第1節 商法総則
第1章 商法総則・商行為
商法総則は、商売を職業として行う人たちに共通するルールを集めた分野です。誰が「商人」にあたるのか、どんな行為が「商行為」になるのか、お店の名前である「商号」はどこまで守られるのか、商人を手伝う支配人や代理商にはどこまでの権限があるのか。この節で扱うのはこの4つです。行政書士試験では商法から2問前後が出題され、その多くがここから顔を出します。会社法を読むための土台にもなります。
民法と商法の関係
商法1条簡単にいうと
同じ「お金を貸す」でも、友人同士なら民法、金融業者なら商法。どちらのルールで処理するかで結論が変わります。
民法も商法も、私人と私人のあいだの権利義務を決める法律です。違うのは想定している場面で、民法が市民生活一般を広く受け持つ「一般法」であるのに対し、商法は営利活動を繰り返す商人の取引だけを取り出して特別なルールを置く「特別法」です。特別法は一般法に優先するので、商人の取引には商法が先に適用されます(商法1条1項)。
商法に書いていないときの順番
商法1条2項は、商事について商法に定めがない事項は商慣習に従い、商慣習もないときに民法によると定めています。つまり順番は、商法→商慣習→民法の3段階です。「商法になければすぐ民法」と覚えると1段飛ばしになるので、商慣習が民法より先に来る点に気をつけてください。
商法が民法を修正している典型例
いちばんわかりやすいのがお金の貸し借りです。民法では、利息をとるという約束がなければ利息は発生しません。ところが商人どうしの金銭消費貸借では、約束がなくても貸主は法定利息を請求できます(商法513条1項)。このほか、本人が死亡しても商行為の委任による代理権は消滅しません(商法506条)。平常取引をしている相手からの申込みに諾否の返事を出さないと、承諾したものとみなされます(商法509条2項)。このように商法は民法の原則をあちこちで書き換えています。どれも、大量の取引を速く安全に回すための仕掛けです。試験ではこの対比がそのまま出題されます。
具体例
金融業者Aが取引先Bに運転資金を貸した場面では商法が適用され、利息の約束がなくてもAはBに法定利息を請求できます。同じ金額をAが友人Bに個人として貸したときは民法が適用され、利息の約束がなければ利息は一切請求できません。

民法と商法の関係
ポイント整理
- ・取引が商事(商人の営業・商行為その他の商事)にあたること
- ・その事項について商法に規定が置かれていること
効果
- ・特別法である商法が一般法である民法に優先して適用される
- ・商法に規定がない事項は商慣習、商慣習もなければ民法による(1条2項)
条文(商法1条)
商法1条:商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。2 商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる。
重要メモ
- ・商法と民法は特別法と一般法の関係にあることがポイント
- ・適用の順番は商法→商慣習→民法(1条2項)。商慣習が民法より先に来る
- ・商人間の金銭消費貸借は無約定でも法定利息を請求できる(513条1項)
- ・商行為の委任による代理権は本人が死亡しても消滅しない(506条)
- ・平常取引の相手からの申込みに諾否を通知しないと承諾とみなされる(509条2項)
商人の定義
商法4条簡単にいうと
商法が使われるかどうかは、その人が「商人」かどうかで決まります。商人になる入口は2つあります。
商法は誰にでも適用される法律ではありません。原則として、取引をしている人が「商人」である場合に登場します。商人になる入口は2つです。
固有の商人(4条1項)
自己の名をもって商行為をすることを業とする者が、本来の意味での商人です。「自己の名をもって」とは、自分が権利義務の主体として行為することをいい、他人の代理人として動くだけの人は含まれません。「業とする」とは、利益を得る目的で同じ種類の行為を繰り返すことです。転売目的の仕入れそのものは1回でも商行為になりますが(501条1号)、それを繰り返して初めてその人は商人になります。
擬制商人(4条2項)
店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者と、鉱業を営む者は、商行為を行っていなくても商人とみなされます。農業や漁業のように原始生産そのものは商行為にあたりませんが、直売所という設備を構えて売っていれば外から見れば商売そのものです。そこで見た目に合わせて商人として扱います。
小商人と会社
営業のために使う財産の価額が法務省令で定める金額を超えない小規模な商人を小商人といい、商業登記や商業帳簿などいくつかの規定が適用されません(商法7条)。会社については、その事業としてする行為と事業のためにする行為がすべて商行為とされるため(会社法5条)、会社は当然に4条1項の商人にあたります。
どこで間違えるか
ひっかけの定番は2つです。ひとつは、商行為を1回しただけの人を商人と呼ばせる出題です。転売目的の購入は1回でも商行為ですが、商人になるにはそれを業として繰り返すことが要ります。もうひとつは、擬制商人に商行為を求める出題です。4条2項は商行為を行うことを業としない者であっても商人とみなすと書いていますから、商行為があるかどうかは問いません。設備を構えて物品を販売しているかどうかだけを見ます。
具体例
スーパーを経営するAは、安く仕入れて高く売る行為を繰り返しているので4条1項の商人です。自分の畑で採れた野菜を直売所で売る農家Bは、農業自体が商行為ではないため4条1項には乗りませんが、店舗にあたる設備で物品を売っているので4条2項の擬制商人になります。

商法が適用される者(商人の判定基準)
ポイント整理
- ・自己の名をもって商行為をすることを業とすること(4条1項)
- ・または店舗その他これに類似する設備によって物品を販売すること、もしくは鉱業を営むこと(4条2項)
効果
- ・商法の規定が適用され、商行為法の特則を受ける
- ・商号の登記や商業帳簿の作成などの規律が及ぶ(小商人は一部が適用除外)
条文(商法4条)
商法4条:この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。2 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。
重要メモ
- ・商人には4条1項と4条2項の2つの入口があることがポイント
- ・固有の商人は自己の名で商行為を業として行う者(4条1項)
- ・擬制商人は商行為をしていなくても店舗等で物品を販売する者・鉱業を営む者(4条2項)
- ・小商人には商業登記・商業帳簿などの規定が適用されない(7条)
- ・会社の行為は事業としてする行為も事業のためにする行為も商行為(会社法5条)
絶対的商行為と営業的商行為
商法501条・502条簡単にいうと
1回やっただけで商行為になるものと、繰り返してはじめて商行為になるもの。この線引きが試験で狙われます。
商行為は大きく3つに分かれます。1回行うだけで商行為になる絶対的商行為(501条)、営業として繰り返すことで商行為になる営業的商行為(502条)、商人が営業のためにする附属的商行為(503条)です。
絶対的商行為(501条)
営利性が強く、性質上それ自体が商行為とされるものです。1号は投機購買とその実行行為で、値上がり益を狙って動産・不動産・有価証券を買い、それを売る行為を指します。不動産が入っている点が狙われます。2号は投機売却とその実行行為で、先に高く売る約束をしてから安く仕入れて差額を得る行為です。こちらの対象は動産と有価証券だけで、不動産は入りません。3号は取引所においてする取引、4号は手形その他の商業証券に関する行為です。
営業的商行為(502条)
営業として反復継続して初めて商行為になるものです。1号は投機貸借で、レンタカー業や不動産賃貸業がこれにあたります。2号は他人のためにする製造・加工で、クリーニング業や精米業が入ります。3号は電気またはガスの供給、4号は運送、5号は作業または労務の請負です。6号は出版・印刷・撮影、7号は客の来集を目的とする場屋における取引、8号は両替その他の銀行取引です。ただし、もっぱら賃金を得る目的で物を製造したり労務に従事したりする人の行為は除かれます(502条ただし書)。
判例が外したもの
理髪業は、客に設備を利用させるというより役務そのものを提供する営業なので、場屋取引にあたらないとされました(大判昭12.11.26)。質屋が質物をとって金銭を貸す行為も、銀行取引にあたらないとされています(最判昭50.6.27)。銀行取引は、受信と与信の両方を行うことが必要と解されているためです。
具体例
Aが転売目的でマンションを1戸買った場合、1回きりでも投機購買として絶対的商行為になります(501条1号)。一方、旅館業者Bが客を泊める行為は、営業として繰り返すことではじめて場屋取引という営業的商行為になります(502条7号)。

絶対的商行為と営業的商行為
ポイント整理
- ・絶対的商行為:501条1号から4号のいずれかにあたること(1回の行為でも成立し、営業性は不要)
- ・営業的商行為:502条各号の行為を営業として反復継続すること
効果
- ・その行為に商法の規定が適用される
- ・これを業として行う者は4条1項の商人となる
条文(商法501条・502条)
商法501条:次に掲げる行為は、商行為とする。一 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為 二 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為 三 取引所においてする取引 四 手形その他の商業証券に関する行為
重要メモ
- ・投機購買には不動産が入るが投機売却には入らないことに注意
- ・絶対的商行為は1回でも商行為、営業的商行為は営業として繰り返して商行為
- ・投機貸借は絶対的商行為ではなく営業的商行為(502条1号)
- ・理髪業は場屋取引にあたらない(大判昭12.11.26)
- ・質屋の金銭貸付は銀行取引にあたらない(最判昭50.6.27)
商号
商法11条・12条簡単にいうと
商号はお店や会社の名前です。自由につけられますが、他人の看板にただ乗りする使い方までは許されません。
商号とは、商人が営業上、自分を表すために使う名称です。商人は自分の氏・氏名その他の名称を商号にすることができ(商法11条1項)、何をどう名乗るかは原則として自由です。個人商人は商号を登記することができますが、登記するかどうかは任意です(商法11条2項)。会社の場合は名称がそのまま商号になり、種類に応じて「株式会社」などの文字を商号中に入れる義務があります(会社法6条)。
不正の目的による使用の禁止
自由といっても限度があります。何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称や商号を使ってはなりません(商法12条1項)。禁止されるのは「何人も」なので、相手が商人であるかどうかは関係ありません。逆に、たまたま同じ屋号になってしまっただけで不正の目的がないときは、この規定にはひっかかりません。ここが出題のねらい目です。
救済の方法
不正の目的による使用で営業上の利益を侵害された商人、または侵害されるおそれがある商人は、その侵害の停止または予防を請求できます(商法12条2項)。12条2項が定めているのは差止めだけなので、損害の穴埋めを求めるときは民法709条の不法行為として別に請求することになります。
商号の譲渡
商号は、営業とともに譲渡する場合か、営業を廃止する場合に限って譲渡できます(商法15条1項)。名前だけを切り離して売ることはできません。そして譲渡は登記しなければ第三者に対抗できません(商法15条2項)。
具体例
地元で知られた菓子店Aと同じ「A堂」という商号を、Bが客を引き込む目的で新しい店に付けた場合、不正の目的による使用にあたり、AはBに使用の停止を請求できます。一方、Bが自分の名字から自然に「A堂」と名付けただけで、Aの評判を利用する意図がなければ、12条1項には違反しません。

商号の保護
ポイント整理
- ・不正の目的があること(他人の信用にただ乗りする意図など)
- ・他の商人であると誤認されるおそれのある名称・商号を使用すること
効果
- ・侵害された商人は使用の停止または予防を請求できる(12条2項)
- ・損害の賠償は民法709条の不法行為として別に請求する
- ・商号の譲渡は営業とともにする場合か営業廃止の場合に限られる(15条1項)
条文(商法11条・12条)
商法12条:何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
重要メモ
- ・禁止されるのは不正の目的がある場合だけという点に注意
- ・12条1項の名宛人は「何人も」。商人でない者にも及ぶ
- ・12条2項で請求できるのは差止め。損害賠償は民法709条による
- ・個人商人の商号登記は任意(11条2項)。会社は種類を商号に入れる義務あり(会社法6条)
- ・商号の譲渡は営業とともにする場合か営業廃止の場合のみ。登記が対抗要件(15条)
名板貸し
商法14条簡単にいうと
自分の看板を他人に使わせると、その他人がつくった借金まで背負うことがあります。
名板貸しとは、商人が自分の商号を他人に使わせることを許諾する行為です。名前を貸した側を名板貸人、借りた側を名板借人といいます。名板借人と取引をした相手方が、その相手を名板貸人本人だと誤認していたときは、名板貸人は名板借人と連帯して、その取引から生じた債務を弁済する責任を負います(商法14条)。
3つの要件
第一に、名板貸人が商号の使用を許諾していることです。はっきり承諾した場合だけでなく、使われているのを知りながら放置していた黙示の許諾も含まれます。逆に、無断で商号を使われただけなら名板貸しの責任は生じません。第二に、取引の相手方が名板借人を名板貸人本人だと誤認したことです。第三に、その相手方が善意かつ無重過失であることです。少し調べればわかったのに漫然と取引した相手は保護されません。
民法の表見代理との違い
名板貸しは、誤った外観をつくった者にその責任を負わせる外観法理のあらわれで、民法の表見代理と発想は同じです。ただし2点が違います。ひとつは相手方の主観で、表見代理が善意無過失を求めるのに対し、名板貸しは善意かつ無重過失で足ります。軽い過失があっても保護されるということです。もうひとつは効果で、表見代理では本人が契約の当事者になるのに対し、名板貸しでは名板貸人と名板借人が連帯して責任を負います。相手方はどちらにも全額を請求できます。
どこで間違えるか
出題では、名板貸人が責任を負うと名板借人の責任が消えるかのような選択肢が並びます。連帯責任ですから、名板借人も債務者のままです。また、名板貸人が負うのは「その取引によって生じた債務」に限られます。名板借人が起こした交通事故のように、取引と関係なく生じた債務までは背負いません。許諾の有無が争点になったときは、黙認していた事実があれば黙示の許諾として要件を満たす点も確かめてください。
具体例
商人Aが自分の商号「A商店」をBに使わせたところ、BがCと50万円の売買をして代金を払いませんでした。CがA商店本人と取引していると信じ、そう信じたことに重大な過失がなければ、CはBだけでなくAにも50万円を請求できます。

名板貸しの法的責任構造
ポイント整理
- ・名板貸人が自己の商号の使用を許諾したこと(黙示の許諾を含む)
- ・相手方が名板借人の営業を名板貸人の営業と誤認したこと
- ・相手方が善意かつ無重過失であること
効果
- ・名板貸人は名板借人と連帯して、その取引から生じた債務を弁済する責任を負う(14条)
- ・名板借人も債務者のままなので、相手方はどちらにも請求できる
条文(商法14条)
商法14条:自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
重要メモ
- ・相手方の主観は善意かつ無重過失でよいことに注意
- ・許諾がない無断使用の場合は名板貸しの責任は生じない
- ・黙示の許諾でも要件を満たす
- ・効果は名板貸人と名板借人の連帯責任。相手方はどちらにも全額請求できる
- ・民法の表見代理は善意無過失が必要で、本人だけが相手方になる点が違う
支配人
商法21条・23条簡単にいうと
支配人は、商人に代わって営業のことなら訴訟まで何でもできる、いちばん強い商業使用人です。
商人に雇われてその営業を手伝う人を商業使用人といいます。そのなかでもっとも強い権限を持つのが支配人です。支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持ちます(商法21条1項)。訴訟の追行まで含めた包括的な代理権があるという点が特徴で、他の使用人を選任したり解任したりすることもできます(同条2項)。商人が支配人を選任したときは登記をしなければなりません(商法22条)。
代理権の制限は善意の第三者に対抗できない
商人が支配人の権限に枠をはめること自体はできます。ただし、その制限は善意の第三者に対抗できません(商法21条3項)。「1号店の取引だけ」と社内で決めていても、それを知らない相手との2号店の取引は有効になり、商人が責任を負います。支配人の権限は法律が包括的に定めているので、外から見えない内部的な制限で相手方を害することはできない、という考え方です。裏返せば、制限を知っている悪意の第三者には対抗できます。
競業避止義務
支配人は、商人の許可を受けなければ次の4つをしてはなりません(商法23条1項)。自ら営業を行うこと、自己または第三者のために商人の営業の部類に属する取引をすること、他の商人や会社の使用人となること、会社の取締役・執行役・業務執行社員となることです。このうち2号の競業取引をしたときは、その行為によって支配人または第三者が得た利益の額が、商人に生じた損害の額と推定されます(同条2項)。損害額の立証は難しいので、利益の額を代わりに使ってよいという立証の負担を軽くする規定です。
具体例
商人Aが支配人Bを選び、社内で「2号店の取引に限る」と権限を制限していたとします。BがA全体の支配人だと信じたCと1号店の商品について取引した場合、Cが制限を知らなければ取引はAに効果が及び、AはCに責任を負います。Cが制限を知っていたときは、AはCに制限を主張できます。

支配人の権限と制限
ポイント整理
- ・商人が支配人として選任したこと(商法20条)
- ・営業所において、その営業を行わせるものであること
効果
- ・営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする包括的代理権を持つ(21条1項)
- ・他の使用人の選任・解任もできる(21条2項)
- ・代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できない(21条3項)
- ・競業取引をしたときは得た利益の額が損害額と推定される(23条2項)
条文(商法21条・23条)
商法21条:支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
重要メモ
- ・支配人の代理権は裁判上の行為まで含む包括的なものだと押さえる
- ・代理権の制限は善意の第三者に対抗できない(21条3項)。悪意の第三者には対抗できる
- ・支配人は他の使用人を選任・解任できる(21条2項)
- ・競業避止義務は4つ。商人の許可があれば行える(23条1項)
- ・競業取引の場合、得た利益の額が損害額と推定される(23条2項)
表見支配人
商法24条簡単にいうと
支配人ではないのに「支店長」と名乗らせていたら、会社はその肩書を信じた相手に責任を負います。
本当は支配人ではない使用人に、商人が支配人らしい名称を与えることがあります。取引の相手方はその肩書を見て権限があると信じますから、信じた相手を守る必要があります。そこで商法は、営業所の営業の主任者であることを示す名称を付けた使用人について、その営業所の営業に関し一切の裁判外の行為をする権限があるものとみなしました(商法24条)。これが表見支配人です。
3つの要件
第一に、虚偽の外観があることです。支店長・営業所長など、その営業所の責任者だとわかる名称が付いていることが必要です。第二に、商人の側に帰責性があることです。商人自身が名称を与えたか、名乗っているのを知りながら黙認していたことが求められます。第三に、相手方が善意かつ無重過失であることです。条文は相手方が悪意であったときを除くと書いていますが、重大な過失がある相手方は悪意と同じに扱われます。
本物の支配人との決定的な違い
表見支配人にみなされる権限は、裁判外の行為に限られます。商品の売買や代金の受領といった取引行為には権限があるとみなされますが、訴えを起こしたり応訴したりする裁判上の行為は含まれません。本物の支配人が裁判上の行為までできる(21条1項)のと対照的で、ここがそのまま出題箇所になります。「一切の行為」と書いてある選択肢を見たら、裁判上が混ざっていないかを確かめてください。
範囲は営業所ごと
みなされる権限は、その使用人が置かれた営業所の営業に関する範囲に限られます。2号店の店長という名称であれば、及ぶのは2号店の営業についての行為です。会社全体の取引まで当然に権限があるとみなされるわけではありません。名称も、その営業所の責任者だと外から読み取れるものである必要があり、「課長」「係長」のように上に責任者がいると読める肩書では要件を満たしません。
具体例
商人Aが使用人Bに「2号店店長」の肩書を与えて店を任せていましたが、Bは支配人として選任されていませんでした。BがAの支配人だと信じて商品を仕入れたCが善意かつ無重過失であれば、その売買はAに効果が及びます。ただし、BがAの代理人としてCに対する訴えを起こすことはできません。

表見支配人の成立要件と効果
ポイント整理
- ・営業所の営業の主任者であることを示す名称が付されていること
- ・商人が名称を付与したか、名乗ることを黙認したこと
- ・相手方が善意かつ無重過失であること
効果
- ・その営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限があるものとみなされる(24条)
- ・裁判上の行為については権限があるとはみなされない
条文(商法24条)
商法24条:商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
重要メモ
- ・みなされるのは裁判外の行為だけという点に注意
- ・要件は虚偽の外観・商人の帰責性・相手方の善意無重過失の3つ
- ・条文は相手方の悪意を除外するが、重過失も悪意と同じに扱われる
- ・本物の支配人(21条1項)は裁判上の行為もできる
- ・名称は営業所の主任者だとわかるものであればよい(支店長・営業所長など)
代理商
商法27条・28条・31条簡単にいうと
代理商は会社の中の人ではありません。外にいる独立した事業者が、特定の商人のために取引を手伝います。
代理商とは、特定の商人のために、その平常の営業の部類に属する取引の代理または媒介をする者で、その商人の使用人でない者をいいます(商法27条かっこ書)。支配人などの商業使用人が雇用されて内側から手伝うのに対し、代理商は独立した事業者として外側から手伝う点が違います。指揮命令を受ける関係にはありません。
締約代理商と媒介代理商
代理商は2種類に分かれます。締約代理商は、商人の代理人として自ら第三者と契約を結ぶ権限を持つ代理商です。結んだ契約の効果は直接その商人に帰属します。保険代理店が保険契約を代理して締結する場合が典型です。媒介代理商は、契約を結ぶ代理権は持たず、商人と第三者を引き合わせるところまでを担当します。契約自体は商人と第三者が直接結びます。
代理商の義務と権利
代理商は、取引の代理や媒介をしたときは遅滞なく商人に通知しなければなりません(商法27条)。また、商人の許可がなければ、自己または第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすることなどができません(商法28条1項)。違反したときは、得た利益の額が商人に生じた損害の額と推定されます(同条2項)。一方で代理商には留置権が認められ、取引の代理・媒介によって生じた債権の弁済期が来ているときは、弁済を受けるまで商人のために占有する物や有価証券を留置できます(商法31条)。契約期間を定めなかったときは、商人も代理商も2か月前までに予告して契約を解除できます(商法30条1項)。
具体例
保険会社Aのために保険契約を代理して結ぶ保険代理店Bは締約代理商で、契約の効果はAに帰属します。これに対し、Aの商品を買いたい客Cを探して引き合わせるだけのDは媒介代理商で、売買契約はAとCが直接結びます。

代理商の仕組み
ポイント整理
- ・特定の商人のために、その平常の営業の部類に属する取引の代理または媒介をすること
- ・その商人の使用人でない独立した者であること
効果
- ・締約代理商が結んだ契約の効果は直接その商人に帰属する
- ・媒介代理商には代理権がなく、商人と第三者が直接契約を結ぶ
- ・取引の代理・媒介をしたときは遅滞なく通知する義務を負う(27条)
- ・許可なく競業取引をしたときは得た利益の額が損害額と推定される(28条2項)
- ・代理商は商人のために占有する物等を留置できる(31条)
条文(商法27条・28条・31条)
商法27条:代理商(商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。
重要メモ
- ・代理商は使用人ではなく独立した事業者だという点がポイント
- ・締約代理商には代理権があり、媒介代理商にはない
- ・取引の代理・媒介をしたら遅滞なく商人に通知する義務がある(27条)
- ・許可なく競業取引をすると得た利益の額が損害額と推定される(28条)
- ・期間の定めがないときは2か月前の予告で解除できる(30条1項)
まとめ
独学でも合格をつかみ取れる!
判例解説・テキスト・解説動画・演習まですべて網羅!
予備校代の1/30で、独学の不安をまるごと解決できます
無料登録後、アカウントページからかんたんにプレミアムへ切り替えられるよ。音声解説・解説動画・過去問・AI記述採点まで全機能が使えるようになるの!
- 行政書士試験に出る判例のわかりやすく丁寧な解説を、動画と音声で無制限に見放題・聞き放題!プレミアム限定

- テキスト各テーマの解説動画が見放題!連続再生・科目別・ブックマーク再生でスキマ時間に効率よく学べます。プレミアム限定

- 過去問の年度別・肢別演習無制限!何度も解きなおせます。マイページで苦手管理もばっちり。プレミアム限定

- 科目別テキストPDFダウンロード可能!ダウンロード後は半永久的に利用可能で、印刷したりご自身の好きな使い方で合格に近づけます。プレミアム限定

- テキストのブックマーク管理で苦手分野・何度も確認したい部分を徹底管理可能!プレミアム限定

- 記述式問題をAIで添削採点可能!最適なフィードバックで自分だけの強み・弱みを把握できる。プレミアム限定

プレミアムプラン
¥7,800〜 / 対象年度の本試験まで(税抜)
自動更新なし
決済は Stripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。全世界で利用されているStripeの厳格な審査をクリアした決済サービスなので安心です。カード情報は当サービスに保存されません。
スマホアプリで、いつでもどこでも。行政書士合格を、スキマ時間で。
判例解説の音声再生・過去問演習・AI記述採点をスマホ1台に。通勤・休憩中に1問だけでも。独学でも仕事と両立しながら、合格を目指せます。
✓ Webでプレミアム登録済みの方は、アプリでも全機能をそのままご利用いただけます。
- 判例の動画・音声解説をながら学習

- テキストPDFダウンロードで、紙でもオフラインでも

- 過去問・記述式演習がいつでも

- 苦手ブックマーク管理で弱点を集中復習

無料ダウンロード・iOS対応
