第4節 地方公共団体の組織
第6章 地方自治法
地方公共団体の組織は、議事機関である議会と、執行機関である長・委員会に分かれます。この節では、議会の設置と運営、議員の要件、長の権限と行政委員会、そして長と議会が対立したときの調整手段(再議請求権・不信任議決と解散・専決処分)を学びます。議員と長の双方を住民が選挙で選ぶ二元代表制のもとで、両者がどう抑制し合うのかという視点で読むと整理しやすくなります。
議会の設置と組織
簡単にいうと
地方公共団体には議会が置かれます。ただし町村だけは、議会に代えて有権者全員の総会を置くことができます。
憲法93条を受けて、地方自治法は「普通地方公共団体に、その議事機関として、当該普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもって組織される議会を置く」と定めています(89条)。
地方公共団体の組織の全体像
地方公共団体の組織は、議事機関である議会と執行機関である長・委員会の2つに分かれます。
- ・議事機関としての議会:立法権(条例制定権)を中心として、地方自治に必要な事項を決定する機関
- ・執行機関としての長・委員会:議会において議決された事項に基づき、自らの判断と責任において執行する機関
議員と長の双方を選挙で選ぶ点は大統領制に近いのですが、議会の不信任決議権や長の解散権など、議院内閣制の要素も含まれています。
町村総会
町村においては、議会を置かず、条例により有権者で構成する町村総会を設置することができます(94条)。
有権者が10万人いる自治体では代表者を選ぶほかありません(間接民主制)。しかし有権者が100人であれば、全員を公民館に集めて話し合うこともできます(直接民主制)。町村総会はこの発想によるものです。
議会の組織
議会で議決する内容には、複雑な専門知識を要するものもあります。そこで条例で委員会制度を導入し、議決事項のうち特に専門性を有するものについては、少人数の議員で構成される委員会で事前に協議することができます。
議会には議長・副議長が置かれ、本会議のほかに次の委員会と事務局が置かれます。
- ・常任委員会
- ・議会運営委員会
- ・特別委員会
ここで重要なのは、これらの議会委員会の設置はすべて任意だという点です。条例で置くことができるのであって、置かなければならないわけではありません。過去問では「普通地方公共団体の議会は、常任委員会を必ず設置しなければならない」という記述が出題され、誤りとされました。
あとで学ぶ行政委員会は法律で設置が義務づけられています。議会委員会は任意、行政委員会は義務、という対比で押さえます。
具体例
有権者が100人ほどのA村では、条例を定めて議会を置かず、有権者全員で構成する町村総会を設置することができます。

地方公共団体の議会
重要メモ
- ・議会は普通地方公共団体に必置だが、町村は条例により議会に代えて町村総会を置くことができる(94条)
- ・町村総会は有権者で構成する直接民主制の仕組み。「条例により」という要件が落ちやすい
- ・常任委員会・議会運営委員会・特別委員会はいずれも条例で置くことができるもので、設置は任意(95-41-1 ×)
- ・議会委員会の設置は任意、行政委員会の設置は法律上の義務という対比で出題される
- ・議会は議事機関、長・委員会は執行機関。議員と長の双方を選挙で選ぶ点は大統領制に近い
議員の要件・任期・定数
簡単にいうと
議員になるための条件は3つ。国政選挙の被選挙権と違って、住所要件があるのが特徴です。
議員になるための要件は地方自治法に定められています。
議員について
住所要件がある理由
国政選挙の被選挙権には住所要件がありません。地方議会の議員に住所要件が課されているのは、その地域に暮らしている人がその地域の政治を担う、という地方自治の考え方によるものです。
なお長の被選挙権には住所要件がありません。住所要件があるのは議員だけで、知事や市町村長には課されていないという違いが繰り返し問われます。
任期は法律、定数は条例
任期の4年は法律で決まっており、条例で変えることはできません。これに対し議員定数は条例で定めます。決めるものによって根拠が法律か条例かが分かれる点に注意が必要です。
かつては人口規模に応じた定数の上限が法定されていましたが、現在は廃止されています。各地方公共団体が最も適正と考える人数を条例で自由に定めることができ、人口規模に応じた上限はありません。過去問でそのまま正しい記述として出題されています。
具体例
A市に引き続き3カ月以上住所を有する25歳の日本国民Bは、A市議会議員に立候補できます。しかしA市に住んでいなくても、30歳のCはその都道府県の知事に立候補できます。
重要メモ
- ・議員の被選挙権は、日本国民・25歳以上・引き続き3カ月以上市町村の区域内に住所を有すること(18条)
- ・住所要件があるのは議員だけで、知事や市町村長にはない。この差が繰り返し問われる
- ・任期4年は法律(93条1項)、議員定数は条例(90条1項・91条1項)で定める
- ・議員定数に人口規模に応じた法定上限はなく、条例で自由に定められる(05-17-2改題 ○)
- ・国政選挙の被選挙権と異なり住所要件が課されている点が地方議会議員の特徴
議会の運営(定例会・臨時会)
簡単にいうと
議会には定例会と臨時会があります。2012年の改正で、両者の区別をなくす通年の会期も選べるようになりました。
議会の会議には定例会と臨時会があります。
定例会と臨時会
定例会は議案がなくても開かなければならない点が特徴です。招集回数を定めるのは条例であって規則ではありません。過去問では「定例会は、毎年、規則で定める回数これを招集しなければならない」という記述が出題され、誤りとされました。
臨時会は、長のほか、議員定数の4分の1以上の者から請求があった場合や議長から請求があった場合にも招集されます。臨時会では、付議事件として告示されたもの以外は原則として審議できません。
通年の会期
2012年の改正により、条例によって定例会・臨時会の区別なく「通年の会期」を設けることができるようになりました(102条の2第1項)。
1年を通して会期とすることで、必要なときにいつでも会議を開ける状態にしておく仕組みです。定例会と臨時会の2本立てしかないと考えていると、この選択肢に対応できません。
具体例
A市議会が条例で定例会の招集回数を年4回と定めれば、議案の有無にかかわらず年4回招集しなければなりません。
重要メモ
- ・定例会は付議事件の有無にかかわらず招集され、招集回数は条例で定める(102条2項、97-42-5 ×)
- ・臨時会は必要がある場合に招集され、告示された付議事件以外は原則として審議できない
- ・臨時会は長のほか、議員定数の4分の1以上の者や議長からの請求によっても招集される
- ・2012年改正により、条例で定例会・臨時会の区別のない通年の会期を設けることができる(102条の2第1項)
- ・招集回数を定めるのは条例であって規則ではない
長の権限と行政委員会
第149条簡単にいうと
長にしかできない仕事があります。また長のほかに、政治的な中立が求められる分野を担当する行政委員会が置かれています。
地方公共団体の長には様々な権限が与えられています。そのなかで試験に出るのは、長しかできないことは何かという点です。
長の権限
長はこのほかにも多くの権限を持ちますが、試験対策としては排他的執行権を押さえておけば足ります。
なお149条3号の過料は、行政法総論で学んだ秩序罰にあたります。刑罰ではありません。
議案は長も提出できる
条例の制定は議会の権限ですが、条例案を議会に提出できるのは議員だけではありません。長も議案を提出できます(149条1号)。
過去問では「条例の制定は、議会に固有の権限であるから、条例案を議会に提出できるのは議会の議員のみであり、長による提出は認められていない」という記述が出題され、誤りとされました。実際には条例案の多くが長から提出されています。
行政委員会
地方公共団体には、政治的な中立性を確保するために、長のほかに教育委員会などの行政委員会が置かれています。
選挙で選ばれた長の判断だけで教育の内容や選挙の管理を決められるとすると、その時々の政治状況に左右されてしまいます。そこで独立した合議制の機関に担当させる、という仕組みです。
置かなければならない委員会
このうち選挙管理委員会と監査委員の2つだけが、地方自治法に設置根拠を持ちます。ほかは教育委員会法や警察法など、それぞれの法律が根拠です。
議会委員会との対比
行政委員会は法律で設置が義務づけられています。これに対し、議会に置かれる常任委員会・議会運営委員会・特別委員会は、条例で置くことができる任意のものでした。
名前が似ているので、義務か任意かを取り違えないようにします。行政委員会は義務、議会委員会は任意です。
具体例
A市長は市議会に条例案を提出できますが、市の教育行政は政治的中立性を確保するために教育委員会が担当します。
重要メモ
- ・長の排他的執行権は、議案の提出・予算の調製と執行・地方税の賦課徴収と過料を科すこと(149条)
- ・条例案は議員だけでなく長も議会に提出できる(14-23-5 ×)
- ・行政委員会は法律で設置が義務づけられ、議会の委員会は条例による任意設置
- ・都道府県・市町村の双方に必置なのは教育委員会・選挙管理委員会・人事委員会・監査委員
- ・地方自治法に設置根拠があるのは選挙管理委員会と監査委員の2つだけ
長の再議請求権
簡単にいうと
議会が決めたことに長が納得できないとき、やり直しを求められます。任意で行う一般再議と、必ず行う特別再議があります。
長と議会はそれぞれ独立の立場で地方自治体を運営しますが、意見が対立すると地方政治が止まってしまいます。そこで議会が決めたことに対して長がやり直しを求める仕組みが置かれています。これが再議請求権です(176条1項)。
再議請求には、①長が任意に判断する一般再議と、②必ず再議を求めなければならない特別再議があります。
一般再議(176条1項〜3項)※再議に付すのは任意
議会の議決に異議があるとき、長は議決の日から10日以内に理由を示して、これを再議に付すことができます。
再議の結果は次のように分かれます。
- ・再議で可決された → 議決が確定する
- ・再議で否決された → 議決は確定しない(廃案)
ここで注意が要るのは、再議決に必要な数です。通常、議会の議決は出席議員の過半数の同意で成立します。しかし条例・予算に関する議決の場合、再議決には出席議員の3分の2以上の同意が必要になります。
条例と予算は議会が決めるべき最も重要なものなので、長の異議を押し切るにはより強い意思が求められる、という趣旨です。
特別再議(176条4項〜177条)※再議に付すのは義務
特別再議は3つのパターンがあり、再議に付すかどうかを長が選ぶことはできません。再度同じ議決になった場合の処理が、パターンごとに違います。
義務費とは、法令により負担する経費や地方公共団体の義務に属する経費のことで、生活保護費や道路の維持管理費などがこれにあたります。
③で不信任議決とみなして議会を解散させた場合、議員の選挙が行われます。そこで住民の民意を問うことができる、という仕組みです。
なお①で裁判所に訴える場合、この訴訟は行政事件訴訟法の機関訴訟にあたります。
混同しやすいところ
3分の2以上という数字は、一般再議の条例・予算の場合に出てくるものです。特別再議に3分の2という再可決要件があるわけではありません。特別再議で問われるのは、再度同じ議決になったあとにどう処理するかです。
具体例
A市議会がA市長の提出した条例案を修正可決した場合、市長は10日以内に再議に付すことができ、再議決には出席議員の3分の2以上の同意が必要になります。
重要メモ
- ・一般再議は任意で議決の日から10日以内。条例・予算の再議決には出席議員の3分の2以上の同意が必要
- ・3分の2以上は一般再議の条例・予算の場合の数字。特別再議の再可決要件ではない
- ・特別再議は義務。権限超過の議決は審査申立て、義務費の削除減額は予算計上、非常災害対策費等の削除減額は不信任議決とみなす
- ・権限超過の議決は21日以内に総務大臣または都道府県知事へ審査申立て、不服なら60日以内に出訴できる
- ・長は条例案を議会に提出できる。条例案の提出が議員に限られるとする記述は誤り(14-23-5 ×)
議会の不信任決議と長の解散権
簡単にいうと
議会は長を不信任にでき、長は議会を解散できます。最初の不信任と解散後の再不信任で、要件が変わります。
議会と長の関係が悪化すると適正な行政運営ができません。そこで議会には長の不信任議決権が、長には議会の解散権が与えられています(178条)。
流れ
1. 議会が長の不信任を議決する 2. 長は10日以内に議会を解散するか、しないかを選ぶ 3. 解散しなかった場合 → 長は失職する 4. 解散した場合 → 解散後初めて招集された議会で再び不信任議決ができる。可決されれば長は失職する
要件の違い
出席要件はどちらも3分の2以上で変わりません。変わるのは同意要件で、4分の3以上から過半数へと緩和されます。
一度解散して選挙をやり直したあとの議会は、住民の信任を新たに得たものです。そこで再び不信任が出たのであれば、より緩やかな要件で長を失職させられる、という考え方です。
出席要件と同意要件を入れ替えて覚えていると、そのまま誤りの選択肢を選ぶことになります。
解散後の議会でも再び不信任できる
過去問では「議会が長の不信任の議決をした場合において、長は議会を解散することができ、その解散後初めて招集された議会においては、再び不信任の議決を行うことはできない」という記述が出題され、誤りとされました。解散後初めて招集された議会でも再び不信任議決を行うことができ、可決されれば長は失職します。
自主解散
長が議会を解散しなくても、議会は自らの判断で自主解散をすることができます(地方公共団体の議会の解散に関する特例法2条)。解散は長の解散権によるものだけではありません。
具体例
定数30のA市議会で最初の不信任議決をするには20人以上の出席と15人以上の同意が要りますが、解散後の再不信任では20人以上の出席と過半数の同意で足ります。

長と議会の関係(再議請求権・不信任決議と解散)
重要メモ
- ・最初の不信任議決は議員数の3分の2以上の出席と4分の3以上の同意、解散後の再不信任は3分の2以上の出席と過半数の同意
- ・出席要件はどちらも3分の2以上で変わらない。緩和されるのは同意要件のほう
- ・不信任議決後、長が10日以内に議会を解散しなければ長は失職する
- ・解散後初めて招集された議会でも再び不信任議決を行うことができる(14-21-イ ×)
- ・長が解散しなくても、議会は特例法に基づき自主解散をすることができる
長の専決処分
簡単にいうと
本来は議会が決めることを長が独断で決める制度です。法律が認める場合と、議会があらかじめ委任した場合があります。
条例や予算の議決などは議会で決める必要がありますが、これを長の独断で決めることを専決処分といいます。専決処分には、①地方自治法の規定に基づく法定専決処分と、②議会の委任による専決処分があります。
法定専決処分(179条)
議会を招集する時間的余裕がないとき、議員定数の半数以上が欠けて議会が成立しないとき、議会が議決すべき事件を議決しないときなどが対象です。
不承認になったらどうなるか
条例・予算の議決について専決処分を行った場合の扱いが問われます。
- ・議会で不承認とされても、専決処分の効力は失われない
- ・ただし条例の制定・改廃または予算に関する専決処分について不承認とされた場合は、長は必要な措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない(179条4項)
条例の制定や予算は議会が決めるべき最も重要なものなので、議会が承認しなかった場合には長に一定の対応が求められる、という趣旨です。措置義務が生じるのは条例・予算に関する場合であって、すべての専決処分ではありません。
専決処分の対象外
副知事・副市町村長・総合区長の選任における議会の同意は、専決処分の対象外とされています(179条1項但書)。人事の同意まで長の独断で済ませられるとすると、議会のチェックが働かなくなるからです。
これは過去に鹿児島県阿久根市長が専決処分を濫用して問題となったことを踏まえ、2012年に規定が改正された結果です。
議会の委任に基づく専決処分(180条)
委任に基づくということは、事前に議会の承認を得ているのと同じです。そのため専決処分後は報告だけでかまいません。承認を求める必要がある法定専決処分との違いがここにあります。
専決処分ができるのは長だけ
過去問では「執行機関としての長、委員会及び委員は、一定の場合、議会において議決すべき事件について専決処分を行うことができる」という記述が出題され、誤りとされました。専決処分は長にのみ認められており、行政委員会や委員には認められていません。
具体例
A市長が議会を招集する余裕がないまま補正予算を専決処分した場合、次の会議で議会に報告し承認を求めますが、不承認でも予算の効力は失われず、必要な措置を講じて報告します。
重要メモ
- ・法定専決は報告して承認を求める、委任専決は報告のみで足りる
- ・不承認でも専決処分の効力は失われない。条例の制定改廃または予算に関するものは必要な措置と議会への報告が必要(179条4項)
- ・副知事・副市町村長・総合区長の選任における議会の同意は専決処分の対象外(179条1項但書)
- ・専決処分ができるのは長のみ。行政委員会や委員にはできない(11-22-5 ×)
- ・議会の権限に属する軽易な事項で議決により特に指定したものは委任専決の対象になる(17-23-3 ○)
まとめ
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