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第6節 条例・規則

第6章 地方自治法

地方公共団体は、地域の実情に応じて独自のルールを定めることができます。この節では、条例と規則という地方独自の法規範について、その制定権の根拠・範囲・限界を学びます。特に法律と条例の関係は、憲法・行政法の両方で頻出の最重要テーマです。

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条例制定権の根拠と範囲

14条1項

条例とは、地方公共団体が法律の範囲内で制定する自主法です。憲法94条と地方自治法14条1項により、地方公共団体は条例制定権を有します。条例は当該団体の区域内でのみ効力を持ち、住民に権利義務を課すことができます。

具体例

A市は、市内の公園での喫煙を禁止する条例を制定し、違反者には5万円以下の過料を科すことにしました。B市民がこの条例に違反して喫煙したため、A市はBに過料を科しました。

要件

  • 普通地方公共団体であること(都道府県・市町村)
  • 法律の範囲内であること
  • 当該団体の事務に関する事項であること
  • 議会の議決を経ること

効果・結論

  • 当該地方公共団体の区域内で法規範として効力を持つ
  • 罰則(2年以下の懲役・禁錮、100万円以下の罰金等)を設けることができる(14条3項)
  • 条例違反には5万円以下の過料を科すことができる(14条5項)
  • 住民・滞在者に対して権利制限・義務賦課ができる

条文(第14条1項条)

普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。

場合
効果
法律が全国一律の規制を設けている場合
条例で法律より緩い規制はできない(法律の優位)
法律が最低基準を定めている場合
条例で法律より厳しい規制(上乗せ条例)は可能
法律が全く規律していない事項
条例で独自に規律可能(横出し条例)
法律の委任がある場合
委任の範囲内で条例制定が可能(罰則も可)

試験のポイント

  • 法律の範囲内とは、①法律の明文に違反しない(法律の優位)、②法律が規律対象としている事項について法律と異なる規律をしない(法律の優位)、③法律の委任がある場合はその範囲内(法律の留保)の3つの意味
  • 条例で罰則を設ける場合は法律の委任が必要(14条2項・3項)。過料(行政罰)は委任不要(14条5項)
  • 条例は自主法であり、国の法令の単なる執行規定ではない点を理解する
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法律と条例の関係(法律の優位・法律の留保)

14条1項

法律の優位とは、条例が法律に違反してはならないという原則です。また法律の留保とは、一定事項については法律または法律の委任が必要という原則です。地方自治法14条1項は「法令に違反しない限り」と規定し、法律の優位を明示しています。

具体例

A市は騒音規制のため、市内の工場に国の法律より厳しい排出基準を定める条例を制定しようとしました。国の法律が全国一律の最高基準として定めている場合、この条例は法律の優位に反し無効となります。

要件

  • 条例が法律の明文規定に違反していないこと
  • 法律が全国一律の規制として定めた事項について、条例が異なる規律をしていないこと
  • 罰則を設ける場合は法律の委任があること(14条2項)
  • 条例が国の専管事項(外交・防衛等)を規律していないこと

効果・結論

  • 法律に違反する条例は無効となる
  • 法律が最低基準を定める場合、条例でより厳しい規制(上乗せ)は可能
  • 法律が規律していない分野では、条例で独自の規制(横出し)が可能
  • 法律の委任に基づく条例は、委任の範囲内で罰則を設けることができる

条文(第14条1項条)

普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。

場合
効果
法律が全国一律の規制(最高基準)
条例で異なる規制は不可(徳島市公安条例事件)
法律が最低基準を設定
条例で上乗せ規制は可能
法律が規律していない分野
条例で横出し規制は可能
条例で刑罰を科す場合
法律の委任が必要(14条2項・3項)
条例で過料を科す場合
法律の委任は不要(14条5項)

試験のポイント

  • 徳島市公安条例事件(最大判昭50.9.10):国の法律(道路交通法)が交通秩序維持のため全国一律の規制を定めている場合、条例で同一対象について異なる規制はできない
  • 上乗せ条例横出し条例の区別が重要。上乗せは法律が最低基準の場合のみ可能、横出しは法律が規律していない分野で可能
  • 罰則(刑罰)を設ける条例は法律の委任が必要だが、過料(秩序罰)は委任不要(14条5項)という違いに注意
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規則制定権

15条1項

規則とは、地方公共団体の長が、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務について制定する法規です。条例が議会の議決を要するのに対し、規則は長の独任制機関としての権限で制定できます。ただし、住民に義務を課し権利を制限するには条例によることが原則です(14条2項)。

具体例

A市長は、市役所の窓口業務の受付時間や手数料の納付方法について定める規則を制定しました。これは長の権限に属する事務執行に関する事項であり、議会の議決を経ずに制定できます。

要件

  • 地方公共団体のが制定すること
  • 法令(法律・政令・条例)に違反しないこと
  • 長の権限に属する事務に関することであること
  • 住民の権利義務に関する事項は条例事項(規則では制定不可)

効果・結論

  • 長の権限に属する事務について法規範としての効力を持つ
  • 規則違反に対して5万円以下の過料を科すことができる(15条2項)
  • 条例の執行手続細目的事項を定めることができる
  • 住民の権利義務に直接関わる基本的事項は規則では定められない

条文(第15条1項条)

普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。

場合
効果
条例
議会の議決が必要、住民の権利義務の基本事項を定める、刑罰・過料を科せる
規則
長が単独で制定、長の権限事務に関する事項、過料のみ科せる(刑罰は不可)

試験のポイント

  • 条例と規則の区別:①条例は議会の議決、規則は長の専決、②住民の権利義務の基本事項は条例で定める(14条2項)、③規則は長の権限事務に限定
  • 規則で過料(5万円以下)は科せるが、刑罰(罰金・懲役等)は科せない点に注意
  • 条例の委任に基づく規則(委任規則)と、長の固有権限に基づく規則(独立規則)の区別を理解する
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条例・規則の効力と手続

16条

条例・規則は制定後、一定の手続を経て効力を生じます。公布(16条1項)により成立し、原則として公布の日から起算して10日を経過した日から施行されます(16条2項)。また、条例・規則の周知措置として、常に公衆の閲覧に供する義務があります(16条4項)。

具体例

A市は駐輪場の利用に関する条例を3月20日に公布しました。条例に施行日の定めがない場合、3月30日(公布日から10日経過後)から効力が生じます。市民Bはこの条例を市役所で閲覧できます。

要件

  • 条例・規則を公布すること(16条1項)
  • 公布から施行まで周知期間を設けること(原則10日間)
  • 条例・規則を常に公衆の閲覧に供すること(16条4項)
  • 条例は議会の議決、規則は長の決裁を経ること

効果・結論

  • 公布により条例・規則が成立する
  • 原則として公布の日から10日経過後に施行される(16条2項)
  • 施行日を別に定めることも可能
  • 周知措置により住民の予測可能性が確保される

条文(第16条条)

普通地方公共団体の長は、条例又は規則を公布しなければならない。条例又は規則で特に日を定めて施行する旨の定めがないものは、公布の日から起算して10日を経過した日から施行される。

場合
効果
施行日の定めがある場合
その定めた日から施行
施行日の定めがない場合
公布の日から10日経過後に施行

試験のポイント

  • 公布と施行の区別:公布は対外的告知、施行は効力発生。両者は通常別の日
  • 10日間の周知期間は原則であり、条例・規則で別の施行日を定めることも可能
  • 条例・規則は常に閲覧可能でなければならず、これを怠ると住民の権利救済(不知の抗弁)の問題が生じうる

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
条例制定権
法律の範囲内で議会が制定、住民の権利義務を規律可能
罰則は法律の委任が必要、過料は委任不要と混同しない
法律と条例の関係
法律の優位(違反は無効)、上乗せ・横出しは条件付で可能
全国一律規制と最低基準規制の区別を誤らない(徳島市公安条例事件)
規則制定権
長が単独で制定、長の権限事務に限定、過料のみ可能
住民の権利義務の基本事項は条例事項であり規則では不可
条例・規則の効力
公布後原則10日で施行、常に公衆の閲覧に供する
公布(成立)と施行(効力発生)は別の概念

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