第6節 行政上の強制手段
第1章 総論
行政が義務を履行しない相手方に対して強制的に実現する手段を学びます。民事執行とは異なり、行政が自ら強制できる自力執行力の有無と範囲が重要です。代執行・直接強制・強制徴収・即時強制の4類型に加え、執行罰(間接強制)・行政罰・新たな義務履行確保手段(制裁的公表等)まで含めた全体像を正確に把握できることが合格の鍵となります。
行政上の強制手段の全体像
行政上の義務履行を確保するため、行政が自ら強制力を行使する手段。民事執行と異なり、自力執行力を有する点が特徴。行政上の強制執行(代執行・執行罰・直接強制・強制徴収)と即時強制の5類型に大別される。
具体例
A市は違法建築物を建てたBさんに除却命令を出したが、Bさんが応じない。A市は裁判所を通さず、自ら業者に依頼して建物を取り壊し、費用をBさんに請求した(代執行)。
要件
- ・法律の根拠(法律の留保)
- ・義務の不履行または緊急の必要性(即時強制は義務不要)
- ・手続的要件の遵守
効果・結論
- ・行政が自ら義務の実現を図ることができる
- ・相手方の権利を強制的に制限できる
試験のポイント
- ・自力執行力の根拠は法律の留保に基づく必要がある
- ・民事執行との違いは裁判所の判決を経ずに行政が自ら実現できる点
- ・即時強制は義務の不存在が特徴で他の類型と本質的に異なる
- ・執行罰(間接強制)は現行法上ほぼ廃止されており、砂防法のみに残る
代執行
第行政代執行法2条・3条条代替的作為義務の不履行がある場合、行政が自ら義務者のなすべき行為をなし、または第三者になさしめ、その費用を義務者から徴収する制度。行政上の強制執行の原則的手法であり、行政代執行法が一般法として機能する。
具体例
A市はBさんに違法な看板の除却を命じたが、Bさんが従わない。A市は戒告・代執行令書による通知後、業者に依頼して看板を撤去し、費用30万円をBさんに請求した。
要件
- ・代替的作為義務の存在
- ・義務の不履行
- ・他の手段による履行確保が困難
- ・不履行を放置することが著しく公益に反する
効果・結論
- ・戒告→代執行令書による通知→実際の代執行の手続を経る(行政代執行法3条)
- ・費用は国税滞納処分の例により徴収できる(行政代執行法6条)
条文(第行政代執行法2条・3条条)
法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。(2条)/前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。(3条1項)
試験のポイント
- ・代替的作為義務に限定される点(本人でなくても実現可能な行為)
- ・戒告は原則必須だが、非常の場合または危険切迫の場合は不要(行政代執行法3条3項)
- ・費用徴収は国税滞納処分の例による(行政代執行法6条)
直接強制・執行罰・強制徴収・即時強制
直接強制は非代替的義務の不履行に対し義務者の身体・財産に実力行使する手段。執行罰(間接強制)は義務を履行するまで繰り返し過料を科す間接強制(現行法上ほぼ廃止)。強制徴収は金銭債権を国税滞納処分の例で徴収。即時強制は義務を前提とせず、目前の危険に直接対処する手段。
具体例
警察官が泥酔者Aを保護施設に強制的に連れて行った(即時強制・警察官職務執行法3条)。B社が税金を滞納したため、C市が預金を差し押さえた(強制徴収)。
要件
- ・直接強制:個別法の根拠・非代替的義務の不履行
- ・執行罰:個別法の根拠(砂防法のみ現存)・義務の不履行
- ・強制徴収:金銭給付義務の不履行
- ・即時強制:法律の根拠・目前の急迫した障害
効果・結論
- ・直接強制:義務者の身体・財産への直接的実力行使
- ・執行罰:義務履行まで繰り返し過料を科す間接的強制
- ・強制徴収:財産の差押・換価・配当(国税徴収法準用)
- ・即時強制:義務なくして目的を直接実現
試験のポイント
- ・直接強制は現行法上ほぼ認められていない(個別法の根拠が必要)
- ・執行罰(間接強制)は現行法上砂防法のみに残存し、実務上ほぼ用いられない
- ・即時強制は義務を前提としない点で他の類型と本質的に異なる
- ・強制徴収は国税徴収法の手続に準拠する
行政上の秩序罰と制裁的公表
行政上の秩序罰は行政上の義務違反に対する過料の制裁(非刑罰・非訟事件手続法による)。制裁的公表は義務違反者の氏名等を公表し、社会的非難により間接的に履行を促す手段。いずれも直接的な強制執行とは異なる間接的・補完的手段。
具体例
Aさんが産業廃棄物処理法違反で事業者名を公表された(制裁的公表)。Bさんが期限内に届出をせず、5万円の過料に処せられた(秩序罰)。
要件
- ・秩序罰:法律または条例の根拠・義務違反の存在・非訟事件手続(非訟事件手続法119条等)
- ・制裁的公表:法律または条例の根拠・義務違反の事実・相当性の判断
効果・結論
- ・秩序罰:金銭的制裁(刑罰ではなく行政罰・前科にならない)
- ・制裁的公表:社会的信用の失墜による間接的強制
試験のポイント
- ・秩序罰は刑事罰ではなく行政罰であり、前科にならない
- ・制裁的公表は法律または条例の根拠が必要とされる(通説)
- ・秩序罰(過料)と刑事罰(懲役・罰金)の併科は可能
- ・秩序罰は非訟事件手続によって科される点に注意
まとめ
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