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テキスト/行政法/第5節 行政行為

第5節 行政行為

第1章 総論

行政行為は、行政法の中核をなす最重要テーマです。行政庁が国民に対して一方的に権利義務を形成する行為であり、処分性・公定力・取消訴訟など、行政救済法にも直結します。この節では、行政行為の分類・効力・瑕疵・行政裁量・附款など、試験頻出の論点を体系的に学びます。

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行政行為の意義

簡単にいうと

簡単にいうと、行政行為とは「行政庁が法律に基づいて一方的に国民の権利義務を変動させる行為」です。課税処分や運転免許の付与がその代表例で、民事契約と違って相手の同意は不要です。

行政行為とは、行政庁が法律に基づき、公権力の行使として、国民の権利義務を具体的に変動させる行為をいいます。この定義には、いくつかの重要な要素が含まれています。

まず「行政庁」の行為であることが必要です。行政庁とは、国や地方公共団体の機関のうち、外部に向けて法律的な行為をする権限を持つものをいいます。

次に「法律に基づく」ことが必要です。行政行為は法治主義の原則(法律による行政の原理)の下に置かれており、法律の根拠なしに国民の権利義務を変動させることは原則としてできません。

そして「公権力の行使」としての行為であることが求められます。行政行為は民事上の契約と異なり、相手方の同意を必要とせず、一方的に権利義務の変動をもたらすことができます。これが行政行為の最大の特徴です。例えば、税務署が納税者に課税処分をする場合、納税者が同意しなくても課税処分は有効に成立します。

最後に「具体的に権利義務を変動させる」ことが必要です。法律や条例など一般的・抽象的なルールを定める立法行為とは区別されます。

行政行為は、行政庁の意思表示を要素とするかどうかによって大きく2つに分類されます。①法律行為的行政行為は行政庁の意思表示を本質的な要素とするもので、命令的行為(下命・禁止・許可・免除)と形成的行為(特許・認可・代理)があります。②準法律行為的行政行為は行政庁の意思表示を要素とせず、行政庁の判断・認識・通知などを本質的な要素とするもので、確認・公証・通知・受理などがあります。

行政行為は行政活動を迅速かつ円滑に行うために特別な効力(公定力・不可争力・不可変更力・自力執行力・拘束力)が認められており、これが民事上の法律行為と大きく異なる点です。

具体例

課税処分を例にとりましょう。税務署長(行政庁)が、あなた(国民)に対して「所得税○○円を納付せよ」と課税処分(行政行為)をした場合、あなたが「そんな税額には納得できない」と言って払わなかったとしても、行政行為の効力は消えません。行政庁は裁判所を通さずに財産を差し押さえること(自力執行)ができます。これが民事契約と大きく異なる点です。また、一定の不服申立期間(不服申立前置主義)が過ぎると、もはやその課税処分に異議を唱えることができなくなります(不可争力)。

行政行為の典型例その1:課税処分。行政庁が『迅速に税金を取りたい』と考え、法律に基づいて国民に対して課税処分(行政行為)を行う。国民が税金を滞納した場合は、行政上の強制執行として滞納処分による差押えに進む

パターン①:課税処分の流れ

行政行為の典型例その2:違法建築物除却命令。行政庁が『迅速に違法建築物を撤去したい』と考え、法律に基づいて違法建築物除却命令(行政行為)を出す。所有者が命令に従わなければ、行政上の強制執行として行政代執行によって撤去が行われる

パターン②:違法建築物除却命令の流れ

行政行為の連続性を比較する図。通常のケース:事業者が『カフェを開きたい』と考え、行政から飲食店営業許可という1つの行政行為を受ければ営業が始められる。例外的なケース:事業者が『アパートを建てたい』と考える場合、行政から①安全認定、②建築確認という2つの行政行為が必要で、両方揃って初めて建設が可能になる

パターン③:行政行為の連続性(1つで済む場合・複数必要な場合)

重要メモ

  • 「行政庁が法律に基づき一方的に権利義務を変動させる行為」で、民事契約と違い相手の同意不要・公定力など5つの特別な効力が認められる点が核心
  • 行政行為(処分)の定義:行政庁が法に基づき、公権力の行使として国民の権利義務を一方的・具体的に変動させる行為
  • 法律行為的行政行為:行政庁の意思表示を本質的要素とする(命令的行為=下命・禁止・許可・免除、形成的行為=特許・認可・代理)
  • 準法律行為的行政行為:意思表示を要素とせず判断・認識・通知が要素(確認・公証・通知・受理)。効果は法律の規定により発生
  • 行政行為は相手方の同意不要で一方的に権利義務を変動させる点が民事契約と根本的に異なる
  • 行政行為の5つの効力(公定力・不可争力・不可変更力・自力執行力・拘束力)は行政活動の迅速性・円滑性を確保するために認められたもの
  • 立法行為(法律・条例など一般的・抽象的なルール)とは異なり、行政行為は個別具体的な権利義務の変動をもたらす点に注意
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行政行為の分類(概要)

簡単にいうと

簡単にいうと、行政行為には「許可」「特許」「認可」など様々な種類があります。大きく「法律行為的行政行為(命令的行為・形成的行為)」と「準法律行為的行政行為」の2グループに分かれます。それぞれの詳細は後続のテーマで学びましょう。

行政行為は、行政庁の意思表示を要素とするかどうかによって大きく2つに分類されます。

法律行為的行政行為

行政庁の意思表示を本質的な要素とする行政行為です。行政庁の意思によって法律効果が発生します。さらに「命令的行為」と「形成的行為」に分かれます。

命令的行為:国民の自然的自由を規律する行為(下命・禁止・許可・免除)。 形成的行為:国民に新たな権利や法律関係を設定する行為(特許・認可・代理)。

準法律行為的行政行為

行政庁の意思表示を要素とせず、判断・認識・通知などを本質的な要素とする行政行為です。法律効果は行政庁の意思ではなく法律の規定によって発生します(確認・公証・通知・受理)。

各行為の詳細は「命令的行為」「形成的行為」「準法律行為的行政行為」の各テーマで学習します。

具体例

飲食店の営業許可を例にとりましょう。飲食業はもともと誰でも自由にできる行為ですが、食品衛生などの観点から許可制になっています(許可)。許可要件(設備・衛生管理など)を満たしていれば行政庁は許可しなければならず、裁量の余地は比較的狭いです。これに対して、公務員の任命は、公務員という地位自体が法律によって創設されたものであり、任命権者には広い裁量が認められています(特許)。農地の売買(権利移転)には農業委員会の許可(実質は認可)が必要であり、この許可がなければ権利移転の効果は生じません(認可の例)。

分類
内容
種類
法律行為的行政行為(命令的行為)
国民の自然的自由を規律
下命・禁止・許可・免除
法律行為的行政行為(形成的行為)
新たな権利・法律関係を設定
特許・認可・代理
準法律行為的行政行為
判断・認識・通知が要素(法律の規定により効果発生)
確認・公証・通知・受理

重要メモ

  • 「意思表示を要素とするか否か」で法律行為的(命令的・形成的)と準法律行為的に二分され、各種類の典型例とセットで覚えることが重要
  • 法律行為的行政行為:行政庁の意思表示が含まれ、その意思によって法律効果が発生する
  • 命令的行為:国民の自然的自由を規律(下命・禁止・許可・免除)
  • 形成的行為:国民に新たな権利・法律関係を設定(特許・認可・代理)
  • 準法律行為的行政行為:行政庁の意思によらず法律の規定によって効果が発生(確認・公証・通知・受理)
  • 許可と特許の違い(許可=禁止解除・裁量狭、特許=新たな権利設定・裁量広)は特に頻出。認可(私人間行為の補完)も含めた三者比較が最重要
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命令的行為(下命・禁止・許可・免除)

簡単にいうと

簡単にいうと、命令的行為とは「国民が本来持っている自由を規律する行政行為」です。下命・禁止は自由を制限し、許可はその制限を解除します。特に「許可」は試験最頻出で、自動車運転免許がその典型例です。

命令的行為とは、国民の自然的自由(本来誰でも持っている行動の自由)を規律する法律行為的行政行為です。下命・禁止・許可・免除の4種類があります。

①下命

国民に対して特定の作為・不作為・給付などを命じる行為です。違法建築の除去命令、営業停止命令、租税の徴収などが典型例です。

②禁止

国民に特定の行為をしてはならないと命じる行為です。飲食営業の禁止などがあります。下命・禁止はいずれも国民の自由を制限する行為です。

③許可

法律によって一般的に禁止されている行為を、特定の場合に解除して適法に行えるようにする行為です。自動車運転免許、飲食業の営業許可などが典型例です。

許可は「本来できるはずの行為」を国が規制しているため、その解除(禁止の解除)という性格を持ちます。要件を満たせば行政庁は許可しなければならず、裁量の余地が比較的狭いとされています。

行政書士試験では、自動車運転免許は行政行為の分類理論でいうところの「許可」に該当するとされており(07-10-1 ○)、「裁量が広く認められる行政行為」という設問は誤りです(11-10-ア 誤り)。

④免除

法律によって課されている義務を、特定の場合に解除する行為です。租税の免除、授業料の免除などがあります。

許可の重要ポイント(特許との対比)

許可と特許は試験で頻繁に問われる重要な区別です。許可は「本来自由にできる行為を一般的に禁止した上で、特定の場合に解除する」という構造であるため、禁止を解除するだけで新しい権利を与えるわけではありません。これに対して特許は「自然的自由としては存在しない、特別の権利・能力を新たに設定する」行為であり、裁量が広く認められます。

自動車の運転は本来誰でもできる行為ですが、危険防止のために免許制にして一般的に禁止した上で、基準を満たした者に限って解除している(許可)のが運転免許です。一方、公務員の地位は法律による公務員制度がなければ存在しないものであり、新たに設定する(特許)のが任命行為です。

具体例

自動車運転免許を例にとりましょう。本来、人は道路上を自動車で走る自由を持っています。しかし危険防止のため道路交通法が「無免許運転の禁止」という一般的禁止を置き、その上で試験に合格した者には禁止を解除しています(許可)。このため、要件(試験合格)を満たせば行政庁は免許を与えなければならず、裁量の余地は狭いといえます。

行政行為の効力には3つの特別な性質がある。①公定力:処分が間違っていても国民が不服申立てするまで有効として扱われる。②不可争力:一定期間が過ぎると国民は不服申立できなくなる。③自力執行力:裁判所の判決なしに行政が強制執行できる。いずれも行政活動の迅速性を確保するための仕組み

行政行為の効力(公定力・不可争力・自力執行力)

瑕疵ある行政行為の分類。行政行為は『適法』と『瑕疵ある行政行為』に分かれる。適法は妥当。瑕疵ある行政行為は『不当』(違法ではないが行うべきでなかった)と『違法』(法律違反)に分かれる。通常の瑕疵は『取消事由』となり有効だが取り消されればなかったことになる。重大かつ明白な瑕疵は『無効事由』となり取り消すまでもなく効力が生じない

瑕疵ある行政行為の分類(適法・不当・違法と効力)

種類
内容
具体例
下命
特定の作為・不作為・給付を命じる
違法建築の除去命令・租税の徴収
禁止
特定の行為をしてはならないと命じる
飲食営業の禁止
許可
一般的禁止を解除して適法に行えるようにする
自動車運転免許・飲食業の営業許可
免除
法律上課された義務を解除する
租税の免除・授業料の免除

重要メモ

  • 「許可=一般的禁止の解除(裁量狭)」と「特許=新たな権利設定(裁量広)」の違いが超頻出。下命・禁止・許可・免除の4種の内容と具体例を整理しておく
  • 下命:国民に特定の作為・不作為・給付を命じる行為(違法建築物の除去命令・租税の徴収など)
  • 禁止:国民に特定の行為をしてはならないと命じる行為(営業停止命令など)
  • 許可:法令上の一般的禁止を特定人について解除する行為。要件を満たせば行政庁は許可しなければならず裁量は比較的狭い(自動車運転免許・風俗営業許可・飲食業の営業許可)
  • 自動車運転免許は行政行為の分類理論上「許可」に該当する(07-10-1 ○)。「裁量が広く認められる」とする設問は誤り(11-10-ア 誤り)
  • 免除:法律上課された義務を特定人について解除する行為(租税の免除・就学義務の免除・授業料の免除など)
  • 許可(自然的自由の禁止解除・裁量狭)vs 特許(自然的自由として存在しない権利の新設・裁量広)の違いは超頻出
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形成的行為(特許・認可・代理)

簡単にいうと

簡単にいうと、形成的行為とは「法律によって新たな権利や法律関係を設定する行政行為」です。特許・認可・代理の3種類があり、特に「特許」と「認可」は許可との違いが試験頻出です。

形成的行為とは、国民に新たな権利や法律関係を設定する法律行為的行政行為です。特許・認可・代理の3種類があります。

①特許

特定の相手方のために、権利・能力・法的地位などを新たに設定する行為です。外国人の帰化の許可、公営水道の設立許可、公務員の任命などが典型例です。

特許は「本来できない行為」を国が特別に認めるものであり、許可と異なり裁量の余地が広いとされています。これが許可との最大の違いです。

②認可

私人間の法律行為(契約など)を補充して、その法律効果を完成させる行為です。認可がなければ当該法律行為は効力を生じません。農地の権利移転の許可(農地法3条)、電気・ガスなど公共料金改定の認可などが典型例です。

認可の特徴は「私人間の法律行為の効力を補完する」という点です。認可がなければ当該法律行為そのものが無効となります。これは許可(一般的禁止の解除)や特許(新たな権利の設定)と異なります。

③代理

本来は他の機関または私人がすべき行為を、行政機関が代わって行い、その法律効果を直接帰属させる行為です。土地収用委員会による収用裁決、特殊法人の役員の任命などが典型例です。

許可・特許・認可の重要な違い

3つは名称が似ていますが、それぞれ性質が大きく異なります。許可は「本来自由にできる行為を一般的に禁止した上で解除する」行為であり、裁量は狭いです。特許は「自然的自由としては存在しない特別な権利・能力を新たに設定する」行為であり、裁量が広いです。認可は「私人間の法律行為の効力を補完する」行為であり、認可がなければ私人間の法律行為は効力を生じません。

具体例

農地の売買を例にとりましょう。Aさんが農地をBさんに売ろうとする場合、単に売買契約を結んだだけでは権利移転の効力は生じません。農業委員会の許可(農地法3条。実質は「認可」)が必要であり、この許可(認可)を受けて初めて農地の所有権移転の効力が発生します。これが認可の典型例です。一方、公務員の任命は公務員という地位自体が法律によって創設されたものであり、任命権者には広い裁量が認められています(特許)。

行政行為の瑕疵

行政行為の瑕疵

種類
内容
裁量の広さ
具体例
特許
新たな権利・地位の設定
広い
外国人の帰化・公務員の任命
認可
私人間の法律行為の効力を補完
比較的狭い
農地権利移転の許可・公共料金の認可
代理
他機関・私人の行為を代わって行う
-
土地収用委員会の収用裁決

重要メモ

  • 「特許は裁量広(新たな権利設定)・認可は私人間行為の補完(なければ無効)・代理は他機関の代行」の三者の違いが頻出
  • 特許:本来自然的自由としては存在しない権利・能力・法的地位を新たに設定する行為。裁量が広い(公有水面埋立免許・外国人の帰化・公務員の任命・特許企業の設立許可)
  • 認可:私人間の法律行為(契約等)を補充して法律効果を完成させる行為。認可がなければ私人間の法律行為は無効(農地権利移転の許可=農地法3条・銀行の合併認可・公共料金の改定認可)
  • 農地の権利移転の許可(農地法3条)は法律上「許可」と書かれているが分類理論上は「認可」に当たる点に注意
  • 代理:他の機関または私人がすべき行為を行政機関が代わって行い、効果を直接帰属させる行為(土地収用委員会の収用裁決・特殊法人の役員任命)
  • 許可(裁量狭・禁止解除)vs 特許(裁量広・権利設定)vs 認可(私人間行為の補完・不備で無効)の三者比較は記述式でも出題される超頻出論点
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準法律行為的行政行為(確認・公証・通知・受理)

簡単にいうと

簡単にいうと、準法律行為的行政行為とは「行政庁の意思表示ではなく、判断・認識・通知が要素となる行政行為」です。確認・公証・通知・受理の4種類があり、法律の規定によって自動的に効果が発生します。

準法律行為的行政行為は行政庁の意思表示を要素とせず、行政庁の判断・認識・通知を本質的な要素とする行政行為です。行政庁の意思よりも法律の規定によって効果が発生します。確認・公証・通知・受理の4種類があります。

①確認

特定の事実または法律関係の存否を公の権限をもって確認する行為です。発明の特許(特許庁による確認)、建築確認などが典型例です。確認は要件の審査に基づいて行われるものであり、全体として行政裁量が認められないとされています(要件を満たせば確認しなければならない)。

②公証

特定の事実または法律関係の存否を公に証明する行為です。証明書の交付、運転免許証の交付などが典型例です。

③通知

特定または不特定多数の人に一定の事実を知らせる行為です。納税の督促などが典型例です。

④受理

他人の行為を有効な行為として受け付ける行為です。各種の申請の受理などが典型例です。

準法律行為的行政行為の特徴

準法律行為的行政行為の最大の特徴は、「行政庁の意思」ではなく「法律の規定」によって効果が発生するという点です。そのため、法律行為的行政行為(下命・許可・特許など)と異なり、行政庁の裁量は原則として認められません。例えば建築確認は、申請が法令の要件を満たしている限り確認しなければならず、行政庁が独自の判断で拒否することはできません。

具体例

建築確認を例にとりましょう。建物を建てる際には特定行政庁に建築確認の申請をしなければなりません。特定行政庁は申請内容が建築基準法の要件を満たしているかどうかを「確認」するだけであり、裁量の余地はありません。要件を満たしていれば確認しなければならず、要件を満たしていなければ確認できません。これが「確認」の典型例です。

行政行為の取消しと撤回

行政行為の取消しと撤回の比較

種類
意義
具体例
確認
特定の事実または法律関係の存否を公の権限をもって確認する行為
発明の特許・建築確認
公証
特定の事実または法律関係の存否を公に証明する行為
証明書の交付・運転免許証の交付
通知
特定または不特定多数の人に一定の事実を知らせる行為
納税の督促
受理
他人の行為を有効な行為として受け付ける行為
各種の申請の受理

重要メモ

  • 「意思表示が不要で法律の規定で効果が発生」「確認は裁量なし・要件を満たせば確認しなければならない」が核心
  • 準法律行為的行政行為:行政庁の意思表示を要素とせず、判断・認識・通知を本質的要素とする。法律の規定によって自動的に効果が発生する
  • 確認:特定の事実または法律関係の存否を公の権限をもって確認する行為。要件を満たせば確認しなければならず行政裁量は認められない(発明の特許・当選人の決定・建築確認)
  • 公証:特定の事実または法律関係の存在を公に証明する行為(選挙人名簿への登録・不動産の登記・証明書の交付・運転免許証の交付)
  • 通知:特定または不特定多数の人に一定の事実・法律関係を知らせ、相手方に対する法律効果を発生させる行為(代執行の戒告・納税の督促)
  • 受理:他人の行為(申請・申告等)を有効な行為として受け付ける行為(各種申請の受理)
  • 法律行為的行政行為と異なり行政裁量が原則認められない点が特徴。建築確認は要件充足なら確認を拒否できない
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行政行為の効力

簡単にいうと

簡単にいうと、行政行為には民事上の法律行為にはない特別な5つの効力があります。「違法でも取り消されるまで有効」「一定期間で争えなくなる」「自力で強制執行できる」「一度決めたら変えられない」「相手方も行政庁自身も拘束される」の5つです。行政活動の迅速・円滑化のために認められた特権です。

行政行為には、行政活動を迅速かつ円滑に行うために、以下の5つの特別な効力が認められています。

①公定力

たとえ行政行為が違法なものであっても、当然無効とされる場合を除いて、権限を有する国家機関により取り消されるまでは有効な行政行為として扱われる効力です。これを「公定力」といいます。

公定力の根拠は、行政活動の迅速性の確保にあります。もし違法な行政行為でも当然に無効となってしまうと、行政活動が混乱してしまいます。そこで、取消権を持つ機関(処分庁・上級行政庁・裁判所)が正式に取り消すまでは有効なものとして扱われます。

注意点として、公定力は行政行為が「重大かつ明白な瑕疵」を持つ場合(当然無効)には認められません。また、課税処分のように行政行為の効力から生じる義務を果たさない場合は、行政上の強制執行(滞納処分)の対象になります。

②不可争力

行政行為は、一定の期間(不服申立期間・出訴期間)が経過すると、国民の側からその行政行為の効力を争うことができなくなる効力です。これを「不可争力」といいます。

不可争力が生じても、行政庁(国側)からその行政行為を取り消すことは可能です(99-34-3 ○)。つまり、不可争力は「国民が争えなくなる」だけであり、行政庁による取消権を制限するものではありません。

行政事件訴訟では、原則として処分があったことを知った日から6か月以内(行政事件訴訟法14条1項)に取消訴訟を提起しなければなりません。この期間を過ぎると不可争力が生じ、取消訴訟を提起できなくなります。ただし、不服申立て(審査請求)を先に行った場合(審査請求前置)は、裁決があったことを知った日から6か月です。

③自力執行力(自力強制力)

行政行為によって生じた義務を履行しない場合、裁判所を経ずに行政庁自ら義務者に対して強制執行ができる効力です。これを「自力執行力(自力強制力)」といいます。

重要なのは、すべての行政行為に自力執行力があるわけではないという点です。自力執行力は法律の根拠がある場合にのみ認められます。例えば、課税処分に基づく租税の強制徴収(国税徴収法)、違法建築物の強制撤去(行政代執行法)などは法律の根拠があるため自力執行が可能です。

④不可変更力(実質的確定力)

紛争解決を目的とする行政行為(審査請求に対する裁決など)は、一度行うと行政庁自らも変更することができない効力です。これを「不可変更力(実質的確定力)」といいます。

不可変更力はすべての行政行為に認められるわけではなく、審判的な性格を持つ行政行為(裁決・決定など)に限って認められます。通常の行政行為(課税処分など)には不可変更力はなく、行政庁が職権で取り消すことができます。

⑤拘束力

行政行為の内容通りの法律効果が生じ、相手方(名宛人)のみならず行政庁自身も行政行為の内容に拘束される効力です。これを「拘束力」といいます。

拘束力は行政行為が成立・発効したとき当然に生じます。行政庁は自らが行った行政行為の内容に反する行為をすることはできず、相手方も行政行為によって課された義務を免れることはできません。

例えば、営業許可を受けた者は許可の内容(許可要件・附款など)に拘束され、許可した行政庁も同様にその内容に拘束されます。

行政行為の効力のまとめ

行政行為の5つの効力はいずれも「行政活動の迅速性を確保するため」という目的に基づくものです。特に試験では、①公定力(違法でも有効)、②不可争力(期間経過後は国民側から争えない)、③自力執行力(法律の根拠が必要)、⑤拘束力(相手方・行政庁双方を拘束)の各点がよく問われます。

具体例

課税処分を例にとりましょう。税務署から「100万円の税金を払え」という課税処分が届きました。あなたはその計算が間違っていると思っています(違法な行政行為の可能性)。しかし、課税処分は公定力により、取り消されるまで有効です(①公定力)。そのため、まず不服申立て(審査請求)や取消訴訟で争う必要があります。もし不服申立期間(処分を知った日から3か月・行政不服審査法18条)を過ぎてしまうと、国民の側からは争えなくなります(②不可争力)。払わなかった場合は、裁判所を経ずに財産が差し押さえられます(③自力執行力。国税徴収法に根拠あり)。

効力
内容
根拠の要否
備考
公定力
違法でも取り消されるまで有効
不要
当然無効の場合は適用なし
不可争力
一定期間後は国民から争えない
不要
行政庁からの取消しは可能
自力執行力
裁判所を経ずに強制執行できる
必要(法律の根拠)
すべての行政行為に認められるわけではない
不可変更力
行政庁も変更できない
不要
審判的行政行為(裁決等)のみ
拘束力
相手方のみならず行政庁自身も拘束
不要
行政行為の成立・発効と同時に生じる

重要メモ

  • 「公定力(違法でも有効)・不可争力(期間後は国民から争えないが行政庁からは取消可)・自力執行力(法律根拠必要)・不可変更力(審判的行政行為のみ)・拘束力(相手方も行政庁も拘束)」の5効力を整理する
  • 公定力:行政行為は権限ある機関が取り消すまで有効とみなされる(違法でも有効)。ただし「重大かつ明白な瑕疵」がある場合(当然無効)は公定力なし
  • 不可争力:不服申立期間・出訴期間が経過すると国民の側から行政行為の効力を争えなくなる効力。ただし行政庁(国側)からの取消しは可能(99-34-3 ○)
  • 自力執行力:行政行為によって命じた義務の不履行があった場合、裁判所を経ずに行政庁が強制執行できる効力。法律の根拠がある場合のみ認められる(すべての行政行為に当然に認められるわけではない)(99-34-2 ×)
  • 不可変更力(実質的確定力):審判的性格を持つ行政行為(裁決・決定など)にのみ認められ、一度行うと行政庁自らも変更できない効力
  • 拘束力:行政行為の内容通りの法律効果が生じ、名宛人(相手方)のみならず行政庁自身も拘束される効力
  • 不可争力は国民が争えなくなるだけ。行政庁自らが当該行政行為を取り消すことは可能(不可変更力とは区別する)
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行政行為の瑕疵(取消事由と無効事由)

簡単にいうと

簡単にいうと、行政行為に問題(瑕疵)があった場合、「取り消せるけど有効(取消事由)」のケースと「最初から無効(無効事由)」のケースがあります。この2つの違い(重大かつ明白な瑕疵かどうか)は試験頻出です。

瑕疵ある行政行為とは

瑕疵ある行政行為」とは、①法律に違反して行った行政行為(違法な行政行為)や、②違反はしていないが行うべきではなかった行政行為(不当な行政行為)のことをいいます。

瑕疵の程度による分類

瑕疵ある行政行為は、瑕疵の程度によって以下の2つに分かれます。

①取消事由(取消し得る行政行為):瑕疵はあるが、取り消されない限りは有効な行政行為として扱われるもの。行政行為の瑕疵が通常の程度のものがこれに該当します。取消権を持つ機関(処分庁・上級行政庁・裁判所)が正式に取り消してはじめて効力を失います。

②無効事由(当然無効の行政行為):瑕疵が重大かつ明白であり、最初から効力がなかったものとして扱われるもの。無効確認の訴えや無効確認審査請求によって確認できます。取消訴訟の出訴期間が経過していても争うことができ(不可争力が生じない)、また不服申立前置主義の例外も認められています。

取消事由か無効事由かの区別については、判例は「重大かつ明白な瑕疵」があるときに無効としており、単に重大なだけでは足りず、外観上も明白でなければなりません。

具体例

取消事由と無効事由の違いを具体例で見てみましょう。18歳未満の者に誤って運転免許を与えた場合(許可要件不充足)、この行政行為は取消事由(瑕疵あり・有効)に当たります。処分庁が取り消すか、取消訴訟で争うまでは有効として扱われます。一方、全く権限のない機関が行った課税処分など、瑕疵が重大かつ明白な場合は無効事由となり、最初から効力がなかったものとして扱われます。出訴期間が過ぎていても無効確認の訴えで争うことができます。

違法性の承継をシンプルに図解。登場人物は近隣住民のみ。時系列で横に3つのアイコン配置:左から①先行処分(安全認定)、中央②後続処分(建築確認)、右③工事開始。安全認定は期間経過で単独では争えないが、後続の建築確認取消訴訟の中で、違法性の承継により先行処分の違法性も主張できる例外を示す

違法性の承継(先行処分の違法性が後続処分に及ぶ場合)

違法性の承継と瑕疵ある行政行為が有効となる場合

違法性の承継と瑕疵ある行政行為が有効となる場合

区分
瑕疵の程度
効力
争い方
取消事由
通常の程度の瑕疵
取り消されるまで有効
取消訴訟・審査請求(出訴期間あり)
無効事由
重大かつ明白な瑕疵
最初から無効
無効確認訴訟・無効確認審査請求(出訴期間の制限なし)

重要メモ

  • 「取消事由(有効だが取消権者が取り消すまで有効・出訴期間あり)vs 無効事由(重大かつ明白な瑕疵・最初から無効・出訴期間の制限なし)」の区別が核心
  • 取消し得る行政行為:違法・不当な瑕疵はあるが取り消されるまでは有効(公定力あり)。取消権者(処分庁・上級行政庁・裁判所)が取り消して初めて効力を失う
  • 無効な行政行為:重大かつ明白な瑕疵がある場合。最初から効力が生じない(公定力なし)。出訴期間が経過しても無効確認の訴えで争える
  • 無効判断の基準:「重大性+明白性」が必要。重大だが外観上明白でなければ無効とならず取消事由にとどまる
  • 無効確認訴訟・無効確認審査請求は出訴期間の制限を受けない(不可争力が生じない)
  • 取消し得る行政行為は不可争力が生じるが、無効な行政行為は不可争力が生じない点が実務上重要
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瑕疵の有効化法理(治癒・転換・理由の差し替え)

簡単にいうと

簡単にいうと、行政行為に瑕疵があっても、一定の場合に有効と扱われることがあります。「瑕疵の治癒」「違法行為の転換」「理由の差し替え」の3パターンは相手方の信頼保護と行政の効率性のバランスをとるための法理です。

行政行為に瑕疵があっても、相手方の信頼保護の観点から有効とされる場合があります。以下の3つのパターンが重要です。

①瑕疵の治癒

行政行為の瑕疵が軽微であり、欠けていた要件が事後的に満足された場合に、当該行政行為を有効なものとして扱うことをいいます。

例:農地買収計画の縦覧期間が法令の定めより1日短かったが、期間内に関係者全員が関与していた場合→事後的に要件が充足されたとして瑕疵の治癒が認められる。

②違法行為の転換

本来は瑕疵があるため違法(無効)な行政行為であっても、それを別の行政行為としての要件を満たすものとして有効なものとして扱うことをいいます。

例:死者に対して土地の買収処分をしてしまった場合に、これを相続人に対してしたものとして有効な買収処分として扱う場合。

判例(最判昭40年等)は一定の場合に違法行為の転換を認めています。行政処分が処分行政庁の意図した行政処分としては法定の要件を満たさず違法であるにもかかわらず、他種類の行政処分としてみれば法定の要件が満たされており適法と考えられるような取扱いを判例は一切認めていない、とする設問(95-34-2)は誤りです。

③理由の差し替え

同一の行政行為について、当初の処分理由が不適切であった場合に、事後的に別の適切な理由に変更してその処分の違法性を免れさせることをいいます。

判例(最判平11.11.19)は、飲食店の営業許可申請に対する拒否処分について、当初の理由が適切でないと考えられる場合に、適切と思われる別の理由に変更することが一定の場合に認められるとしています。ただし、相手方の防御の機会を奪うような差し替えは許されないと解されています。

3つのパターンの共通点

3つのパターンはいずれも、形式的には瑕疵のある行政行為を実質的に有効なものとして扱うための法理です。行政の効率性と相手方の信頼保護のバランスをとるための考え方です。

具体例

瑕疵の治癒の例を見てみましょう。農地買収計画について、法令が定める縦覧期間が20日であるところ、19日しか縦覧に供しなかった(1日短い)という瑕疵があったとします。しかし、その期間中に関係者全員が実際に縦覧に来ており、実質的な不利益はなかった場合、1日短いという軽微な瑕疵は事後的に治癒されたとして有効な行政行為として扱われます。

重要メモ

  • 「治癒(軽微な瑕疵が事後的に充足されれば有効)・転換(別種の行政行為の要件を満たせば有効な別行為として扱う)・理由の差し替え(相手方の防御機会を奪わない範囲で一定の場合に可)」の3法理
  • 瑕疵の治癒:行政行為の瑕疵が軽微で欠けていた要件が事後的に充足された場合に有効とする(縦覧期間が1日短かったが関係者全員が縦覧した場合など)
  • 違法行為の転換:当初の行政行為の類型としては違法でも、別種類の行政行為の要件を満たすとして有効な行政行為として扱う法理。判例が一定の場合に認める
  • 行政処分が他種類の行政処分としては法定要件を満たし適法と考えられる取扱いを判例が「一切認めていない」とする設問は誤り(95-34-2 ×)
  • 理由の差し替え:取消訴訟の審理中に当初の処分理由を別の理由に変更すること。相手方の防御機会を奪うような差し替えは許されないが、一定の場合に認められる(最判平11.11.19)
  • 3つの法理はいずれも「形式的に瑕疵がある行政行為を実質的に有効とする」考え方。行政の効率性と相手方の信頼保護のバランスをとる
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行政行為の取消しと撤回

簡単にいうと

簡単にいうと、取消しは「最初から問題があった行政行為をなかったことにする」こと、撤回は「最初は問題なかったが後から事情が変わったので将来に向かって効力を消す」ことです。この2つの違い(遡及効 vs 将来効、補償の要否)は記述式でも頻出です!

行政行為の効力を失わせるためには、①取消しと②撤回の2つの方法があります。この2つは名称が似ていますが、原因・効果・補償の点で全く異なります。記述式でも頻出の重要論点です。

①取消し

取消しとは、行政行為の当初に瑕疵(違法・不当)があったことを理由として、はじめから行政行為がなかったものとみなす行為です。

取消しの原因は行政行為の成立時点にさかのぼる瑕疵(違法・不当)です。そのため、取消しの効果は遡及効(はじめに遡って無効)です。

取消権者は、①処分庁および②上級行政庁です。裁判所(取消訴訟)も取消権を持ちます。職権による取消しには法律の根拠は不要です。

取消しによって被る不利益への補償は原則として不要です(最初から瑕疵があった行政行為に基づく利益を保護する必要がないため)。

例:18歳未満の者に誤って運転免許を与えた場合に、後からその免許を取り消すことが取消しに当たります。この場合、取消しによって「最初から運転免許を与えていなかった」という状態になります。

②撤回

撤回とは、行政行為の当初に瑕疵はなかったが、後発的事情の変化によってその効力を存続させることが適当でない事情が発生したため、将来に向かってその効力を失わせる行為です。

撤回の原因は行政行為の成立後に生じた後発的事情です。そのため、撤回の効果は将来効(将来に向かってのみ効力消滅)です。過去に遡って効力を消滅させることはありません。

取消権者は原則として処分庁のみです(上級行政庁は原則として撤回できない)。これは取消しとの重要な違いです。撤回にも法律の根拠は不要です(06-15 ○)。

撤回によって相手方に生じる不利益への補償は原則として必要です(最初は適法な行政行為に基づいて相手方は権利を有していたため、その権利を後発的事情で消滅させることへの補償が必要)。ただし、相手方に違法行為があった場合など、相手方に帰責事由がある場合は補償不要とされています。

例:運転免許取得後、度重なる交通違反による運転免許の「取消し」(法律上の言葉は「取消し」ですが、行政行為の分類理論では「撤回」に当たります)。

重要な注意点として、日常用語や法律の条文で「取消し」と書かれていても、行政行為の分類理論上は「撤回」に当たる場合があります(04-15 ワンポイント)。行政行為の分類理論上の「取消し」と「撤回」は内容で判断する必要があります。

取消しと撤回の比較まとめ

取消しと撤回の最も重要な違いは、①原因(最初から違法か後発的事情か)、②効果(遡及効か将来効か)、③取消権者(処分庁・上級行政庁か処分庁のみか)、④補償(原則不要か原則必要か)の4点です。

具体例

取消しと撤回の違いを運転免許で見てみましょう。18歳未満の者に誤って運転免許を与えた場合(許可要件不充足)→これを後から取り消すのが「取消し」です。最初から許可要件が欠けていたため、取消しの効果は遡及し「最初から免許はなかった」ことになります。補償は原則不要です。一方、適法に運転免許を取得した後に、繰り返し交通違反を重ねた場合→これを行政庁が免許を消滅させるのが「撤回」(法律上の言葉は「取消し」)です。後発的事情(違反行為)が原因であり、効果は将来に向かってのみ消滅します。補償は相手方に帰責事由(違反行為)があるため不要となるのが通常です。

取消し
撤回
原因
最初から違法だった
最初は適法だった(後発的事情)
法律の根拠
不要
不要
取消し(撤回)権者
処分庁・上級行政庁
原則として処分庁のみ
効果
遡及効(はじめから無効)
将来効(将来に向かって消滅)
補償
原則不要
原則必要

重要メモ

  • 「取消しは遡及効・補償不要(最初から違法)、撤回は将来効・補償原則必要(後発的事情)、どちらも法律の根拠不要」の対比が記述式含め最頻出
  • 取消し:行政行為の当初に瑕疵(違法・不当)があったことを理由に遡及的に効力を消滅させる。取消権者は処分庁・上級行政庁(監督行政庁)・裁判所。法律の根拠不要。補償は原則不要
  • 撤回:当初は適法な行政行為について後発的事情の変化を理由に将来に向かってのみ効力を消滅させる。取消権者は原則として処分庁のみ(上級行政庁は原則撤回不可)。法律の根拠不要。補償は原則必要
  • 行政行為の撤回は法律条文上「取消し」と表現される場合があるため(例:運転免許証の違反による「取消し」)、内容で判断する必要がある(04-15 注意点)
  • 行政行為の撤回は適法な行政行為が前提であることに注意。違法な行政行為を理由とする場合は「取消し」(06-15 ○)
  • 取消し・撤回の取消権者の違い:取消しは上級行政庁も可、撤回は処分庁のみが重要な相違点
  • 遡及効(取消し)vs 将来効(撤回)・補償不要(取消し)vs 補償原則必要(撤回)の4点対比は記述式頻出
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取消し・撤回の制限と補償

簡単にいうと

簡単にいうと、取消しや撤回はどんな場合でも自由にできるわけではありません。特に「授益的行政行為(国民に有利な行政行為)」を取り消したり撤回したりする場合は、公益上の高い必要性が求められます。また撤回には損失補償が必要な場合があります。

取消し・撤回はいずれも法律の根拠は不要ですが、特に授益的行政行為(国民に有利な行政行為)を取り消したり撤回したりする場合には一定の制限がかかります。

授益的行政行為の取消し・撤回の制限

授益的行政行為(例:許可・特許など国民に利益を与える行政行為)を取り消し・撤回する場合は、取消し・撤回によって被る不利益を考慮しても、なおそれをすべき公益上の必要性が高い場合に限り認めるべきとされています。

これは「信頼保護の原則」に基づくものです。適法に許可を受けて営業している者が、突然取消しや撤回をされると著しい不利益を受けます。そのため、公益と私益のバランスを考慮して、高い公益上の必要性がある場合にのみ認められます。

一方、侵益的行政行為(国民に不利益を与える行政行為。例:課税処分、営業停止命令)の取消し・撤回は、一般的に広く認められます。不利益な処分を取り消すことは相手方にとって有利だからです。

撤回における損失補償の要否

撤回は最初は適法な行政行為が前提であり、後発的事情によって権利を奪われる相手方には補償が必要なのが原則です。ただし、具体的な補償の要否については以下の通り判断されます。

補償が原則として不要な場合:許可に使用権の対価の支払いをしていない場合(無償で使用権を得ていた場合)。

補償が必要な場合(例外): - 許可を受けるにあたり対価の支払いをしている場合で、行政庁が行政財産の使用を認めた行政庁が、その管理上の都合等により定められた使用期間の途中で撤回を行ったことによって、その対価を回収するに足りないと認められる期間内に撤回が行われた場合(最判昭和49年2月5日・13-9-1参照)。

この最高裁判例(13-9-1)の論点は、「事業者に対する行政財産の目的外使用許可が所定の使用期間の途中で撤回された場合、意図を行った行政主体に損失補償の責任が生じるのは許可に損失補償を旨の取り決めをしたとき以外にも、対価の支払いをしている場合等に補償が認められる可能性がある」という点です。

授益的行政行為と侵益的行政行為

授益的行政行為」とは、国民に利益を与える行政行為(営業許可、補助金交付決定など)をいいます。「侵益的行政行為」(「負担的行政行為」ともいう)とは、国民に不利益を与える行政行為(課税処分、営業停止命令、建物除去命令など)をいいます。この2つの区別は取消し・撤回の制限の場面で非常に重要です。

補足:職権取消しの制限

行政行為を職権で取り消す場合も同様の考え方が適用されます。授益的行政行為の職権取消しは公益上の必要性が高い場合に限られるのに対して、侵益的行政行為の職権取消しは広く認められます。行政庁による職権取消しの具体的な可否は、行政行為の種類・内容・取消しの理由・相手方の信頼の程度などを総合的に考慮して判断されます。

具体例

国から飲食業の許可(授益的行政行為)を受けて5年間営業してきた事業者を例にとりましょう。その後、行政庁が許可の要件を見直し、その事業者が当初から要件を満たしていなかったことが判明した場合(取消事由)に、許可を取り消すとすると、事業者は突然営業ができなくなります。この場合、取消しによる事業者の不利益(5年間の設備投資等)と取消しをすべき公益上の必要性を比較衡量して、公益上の必要性が不利益を上回る場合にのみ取消しが認められます。一方、営業停止命令(侵益的行政行為)の取消し(撤回)は、事業者に有利になるため広く認められます。

行政行為の種類
取消し・撤回の可否
補償
授益的行政行為(許可・特許など)
公益上の高い必要性がある場合に限り可
撤回の場合は原則必要(状況による)
侵益的行政行為(課税処分・停止命令など)
一般的に広く認められる
取消しの場合は原則不要

重要メモ

  • 「授益的行政行為の取消し・撤回は公益上の高い必要性がある場合のみ(信頼保護)、侵益的行政行為は広く認められる」
  • 授益的行政行為(許可・特許・補助金交付決定など国民に利益を与える行政行為)の取消し・撤回:信頼保護の観点から公益上の高い必要性がある場合に限り認められる
  • 侵益的行政行為(課税処分・営業停止命令など国民に不利益を与える行政行為)の取消し・撤回:一般的に広く認められる
  • 撤回における損失補償:行政財産の目的外使用許可に対価の支払いがない場合は原則不要
  • 撤回における損失補償(例外):対価の支払いがあり、対価回収が困難な期間内に撤回が行われた場合は補償が必要となりうる(最判昭49.2.5 参照)
  • 職権取消しにも法律の根拠は不要だが、授益的行政行為の職権取消しは公益性の高い必要性が求められる(行政活動の適法性・合目的性の回復目的)(06-10-5 ○)
  • 行政行為の職権取消しは、私人の信頼保護等の観点により制限されることがある(06-10-5 ○)
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違法性の承継

簡単にいうと

簡単にいうと、行政行為が2段階続く場合(安全認定→建築確認など)、先行行為の違法性を後続行為の取消訴訟で争えるか、という問題が「違法性の承継」です。原則は承継されませんが、例外的に認められる場合(安全認定と建築確認)は超頻出です!

行政行為の連続性(行政行為の連鎖)

行政行為は通常1件で完結しますが、例外的に2以上の行政行為が連続することで1つの法的効果が発生する場合があります。例えば、マンションを建設するには安全認定(都道府県知事)と建築確認(特定行政庁)という2段階の行政行為が必要な場合があります。

違法性の承継とは

違法性の承継とは、先行する行政行為の違法性が、それを前提とする後続の行政行為の違法事由となることをいいます。

原則:先行行為に一定の期間が経過して不可争力が生じた場合、後続行為の取消訴訟において先行行為の違法性を主張することはできません。これが原則です。

具体的に言うと、建築確認取消訴訟においては: - 建築確認の違法性を主張する→○(認められる) - 安全認定の違法性を主張する→×(原則として認められない)

例外(違法性の承継が認められる場合):先行行為と後続行為が一体として一つの法的効果を完成させるような密接な関係にある場合は、先行行為の違法性を後続行為の取消訴訟で主張することが認められます(違法性の承継)。

判例(最大判昭和53年)は、安全認定と建築確認の関係において、安全認定の違法性を建築確認取消訴訟で主張することができると認めました(安全認定に違法がある場合→建築確認取消訴訟の中で安全認定の違法性を主張できる)。この判例では、周辺住民が一定期間経過後に訴訟提起×となる状況で、建築確認取消訴訟内で安全認定の違法性を主張○とすることができるとされました。

なお、安全認定を受けるためには敷地と道路が一定以上接している必要(接道要件)がありますが、都道府県知事の安全認定を受けた場合、接道要件は適用されません(ワンポイント)。

具体例

マンション建設の場面を例にとりましょう。Aさんがマンションを建設しようとする場合、①安全認定(都道府県知事)→②建築確認(特定行政庁)の2段階の手続が必要とします。その後、マンションが建設されると周辺住民Bさんが「安全認定に違法があった」として争いたいと思っています。安全認定の不服申立期間はすでに経過しています(不可争力)。この場合、Bさんは建築確認取消訴訟の中で「安全認定の違法性」を主張できます(違法性の承継・最大判昭53)。これが例外として違法性の承継が認められたケースです。

重要メモ

  • 「原則として先行行為の違法性は後続行為の取消訴訟で争えないが、安全認定と建築確認のような一体的な手続では例外的に承継が認められる(最大判昭53)」
  • 違法性の承継とは:先行する行政行為の違法性が後続行為の違法事由となること
  • 原則:先行行為に不可争力が生じた後は、後続行為の取消訴訟で先行行為の違法性を主張できない
  • 例外(違法性の承継が認められる場合):先行行為と後続行為が一体として一つの法的効果を完成させる密接な関係にある場合
  • 代表判例:安全認定と建築確認の関係(最大判昭53)。安全認定の違法性を建築確認取消訴訟で主張できる
  • 安全認定を受けた場合、接道要件(敷地と道路の一定以上の接触要件)は適用されない(ワンポイント)
  • 周辺住民が安全認定の不服申立期間経過後でも、建築確認取消訴訟の中で安全認定の違法性を主張できる点が実務的に重要
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行政裁量

簡単にいうと

簡単にいうと、行政裁量とは法律が行政庁に認めた「判断の余地」です。しかし裁量が広いからといって何でもできるわけではなく、裁量の逸脱・濫用は取消訴訟で取り消せます(行政事件訴訟法30条)。判例の具体例(エホバの証人・個人タクシー事件など)もしっかり押さえましょう!

行政裁量の意義

法律による行政の原理からすれば、行政活動の要件はすべて法律で細かく決めておくことが理想です。しかし、行政活動は多岐にわたり、すべての活動を想定して法律を制定することは不可能であり、仮に可能であったとしても細かすぎる法律は行政活動に支障をきたす可能性もあります。そこで行政裁量という考え方が登場します。

行政裁量とは、法律により行政庁に認められた判断の余地のことをいいます(行政法の教科書的な定義)。

例えば医師法第7条では「医師が第4条各号のいずれかに該当するとき、または医師として品位を損するような行為のあったときは、厚生労働大臣は次に掲げる処分をすることができる。①戒告、②3年以内の医業の停止、③免許の取消し」と規定しています。ここでは厚生労働大臣が①処分の要件(「医師としての品位を損するような行為」に当たるか)と②どのような処分をするか(戒告か医業停止か免許取消か)を自分の判断で決められます。①を「要件裁量」②を「効果裁量」といいます。

行政の自由な裁量で物事を決めることができますが、それがあまりにも不適切な場合には違法な行政行為として取消しの対象となります。

裁量に対する司法審査

行政の裁量結果については、裁量の範囲をこえた場合(逸脱)またはその濫用があった場合に、裁判所はその処分を取り消すことができます(行政事件訴訟法30条)。

「何をもって裁量権の逸脱・濫用があったのかの判断基準」については、大きく3つの観点から審査されます。

①実体的審査:処分の内容面から審査するもの。 - 事実認定の誤り:処分の基礎となった事実の認定に誤りがある場合 - 平等原則違反:合理的理由なく特定の個人を差別した補助金交付決定など - 比例原則違反:処分が著しく不当に重い場合(例:些細な不正に対する重い懲戒処分)

②判断過程審査(考慮事項審査):処分に至る判断過程が適切かを審査するもの。 - 考慮すべき事項を考慮したか - 考慮してはいけない事項を考慮していないか - 代替手段の検討が十分か

例:代替施設の存在なしに学生に対して代替履修を認めずに退学相当の処分を下した場合(エホバの証人事件)

③手続的審査:公正な手続によって行われたかを審査するもの。行政庁の裁量が、公正な手続によって行われたかどうかを着目し、公正な手続によって行われなかった場合に行政庁の裁量の行使を違法と判断します。例:風俗店の開業を禁止するために行った児童施設の設置認可を定め、相手方が納得の行く手続を経ずに風俗店の開業許可の取消処分をした行為(風俗営業の取消処分)。

行政裁量に関する重要判例

①外国人在留更新不許可事件(最大判昭53.10.4):法務大臣は、在留する外国人から入国申請があったときは、わが国の国益の保護並びに国民の公正な管理等の観点から、申請者の在留状況、渡航目的、渡航の必要性、渡航先国との外交関係、内外の諸情勢を勘案しての合理的な裁量に基づいて、その許否を判断する(12-26-2 ○)。

②エホバの証人剣道受講拒否退学処分事件(最判平8.3.8):信仰上の理由により剣道実技を拒否する学生に対して、代替措置を検討せずに直ちに退学処分を下すのは、裁量権の範囲を超えた違法な処分である。→裁量権の逸脱・濫用で違法。判断過程審査の観点から、考慮すべき事項(学生の信仰・代替手段の存在)を十分に考慮しなかったことが問題とされました。

③個人タクシー事業(最判昭46.10.26):個人タクシーの免許にあたり、申請者に対して公正・平等な審査が行われなかったことが違法とされた。申請者の具体的事情の審査なしに一律拒否することはできない。→手続的審査の観点から違法

④市立尼崎高校不許可事件(最判平18.2.7):公立学校施設の目的外使用の不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮すべき事項について十分考慮せず、その結果社会観念上著しく妥当を欠く結果が生じていることから違法とされました。

⑤原子炉設置許可(最判平4.10.29):原子炉設置許可の安全性に関する被告行政庁(内閣総理大臣)の判断は、高度の専門技術的な知識と経験に基づくものであり、相当の専門的審議及び判断の結果が含まれているから、当該行政庁の判断に不合理な点があるかどうかが審査されるべきで、専門的合理性があれば適法とされました(原子炉設置許可は違法ではない)。

具体例

エホバの証人剣道受講拒否退学処分事件を例にとりましょう。市立高校において、エホバの証人の信者である学生が宗教上の理由から剣道実技を拒否したため、学校は単位不認定、留年、最終的に退学処分を下しました。裁判所は「学校側は代替措置(他の体育実技やレポート提出など)を一切検討せず、漫然と退学処分を下した」として、判断過程審査の観点から考慮すべき事項(信仰の自由・代替措置の可能性)を考慮しなかった点を問題視し、裁量権の逸脱・濫用として処分を違法と判断しました(最判平8.3.8)。

判例
結論
審査の観点
外国人在留更新不許可(最大判昭53.10.4)
適法(裁量の範囲内)
実体的審査
エホバ証人剣道退学(最判平8.3.8)
違法(裁量の逸脱・濫用)
判断過程審査
個人タクシー事業(最判昭46.10.26)
違法(公正な手続きなし)
手続的審査
原子炉設置許可(最判平4.10.29)
適法(専門的合理性あり)
実体的審査(専門技術的)
市立尼崎高校(最判平18.2.7)
違法(考慮事項不十分)
判断過程審査

重要メモ

  • 「裁量権の逸脱・濫用は違法(行訴法30条)。実体的・判断過程・手続的の3観点で審査。エホバ証人(代替措置なし→違法・最判平8.3.8)・個人タクシー(公平な審査なし→違法・最判昭46.10.26)が頻出判例」
  • 行政裁量とは:法律により行政庁に認められた判断の余地(要件裁量と効果裁量)
  • 裁量権の逸脱・濫用がある場合、裁判所はその処分を取り消すことができる(行政事件訴訟法30条)
  • 裁量審査の3観点:①実体的審査(事実認定の誤り・平等原則違反・比例原則違反)、②判断過程審査(考慮すべき事項を考慮したか・考慮すべきでない事項を考慮していないか)、③手続的審査(公正な手続で行われたか)
  • エホバ証人剣道退学(最判平8.3.8):代替措置を一切検討せず退学処分→判断過程審査の観点から裁量権の逸脱・濫用で違法
  • 外国人在留更新不許可(最大判昭53.10.4):法務大臣は国益等の観点から合理的裁量で判断できる→更新拒否は裁量の範囲内で適法(12-26-2 ○)
  • 個人タクシー事業(最判昭46.10.26):申請者の具体的事情の審査なし→手続的審査の観点から違法
  • 原子炉設置許可(最判平4.10.29):高度な専門技術的判断が含まれる→専門的合理性があれば適法
  • 市立尼崎高校(最判平18.2.7):重視すべきでない考慮要素を重視するなど考慮事項が不十分→判断過程審査で違法
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行政行為の附款

簡単にいうと

簡単にいうと、行政行為に「条件」や「期限」などを付け加えることが附款です。「道路の使用を許可するが、占用料を払うこと」の「占用料を払うこと」が負担(附款の一種)です。附款には法律の根拠が必要で、附款に瑕疵があると行政行為全体が違法になります。

附款の意義

行政行為の附款とは、行政行為に付加された従たる意思表示(条件・期限・負担・撤回権の留保など)のことをいいます。附款は行政行為の一部であり、附款のみを独立して訴訟で争うことはできません(行政行為全体として争う必要があります)。

附款を付すためには法律の根拠が必要です。また附款に瑕疵がある場合、原則として行政行為全体が違法となります。

附款の種類

①条件

将来発生するかどうかが不確実な事実にかかわらせる附款です。条件には停止条件解除条件があります。

停止条件:条件が成就したときに行政行為の効力が発生する。 - 例:道路工事が完成したら路線バス事業の免許を与える(工事完成が条件→工事完成で免許の効力が発生)

解除条件:条件が成就したときに行政行為の効力が消滅する。 - 例:指定期間内に運輸事業を開始しないと免許を失効させる(期間内不開始が条件→不開始で免許の効力が消滅)

②期限

将来発生することが確実な事実にかかわらせる附款です。期限には始期終期があります。

始期:期限が到来したときに行政行為の効力が発生する。 - 例:3月31日から道路の占用を許可する

終期:期限が到来したときに行政行為の効力が消滅する。 - 例:3月31日まで道路の占用を許可する - 例:自動車運転免許証に記載されている「○年○月○日まで有効」(07-10-3 ○)

条件と期限の違いは「将来発生するかどうかが不確実(条件)か確実(期限)か」という点です。運転免許の有効期限は必ず到来する(確実)ため「期限」、事業を開始するかどうかは不確実なため「条件」となります。

③負担

行政行為に伴う特別の義務を命じる附款です。負担は行政行為の効力の発生・消滅とは独立しており、負担を履行しなくても主たる行政行為の効力は消滅しません(負担不履行の場合は別途強制手段を要する)。

  • 例:自動車運転免許に付される「眼鏡等使用」の条件(実質は負担)
  • 例:河川占用許可に対する「占用料の納付」

負担は条件と異なり、それ自体が独立した義務であって、その不履行は強制の対象となります(撤回権の行使等)。

④撤回権の留保

特定の場合に行政行為を撤回する権利を留保する附款です。

  • 例:県庁での売店営業を許可するが、県側に事情の変更があれば撤回する(撤回権の留保)
  • 例:道路の使用を許可するが、道路工事の際には占用を停止できる(撤回権の留保)

撤回権の留保がある場合、行政庁はその留保された条件が実現した場合に撤回することができます。ただし留保がない場合でも、特別の理由(後発的事情)があれば撤回は可能です。

附款に関する重要ルール

①附款には法律の根拠が必要です。附款は行政行為の一部として相手方に義務を課したり制限を加えたりするものであり、法律による行政の原理から法律の根拠が必要です。

②附款に瑕疵がある場合、原則として行政行為全体が違法となります。附款だけを無効として主たる行政行為の効力を維持することは原則としてできません。

③附款は行政行為の一部であるため、附款のみを独立して取消訴訟の対象にすることは原則としてできません。

④負担は主たる行政行為の効力の発生・消滅とは独立しており、負担を履行しなくても行政行為の効力は消滅しません(条件との違い)。

具体例

道路の占用許可(行政行為)を例にとりましょう。「3月1日から3月31日まで道路の○○部分を占用することを許可する」という場合、「3月1日から」が始期(期限)、「3月31日まで」が終期(期限)です。さらに「占用料として月10万円を納付すること」という条件が付けられた場合、これは「負担」に当たります(行政行為の効力とは独立した義務)。「工事が終わったら返還すること」という条件が付いた場合は、工事終了(不確実な事実)を条件とする解除条件です。自動車運転免許証に書かれている有効期限「○年○月○日まで有効」は終期(期限)の附款です(07-10-3 ○)。

種類
意義
具体例
停止条件
条件成就で効力が発生
道路工事完成→路線バス免許付与
解除条件
条件成就で効力が消滅
指定期間内に事業不開始→免許失効
始期
期限到来で効力が発生(確実)
3月31日から道路占用を許可
終期
期限到来で効力が消滅(確実)
3月31日まで道路占用を許可、運転免許の有効期限
負担
特別の義務を命じる(主たる行為と独立)
眼鏡等使用、占用料の納付
撤回権の留保
特定の場合に撤回する権利を留保
事情変更時に売店営業許可を撤回できる

重要メモ

  • 「附款の付与には法律の根拠が必要。条件は将来の不確実な事実・期限は確実な事実、負担は義務だが不履行でも行政行為の効力は消滅しない(条件との違い)。附款に瑕疵があると行政行為全体が違法」
  • 附款を付すには法律の根拠が必要
  • 附款に瑕疵がある場合、原則として行政行為全体が違法となる(附款のみを無効にして主たる行政行為を維持することは原則不可)
  • 条件:将来発生するかどうか不確実な事実にかかわらせる附款。停止条件(成就で効力発生)と解除条件(成就で効力消滅)の2種類
  • 期限:将来発生することが確実な事実にかかわらせる附款。始期(到来で効力発生)と終期(到来で効力消滅)の2種類
  • 自動車運転免許証の「○年○月○日まで有効」は附款の「期限(終期)」に該当する(07-10-3 ○)
  • 負担:相手方に対して特別の義務を命じる附款(眼鏡等使用・占用料の納付・毎年報告書の提出など)。不履行でも主たる行政行為の効力は消滅しない(条件との最重要な違い)
  • 撤回権の留保:特定の場合に行政行為を撤回する権利を留保する附款
  • 法律効果の一部除外:法律の定める行政行為の効果の一部を除外する附款(「○○の業務を除く」など)
  • 条件(不確実)vs 期限(確実)の違い、および負担は不履行でも効力消滅しない点は繰り返し出題される

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
行政行為の意義と分類
法律行為的(許可・特許・認可等)と準法律行為的(確認・公証・通知・受理)に大別
許可は禁止解除、特許は権利設定。準法律行為的行政行為には附款不可
行政行為の効力
公定力・不可争力・不可変更力・自力執行力・拘束力の5種
不可変更力は争訟裁断的行為のみ。重大明白な瑕疵は当然無効で公定力なし
行政行為の瑕疵
職権取消しは遡及効、撤回は将来効。撤回には補償が必要な場合あり
違法性の承継は原則否定。一体的手続の場合のみ例外的に承継
行政裁量
裁量権の逸脱・濫用は違法(行訴法30条)。判断基準は他事考慮・不考慮・不合理・不当目的
伊方原発:専門技術的裁量あり。神戸税関:社会通念上著しく不合理なら濫用
附款
条件は不確定、期限は確定。負担違反は当然無効でなく取消事由
準法律行為的行政行為には附款不可。覊束裁量行為への附款には法律の根拠必要

関連判例

伊方原発訴訟

原子炉設置許可処分の適法性が争われた事件。最高裁は、原子炉設置許可は高度な専門技術的判断を要するため行政庁に広い裁量が認められると判示した。ただし、審査において用いた審査基準に不合理な点があったり、申請内容が審査基準に適合しないと認めたことに合理的根拠がない場合には許可処分は違法となるとした。裁量統制の基準として「審査基準の不合理性」が問われる問題で必出の判例。

神戸税関事件

最判昭52.12.20

税関職員が職場大会に参加したことを理由に懲戒免職処分を受けた事件。最高裁は、懲戒処分の選択が社会通念上著しく妥当性を欠くと認められる場合には裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となると判示した。裁量権の濫用の典型例として「社会通念上著しく妥当性を欠く処分」という基準が問われる問題で必ず登場する判例。

違法性の承継が認められた例(農地買収計画・買収処分)

最判昭25.9.15

農地改革において農地買収計画(先行処分)の違法が買収処分(後行処分)の取消事由になるかが争われた事件。最高裁は、農地買収計画と買収処分は一体として農地改革という一連の法律効果を実現するものであるとして、例外的に違法性の承継を認めた。違法性の承継は原則否定だが「先行・後行処分が一体として機能する場合」の例外が問われる問題で頻出の判例。

瑕疵の治癒が認められた例

最判昭36.07.14

行政行為の成立当初に手続上の瑕疵があったが、その後適法な手続が補完された事件において瑕疵の治癒が問題となった。最高裁は、法的安定性・相手方の信頼保護の観点から、事後的に欠缺していた要件が充足された場合に瑕疵の治癒を認め得るとした。瑕疵の治癒は例外的にしか認められない点と、どのような場合に認められるかの判断基準が試験で問われる。

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