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テキスト/行政法/第5節 行政行為

第5節 行政行為

第1章 総論

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行政行為は、行政法の中核をなす最重要テーマです。行政庁が国民に対して一方的に権利義務を形成する行為であり、処分性・公定力・取消訴訟など、行政救済法にも直結します。この節では、行政行為の分類・効力・瑕疵・行政裁量・附款など、試験頻出の論点を体系的に学びます。

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行政行為の意義

簡単にいうと

行政行為とは「行政庁が法律に基づいて一方的に国民の権利義務を変動させる行為」です。課税処分や運転免許の付与がその代表例で、民事契約と違って相手の同意は不要です。

行政行為とは、行政庁が法律に基づき、公権力の行使として、国民の権利義務を具体的に変動させる行為をいいます。この定義には、いくつかの重要な要素が含まれています。

まず「行政庁」の行為であることが必要です。行政庁とは、国や地方公共団体の機関のうち、外部に向けて法律的な行為をする権限を持つものをいいます。

次に「法律に基づく」ことが必要です。行政行為は法治主義の原則(法律による行政の原理)の下に置かれており、法律の根拠なしに国民の権利義務を変動させることは原則としてできません。

そして「公権力の行使」としての行為であることが求められます。行政行為は民事上の契約と異なり、相手方の同意を必要とせず、一方的に権利義務の変動をもたらすことができます。これが行政行為の最大の特徴です。例えば、税務署が納税者に課税処分をする場合、納税者が同意しなくても課税処分は有効に成立します。

最後に「具体的に権利義務を変動させる」ことが必要です。法律や条例など一般的・抽象的なルールを定める立法行為とは区別されます。

行政行為は、行政庁の意思表示を要素とするかどうかによって大きく2つに分類されます。①法律行為的行政行為は行政庁の意思表示を本質的な要素とするもので、命令的行為(下命・禁止・許可・免除)と形成的行為(特許・認可・代理)があります。②準法律行為的行政行為は行政庁の意思表示を要素とせず、行政庁の判断・認識・通知などを本質的な要素とするもので、確認・公証・通知・受理などがあります。

行政行為は行政活動を迅速かつ円滑に行うために特別な効力(公定力・不可争力・不可変更力・自力執行力・拘束力)が認められており、これが民事上の法律行為と大きく異なる点です。

具体例

課税処分を例にとりましょう。税務署長(行政庁)が、あなた(国民)に対して「所得税○○円を納付せよ」と課税処分(行政行為)をした場合、あなたが「そんな税額には納得できない」と言って払わなかったとしても、行政行為の効力は消えません。行政庁は裁判所を通さずに財産を差し押さえること(自力執行)ができます。これが民事契約と大きく異なる点です。また、一定の不服申立期間(不服申立前置主義)が過ぎると、もはやその課税処分に異議を唱えることができなくなります(不可争力)。

行政行為の典型例その1:課税処分。行政庁が『迅速に税金を取りたい』と考え、法律に基づいて国民に対して課税処分(行政行為)を行う。国民が税金を滞納した場合は、行政上の強制執行として滞納処分による差押えに進む

パターン①:課税処分の流れ

行政行為の典型例その2:違法建築物除却命令。行政庁が『迅速に違法建築物を撤去したい』と考え、法律に基づいて違法建築物除却命令(行政行為)を出す。所有者が命令に従わなければ、行政上の強制執行として行政代執行によって撤去が行われる

パターン②:違法建築物除却命令の流れ

行政行為の連続性を比較する図。通常のケース:事業者が『カフェを開きたい』と考え、行政から飲食店営業許可という1つの行政行為を受ければ営業が始められる。例外的なケース:事業者が『アパートを建てたい』と考える場合、行政から①安全認定、②建築確認という2つの行政行為が必要で、両方揃って初めて建設が可能になる

パターン③:行政行為の連続性(1つで済む場合・複数必要な場合)

重要メモ

  • ・「行政庁が法律に基づき一方的に権利義務を変動させる行為」で、民事契約と違い相手の同意不要・公定力など5つの特別な効力が認められる点が核心
  • ・行政行為(処分)の定義:行政庁が法に基づき、公権力の行使として国民の権利義務を一方的・具体的に変動させる行為
  • ・法律行為的行政行為:行政庁の意思表示を本質的要素とする(命令的行為=下命・禁止・許可・免除、形成的行為=特許・認可・代理)
  • ・準法律行為的行政行為:意思表示を要素とせず判断・認識・通知が要素(確認・公証・通知・受理)。効果は法律の規定により発生
  • ・行政行為は相手方の同意不要で一方的に権利義務を変動させる点が民事契約と根本的に異なる
  • ・行政行為の5つの効力(公定力・不可争力・不可変更力・自力執行力・拘束力)は行政活動の迅速性・円滑性を確保するために認められたもの
  • ・立法行為(法律・条例など一般的・抽象的なルール)とは異なり、行政行為は個別具体的な権利義務の変動をもたらす点に注意
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行政行為の分類(概要)

簡単にいうと

行政行為には「許可」「特許」「認可」など様々な種類があります。大きく「法律行為的行政行為(命令的行為・形成的行為)」と「準法律行為的行政行為」の2グループに分かれます。それぞれの詳細は後続のテーマで学びましょう。

行政行為は、行政庁の意思表示を要素とするかどうかによって大きく2つに分類されます。

法律行為的行政行為

行政庁の意思表示を本質的な要素とする行政行為です。行政庁の意思によって法律効果が発生します。さらに「命令的行為」と「形成的行為」に分かれます。

命令的行為:国民の自然的自由を規律する行為(下命・禁止・許可・免除)。 形成的行為:国民に新たな権利や法律関係を設定する行為(特許・認可・代理)。

準法律行為的行政行為

行政庁の意思表示を要素とせず、判断・認識・通知などを本質的な要素とする行政行為です。法律効果は行政庁の意思ではなく法律の規定によって発生します(確認・公証・通知・受理)。

各行為の詳細は「命令的行為」「形成的行為」「準法律行為的行政行為」の各テーマで学習します。

具体例

飲食店の営業許可を例にとりましょう。飲食業はもともと誰でも自由にできる行為ですが、食品衛生などの観点から許可制になっています(許可)。許可要件(設備・衛生管理など)を満たしていれば行政庁は許可しなければならず、裁量の余地は比較的狭いです。これに対して、公務員の任命は、公務員という地位自体が法律によって創設されたものであり、任命権者には広い裁量が認められています(特許)。農地の売買(権利移転)には農業委員会の許可(実質は認可)が必要であり、この許可がなければ権利移転の効果は生じません(認可の例)。

分類
内容
種類
法律行為的行政行為(命令的行為)
国民の自然的自由を規律
下命・禁止・許可・免除
法律行為的行政行為(形成的行為)
新たな権利・法律関係を設定
特許・認可・代理
準法律行為的行政行為
判断・認識・通知が要素(法律の規定により効果発生)
確認・公証・通知・受理

重要メモ

  • ・「意思表示を要素とするか否か」で法律行為的(命令的・形成的)と準法律行為的に二分され、各種類の典型例とセットで覚えることが重要
  • ・法律行為的行政行為:行政庁の意思表示が含まれ、その意思によって法律効果が発生する
  • ・命令的行為:国民の自然的自由を規律(下命・禁止・許可・免除)
  • ・形成的行為:国民に新たな権利・法律関係を設定(特許・認可・代理)
  • ・準法律行為的行政行為:行政庁の意思によらず法律の規定によって効果が発生(確認・公証・通知・受理)
  • ・許可と特許の違い(許可=禁止解除・裁量狭、特許=新たな権利設定・裁量広)は特に頻出。認可(私人間行為の補完)も含めた三者比較が最重要
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命令的行為(下命・禁止・許可・免除)

簡単にいうと

命令的行為とは「国民が本来持っている自由を規律する行政行為」です。下命・禁止は自由を制限し、許可はその制限を解除します。特に「許可」は試験最頻出で、自動車運転免許がその典型例です。

命令的行為とは、国民の自然的自由(本来誰でも持っている行動の自由)を規律する法律行為的行政行為です。下命・禁止・許可・免除の4種類があります。

①下命

国民に対して特定の作為・不作為・給付などを命じる行為です。違法建築の除去命令、営業停止命令、租税の徴収などが典型例です。

②禁止

国民に特定の行為をしてはならないと命じる行為です。飲食営業の禁止などがあります。下命・禁止はいずれも国民の自由を制限する行為です。

③許可

法律によって一般的に禁止されている行為を、特定の場合に解除して適法に行えるようにする行為です。自動車運転免許、飲食業の営業許可などが典型例です。

許可は「本来できるはずの行為」を国が規制しているため、その解除(禁止の解除)という性格を持ちます。要件を満たせば行政庁は許可しなければならず、裁量の余地が比較的狭いとされています。

行政書士試験では、自動車運転免許は行政行為の分類理論でいうところの「許可」に該当するとされており(07-10-1 ○)、「裁量が広く認められる行政行為」という設問は誤りです(11-10-ア 誤り)。

④免除

法律によって課されている義務を、特定の場合に解除する行為です。租税の免除、授業料の免除などがあります。

許可の重要ポイント(特許との対比)

許可と特許は試験で頻繁に問われる重要な区別です。許可は「本来自由にできる行為を一般的に禁止した上で、特定の場合に解除する」という構造であるため、禁止を解除するだけで新しい権利を与えるわけではありません。これに対して特許は「自然的自由としては存在しない、特別の権利・能力を新たに設定する」行為であり、裁量が広く認められます。

自動車の運転は本来誰でもできる行為ですが、危険防止のために免許制にして一般的に禁止した上で、基準を満たした者に限って解除している(許可)のが運転免許です。一方、公務員の地位は法律による公務員制度がなければ存在しないものであり、新たに設定する(特許)のが任命行為です。

具体例

自動車運転免許を例にとりましょう。本来、人は道路上を自動車で走る自由を持っています。しかし危険防止のため道路交通法が「無免許運転の禁止」という一般的禁止を置き、その上で試験に合格した者には禁止を解除しています(許可)。このため、要件(試験合格)を満たせば行政庁は免許を与えなければならず、裁量の余地は狭いといえます。

種類
内容
具体例
下命
特定の作為・不作為・給付を命じる
違法建築の除去命令・租税の徴収
禁止
特定の行為をしてはならないと命じる
飲食営業の禁止
許可
一般的禁止を解除して適法に行えるようにする
自動車運転免許・飲食業の営業許可
免除
法律上課された義務を解除する
租税の免除・授業料の免除

重要メモ

  • ・「許可=一般的禁止の解除(裁量狭)」と「特許=新たな権利設定(裁量広)」の違いが超頻出。下命・禁止・許可・免除の4種の内容と具体例を整理しておく
  • ・下命:国民に特定の作為・不作為・給付を命じる行為(違法建築物の除去命令・租税の徴収など)
  • ・禁止:国民に特定の行為をしてはならないと命じる行為(営業停止命令など)
  • ・許可:法令上の一般的禁止を特定人について解除する行為。要件を満たせば行政庁は許可しなければならず裁量は比較的狭い(自動車運転免許・風俗営業許可・飲食業の営業許可)
  • ・自動車運転免許は行政行為の分類理論上「許可」に該当する(07-10-1 ○)。「裁量が広く認められる」とする設問は誤り(11-10-ア 誤り)
  • ・免除:法律上課された義務を特定人について解除する行為(租税の免除・就学義務の免除・授業料の免除など)
  • ・許可(自然的自由の禁止解除・裁量狭)vs 特許(自然的自由として存在しない権利の新設・裁量広)の違いは超頻出
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形成的行為(特許・認可・代理)

簡単にいうと

国民が本来持っていない権利を新たに与える行為です。許可との違いが最もよく問われます。

形成的行為とは、国民に新たな権利や法律関係を設定する法律行為的行政行為です。特許・認可・代理の3種類があります。

3つの分類

分類
意義
具体例
特許
特別の権利や能力を新たに設定する行為
外国人の帰化の許可、河川占用許可、公有水面埋立、公務員の任命
認可
私人間の契約等の法律行為に介入し、その法律上の効果を完成させる行為
農地権利移動の許可、公共料金改訂認可
代理
第三者がなすべき行為を行政機関が代わって行う
土地収用裁決、特殊法人の役員の任命

許可と特許の違い

この中で最も分かりにくいのが許可と特許の違いです。もともとできることか、できないことかで見分けます。

許可の例は自動車免許です。自動車の運転はもともと誰でもできるはずですが、危ないので国が規制しています(「できる」が前提)。そのため一定の技量がある場合は、原則として全員に免許を与えなければなりません。裁量の幅が狭いということです。

特許の例は公務員の任命です。国が公務員制度をつくらなければ、国民は公務員になることができません(「できない」が前提)。そのため一定の基準をクリアしていても、公務員にふさわしい人間でないと判断された場合は採用されないことがあります。裁量の幅が広いということです。

過去問では「自動車の運転免許は…行政行為の分類理論でいうところの『特許』に該当する」という記述が出題され、誤りとされました。自動車の運転免許は許可です。

名称に惑わされない

分類と具体例がズレているものがよく問われます。たとえば外国人の帰化の「許可」は、分類上は「特許」です。法令上の名前が「許可」でも、分類理論上は特許にあたることがあります。

無許可行為と無認可行為の違い

  • ・無許可で行った営業上の取引行為は有効(ただし無許可営業者が行政から処罰されることがある)
  • ・無認可で行った行為は無効となる

認可は私人間の法律行為の効果を完成させる行為なので、認可がなければ効果が生じません。無許可は有効、無認可は無効という引っかけが定番です。

具体例

Aが自動車免許を取るのは許可、Aが帰化を認められるのは特許、AとBの農地売買に行政が介入して効力を完成させるのが認可です。

項目
許可
特許
前提
もともと「できる」ことを規制している
もともと「できない」こと
内容
一般的禁止を特定の場合に解除する
特別の権利や能力を新たに設定する
裁量の幅
狭い
広い
例
自動車免許・医師免許・各種営業許可
外国人の帰化の許可・河川占用許可・公有水面埋立・公務員の任命

重要メモ

  • ・特許は特別の権利や能力を新たに設定する行為。例は外国人の帰化の許可・河川占用許可・公有水面埋立・公務員の任命
  • ・自動車の運転免許は特許ではなく許可にあたる(07-10-1 ×、11-10-ア ×)
  • ・許可は裁量の幅が狭く、特許は裁量の幅が広い
  • ・無許可で行った取引行為は有効だが、無認可で行った行為は無効になる
  • ・外国人の帰化は法令上「許可」だが、分類上は特許にあたる
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準法律行為的行政行為(確認・公証・通知・受理)

簡単にいうと

準法律行為的行政行為とは「行政庁の意思表示ではなく、判断・認識・通知が要素となる行政行為」です。確認・公証・通知・受理の4種類があり、法律の規定によって自動的に効果が発生します。

準法律行為的行政行為は行政庁の意思表示を要素とせず、行政庁の判断・認識・通知を本質的な要素とする行政行為です。行政庁の意思よりも法律の規定によって効果が発生します。確認・公証・通知・受理の4種類があります。

①確認

特定の事実または法律関係の存否を公の権限をもって確認する行為です。発明の特許(特許庁による確認)、建築確認などが典型例です。確認は要件の審査に基づいて行われるものであり、全体として行政裁量が認められないとされています(要件を満たせば確認しなければならない)。

②公証

特定の事実または法律関係の存否を公に証明する行為です。証明書の交付、運転免許証の交付などが典型例です。

③通知

特定または不特定多数の人に一定の事実を知らせる行為です。納税の督促などが典型例です。

④受理

他人の行為を有効な行為として受け付ける行為です。各種の申請の受理などが典型例です。

準法律行為的行政行為の特徴

準法律行為的行政行為の最大の特徴は、「行政庁の意思」ではなく「法律の規定」によって効果が発生するという点です。そのため、法律行為的行政行為(下命・許可・特許など)と異なり、行政庁の裁量は原則として認められません。例えば建築確認は、申請が法令の要件を満たしている限り確認しなければならず、行政庁が独自の判断で拒否することはできません。

具体例

建築確認を例にとりましょう。建物を建てる際には特定行政庁に建築確認の申請をしなければなりません。特定行政庁は申請内容が建築基準法の要件を満たしているかどうかを「確認」するだけであり、裁量の余地はありません。要件を満たしていれば確認しなければならず、要件を満たしていなければ確認できません。これが「確認」の典型例です。

種類
意義
具体例
確認
特定の事実または法律関係の存否を公の権限をもって確認する行為
発明の特許・建築確認
公証
特定の事実または法律関係の存否を公に証明する行為
証明書の交付・運転免許証の交付
通知
特定または不特定多数の人に一定の事実を知らせる行為
納税の督促
受理
他人の行為を有効な行為として受け付ける行為
各種の申請の受理

重要メモ

  • ・「意思表示が不要で法律の規定で効果が発生」「確認は裁量なし・要件を満たせば確認しなければならない」が核心
  • ・準法律行為的行政行為:行政庁の意思表示を要素とせず、判断・認識・通知を本質的要素とする。法律の規定によって自動的に効果が発生する
  • ・確認:特定の事実または法律関係の存否を公の権限をもって確認する行為。要件を満たせば確認しなければならず行政裁量は認められない(発明の特許・当選人の決定・建築確認)
  • ・公証:特定の事実または法律関係の存在を公に証明する行為(選挙人名簿への登録・不動産の登記・証明書の交付・運転免許証の交付)
  • ・通知:特定または不特定多数の人に一定の事実・法律関係を知らせ、相手方に対する法律効果を発生させる行為(代執行の戒告・納税の督促)
  • ・受理:他人の行為(申請・申告等)を有効な行為として受け付ける行為(各種申請の受理)
  • ・法律行為的行政行為と異なり行政裁量が原則認められない点が特徴。建築確認は要件充足なら確認を拒否できない
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行政行為の効力

簡単にいうと

行政活動を迅速に進めるため、行政行為には4つの特別な効力が認められています。

行政活動を迅速かつ円滑に行うために、行政行為には特別な効力があるとされています。

行政行為の4つの効力

効力
内容
公定力
たとえ行政行為が違法なものであっても、当然無効とされる場合を除いて、権限を有する国家機関により取り消されるまでは有効な行政行為として扱われる
不可争力
行政行為後、一定の期間が経過すると、国民の側からその行政行為の効力を争うことができなくなる
自力執行力
行政行為によって命じられた義務を国民が履行しない場合、裁判所を使わずに行政庁自ら義務者に強制執行し、義務の内容を実現することができる
不可変更力
紛争解決を目的とする行政行為は、一度行うと、行政庁自ら変更することができない

不可争力は国民の側の話

不可争力は「国民の側から」争うことができなくなるだけです。行政の側から行政行為を取り消すことはできます。

過去問では「行政行為は不可争力を有するから、行政行為に取り消しうべき瑕疵がある場合でも、行政事件訴訟法に定める出訴期間の経過後は、行政庁は、当該行政行為を取り消すことはできない」という記述が出題され、誤りとされました。処分庁が職権で取り消すことはできます。

自力執行力にも法律の根拠が要る

行政行為に自力執行力があるとしても、自力執行を行うには法律の根拠が必要です。財産の差押えについては、国税徴収法という法律に基づいて行っています。

過去問では「行政行為で命じた義務が履行されない場合は、行政行為の有する執行力の効果として、行政庁は、法律上の根拠なくして当然に当該義務の履行を強制することができる」という記述が出題され、誤りとされました。行政上の強制執行は、法律上の根拠がなければ行うことができません。

不可変更力はすべてには認められない

不可変更力だけは、すべての行政行為に認められる効力ではありません。審査請求に対する結論である裁決などに認められます。

紛争を解決するために出した結論を、出した側があとから変えられるのでは意味がないからです。通常の処分には不可変更力はありません。

具体例

Aへの課税処分が違法でも、取り消されるまでは有効として扱われ(公定力)、Aが滞納すれば裁判所を通さずに差押えができます(自力執行力)。

行政行為の効力には3つの特別な性質がある。①公定力:処分が間違っていても国民が不服申立てするまで有効として扱われる。②不可争力:一定期間が過ぎると国民は不服申立できなくなる。③自力執行力:裁判所の判決なしに行政が強制執行できる。いずれも行政活動の迅速性を確保するための仕組み

行政行為の効力(公定力・不可争力・自力執行力)

効力
誰に対する制約か
注意点
公定力
国民・裁判所
当然無効の場合には及ばない
不可争力
国民
行政の側からは取り消せる
自力執行力
国民
行使には法律の根拠が必要
不可変更力
行政庁
すべての行政行為に認められるわけではない

重要メモ

  • ・行政行為の効力は公定力・不可争力・自力執行力・不可変更力の4つ
  • ・不可争力は国民の側から争えなくなるだけで、行政の側からは取り消せる(99-34-3 ×)
  • ・自力執行力があっても、自力執行を行うには法律の根拠が必要(99-34-2 ×)
  • ・不可変更力はすべての行政行為に認められるわけではなく、裁決などに認められる
  • ・公定力は、当然無効とされる場合には及ばない
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行政行為の瑕疵(取消事由と無効事由)

簡単にいうと

行政行為に問題(瑕疵)があった場合、「取り消せるけど有効(取消事由)」のケースと「最初から無効(無効事由)」のケースがあります。この2つの違い(重大かつ明白な瑕疵かどうか)は試験頻出です。

瑕疵ある行政行為とは

「瑕疵ある行政行為」とは、①法律に違反して行った行政行為(違法な行政行為)や、②違反はしていないが行うべきではなかった行政行為(不当な行政行為)のことをいいます。

瑕疵の程度による分類

瑕疵ある行政行為は、瑕疵の程度によって以下の2つに分かれます。

①取消事由(取消し得る行政行為):瑕疵はあるが、取り消されない限りは有効な行政行為として扱われるもの。行政行為の瑕疵が通常の程度のものがこれに該当します。取消権を持つ機関(処分庁・上級行政庁・裁判所)が正式に取り消してはじめて効力を失います。

②無効事由(当然無効の行政行為):瑕疵が重大かつ明白であり、最初から効力がなかったものとして扱われるもの。無効確認の訴えや無効確認審査請求によって確認できます。取消訴訟の出訴期間が経過していても争うことができ(不可争力が生じない)、また不服申立前置主義の例外も認められています。

取消事由か無効事由かの区別については、判例は「重大かつ明白な瑕疵」があるときに無効としており、単に重大なだけでは足りず、外観上も明白でなければなりません。

具体例

取消事由と無効事由の違いを具体例で見てみましょう。18歳未満の者に誤って運転免許を与えた場合(許可要件不充足)、この行政行為は取消事由(瑕疵あり・有効)に当たります。処分庁が取り消すか、取消訴訟で争うまでは有効として扱われます。一方、全く権限のない機関が行った課税処分など、瑕疵が重大かつ明白な場合は無効事由となり、最初から効力がなかったものとして扱われます。出訴期間が過ぎていても無効確認の訴えで争うことができます。

瑕疵ある行政行為の分類。行政行為は『適法』と『瑕疵ある行政行為』に分かれる。適法は妥当。瑕疵ある行政行為は『不当』(違法ではないが行うべきでなかった)と『違法』(法律違反)に分かれる。通常の瑕疵は『取消事由』となり有効だが取り消されればなかったことになる。重大かつ明白な瑕疵は『無効事由』となり取り消すまでもなく効力が生じない

瑕疵ある行政行為の分類(適法・不当・違法と効力)

行政行為の瑕疵

行政行為の瑕疵

区分
瑕疵の程度
効力
争い方
取消事由
通常の程度の瑕疵
取り消されるまで有効
取消訴訟・審査請求(出訴期間あり)
無効事由
重大かつ明白な瑕疵
最初から無効
無効確認訴訟・無効確認審査請求(出訴期間の制限なし)

重要メモ

  • ・「取消事由(有効だが取消権者が取り消すまで有効・出訴期間あり)vs 無効事由(重大かつ明白な瑕疵・最初から無効・出訴期間の制限なし)」の区別が核心
  • ・取消し得る行政行為:違法・不当な瑕疵はあるが取り消されるまでは有効(公定力あり)。取消権者(処分庁・上級行政庁・裁判所)が取り消して初めて効力を失う
  • ・無効な行政行為:重大かつ明白な瑕疵がある場合。最初から効力が生じない(公定力なし)。出訴期間が経過しても無効確認の訴えで争える
  • ・無効判断の基準:「重大性+明白性」が必要。重大だが外観上明白でなければ無効とならず取消事由にとどまる
  • ・無効確認訴訟・無効確認審査請求は出訴期間の制限を受けない(不可争力が生じない)
  • ・取消し得る行政行為は不可争力が生じるが、無効な行政行為は不可争力が生じない点が実務上重要
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瑕疵の有効化法理(治癒・転換・理由の差し替え)

簡単にいうと

瑕疵があっても有効として扱われる場面が3つあります。相手方の信頼を守るための仕組みです。

行政行為に瑕疵があれば、取消しや無効となったりしますが、相手方の信頼保護の観点から有効とされる場合があります。

3つの法理

法理
内容
例
瑕疵の治癒
行政行為の瑕疵が軽微であり、欠けていた要件が事後的に満たされた場合に、当該行政行為を有効なものとして扱うこと
農地買収計画の閲覧期間が法令の定めより1日短かったが、期間内に関係者全員が閲覧を済ませていた場合
違法行為の転換
本来は瑕疵があるため違法な行政行為であるが、それを別の行政行為としてみると瑕疵がなく要件を満たしている場合に、これを別の行政行為として有効なものとして扱うこと
死者に対して土地の買収処分をしたときに、これを相続人に対してしたものと考えて有効な買収処分として扱う場合
理由の差替え
同一の行政行為について、理由を変更することでその適法性を維持すること
飲食店営業申請に対して拒否処分を出す際の理由が適切でないと考えられる場合に、適切と思われる理由に変更すること(最判平11.11.19)

違法行為の転換は認められている

過去問では「行政処分が処分行政庁の意図した行政処分としては法定の要件を満たさず違法であるにもかかわらず、これを他種の行政処分とみれば、その法定要件が満たされており適法と考えられる場合に、これを取り消すことなく、その効力を維持するような取扱いは、判例では一切認められていない」という記述が出題され、誤りとされました。

判例は、一定の場合に違法行為の転換を認めています。

理由付記の不備は裁決では治らない

処分の際の理由付記に不備があった場合、その後の審査請求における裁決で理由が明記されたとしても、瑕疵が治癒されたとはいえないとした判例があります(最判昭47.12.5)。

あとから理由を書けば足りるとすると、処分の時点で理由を示させる意味がなくなってしまうからです。瑕疵の治癒が認められるのは、閲覧期間が1日短かったが全員が閲覧を済ませていた、というような軽微な場合に限られます。

出題の状況

この3つは最近はあまり出題されていないので、時間に余裕がなければあとまわしにしても差し支えありません。

具体例

死者Aに対して行われた買収処分を、相続人Bに対してしたものと考えて有効な買収処分として扱うのが違法行為の転換です。

法理
どういう場面か
瑕疵の治癒
軽微な瑕疵で、欠けていた要件が事後的に満たされた
違法行為の転換
別の行政行為としてみれば要件を満たしている
理由の差替え
理由を変更することで適法性を維持する

重要メモ

  • ・瑕疵の治癒・違法行為の転換・理由の差替えの3つがある
  • ・判例は一定の場合に違法行為の転換を認めている(95-34-2 ×)
  • ・瑕疵の治癒の例は、閲覧期間が1日短かったが期間内に関係者全員が閲覧を済ませていた場合
  • ・理由付記の不備は、その後の裁決で理由が明記されても治癒されない(最判昭47.12.5)
  • ・理由の差替えは同一の行政行為について理由を変更して適法性を維持すること(最判平11.11.19)
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行政行為の取消しと撤回

簡単にいうと

効力を失わせる方法が2つあります。最初から瑕疵があったのか、あとから事情が変わったのかで分かれます。

一度行われた行政行為の効力を失わせるためには、取消しと撤回の2つの方法があります。記述式でも問われる論点です。

取消しと撤回

取消しは、行政行為の当初に瑕疵があったことを理由として、はじめから行政行為がなかったものとみなすことです。

例:18歳未満の者に運転免許を与えてしまった場合の取消し

撤回は、行政行為の当初に瑕疵はなかったが、後発的事情の変化によってその効力を存続させることが適当でない事情が発生したために、将来に向かってその効力を失わせることです。

例:免許取得後、度重なる違反による運転免許の取消し

比較表

取消し
撤回
原因
最初から違法だった
最初は適法だった
法律の根拠
不要
不要
取消(撤回)権者
処分庁、上級行政庁
原則として処分庁のみ
効果
遡及効
将来効
補償
不要
原則不要

補償は撤回でも原則不要

撤回は最初は適法な行政行為が前提なので、相手方は適法に権利を得ていました。それでも補償は原則として不要です。

「撤回は適法な行為を失わせるのだから補償が必要だろう」と考えると誤ります。比較表の補償欄は、取消しが不要、撤回が原則不要です。例外的に補償が必要になる場合は次のテーマで扱います。

条文の言葉に惑わされない

日常用語や法律の条文で「取消し」と書かれていても、行政行為の分類理論上は撤回にあたる場合があります。

度重なる違反による運転免許の「取消し」は、法律上の言葉は取消しですが、免許を与えた時点では瑕疵がなく、あとから違反という事情が生じたものなので、分類理論上は撤回です。

過去問では「行政行為の撤回は、処分庁が、当該行政行為が違法になされたことを理由にその効力を消滅させる行為であるが、効力の消滅が将来に向かってなされる点で職権取消と異なる」という記述が出題され、誤りとされました。行政行為の撤回は、適法な行政行為が前提です。

具体例

18歳未満のAに誤って与えた免許を失わせるのが取消し、免許取得後にAが違反を重ねたことで免許を失わせるのが撤回です。

行政行為の取消しと撤回

行政行為の取消しと撤回の比較

項目
取消し
撤回
原因
最初から違法だった
最初は適法だった
法律の根拠
不要
不要
取消(撤回)権者
処分庁、上級行政庁
原則として処分庁のみ
効果
遡及効
将来効
補償
不要
原則不要

重要メモ

  • ・取消しは最初から違法だった場合、撤回は最初は適法だった場合
  • ・効果は取消しが遡及効、撤回が将来効
  • ・取消権者は処分庁と上級行政庁、撤回権者は原則として処分庁のみ
  • ・補償は取消しが不要、撤回も原則不要。撤回だから必要と考えると誤る
  • ・撤回は適法な行政行為が前提。違法を理由とする記述は誤り(06-10 ×)
10

取消し・撤回の制限と補償

簡単にいうと

国民にプラスになる行政行為を失わせるときは、制限がかかります。補償は原則として要りません。

取消し・撤回はどのような場合でも無制限に行うことができるのでしょうか。両者とも法律の根拠は不要ですが、授益的行政行為を取り消したり撤回したりする場合は一定の制限がかかるとされています。

授益的行政行為は国民にとってプラスになるような行政行為のことで、補助金の交付決定などがこれにあたります。逆に営業停止処分などは侵害的行政行為といいます。

取消し・撤回の制限

- 授益的行政行為の取消し・撤回 → 取消し・撤回によって被る不利益を考慮しても、なおそれを取消し・撤回をすべき公益上の必要性が高い場合に認めるべき - 侵害的行政行為の取消し・撤回 → 一般的に広く取消し・撤回が認められる

侵害的行政行為を失わせることは相手方にとって有利なので、広く認められます。これに対し授益的行政行為を失わせると相手方が不利益を受けるため、公益上の必要性との比較が要ります。

過去問では「行政行為の職権取消は、行政活動の適法性ないし合目的性の回復を目的とするものであるが、私人の信頼保護の要請等との比較衡量により制限されることがある」という記述が正しいものとして出題されています。

撤回における損失補償の要否

国から土地の使用許可をもらって飲食店を営業しているときに「やっぱり使いたいから返してほしい」といわれた場合、「代わりの土地を使わせてくれ」と国に損失補償を請求できるのでしょうか。

  • ・許可による使用権の対価に対する補償は原則として不要
  • ・例外として、使用許可を受けるにあたり対価の支払いをしているが、当該行政財産の使用収益によりその対価を償却するに足りないと認められる期間内に撤回が行われた場合等に限って補償が必要

タダで使わせてもらっている場合は補償を受けられないが、お金を出して使わせてもらっている場合は補償が受けられる場合がある、と理解しておきます。

過去問では「事業者に対する行政財産の目的外使用許可が所定の使用期間の途中で撤回された場合に、撤回を行った行政主体に損失補償の責任が生じるのは、許可に際して損失補償をする旨の取り決めを行ったときに限られる」という記述が出題され、誤りとされました。取り決めを行ったとき以外にも、対価の支払いをしている場合等にも補償が認められる可能性があります。

具体例

Aが対価を払わずに使用許可を受けていた国有地の許可が撤回されても補償は受けられませんが、対価を払っていて回収しきれない期間内の撤回なら補償される余地があります。

項目
授益的行政行為
侵害的行政行為
取消し・撤回の可否
公益上の必要性が高い場合に認めるべき
一般的に広く認められる
例
補助金の交付決定・営業許可
営業停止処分・課税処分

重要メモ

  • ・取消し・撤回とも法律の根拠は不要
  • ・授益的行政行為の取消し・撤回は公益上の必要性が高い場合に限られ、侵害的行政行為は広く認められる
  • ・職権取消は私人の信頼保護の要請等との比較衡量により制限されることがある(06-10-5 ○)
  • ・撤回における損失補償は原則として不要
  • ・対価を支払っていて償却に足りない期間内の撤回など、例外的に補償が必要になる場合がある(13-9-1 ×)
11

違法性の承継

簡単にいうと

先にされた行政行為の違法を、あとの行政行為を争う訴訟で主張できるかという論点です。記述式でも出ます。

行政行為は通常1回で完結するものですが、例外的に2つ以上の行政行為が連続することによって1つの法的効果が発生する場合があります。

飲食店の営業許可は1つの行政行為で営業ができます。これに対しマンションを建てるには、安全認定と建築確認の2つの行政行為があってはじめて建設できます。

マンション建設の際には、敷地と道路が一定以上接している必要(接道要件)がありますが、都道府県知事から安全認定を受ければ接道要件は適用されません。

違法性の承継とは

違法性の承継とは、先行する行政行為の違法性が、それを前提とする後続の行政行為の違法事由となることをいいます。

なぜ問題になるのか

マンション建設を阻止したい周辺住民の立場で考えます。

安全認定については一定期間が経過していて訴訟を提起できない。しかし建築確認については取消訴訟をまだ提起できる。この状況で、建築確認取消訴訟のなかで何を主張できるかが問題になります。

  • ・原則:建築確認の違法性の主張のみ○
  • ・例外:安全認定の違法性の主張も○(違法性の承継)

違法性の承継が認められれば、建築確認自体に違法性がない場合でも「安全認定が違法だ」と主張することによりマンション建設を阻止することができます。実際に行われた訴訟では住民側が勝訴しました。

承継が認められる理由

安全認定と建築確認は、合わさってはじめてマンション建設という1つの法的効果を生み出す関係にあります。このように先行行為と後行行為が一体として1つの効果を目指している場合には、先行行為の違法を後行行為の訴訟で主張することが認められます。

逆に、2つの行政行為がそれぞれ独立した目的を持っている場合には、違法性の承継は認められません。

具体例

安全認定の出訴期間が過ぎていても、Aは建築確認の取消訴訟のなかで安全認定の違法を主張してマンション建設を阻止できます。

違法性の承継をシンプルに図解。登場人物は近隣住民のみ。時系列で横に3つのアイコン配置:左から①先行処分(安全認定)、中央②後続処分(建築確認)、右③工事開始。安全認定は期間経過で単独では争えないが、後続の建築確認取消訴訟の中で、違法性の承継により先行処分の違法性も主張できる例外を示す

違法性の承継(先行処分の違法性が後続処分に及ぶ場合)

違法性の承継と瑕疵ある行政行為が有効となる場合

違法性の承継と瑕疵ある行政行為が有効となる場合

重要メモ

  • ・違法性の承継とは、先行する行政行為の違法性が後続の行政行為の違法事由となること
  • ・原則として後行行為の訴訟では後行行為の違法しか主張できないが、例外的に先行行為の違法も主張できる
  • ・安全認定と建築確認は合わさって1つの法的効果を生むため、違法性の承継が認められた
  • ・承継が認められると、後行行為自体に違法がなくても先行行為の違法で争える
  • ・2つの行政行為がそれぞれ独立した目的を持つ場合は承継されない
12

行政裁量

簡単にいうと

法律が行政庁に委ねた判断の余地です。どこまで裁判所が口を出せるかが争点になります。

法律による行政の原理からすれば、人権侵害の可能性がある行政行為を行う場合の要件は、あらかじめ法律で事細かに決めておくことが理想です。

しかし行政の活動は多岐にわたるため、すべての活動を想定して法律を制定することは不可能であり、仮に可能であったとしても今度は行政の活動に支障をきたす可能性が出てきます。そこで行政裁量という考え方が登場します。

行政裁量とは

法律により行政庁に認められた判断の余地のことです。法律ではおおまかなことだけ決めておいて、実際の判断は行政庁に任せる、ということです。

医師法7条は、医師としての品位を損するような行為があったときは、厚生労働大臣は戒告・3年以内の医業の停止・免許の取消しの処分をすることができると定めています。ここで厚生労働大臣は次の2つを自分の判断で決めることができます。

  • ・処分の要件を満たすか(「医師としての品位を損するような行為」にあたるか)→ 要件裁量
  • ・どのような処分をするか(戒告にするのか、業務停止にするのか、免許を取り消すのか)→ 効果裁量

行政庁の自由な裁量で物事を決めることができますが、それがあまりに不適切な場合には違法な行政行為として取消しの対象となります。

裁量に対する司法審査

行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ、またはその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができます(行政事件訴訟法30条)。

勤務時間中にタバコを1本吸ったことを理由に医師免許を取り消すという判断をした場合、裁量権の濫用と考えることができます。

裁量権の逸脱・濫用の判断基準

審査の種類
内容と例
実体的審査
事実誤認(例:人違いの懲戒処分)/平等原則違反(例:特定の個人を差別した補助金交付決定)/比例原則違反(例:些細な不正に対する不当に重い懲戒処分)/動機不正(例:風俗店の開業を阻止するために行った児童施設の設置許可処分)
判断過程審査
他事考慮・考慮不尽(例:信仰上の理由から剣道の受講を拒否する学生に対して、代替措置を講ずることなく下した退学処分)
手続的審査
行政庁の裁量判断が公正な手続によって行われたかに着目し、公正な手続によって行われていなかった場合には、裁判所が行政庁の処分を違法と判断する(例:営業許可の取消処分を出す際、相手方が意見を述べる機会を与えなければならないのに、与えなかった)

動機不正の例は、風営法に「児童施設から200m以内に風俗店を設置することができない」という規定があることを利用したものです。風俗店の開業を阻止するために、必要のない児童施設の設置許可処分を出すことは裁量権の逸脱濫用とされ違法になります。

行政裁量に関する判例

事件
結論
外国人の在留許可の更新(マクリーン事件/最大判昭53.10.4)
更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨 → 外国人の更新拒否処分は違法ではない
エホバの証人剣道受講拒否事件(最判平8.3.8)
考慮すべき事項を考慮しておらず、または考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会通念上著しく妥当を欠く処分をしたもの → 学生に対する退学処分は違法である
呉市学校施設使用不許可事件(最判平18.2.7)
重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたもの → 目的外使用の不許可処分は違法である
個人タクシー事件(最判昭46.10.28)
公正な手続によって免許申請の許否につき判定を受けるべき申請人の法的利益を侵害するもの → 免許の却下処分は違法である
伊方原発訴訟(最判平4.10.29)
裁判所の審理、判断は、原子力委員会等の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべき → 原子炉設置の許可処分は適法である

5件のうち適法とされたのはマクリーン事件と伊方原発訴訟の2つで、残り3つは違法とされました。結論だけでなく理由もあわせて押さえます。

過去問では「法務大臣は、本邦に在留する外国人から再入国の許可申請があったときは、わが国の国益を保持し出入国の公正な管理を図る観点から、申請者の在留状況、渡航目的、渡航の必要性、渡航先国とわが国との関係、内外の諸情勢等を総合的に勘案した上で、法務大臣に委ねられた出入国管理上の合理的な裁量に基づいて、その許否を判断する」という記述が正しいものとして出題されています。

具体例

勤務時間中にタバコを1本吸ったAの医師免許を厚生労働大臣が取り消した場合、比例原則違反として裁量権の濫用になります。

事件
結論
マクリーン事件(最大判昭53.10.4)
更新拒否処分は違法ではない
エホバの証人剣道受講拒否事件(最判平8.3.8)
退学処分は違法
呉市学校施設使用不許可事件(最判平18.2.7)
不許可処分は違法
個人タクシー事件(最判昭46.10.28)
却下処分は違法
伊方原発訴訟(最判平4.10.29)
許可処分は適法

重要メモ

  • ・行政裁量は法律により行政庁に認められた判断の余地。要件裁量と効果裁量がある
  • ・裁判所が取り消せるのは裁量権の範囲をこえ、またはその濫用があった場合に限られる(行政事件訴訟法30条)
  • ・判断基準は実体的審査・判断過程審査・手続的審査の3つ
  • ・5判例のうち適法はマクリーン事件と伊方原発訴訟の2つ、違法はエホバの証人・呉市学校施設・個人タクシーの3つ
  • ・再入国の許可申請は法務大臣に委ねられた出入国管理上の合理的な裁量に基づいて判断する(12-26-2 ○)
13

行政行為の附款

簡単にいうと

行政行為につける条件のことです。条件と期限の違いが一番よく問われます。

行政庁に「道路を使わせてください」という許可申請をしたとします。それに対して行政は「使わせるか使わせないか」だけでなく、「使用料を払ってくれたら使わせる」という判断をすることができます。

このように行政行為に条件を付けることを附款といいます。

附款の基本ルール

  • ・附款も行政行為の一部なので、附款を付すには法律の根拠が必要
  • ・附款に瑕疵がある場合、原則として行政行為全体が違法となる

附款だけを切り離して考えるのではなく、本体の行政行為と一体のものとして扱われます。

附款の種類

種類
内容
例
条件
将来発生するかどうかが不確実な事実にかからせる附款
道路工事が完成したら、路線バス事業の免許を与える(停止条件)/指定期間内に運輸事業を開始しないと、免許を失効させる(解除条件)
期限
将来発生するかどうかが確実な事実にかからせる附款
3月31日から道路の占用を許可する(始期)/3月31日まで道路の占用を許可する(終期)
負担
行政行為に伴う特別の義務を命ずる附款
自動車運転免許に付加される「眼鏡等使用」/河川占用許可に対する「占用料の納付」
撤回権の留保
特定の場合に行政行為を撤回する権利を留保する附款
県庁での売店営業を許可するが、県側に事情の変更があれば撤回する

条件と期限の分かれ目

将来発生するかどうかが不確実か確実かで分かれます。

工事が完成するかどうか、事業を開始するかどうかは不確実なので条件です。これに対し3月31日は必ず来るので期限です。

過去問では「自動車の運転免許の期限として、免許証に記載されている『○年○月○日まで有効』という条件は、行政行為の附款理論でいうところの『期限』に該当する」という記述が正しいものとして出題されています。日付は必ず到来するので期限です。

負担は条件と違う

条件はそれが満たされないと行政行為の効力が発生しなかったり失われたりします。これに対し負担はそれが満たされなくても行政行為の効力が失われるわけではありません。

眼鏡をかけずに運転したからといって、運転免許そのものが自動的に失効するわけではありません。別途、違反として処理されます。ここが条件との大きな違いです。

具体例

道路の占用を許可したうえで占用料の納付を命じるのが負担、「3月31日まで許可する」とするのが期限(終期)です。

種類
将来の事実
効力への影響
条件
発生するかどうかが不確実
成就しないと効力が発生しない/失われる
期限
発生するかどうかが確実
到来により効力が発生する/消滅する
負担
—
履行しなくても効力は失われない
撤回権の留保
—
留保された場合に撤回できる

重要メモ

  • ・附款も行政行為の一部なので、付すには法律の根拠が必要
  • ・附款に瑕疵がある場合、原則として行政行為全体が違法となる
  • ・条件は将来発生するかどうかが不確実、期限は確実という点で分かれる
  • ・運転免許証の「○年○月○日まで有効」は期限にあたる(07-10-3 ○)
  • ・負担はそれが満たされなくても行政行為の効力が失われない。条件との最大の違い

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
行政行為の意義と分類
法律行為的(許可・特許・認可等)と準法律行為的(確認・公証・通知・受理)に大別
許可は禁止解除、特許は権利設定。準法律行為的行政行為には附款不可
行政行為の効力
公定力・不可争力・不可変更力・自力執行力・拘束力の5種
不可変更力は争訟裁断的行為のみ。重大明白な瑕疵は当然無効で公定力なし
行政行為の瑕疵
職権取消しは遡及効、撤回は将来効。撤回には補償が必要な場合あり
違法性の承継は原則否定。一体的手続の場合のみ例外的に承継
行政裁量
裁量権の逸脱・濫用は違法(行訴法30条)。判断基準は他事考慮・不考慮・不合理・不当目的
伊方原発:専門技術的裁量あり。神戸税関:社会通念上著しく不合理なら濫用
附款
条件は不確定、期限は確定。負担違反は当然無効でなく取消事由
準法律行為的行政行為には附款不可。覊束裁量行為への附款には法律の根拠必要

関連判例

伊方原発訴訟

原子炉設置許可処分の適法性が争われた事件。最高裁は、原子炉設置許可は高度な専門技術的判断を要するため行政庁に広い裁量が認められると判示した。ただし、審査において用いた審査基準に不合理な点があったり、申請内容が審査基準に適合しないと認めたことに合理的根拠がない場合には許可処分は違法となるとした。裁量統制の基準として「審査基準の不合理性」が問われる問題で必出の判例。

›

神戸税関事件

最判昭52.12.20

税関職員が職場大会に参加したことを理由に懲戒免職処分を受けた事件。最高裁は、懲戒処分の選択が社会通念上著しく妥当性を欠くと認められる場合には裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となると判示した。裁量権の濫用の典型例として「社会通念上著しく妥当性を欠く処分」という基準が問われる問題で必ず登場する判例。

›

違法性の承継が認められた例(農地買収計画・買収処分)

最判昭25.9.15

農地改革において農地買収計画(先行処分)の違法が買収処分(後行処分)の取消事由になるかが争われた事件。最高裁は、農地買収計画と買収処分は一体として農地改革という一連の法律効果を実現するものであるとして、例外的に違法性の承継を認めた。違法性の承継は原則否定だが「先行・後行処分が一体として機能する場合」の例外が問われる問題で頻出の判例。

›

瑕疵の治癒が認められた例

最判昭36.07.14

行政行為の成立当初に手続上の瑕疵があったが、その後適法な手続が補完された事件において瑕疵の治癒が問題となった。最高裁は、法的安定性・相手方の信頼保護の観点から、事後的に欠缺していた要件が充足された場合に瑕疵の治癒を認め得るとした。瑕疵の治癒は例外的にしか認められない点と、どのような場合に認められるかの判断基準が試験で問われる。

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