第6節 条例・規則
第6章 地方自治法
地方公共団体が定める独自のルールが条例と規則です。この節では、議会が議決して定める条例(14条)と、長が単独で定める規則(15条)について、それぞれ何を定められて何を定められないのかを学びます。義務付けや権利制限は条例でなければできないこと、置ける罰則の重さが条例と規則で違うこと、そしてその違いが授権規定の有無から導かれることが中心の論点です。
条例
簡単にいうと
国会が法律をつくるように、地方議会は条例を制定します。罰則も置けますが、上限が決まっています。
国会で法律がつくられるのと同様、地方議会では条例が制定されます。
地方自治法14条
- ・1項 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる
- ・2項 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない
- ・3項 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる
条例で定められる範囲
法令に違反しない限り、自治事務だけでなく法定受託事務についても条例を制定できます。
過去問では「地方公共団体の条例制定権限は、当該地方公共団体の自治事務に関する事項に限られており、法定受託事務に関する事項については、及ばない」という記述が出題され、誤りとされました。法定受託事務であっても、その地方公共団体が処理する事務であることに変わりはないからです。
罰則を置けるのはなぜか
罰則については法律の授権があれば設けることができます。条例で罰則を置けるのは、14条3項が罰則について授権しているからです。罰則の上限は3項に書かれたとおりで、刑としては2年以下の懲役もしくは禁錮、100万円以下の罰金などまで、行政上の秩序罰としては5万円以下の過料までです。
法律より厳しい条例は違法か
法律に罰則がないのに条例で罰則を設けたり、法律よりも厳しい罰則を設けたりしても、それが必ず違法になるわけではありません(徳島市公安条例事件/最大判昭50.9.10)。
法律と条例が同じ対象を規律していても、法律が全国一律の規制を意図しているのでなければ、条例がより厳しい規制を置くことは許されます。国が定める基準より厳しい規制を設けるものを上乗せ条例、国の規制対象外の事項を規制するものを横出し条例と呼びます。
具体例
A市が空き缶のポイ捨てを禁止する条例を定め、違反者に3万円以下の過料を科す規定を置くことは、14条3項の範囲内なので認められます。

条例(議会が制定する)
重要メモ
- ・条例は法令に違反しない限り、自治事務だけでなく法定受託事務についても制定できる(14-23-3 ×)
- ・義務を課し、または権利を制限するには条例によらなければならない(14条2項)
- ・条例の罰則は2年以下の懲役もしくは禁錮、100万円以下の罰金などのほか、5万円以下の過料まで(14条3項)
- ・条例で罰則を置けるのは14条3項が授権しているから。法律の授権が根拠になる
- ・法律より厳しい罰則を条例で設けても必ず違法になるわけではない(徳島市公安条例事件/最大判昭50.9.10)
規則
簡単にいうと
条例は議会が、規則は長が単独でつくります。長が1人で決められる分、できることが限られています。
条例は地方議会の議決で制定されますが、規則は地方公共団体の長が単独で制定することができます。
地方自治法15条
- ・1項 普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる
- ・2項 普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる
規則でできないこと
- ・住民の権利を制限したり、義務を課したりするような規則を設けることはできない
- ・刑罰を設けることができない
- ・条例と規則の内容が重複した場合は、条例の規定が優先する
権利制限・義務付けができないのは、14条2項が「義務を課し、又は権利を制限するには条例によらなければならない」と定めているからです。規則にその余地は残されていません。
刑罰を置けないのは、15条2項が過料についてしか授権していないからです。条例の14条3項が懲役や罰金まで授権しているのと対照的です。授権があるかどうかで置ける罰則が決まる、という構造は条例と共通しています。
過去問では「普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務に関し、規則を制定し、それに違反した者について、罰金などの刑罰の規定を設けることができる」という記述が出題され、誤りとされました。規則で置けるのは5万円以下の過料までです。
条例と規則の比較
具体例
A市長が市営駐車場の利用方法を規則で定めることはできますが、違反者に罰金を科す規定を置くことはできず、5万円以下の過料までにとどまります。

規則(長が単独で制定する)
重要メモ
- ・規則は長が単独で制定でき、議会の議決を要しない(15条1項)
- ・規則で設けられる罰則は5万円以下の過料のみ。刑罰は設けられない(18-23-イ ×)
- ・住民に義務を課し、権利を制限するには条例によらなければならず、規則ではできない(14条2項)
- ・条例と規則の内容が重複した場合は条例の規定が優先する
- ・刑罰を置けない理由は、15条2項が過料についてしか授権していないこと
まとめ
関連判例
徳島市公安条例事件
最大判昭50.9.10明確性の原則は憲法31条から導かれる派生原則(条文には直接明記されていない) 明確性の判断基準:「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうか」 多少解釈の余地がある文言でも、一般人基準で理解可能な程度に明確であれば合憲 条例と法令の抵触判断基準:文言の対比だけでなく「趣旨・目的・内容・効果を比較して矛盾抵触があるかどうか」で判断 注意:本件は「大法廷判決(最大判)」であることを押さえること 条例が国の法令より重い罰則を定めること(上乗せ条例)も、趣旨・目的が合理的であれば許容されうる
売春条例事件
最大判昭37.5.30憲法31条は刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものではなく、法律の授権によって下位法令(条例を含む)によって定めることもできる 条例への罰則授権が合憲となる条件は、法律の授権が相当程度に具体的かつ限定的であること 注意:授権が不特定な白紙委任的なものであれば違憲となる 条例は公選の議員による議会の議決を経た自治立法であり、行政府が制定する政令等とは異なり法律に類する民主的正統性を持つ点が合憲の根拠 憲法73条6号但書(政令への罰則委任の禁止)が、授権があれば下位法令で罰則を定められるという解釈の根拠として引用されている点も重要
奈良県ため池条例事件
最判昭38.6.26憲法29条2項により、財産権は公共の福祉に適合するよう制限できる 条例による財産権の制限も、地域の特殊事情がある場合は許容される(法律に限らない) ため池の堤とうを破損・決壊させる使用行為は「財産権の行使のらちがい(埒外)」にあり、そもそも保障されていない 財産権の制限が受忍限度内であれば、憲法29条3項の損失補償は不要 注意:「財産権を制限すれば必ず補償が必要」ではなく、受忍限度を超えるか否かが補償の分かれ目 条例による罰則規定(憲法31条との関係)も合憲とされた点も押さえること(大阪市売春取締条例事件を引用)
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
行政上の義務違反に対して制裁として科される罰のこと。刑事罰である行政刑罰と、金銭罰である秩序罰の2種類がある。
法律行為的行政行為
行政庁の意思表示によって法律効果を発生させる行政行為のこと。許可や認可など、意思の内容どおりに効果が生じる点が特徴。
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