第2節 商行為法
第1章 商法総則・商行為
商行為法は、商人が行う商行為に特有のルールを定めた分野です。民法の特則として、迅速性や安全性を重視した商取引のルールを学びます。商法総則で学んだ商人概念を前提に、具体的な取引場面での法律関係を理解することが重要です。
民法と商法の比較
第504条〜521条条簡単にいうと
簡単にいうと、商取引は民法と違うルールがたくさんあります。スピードと安全を重視した独自のルールが8つも設けられている点がポイントです。
■ 商法の特則の全体像
商行為を行う商人には商法が適用されますが、商取引は大量かつ継続的に行われることから迅速性と安全性が特に要求されます。そのため、民法の特則として数多くの異なるルールが設けられています。
■ 代理と本人死亡(504条)
代理については、民法では本人が死亡すると代理権が消滅しますが(民法111条1項)、商行為の委任による代理権は本人の死亡によっては消滅しないとされており(504条)、取引の継続性が確保されています。
■ 契約の承諾(509条2項)
契約の承諾については、民法では申込みに対して明示または黙示の承諾がなければ契約は成立しませんが、商法では平常取引をする者から商行為の委託を受けた者が諾否の通知を発しないときは承諾したものとみなされます(509条2項)。
■ 多数当事者間の債務(511条1項)
多数当事者間の債務については、民法では分割債務が原則ですが(民法427条)、商行為によって生じた数人の債務者は商法上自動的に連帯して弁済する義務を負います(511条1項)。
■ 保証(511条2項)
保証については、民法では通常の保証(補充性あり)が原則ですが、商行為によって生じた債務を主たる債務とする保証は連帯保証となり、保証人は催告の抗弁権・検索の抗弁権を持ちません(511条2項)。
■ 報酬請求権(512条)
報酬請求権については、民法では役務提供に対する報酬は特約がなければ請求できませんが、商人がその営業の範囲内で他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができます(512条)。
■ 金銭消費貸借の利息(513条1項)
金銭消費貸借の利息については、民法では特約がなければ無利息が原則ですが(民法587条参照)、商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は法定利息を請求することができます(513条1項)。
■ 流質契約(515条)
流質契約については、民法では弁済期前の流質契約は禁止されていますが(民法349条)、商法では弁済期前でも流質契約を認める特則があります(515条)。
■ 商事留置権(521条本文)
留置権については、民法の留置権は被担保債権と目的物との個別的牽連関係が必要ですが(民法295条)、商人間の留置権(商事留置権)はこの牽連関係が不要であり、商人間に生じた債権を担保するためならば相手方の所有物を広く留置することができます(521条本文)。
■ まとめ
このように商法は民法の特別法として多岐にわたる修正を加えており、その全体像を比較表として整理して理解することが試験対策上極めて重要です。
具体例
A銀行(貸主)がB社(借主)に1000万円を貸した場合、利息の特約がなくても商法513条により法定利息の請求が可能。民法上の個人間貸借では特約がなければ無利息となる点と比較しておくこと。
ポイント整理
- ・商行為が関わる取引であること(商法の適用範囲内)
- ・当事者の一方または双方が商人であること(附属的商行為の場合)
効果
- ・代理権は本人死亡によっても消滅しない(504条)
- ・諾否通知を発しない場合は承諾とみなされる(509条2項)
- ・複数債務者は自動的に連帯債務となる(511条1項)
- ・商行為による保証は当然に連帯保証となる(511条2項)
- ・営業範囲内の行為に対して報酬請求権が発生する(512条)
- ・金銭消費貸借では特約がなくても利息請求が可能(513条1項)
- ・弁済期前の流質契約が有効(515条)
- ・商事留置権は個別的牽連関係不要(521条本文)
条文(第504条〜521条条)
第504条(商行為の代理)商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。 第509条2項 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。 第511条1項 数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。 第511条2項 保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、又は保証が商行為であるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する。 第512条 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。 第513条1項 商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求することができる。 第521条 商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。
重要メモ
- ・「商法の民法に対する主な特則:①顕名不要(504条)②代理権は本人死亡でも消滅しない(506条)③諾否通知なければ承諾とみなす(509条)④連帯債務(511条1項)⑤連帯保証(511条2項)⑥報酬請求権あり(512条)⑦法定利息あり(513条)」
- ・商事代理(504条・506条):商人間では顕名不要・本人死亡でも代理権消滅しない
- ・商事契約の承諾(509条):平常取引先からの申込みに対し遅滞なく諾否通知しなければ承諾とみなされる
- ・商事多数当事者間の債務(511条1項):数人の商人が連名で債務を負担すれば自動的に連帯債務
- ・商事保証(511条2項):商行為によって生じた債務の保証は自動的に連帯保証
- ・商人の報酬請求権(512条):営業の範囲内で他人のために行為した場合、特約なくても相当報酬を請求可
- ・商事消費貸借の法定利息(513条1項):特約なくても利息請求可、流質契約(515条)も認められる
- ・商事留置権(521条):被担保債権と目的物の個別的牽連関係が不要
商事売買
第524条〜528条条簡単にいうと
簡単にいうと、商人同士の売買契約には民法とは全然違う特別ルールがあります。受け取り拒否・確定期売買・検査通知義務がポイントです。
■ 商事売買の概要
商人間の売買契約については民法と異なる特別なルールが設けられており、迅速な取引処理と商人の保護が図られています。
■ 売主の供託・競売権(524条)
売主の供託・競売権(524条)について、民法では買主が売買の目的物の受取を拒んだ場合、売主は原則として弁済供託するか裁判所の許可を得て競売に付すことができますが(民法494条・497条)、商法では供託をするか、または裁判所の許可を得ずに自由に競売に付すことができるとされています(524条)。これにより商人は迅速に代金を回収することが可能です。
■ 確定期売買(525条)
確定期売買(525条)とは、商人間の売買において、その性質または当事者の意思表示により一定の日時または期間内に履行しなければ契約の目的を達成できないいわゆる確定期売買の場合、当事者の一方が履行をしないで履行期を経過してしまったときは契約を解除したものとみなされ(525条)、解除の意思表示は不要です。これは民法542条の解除とは異なり、当然解除とみなされる点が特徴です。
■ 解除後の目的物保管義務(527条1項)
また、買主が売買契約を解除した場合でも目的物の保管義務が発生します(527条1項)。買主が契約を解除したときは、目的物が損傷しやすい物であるかどうかを問わず、損害を防ぐために合理的な方法で目的物を保管し続ける義務があります。
■ 買主の検査・通知義務(526条)
さらに商事売買においては、買主の検査・通知義務(526条)も重要です。商人間の売買で買主が目的物を受け取ったときは、遅滞なくその物を検査し、瑕疵・数量不足を発見したときは直ちに売主に通知しなければならず、この通知を怠ると買主は契約解除・代金減額・損害賠償請求の権利を失います(526条1項・2項)。ただし、直ちに発見できない瑕疵(隠れた瑕疵)については引渡しから6か月以内に発見して通知すれば権利を失いません(526条2項ただし書)。
具体例
A(売主)がB(買主)に自動車を売ったが、Bが受け取りを拒否した。商法では、Aは裁判所の許可なしに自由に自動車を競売に付して代金を回収できる(524条)。

商事売買の特別ルール
ポイント整理
- ・商人間の売買契約であること
- ・確定期売買:一定日時・期間内の履行が契約目的の達成に不可欠であること
- ・買主検査義務:商人間売買で目的物の引渡しがあったこと
効果
- ・受取拒否時に裁判所の許可なく競売可能(524条)
- ・確定期売買では期間経過で当然解除とみなされ解除意思表示不要(525条)
- ・買主は受取後遅滞なく検査し、瑕疵発見時は直ちに通知義務(526条1項)
- ・通知を怠ると契約解除・代金減額・損害賠償請求権を失う(526条2項)
- ・隠れた瑕疵は引渡しから6か月以内に発見・通知で権利保持可(526条2項ただし書)
- ・契約解除後も買主に目的物の保管義務が発生(527条1項)
条文(第524条〜528条条)
第524条 商人間の売買において、買主が目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。 第525条 商人間の売買において、その性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちに履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす。 第526条1項 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。 第527条1項 前条の規定による契約の解除をした場合において、売買の目的物について急迫の事情があるときは、解除をした当事者は、まず、その物を競売に付することができる。
重要メモ
- ・「商事売買の民法特則:①供託・競売権(524条)②確定期売買は解除意思表示不要で自動解除(525条)③買主の目的物保管義務(527条1項)」
- ・商事売買の供託・競売権(524条):受領拒否された場合、供託するか競売するかを自由に選択できる(民法は原則供託)
- ・確定期売買の解除(525条):期日経過だけで当然解除——解除の意思表示は不要(民法542条は意思表示要)
- ・買主の目的物保管義務(527条1項):売買を解除した場合でも買主は当分の間目的物を保管・供託する義務あり
- ・買主の検査通知義務(526条):商人間の売買で、受領後直ちに検査し、瑕疵・数量不足があれば直ちに通知——通知しなければ解除等不可
匿名組合
第535条〜542条条簡単にいうと
簡単にいうと、名前を出さずにこっそり出資だけして利益を受け取れる仕組みが匿名組合です。出資は財産のみ・損失は出資額が上限というのがポイントです。
■ 匿名組合とは(535条)
匿名組合とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約する契約のことをいいます(535条)。
匿名組合は組合という名称を持ちますが、民法上の組合(民法667条)とは異なり、営業者と匿名組合員の二者間の契約にすぎず、組合財産の共有や組合員相互の対外的権利義務関係は生じません。
■ 出資の制限(536条2項)
匿名組合員の出資は、財産出資に限られており、信用または労務による出資は認められません(536条2項)。これは匿名組合が出資と利益分配を核とする契約であるため、財産的価値の確定できないものによる出資を排除しているためです。
■ 有限責任(536条1項)
匿名組合員の責任は有限責任であり、その出資の価額を限度として損失を分担すれば足ります(536条1項)。たとえ損失が出資額を上回っても、匿名組合員が追加的に損失を負担する義務はなく、この点が無限責任を負う民法上の組合員との大きな違いです。
■ 出資財産の帰属と匿名性
また、匿名組合員の出資は営業者の財産に帰属し(536条1項)、匿名組合員の名前は取引の相手方である第三者に対して表に出ることはありません。第三者からみれば、営業はあくまでも営業者の名前で行われており、匿名組合員が誰であるかを知る必要はないのです。
匿名組合契約は、出資額以上のリスクを負いたくない投資家が、自分の名前や関与を外部に知られることなく事業に参加する手段として活用されます。
■ 損失補填と利益分配(542条)
なお、損失が生じて匿名組合員の出資が減少した場合、その後に生じた利益は、まず出資額の補填に充てられ(542条)、補填後に残余利益があって初めて分配を受けられることになります。
具体例
A(匿名組合員)がB(営業者)の飲食店経営に対して1000万円出資し、利益分配を受ける匿名組合契約を締結した。BがCと取引しても、Aの名前はCに知られない。損失が1200万円になってもAの損失負担は1000万円(出資額)が上限。

匿名組合契約とは
ポイント整理
- ・一方当事者(匿名組合員)が他方当事者(営業者)の営業のために出資すること
- ・出資は財産出資に限ること(信用・労務による出資は不可)(536条2項)
- ・営業から生じる利益を分配することを約すること(535条)
効果
- ・匿名組合員の責任は出資額を限度とする有限責任(536条1項)
- ・出資額を超える損失を匿名組合員は負担しない
- ・匿名組合員の名前は第三者(取引先)に表れない
- ・出資財産は営業者の財産に帰属する(536条1項)
- ・損失で出資が減少した場合、利益はまず出資額の補填に充てられる(542条)
条文(第535条〜542条条)
第535条 匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。 第536条1項 匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。 第536条2項 匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる。 第542条 匿名組合員の出資が損失によって減少したときは、その損失を補てんした後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない。
重要メモ
- ・「匿名組合(535条):組合員が営業者の営業に出資し利益分配を受ける契約——組合員は財産出資のみ(信用・労務不可)・損失は出資額限度」
- ・匿名組合の意義(535条):当事者一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業に出資し、その営業から生じる利益の分配を受ける契約
- ・出資の制限(536条2項):出資は財産出資に限る——信用・労務による出資は不可
- ・匿名組合員の責任(536条1項):損失負担は出資額を限度——それ以上の損失は負担しない
- ・匿名性:匿名組合員の名前は表に出ない——営業者のみが第三者と取引
- ・匿名組合の終了(539条):組合員の死亡・破産・後見開始等でも解散せず——双方合意または期間満了で終了
運送営業(陸上物品運送)
第569条〜583条条簡単にいうと
簡単にいうと、荷物を運ぶ運送人には送り状交付・危険品通知・損害賠償責任など多くの義務があります。荷受人が直接請求できる点がポイントです。
■ 運送の種類(569条)
商法が規定する運送には、陸上運送(569条2号)、海上運送(569条3号)、航空運送(569条4号)の3種類があります。このうち試験上最も重要なのが陸上物品運送です。
■ 陸上物品運送契約(570条)
陸上物品運送とは、運送人が荷送人からある物品を受け取り、これを運送して荷受人に引き渡すことを約し、荷送人がその結果に対して運送賃を支払うことを約する契約です(570条)。契約当事者は運送人と荷送人であり、荷受人は契約当事者ではありませんが、後述のように一定の権利を取得します。
■ 送り状の交付義務(571条1項)
運送人の義務として、まず送り状の交付義務があり、運送人は荷送人の請求により送り状を交付しなければなりません(571条1項)。送り状には荷物の品名・数量・重量・容積、荷送人・荷受人の氏名住所、到達地などが記載されます。
■ 危険品の通知義務(572条)
次に危険品に関する通知義務として、爆発性・発火性・引火性のある物など危険品については、荷送人は引渡し前に運送人に対して品名・性質・危険性に関する情報を通知しなければなりません(572条)。
■ 運送人の責任(575条)
運送人の責任については、物品の受取から引渡しまでの間に生じた滅失・損傷・延着について運送人は損害賠償責任を負います(575条)。ただし、運送人は注意を怠らなかったことを証明すれば免責されます。
■ 荷受人の権利(581条)
また荷受人は、物品が到達地に着いた後に引渡しを請求したときは、運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得します(581条)。これは荷受人が契約当事者でないにもかかわらず、物品の引渡し請求等の権利を直接行使できるという重要な規定です。
なお、2018年の商法改正により運送に関するルールが一部改正され、航空運送が新たに明文化されました。
具体例
A(荷送人)がB(運送人)にC宛ての荷物を依頼した。BはAの請求があれば送り状を交付しなければならない。荷物が到達地に着いた後、C(荷受人)がBに引渡し請求をすれば、Cは荷送人Aと同一の権利を取得して直接Bに請求できる(581条)。
ポイント整理
- ・運送人が荷送人から物品を受け取り運送して荷受人に引き渡すことの合意(570条)
- ・荷送人が運送賃を支払うことの合意(570条)
- ・危険品通知義務:荷送人が引渡し前に品名・性質・危険性を通知すること(572条)
効果
- ・運送人は荷送人の請求により送り状を交付しなければならない(571条1項)
- ・危険品については荷送人に通知義務が発生(572条)
- ・運送人は受取から引渡しまでの間の滅失・損傷・延着について損害賠償責任を負う(575条)
- ・荷受人は到達地着後に引渡し請求をすると荷送人と同一の権利を取得する(581条)
条文(第569条〜583条条)
第569条 この節において「運送人」とは、陸上又は湖川、港湾において物品又は旅客の運送を業とする者をいう。 第570条 物品運送契約は、運送人が荷送人からある物品を受け取ってこれを運送し、着荷地において荷受人に引き渡すことを約し、荷送人がこれに対してその運送賃を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。 第571条1項 運送人は、荷送人の請求により、送り状を交付しなければならない。 第572条 荷送人は、運送人に対し、その引渡しの前に、当該物品の品名、性質その他の危険性に関する情報を通知しなければならない。 第581条 荷受人は、物品が到達地に到着し、又は物品の全部が滅失したときは、運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する。
重要メモ
- ・「陸上物品運送(569条・570条):運送人は荷物受取から引渡まで善管注意義務・高価品は事前申告がなければ損害賠償不要(577条)」
- ・陸上物品運送契約(570条):運送人が荷送人から物品を受け取り運送して荷受人に引き渡す契約
- ・荷送人の送り状交付義務(571条1項):運送人の請求により送り状を交付しなければならない
- ・荷送人の危険品通知義務(572条):爆発物・危険物は引渡し前に品名・性質等を運送人に通知しなければならない
- ・運送人の善管注意義務(575条):荷物の受け取りから引き渡しまで善良なる管理者の注意義務を負う
- ・高価品の特則(577条):貨幣・有価証券等の高価品は荷送人が種類・価額を通知しなければ運送人は損害賠償責任を負わない
場屋営業
第596条〜597条条簡単にいうと
簡単にいうと、ホテルや旅館などの場屋営業者は預かった荷物に対して厳格な賠償責任を負います。ただし高価品は事前に申告しないと免責されてしまうのがポイントです。
■ 場屋営業とは(502条7号)
場屋営業とは、一般公衆が来集するのに適した人的・物的設備を設け、客にその設備を利用させることを目的とする営業のことです(502条7号)。旅館・ホテル・飲食店・パチンコ店・碁会所の経営などが典型例として挙げられます。
場屋営業者の責任については、商法596条および597条に特別のルールが定められています。
■ 通常の寄託物に対する責任(596条1項)
通常の損害賠償責任(596条1項)として、場屋営業者は客から寄託を受けた物品の滅失または損傷については、それが不可抗力によることを証明しない限り損害賠償責任を免れることができません(596条1項)。
■ 場内持込物に対する責任(596条2項)
また、客が場屋に持ち込んだ物品(寄託を受けていないものも含む)が場屋営業者の不注意によって滅失または損傷したときも、場屋営業者は損害賠償責任を負います(596条2項)。このように、場屋営業者は寄託物について原則として免責の立証責任を負う厳格な責任を負っています。
■ 高価品の特例(597条)
高価品の特例(597条)として、貨幣・有価証券その他の高価品については、客がその種類および価額を通告して寄託した場合を除き、場屋営業者はその物品に生じた損害を賠償する責任を負いません(597条)。
これは、高価品については場屋営業者があらかじめその価値を知っていなければ適切な保管措置を講じることができないため、客側に種類・価額の通告を義務付けることで、場屋営業者の過度な責任を制限しているものです。この高価品特例は、場屋営業者が高価品について知らなかった場合に重い賠償責任を負うことの不均衡を是正するための規定です。
具体例
AがBホテルに宿泊し、フロントに高級時計(50万円)を預けたが種類・価額を告げなかった。時計が盗まれた場合、BホテルはAに損害賠償責任を負わない(597条)。一方、普通のスーツケースを預けて紛失した場合、Bは不可抗力を証明できなければ賠償責任を負う(596条1項)。

陸上物品運送契約の構造と義務
ポイント整理
- ・場屋営業者が客から寄託を受けた物品の滅失・損傷であること(596条1項)
- ・または場屋内に持ち込んだ物品の場屋営業者の不注意による滅失・損傷(596条2項)
- ・高価品特例の免責:客が種類・価額を通告せずに寄託したこと(597条)
効果
- ・寄託物の滅失・損傷は不可抗力の証明がない限り場屋営業者が賠償責任を負う(596条1項)
- ・場内持込物の不注意による滅失・損傷も場屋営業者が責任を負う(596条2項)
- ・高価品については種類・価額の通告なき寄託の場合は場屋営業者が免責(597条)
条文(第596条〜597条条)
第596条1項 旅館、飲食店、浴場その他の客の来集を目的とする場屋における取引をする者は、客より寄託を受けた物品の滅失又は毀損については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができない。 第596条2項 客が寄託しない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失し、又は毀損したときは、場屋営業者は、損害賠償の責任を負う。 第597条 貨幣、有価証券その他の高価品については、客がその種類及び価額を通告してこれを場屋営業者に寄託した場合を除き、場屋営業者はその滅失又は毀損によって生じた損害を賠償する責任を負わない。
重要メモ
- ・「場屋営業者(旅館・ホテル等)は寄託を受けた物品の損害について不可抗力を証明しない限り賠償責任を負う(596条1項)・高価品は事前申告なければ免責(597条)」
- ・場屋営業の意義(502条7号):公衆が来集するのに適した設備を設けて利用させることを目的とする営業(旅館・ホテル・飲食店・パチンコ店等)
- ・場屋営業者の責任(596条1項):客から寄託された物品の滅失・毀損について不可抗力を証明しない限り損害賠償責任を負う
- ・携帯品への責任(596条2項):客が携帯した物品で不注意により滅失・毀損した場合も賠償責任あり
- ・高価品の特則(597条):貨幣・有価証券等の高価品は客が種類・価額を申告して委託しなければ場屋営業者は免責
まとめ
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