具体例

飲食店Eの営業許可を取り消す処分をしようとする場面を例にとりましょう。営業許可の取消しは重大な不利益処分であるため、事前に「聴聞」を実施しなければなりません(13条1項1号)。聴聞では主宰者が選ばれ、E店主が口頭で意見を述べる機会が与えられます。一方、単なる営業停止命令(許可の取消しではない)であれば、書面による弁明の機会の付与で足ります。

手続
対象処分
方式
条文
聴聞
許認可等の取消し、役員解任等の重大処分
口頭(対審的)
15〜28条
弁明の機会の付与
聴聞対象以外の不利益処分
書面(原則)
29〜31条

重要メモ

  • 「重大な不利益処分には聴聞、それ以外の不利益処分には弁明の機会付与が必要で、申請拒否は対象外」がポイント
  • 聴聞(口頭・対審的)の対象:許認可等の取消し、法人の役員解任命令、法人でない社団等の構成員除名命令(13条1項1号)
  • 弁明の機会の付与(書面原則):聴聞が必要な場合以外の不利益処分(13条1項2号)
  • 申請に対する拒否処分は意見陳述手続の対象外(申請拒否は不利益処分に分類されない)
  • 意見陳述手続を要しない場合(13条2項):①公益上緊急の必要がある場合、②処分の性質上手続不可能な場合、③相手方所在不明の場合、④既に十分な意見陳述機会があった場合
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不利益処分の理由の提示(14条)

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簡単にいうと

簡単にいうと、不利益処分をするときは名あて人に処分と同時に理由を示さなければなりません。申請に対する処分の理由提示(8条)と似ていますが、不利益処分のほうがより強い手続保障が課されています。

不利益処分を行う場合には、名あて人に対して当該不利益処分の理由を示さなければならないという法的義務があります(14条)。

理由提示の時期

原則として、理由の提示は名あて人に処分を通知するときと同時に(同時原則) 行わなければなりません。処分後に「後で理由を知らせる」という方式は許されず、処分と理由提示は同時でなければなりません。

例外:差し迫った必要がある場合

当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合(例:緊急を要する場合)には、処分後に相当の期間内に理由を示せばよいとされています。ただし、これはあくまで例外であり、原則は「処分と同時に理由提示」です。

理由提示の趣旨

理由の提示が求められる理由は以下の点にあります。①名あて人が処分の根拠を知ることができ、不服申立てをするかどうかの判断ができる、②行政庁が恣意的な判断をしないよう自律的なコントロールが働く、③行政の透明性・公正性が確保される。

書面処分の場合の取扱い

処分が書面でなされる場合には、理由も書面で示すことが要求されます(書面処分=書面での理由提示)。

過去問(17-12-3)では「行政手続法は、不利益処分をする場合にはその名あて人に対し同時に当該不利益処分の理由を示さなければならないとしている一方、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この規定の例外」として正しいとされています。

具体例

F社の工場が環境基準を超える排水を続けていたため、行政庁がF社に対して改善命令(不利益処分)を下すことにした場面を例にとりましょう。行政庁はF社に改善命令を通知する際に、同時に「○○水質汚濁防止法□条に基づき、排水基準値△mg/Lを超える××mg/Lの排水が確認されたため」という理由を書面で示さなければなりません。緊急の環境被害防止が必要な場合に限り、先に処分を下し、後から相当期間内に理由を示すことが例外的に認められます。

重要メモ

  • 「不利益処分の理由提示は処分と同時が原則で、差し迫った必要がある場合だけ処分後相当期間内に事後提示が認められる」がポイント
  • 不利益処分をするときは処分と同時に理由を示す義務がある(14条・同時原則)
  • 例外:差し迫った必要がある場合は処分後相当の期間内に理由を示せばよい
  • 書面による処分の場合は理由も書面で示す
  • 理由提示の趣旨:①名あて人の不服申立ての判断材料、②行政庁の恣意防止、③透明性・公正性の確保
  • 重要判例(最判平23.6.7):不利益処分の理由付記は「いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したか」を記載自体から了知できる程度でなければならず、不十分な場合は処分自体が違法
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聴聞の通知と公示送達(15条)

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簡単にいうと

簡単にいうと、聴聞を行う前に行政庁は当事者に書面で通知しなければなりません。当事者の所在が不明な場合は掲示板への掲示による「公示送達」が認められますが、掲示から2週間後に到達とみなされます。

聴聞を実施するにあたって、行政庁はまず当事者に通知を行わなければなりません(15条)。

聴聞通知の内容(15条1項)

行政庁は、聴聞を行う前に、処分の名あて人となるべき者(当事者)に対して以下の事項を書面で通知しなければなりません。 - 予定される不利益処分の内容および根拠となる法令の条項 - 不利益処分の原因となる事実 - 聴聞期日と場所 - 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称および所在地

書面による通知の義務

聴聞通知は書面に限られ、口頭での通知は認められません。また、聴聞期日の相当の期間前に通知しなければなりません(15条1項)。これは当事者に準備の時間を与えるためです。

公示送達(15条3項)

名あて人に通知できない場合(所在不明の場合)は、以下の方法による公示送達が認められます。 - 必要事項を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示する - 掲示を始めた日から2週間を経過したときに通知が到達したものとみなされる

公示送達は、普通郵便での送達が不能な場合の特別な手段であり、実際に当事者が通知内容を知らなくても、掲示から2週間で到達したとみなされる点が重要です。

具体例

G社の製造業許可を取り消す処分について聴聞を実施する場面を例にとりましょう。行政庁はG社に「不利益処分の内容・根拠法令・処分の原因となる事実・聴聞期日・場所・担当組織」を記載した書面を聴聞期日の相当の期間前に送付しなければなりません。G社の所在が不明な場合は、行政庁の事務所掲示場に必要事項を掲示し、掲示開始日から2週間後に通知が到達したとみなされます。

重要メモ

  • 「聴聞通知は書面で相当期間前に行い、名あて人の所在不明なら公示送達(掲示から2週間で到達みなし)が使える」がポイント
  • 聴聞通知は書面で行う(口頭通知は不可)(15条1項)
  • 聴聞期日の相当の期間前に通知しなければならない(準備期間の確保)
  • 聴聞通知の記載事項:①予定される不利益処分の内容・根拠法令、②処分の原因となる事実、③聴聞期日と場所、④担当組織の名称・所在地
  • 名あて人の所在が不明な場合は公示送達が可能(15条3項):行政庁の事務所の掲示場に掲示し、掲示開始から2週間経過で通知到達とみなされる
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聴聞の審理手続(16条〜22条)

16,17,18,19,20,21,22

簡単にいうと

簡単にいうと、聴聞では当事者が代理人を立てたり、関係資料を閲覧したり、口頭で意見を述べることができます。審理は原則として非公開で行われ、主宰者が進行を管理します。

聴聞の審理手続は16条から22条に規定されており、当事者・参加人の権利と主宰者の役割を定めています。

聴聞の主宰者(19条)

聴聞においては、行政庁が職員の中から主宰者を指定します(19条1項)。主宰者は聴聞の司会進行役であり、審理を指揮します。なお、審理は原則として非公開です(20条6項)。

代理人・補佐人の同行(16条)

当事者または参加人は、代理人を選任することができます(16条1項)。また、主宰者の許可を得て補佐人とともに聴聞に出席できます(16条1項)。

文書等の閲覧(18条)

当事者または参加人は、聴聞期日に出席するまでの間に、当該処分に係る事案の調査結果に係る調書等の閲覧を求めることができます(18条1項)。行政庁は正当な理由がある場合を除き閲覧を拒否できません。

意見陳述・証拠書類等の提出(20条)

当事者または参加人は、聴聞期日において口頭で意見を述べ、証拠書類等を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員に質問することができます(20条2項)。

陳述書等の提出(21条)

当事者または参加人は、聴聞期日への出席に代えて、聴聞期日前に陳述書および証拠書類等を提出することができます(21条1項)。これにより、出席が困難な場合でも書面で意見を述べることが可能です。

続行期日(22条)

主宰者は、聴聞の期日において審理を続行する必要があると認めるときは、さらに新たな期日を定めることができます(22条1項)。

具体例

G社の製造業許可を取り消す処分について聴聞が実施された場面を例にとりましょう。G社は弁護士を代理人として選任し(16条)、事前に関係資料を閲覧し(18条)、聴聞期日に口頭で意見を述べ、証拠書類を提出します(20条)。G社の代表者が当日出席できない場合は、事前に陳述書を提出することも可能です(21条)。主宰者は手続の進行を管理し、必要であれば続行期日を設定します(22条)。

重要メモ

  • 「聴聞は原則非公開で、当事者・参加人に代理人同行・文書閲覧・書面陳述など手厚い手続保障が与えられる」がポイント
  • 聴聞の審理は原則として非公開(20条6項)
  • 当事者・参加人は代理人(弁護士でなくてもよい)・補佐人の同行ができる(16条)
  • 当事者・参加人は関係調書等の文書閲覧を請求できる(18条)、行政庁は正当な理由がない限り閲覧を拒否できない
  • 聴聞期日に出席せず事前に陳述書・証拠書類を提出することも可能(21条)
  • 参加人(名あて人以外の関係当事者)も聴聞に参加できる(17条)、主宰者は行政庁が職員の中から指定する(19条)
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聴聞の調書・報告書と終結(24条・25条・26条)

24,25,26

簡単にいうと

簡単にいうと、聴聞が終わると主宰者は「調書」と「報告書」を作成・提出します。行政庁はこれらを参考にして最終的な不利益処分の判断を行います。当事者はこれらを閲覧することができます。

聴聞調書と報告書(24条)

主宰者は、各期日の聴聞の審理の経過を記載した調書を作成しなければなりません(24条1項)。調書には、期日の日時・場所、出席者、陳述内容、提出証拠等が記録されます。

また、聴聞の終結後、主宰者は以下の内容を記載した報告書を行政庁に提出しなければなりません(24条3項)。 - 不利益処分の原因となる事実 - 当事者等が主張した内容と、それに対する主宰者の意見

これらは行政庁が処分を決定する際の判断材料となります。

当事者等による閲覧請求(24条4項)

当事者または参加人は、聴聞調書および報告書の閲覧を求めることができます(24条4項)。これにより、当事者は行政庁の最終判断に用いられる資料の内容を確認することができます。

聴聞の終結(25条・26条)

主宰者は、聴聞の審理が終結したと認めるときに聴聞を終結します(25条)。また、聴聞終結後に、処分の名あて人となるべき者の請求があれば、処分の原因となる事案の調査結果に係る文書等の閲覧を求めることができます(25条)。

行政庁は、聴聞の終結後、聴聞調書の内容および報告書に記載された主宰者の意見を十分考慮して、不利益処分をするかどうか、またはいかなる不利益処分をするかについて決定します(26条)。

具体例

G社の製造業許可取消しの聴聞が終結した場面を例にとりましょう。主宰者は、各聴聞期日の経過を記録した調書(G社の発言内容、提出証拠の一覧等)を作成し(24条1項)、さらに「許可取消しの原因事実についてのG社の主張と、これに対する意見」を記載した報告書を行政庁に提出します(24条3項)。G社はこれらの調書・報告書を閲覧することができ(24条4項)、行政庁はこれらを十分考慮して最終的に許可取消しの是非を決定します(26条)。

重要メモ

  • 「主宰者が調書と報告書を作成し、行政庁はそれらを十分考慮して最終処分を決めなければならない」がポイント
  • 主宰者は各聴聞期日の審理の経過を記載した調書を作成する義務がある(24条1項)
  • 聴聞終結後、主宰者は処分原因事実と当事者の主張に対する意見を記載した報告書を行政庁に提出する(24条3項)
  • 当事者等は聴聞調書・報告書の閲覧を求めることができる(24条4項)
  • 行政庁は聴聞調書の内容と報告書に記載された主宰者の意見を十分考慮して処分を決定しなければならない(26条)

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
行政手続とは
行政活動の事前の手続ルール。事後の手続は行政不服審査法・行政事件訴訟法
対象は処分・行政指導・届出・命令等の4分野。行政計画・行政契約・行政強制は対象外
申請に対する処分
審査基準の設定義務・公表義務(5条)。拒否処分の理由提示義務(8条)
審査基準の設定は努力義務ではなく法的義務。標準処理期間の設定は努力義務
不利益処分
聴聞又は弁明の機会の付与(13条)。理由提示義務(14条)
許認可取消等→聴聞、それ以外→弁明。処分基準の設定・公表は努力義務
行政指導
任意性の原則(32条)。法的拘束力なし。不利益取扱い禁止
処分ではないため原則として取消訴訟の対象外
届出
到達主義。形式要件を満たせば到達時に義務履行完了(37条)
行政庁の受理行為は不要
行政手続法の目的(1条)
公正の確保と透明性の向上→国民の権利利益の保護(最終目的)
一般法としての性格。他法に特別の定めがあればそちらが優先
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