第8節 国の関与
第6章 地方自治法
地方分権一括法により、国と地方の関係は上下・主従の関係から対等・協力の関係へと転換されました。しかし、全国的な統一性の確保や地方自治体の適正な事務処理のため、国が地方自治体に一定の関与を行う必要があります。本節では、国の関与の類型、手続、争訟方法を学びます。
国の関与・係争処理手続
簡単にいうと
国が地方に口を出せる範囲と、その争いを解決する手続です。自治事務か法定受託事務かで、関与の強さが変わります。
地方自治を進めるうえで、国が地方公共団体の活動に関与することはできる限り避けるべきです。一方で、国も国政を運営するうえで地方政治に関与せざるを得ない場合があります。そこで地方自治法は国の関与に関するルールを定めています(245条)。
関与の方式(国から都道府県への関与)
是正の指示が法定受託事務のみを対象とするのは、法定受託事務が国道の管理のように国政に関わる事務だからです。自治事務に対しては是正の要求までしかできず、代執行もできません。
代執行
法定受託事務の処理が法令の規定に違反しているとき、またはその事務を怠っているときに、その是正のための措置を当該普通地方公共団体に代わって行うことができます(245条1号ト)。
代執行ができるのは次の2つがそろう場合です(245条の8第1項・12項)。
- ・他の方法によってその是正を図ることが困難であること
- ・それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであること
なお第2節で学んだ「事務の代替執行」(252条の16の2)は地方公共団体どうしの連携の話で、こちらの代執行とは別の制度です。
代執行の流れ
勧告 → 指示 → 出訴 → 高等裁判所 → 代執行、という順に進みます。
代執行訴訟の第一審は高等裁判所です(245条の8第3項等)。過去問では「当該都道府県知事が期限までに当該事項を行わないときは、地方裁判所に対し、訴えをもって、当該事項を行うべきことを命ずる旨の裁判を請求することができる」という記述が出題され、誤りとされました。地方裁判所ではありません。
係争処理手続
国と地方公共団体の間に関与に関する係争が起こった場合、それを解決する機関として総務省に国地方係争処理委員会が置かれています(250条の7)。常設の機関です。
流れは次のとおりです。
1. 国が地方公共団体に関与する 2. 関与から30日以内に、地方公共団体が委員会へ審査の申出をする 3. 委員会が申出から90日以内に勧告等を行う 4. 勧告に不服があるとき等は、地方公共団体が高等裁判所に訴訟を提起する
国の関与に関する訴訟を高等裁判所に提起するには、事前に国地方係争処理委員会の審査を経なければなりません(251条の5第1項)。いきなり訴訟を起こすことはできません。
なお都道府県と市町村の係争については、その都度自治紛争処理委員が選ばれて担当します。過去問では「自治紛争処理委員が廃止され、代わりに国地方係争処理委員会が設けられている」という記述が出題され、誤りとされました。自治紛争処理委員は廃止されていません。両者は担当する場面が違うだけです。
2024年の改正
2024年6月の地方自治法改正(同年9月施行)により、国と普通地方公共団体との関係についての新しい章が設けられ、閣議決定に基づく国の補充的な指示等の特例規定が置かれました。
具体例
A県の法定受託事務の処理が法令に違反している場合、大臣は是正の指示を出し、従わなければ高等裁判所に出訴して代執行まで行えますが、自治事務であれば是正の要求までしかできません。

国の関与・係争処理手続
重要メモ
- ・助言・勧告は両方の事務が対象で従う義務なし、是正の要求は自治事務、是正の指示は法定受託事務が対象
- ・代執行ができるのは法定受託事務のみ。自治事務には代執行できない
- ・代執行訴訟の第一審は高等裁判所であって地方裁判所ではない(16-23-オ ×)
- ・高等裁判所への出訴には事前に国地方係争処理委員会の審査を経る必要がある(251条の5第1項)
- ・自治紛争処理委員は廃止されていない。都道府県と市町村の係争を担当する(13-23-2 ×)
まとめ
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
行政上の義務違反に対して制裁として科される罰のこと。刑事罰である行政刑罰と、金銭罰である秩序罰の2種類がある。
法律行為的行政行為
行政庁の意思表示によって法律効果を発生させる行政行為のこと。許可や認可など、意思の内容どおりに効果が生じる点が特徴。
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