第4節 機関
第2章 会社法
会社法における機関とは、会社の意思決定や業務執行、監督を行う組織のことです。株主総会、取締役、監査役などがこれに該当します。この節では、各機関の権限・責任・相互関係を学び、会社がどのように運営されるかの基本構造を理解します。試験では機関設計の組み合わせや各機関の権限範囲が頻出です。
機関設計
簡単にいうと
株式会社の機関(株主総会・取締役・監査役など)は会社の規模によって異なります。基本的なイメージを押さえましょう。
会社を運営するには様々な機関が必要ですが、会社の規模によって必要な機関は異なります。そこで会社法は会社規模に応じて柔軟な機関設計を認めています。
■ 機関設計の基本(公開会社・非公開会社の違い)
公開会社:取締役会と監査役を置かなければならない(327条1項・2項)
非公開会社:任意で取締役会を置くことができる
■ 規模の小さい非公開会社のイメージ
家族経営企業を全部に配置する必要を排除し、最低限の機関で株式会社を運営できるようにしています。
■ 規模の大きい公開会社のイメージ
株主が多く分散しているため、取締役等の役割や監督機能が強化されます。取締役会・代表取締役・監査役(監査機関)が設置されます。
■ 機関設計の基本原則
公開会社は取締役会と監査役を置かなければならない。非公開会社は任意で取締役会を置くことができる(取締役会役員の任期:公開会社は原則2年短縮不可、非公開会社は最長10年まで伸長可)。

機関設計(公開会社・非公開会社の違い)
重要メモ
- ・「公開会社は取締役会と監査役の設置が義務・非公開会社は任意設計可・大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)は会計監査人必須」
- ・公開会社(2条5号):すべての株式に譲渡制限がない会社——取締役会と監査役(または委員会)の設置が義務(327条)
- ・非公開会社:任意の機関設計が可能——取締役1人のみでも可
- ・大会社(2条6号):資本金5億円以上または負債200億円以上——会計監査人の設置が義務(328条)
- ・大会社かつ公開会社:監査役会(または委員会)が必要(328条1項)
- ・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社:監査役を置かず委員会が監査を担う特殊形態
❶株主総会の権限
簡単にいうと
株主総会は会社の最高意思決定機関です。取締役会があるかないかで権限の範囲が変わります。
株主総会は会社の意思を決定する機関であり、株主によって構成されます。株主総会の権限は取締役会を置いているかどうかによって異なります。
■ 取締役会を置かない会社の株主総会
会社のすべての事項を決定できます(295条1項)。
■ 取締役会設置会社の株主総会
会社の基本的事項のみを決定します(295条2項)。具体的には法令または定款で定めた事項のみを決議できます。取締役会に委任できない事項(例:役員の選任・解任、定款変更、合併等の組織再編)は株主総会が決定します。
重要メモ
- ・「取締役会設置会社の株主総会は基本事項のみを決定(295条2項)・取締役会非設置会社はすべての事項を決定(295条1項)」
- ・取締役会非設置会社(295条1項):株主総会はすべての事項を決定——最高意思決定機関
- ・取締役会設置会社(295条2項):株主総会は会社法に定める事項と定款で定めた事項のみを決定——経営判断は取締役会に委ねる
- ・株主総会の専決事項:取締役・監査役の選解任・定款変更・合併等の組織再編・解散等——定款や取締役会に委任不可
❷株主総会の招集
簡単にいうと
株主総会を開くには事前の招集通知が必要です。通知期限が公開会社と非公開会社で異なります。
株主総会には、株主に集まってもらう必要があるため株主総会の招集通知が必要です。
■ 株主総会の種類
①定時株主総会(296条1項):毎事業年度の終了後一定の時期に招集する株主総会
②臨時株主総会(296条2項):必要に応じて随時招集する株主総会
■ 招集通知の期限(公開会社と非公開会社の比較)
公開会社:株主総会の2週間前までに招集通知を発しなければならない(299条1項)。書面投票制度・電子投票制度を採用している場合も2週間前まで。
非公開会社:取締役会設置会社は1週間前まで(定款で短縮可)、取締役会非設置会社も1週間前まで(定款で短縮可)。
招集通知は株主に集まってもらう前提として不可欠であり、通知なしに開催された株主総会の決議は取り消しの対象となります。
重要メモ
- ・「定時株主総会は年1回(296条1項)・招集通知:公開会社は2週間前まで・非公開会社は1週間前まで・全員の同意があれば省略可」
- ・定時株主総会(296条1項):毎年一定の時期に開催(通常6月頃——決算後3ヶ月以内)
- ・臨時株主総会(296条2項):必要があるときはいつでも開催可
- ・招集通知の時期:公開会社→2週間前まで・非公開会社→1週間前まで(定款で短縮可)
- ・招集手続の省略(300条):株主全員が同意すれば招集手続を省略できる
- ・招集権者(296条3項・297条):原則として取締役・少数株主(3%以上を6ヶ月前から保有)も請求可
❸議決権の行使方法
簡単にいうと
株主総会に直接出席できない場合でも議決権を行使できる3つの方法があります。
株主が株主総会で議決権を行使するには原則として会場に赴く必要がありますが、それが難しい場合に備えて会社法では以下の方法が設けられています。
①議決権の代理行使(310条1項):代理人を通じて議決権を行使できる。会社は定款で代理人の資格を株主に限定することができます(最判昭43.11.1)。
②書面投票制度(298条1項3号):書面によって議決権を行使する方法。会社が任意で定めますが、株主が1,000人以上いる会社では書面投票の機会の提供が必須です(298条2項本文)。
③電子投票制度(298条1項4号):電磁的方法(インターネット等)によって議決権を行使する方法。会社が任意で定めるもので、書面投票のような必須規定はありません。
重要メモ
- ・「議決権の行使方法:①代理行使(定款で株主に限定可)②書面投票(1,000人以上の会社では必須)③電子投票(任意)」
- ・代理行使(310条1項):代理人により議決権を行使可——会社は定款で代理人を株主に限定できる(判例・最判昭43.11.1)
- ・書面投票制度(298条1項3号):会場に来られない株主が書面で議決権行使——株主1,000人以上の会社では必須(298条2項)
- ・電子投票制度(299条3項):書面の代わりに電磁的方法で議決権行使——任意(強制規定なし)
- ・議決権の基準日(124条):一定の日の株主名簿上の株主が議決権を行使——通常は基準日から3ヶ月以内に総会開催
❹決議方法
簡単にいうと
株主総会の決議には普通決議・特別決議・特殊決議の3種類があります。それぞれの要件を表で覚えましょう。
株主総会の決議方法としては、①普通決議、②特別決議、③特殊決議があり、通常は普通決議ですが、重要事項を決定する際は特別決議または特殊決議となります。
■ 普通決議(309条1項)
定足数:議決権の過半数を有する株主が出席。可決要件:出席株主の議決権の過半数の賛成。決議事項:役員の選任・解任など。
■ 特別決議(309条2項)
定足数:議決権の過半数を有する株主が出席。可決要件:出席株主の議決権の3分の2以上の賛成。決議事項:定款変更・株式の発行(有利発行)・合併など重要事項。
■ 特殊決議(309条3項・4項)
定足数:規定なし。可決要件:①議決権を行使できる株主の半数以上かつ議決権の3分の2以上の賛成(309条3項)、または②総株主の同意(309条4項)。決議事項:①譲渡制限の設定・変更、②剰余金の配当免除など。
重要メモ
- ・「株主総会決議3種類:①普通決議(過半数の定足数・出席者の過半数)②特別決議(過半数の定足数・出席者の3分の2以上)③特殊決議(譲渡制限設定等の重大事項)」
- ・普通決議(309条1項):定足数→議決権の過半数・決議要件→出席者の議決権の過半数(定款で定足数を引き下げ可)
- ・特別決議(309条2項):定足数→議決権の過半数・決議要件→出席者の議決権の3分の2以上(重要事項——定款変更・解散・組織再編等)
- ・特殊決議(309条3項):全株式に譲渡制限をつける等の重大事項——定足数なし・総株主の議決権の過半数かつ3分の2以上の賛成
- ・総株主の同意:損害賠償責任の免除等——全株主の同意が必要な場面
❺株主総会の決議取消しの訴え
簡単にいうと
株主総会の決議に手続上の問題や不公正があった場合、訴えによって取り消すことができます。
株主総会の決議について法令違反等があった場合、株主や取締役は決議の取消しを求めて裁判所に提訴することができます(831条1項)。
■ 決議取消しの訴えの要件
提訴できる者:株主・取締役(監査役設置会社では監査役)
提訴期限:決議の日から3ヶ月以内(831条1項)
取消事由:①招集手続または決議方法が法令もしくは定款に違反しまたは著しく不公正なとき、②決議の内容が定款に違反するとき、③決議につき特別利害関係人(問題となる議案の成立によりほかの株主と共通しない特殊な利益を獲得する株主)が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされたとき。
■ 裁量棄却
取消事由があっても、違反が重大でなく決議に影響を及ぼさないと認めるときは、裁判所は請求を棄却することができます(831条2項)。
重要メモ
- ・「決議取消しの訴え(831条):①招集手続・決議方法の法令・定款違反②決議内容の定款違反③特別利害関係人の議決権行使で著しく不当な決議——株主等が3ヶ月以内に提訴」
- ・取消事由(831条1項):①招集手続・決議方法の法令または定款違反(著しく不公正を含む)②決議内容が定款に違反③特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議
- ・提訴権者:株主・取締役・(監査役設置会社では)監査役
- ・提訴期間:決議の日から3ヶ月以内——除斥期間(過ぎたら提訴不可)
- ・裁量棄却(831条2項):裁判所は違反が軽微で結果に影響しないと判断すれば棄却できる(決議取消訴訟のみ)
❻決議不存在確認の訴え・決議無効確認の訴え
簡単にいうと
決議取消しより重大な問題がある場合の2つの訴えです。提訴期間の制限がないことが特徴です。
株主総会の決議に関して、より重大な問題がある場合には決議不存在確認の訴えまたは決議無効確認の訴えを提起することができます(830条)。
■ 3つの訴えの比較
決議取消しの訴え:提訴期間3ヶ月以内・提訴権者は株主等に限定あり・裁量棄却あり
決議不存在確認の訴え:提訴期間の制限なし(いつでも可)・提訴権者の制限なし(誰でも可)・裁量棄却なし
決議無効確認の訴え:提訴期間の制限なし(いつでも可)・提訴権者の制限なし(誰でも可)・裁量棄却なし
■ 各訴えの対象
決議不存在確認の訴え:決議自体が存在しないとき(例:招集手続が全くされていないなど)
決議無効確認の訴え:決議の内容が法令に違反するとき
重要メモ
- ・「決議不存在確認(830条1項):決議が物理的に存在しない場合・決議無効確認(830条2項):決議内容が法令に違反する場合——いずれも提訴期間なし・誰でも提訴可・裁量棄却なし」
- ・決議不存在確認の訴え(830条1項):決議が物理的に行われていない等、決議自体が存在しない場合
- ・決議無効確認の訴え(830条2項):決議の内容が会社法等の強行規定に違反する場合
- ・取消訴訟との違い:不存在・無効は①提訴期間なし(いつでも可)②提訴権者の制限なし(誰でも)③裁量棄却規定なし
- ・判決の効力:対世効——確定判決は第三者にも効力を及ぼす
❶取締役
簡単にいうと
取締役は株式会社の業務執行を担う役員です。選任方法・任期・資格の要件を押さえましょう。
取締役とは役員として株式会社の業務執行を担う者です。取締役役会が設置されている場合は業務執行の意思決定機関としての役割も担います。
■ 取締役の選任
株主総会の普通決議(329条1項)。
■ 取締役の任期
原則として選任後2年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(332条1項)。ただし非公開会社では10年まで伸長できます。
■ 取締役の資格
公開会社では取締役の資格を株主に限定することができません(331条2項)。
■ 員数
取締役役会設置会社では3人以上必要(331条5項)。
■ 取締役の役割(取締役役会の有無による違い)
取締役役会を置かない会社:各取締役が会社の業務を執行します(348条1項)。
取締役役会設置会社:業務執行の意思決定を行います(362条1項)。
重要メモ
- ・「取締役の選任:株主総会普通決議(329条1項)・任期:原則2年(公開会社は短縮不可)・取締役会設置会社では3人以上必要(331条5項)」
- ・取締役の選任(329条1項):株主総会の普通決議で選任——解任も普通決議(ただし正当事由なければ損害賠償)
- ・取締役の任期(332条1項):原則2年(選任後2年以内の最終の定時株主総会終結時まで)
- ・公開会社の任期(332条3項):短縮も延長もできない——非公開会社は10年まで延長可
- ・取締役会設置会社の員数(331条5項):3人以上必要
- ・取締役の資格(331条1項2号・2項):成年被後見人・被保佐人等は不可・公開会社では株主に限定不可
❷取締役会
簡単にいうと
取締役役会は重要事項の決定と代表取締役の監督を行う機関です。招集・決議方法を押さえましょう。
取締役役会は、会社の業務執行の決定や取締役の職務執行を監督、代表取締役の選定・解職を行います(362条2項)。
■ 取締役役会の招集
1週間前までに取締役全員に通知を発する(368条)。取締役全員の同意があれば招集手続を省略できます。
■ 取締役役会の議決(369条1項・2項)
議決は取締役の過半数が出席(定足数)し、出席した取締役の過半数の賛成で決議。特別利害関係を有する取締役は議決権を行使できない(369条2項)。
■ 取締役役会の専決事項(362条4項)
①重要な財産の処分および譲受け、②多額の借財、③支配人その他の重要な使用人の選任および解職、④支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止、⑤社債の募集 など。これらは代表取締役等に委任できません。

取締役会の構成と権限
重要メモ
- ・「取締役会の権限(362条2項):①業務執行の意思決定②取締役の職務執行監督③代表取締役の選定・解職——専決事項は取締役会に委任不可」
- ・取締役会の権限(362条2項):①業務執行の決定②取締役の職務執行の監督③代表取締役の選定・解職
- ・取締役会の専決事項(362条4項):①重要な財産の処分・譲受け②多額の借財③支配人等の重要な使用人の選解任④支店等の重要な組織の設置等⑤社債の募集——委任不可
- ・招集手続(368条):1週間前に通知(全員の同意で省略可)
- ・議決(369条):取締役1人1議決権・過半数の出席で過半数の賛成——特別利害関係人は議決権行使不可
- ・代表取締役の職務報告(363条2項):3ヶ月に1回以上、職務執行状況を取締役会に報告する義務
❸特別取締役による議決
簡単にいうと
取締役の数が6人以上かつ社外取締役1人以上の会社では、3人の特別取締役で重要事項を決定できます。
取締役役会は一定の事項の決定を代表取締役に委任することができますが、重要な財産の処分や多額の借財については取締役役会で決定しなければなりません(362条4項)。そこで、あらかじめ会社が選任した特別取締役に重要な財産の処分や多額の借財について決定させることができるような規定が設けられています(373条1項)。
■ 特別取締役制度の要件
①取締役の数が6人以上の取締役役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く)であること
②取締役のうち最低1人は社外取締役(過去にその会社や子会社の経営に携わったことのない者)であること
特別取締役は取締役の中から3人以上選任しなければなりません。
■ 特別取締役だけで決定できる事項(373条1項)
①重要な財産の処分および譲受けと②多額の借財の2つのみです。
重要メモ
- ・「特別取締役制度(373条):取締役6人以上(うち1人以上が社外取締役)の取締役会設置会社が、3人以上の特別取締役に「重要な財産処分」と「多額の借財」の決定を委任できる」
- ・特別取締役の要件(373条1項):①取締役の数が6人以上②うち1人以上が社外取締役
- ・特別取締役の選任(373条1項):3人以上を選任しなければならない
- ・決定できる事項:①重要な財産の処分・譲受け②多額の借財——この2事項のみ
- ・目的:取締役が多い大企業で毎回全員が集まらなくてもすむように機動的な意思決定を可能にする
❹代表取締役
簡単にいうと
会社を代表して業務を行う代表取締役の権限と選定・解職方法を押さえましょう。
代表取締役は、社内的には業務を執行し、社外的には会社を代表する権限を持つ機関です(349条4項、363条1項1号)。
■ 代表取締役の選定
取締役役会を置かない会社:取締役全員が会社を代表するので選定は不要
取締役役会設置会社:取締役の中から取締役役会決議で代表取締役を選定(362条2項3号)
■ 代表取締役の終任
取締役役会設置会社における退任:代表取締役は取締役を退任すると当然に代表取締役の地位を失います。ただし代表取締役を退任しても当然には取締役の地位を失いません(別々の地位)。
■ 代表取締役の解職
取締役役会設置会社では取締役役会決議によっていつでも代表取締役を解職することができます(362条2項3号)。
重要メモ
- ・「代表取締役:社内では業務執行・社外では会社を代表(349条4項)——取締役会設置会社では取締役会決議で選定・取締役を退任すると当然に代表取締役も退任」
- ・代表取締役の選定(362条3号):取締役会設置会社では取締役会の決議で取締役の中から選定
- ・代表取締役の権限(349条4項):会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為を行う権限——包括的代理権
- ・代表権の制限(349条5項):代表取締役の代表権への制限は善意の第三者に対抗できない
- ・代表取締役の退任:取締役を退任すると当然に代表取締役の地位も失う——代表取締役のみ退任しても取締役の地位は残る
- ・代表取締役の解職(362条2項3号):取締役会の決議で代表取締役を解職できる
❶競業取引と利益相反取引
簡単にいうと
取締役が自分の利益のために会社と競合したり不利な取引をすることを制限するルールです。
取締役は会社に対して様々な義務を負いますが、特に①競業取引と②利益相反取引については会社法上規制がかけられています。
■ 競業取引(356条1項1号・365条1項)
取締役が会社と同じ業務を行う場合、事前に会社(取締役役会設置会社では取締役役会)の承認を受けなければなりません。承認を受けた場合でも損害賠償責任を負います(423条1項)。損害賠償責任は総株主の同意で全部免除できます(424条)。また、株主総会の特別決議等で一部免除することもできます(425条)。
■ 利益相反取引(356条1項2号・3号)
直接取引(取締役が自己または第三者のために会社と取引する)と間接取引(会社が取締役の債務を保証するなど取締役の利益となる取引)について、事前に会社の承認が必要です(356条1項2号・3号)。利益相反取引をした取締役は、承認の有無にかかわらず損害賠償責任を負います(423条1項)。また、直接利益相反取引は無過失でも責任を負います(428条1項)。

競業取引と利益相反取引
重要メモ
- ・「競業取引(356条1項1号):会社と同種の取引——事前に取締役会(または株主総会)の承認必要・承認なくても取引は有効だが損害賠償責任あり/利益相反取引(356条1項2号・3号):事前承認が必要・承認なければ無効・直接取引の取締役は無過失責任」
- ・競業取引の規制(356条1項1号・365条1項):取締役が自己または第三者のために会社の事業部類に属する取引——事前に取締役会(または株主総会)の承認が必要
- ・競業取引の効果:承認なしに行っても取引自体は有効——取締役個人の損害賠償責任のみ
- ・利益相反取引(356条1項2号・3号):直接取引(会社と取締役が取引)・間接取引(会社が取締役の債務の保証等)——事前に取締役会(または株主総会)の承認が必要
- ・利益相反取引の効果:承認なしは無効(競業と異なり取引無効)・承認があっても損害賠償責任
- ・直接取引の取締役の責任(428条1項):無過失責任——承認があっても無過失を主張できない・総株主の同意による一部免除も不可(428条2項)
取締役の第三者に対する責任
簡単にいうと
取締役が悪意または重過失で行動して第三者に損害を与えた場合、賠償責任を負います。
取締役は、その職務を行う際に悪意または重過失があったときは、第三者に生じた損害を賠償する責任を負います(429条1項)。
■ ポイント
①対象:悪意のみならず重過失によって第三者に損害を与えた場合でも責任を負います(429条1項)。
②免除の可否:第三者に対する損害賠償責任については、総株主の同意があっても免除することができません。これは取締役の会社への任務懈怠責任(総株主の同意で免除可)と対比して押さえておきましょう。
③間接損害と直接損害:会社に損害が生じた結果として株主や債権者に損害が及んだ場合(間接損害)も429条が適用される場合があります。
重要メモ
- ・「取締役の第三者への責任(429条1項):悪意または重大な過失で職務を行い第三者に損害を与えた場合→損害賠償責任——総株主の同意があっても免除不可」
- ・取締役の第三者への責任(429条1項):取締役がその職務を行うにつき悪意または重大な過失があるとき第三者が損害を受けた場合の賠償責任
- ・法的性質:特別な法定責任——通常の不法行為(民法709条)とは別の責任(軽過失でも免責されない点)
- ・第三者:直接損害(取締役の行為で直接損害を受けた者)・間接損害(会社が損害→会社財産が減少→株主・債権者が損害)ともに対象
- ・免除不可:総株主の同意があっても免除できない——第三者保護の趣旨
❶監査役
簡単にいうと
取締役が正しく仕事をしているかを株主の代わりに監視するのが監査役です。任期4年が重要です。
監査役は、取締役の活動が適正かつ適法に行われているかを株主に代わって監査する機関です(381条1項)。
■ 監査役の選任
株主総会の普通決議(329条1項)。
■ 監査役の解任
株主総会の特別決議が必要(339条1項・309条2項7号)。
■ 任期
選任後4年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(336条1項)。非公開会社では10年まで伸長可能。任期の短縮はできません(取締役と異なる点)。
■ 資格
公開会社では監査役の資格を株主に限定することができません(335条1項・2項)。
■ 員数
1人でもよい。ただし公開会社かつ大会社では3人以上かつ半数以上は社外監査役である必要があります(335条3項)。

監査役の選任・解任・任期
重要メモ
- ・「監査役:取締役の職務執行を監査する機関——選任は普通決議・任期4年(公開会社は短縮不可)・解任は特別決議」
- ・監査役の選任(329条1項):株主総会の普通決議で選任
- ・監査役の任期(336条1項):4年(選任後4年以内の最終の定時株主総会終結時まで)——公開会社は短縮不可
- ・監査役の解任(339条・309条2項7号):株主総会の特別決議——取締役(普通決議)より厳格
- ・監査役の権限(381条):取締役の職務執行の監査・会計監査——業務監査も行う(会計参与は会計監査のみ)
- ・監査役の員数:原則1人以上——公開大会社(監査役会設置会社)では3人以上・半数以上が社外監査役
❷会計監査人
簡単にいうと
大会社や公開会社では外部の公認会計士や監査法人が会計監査を行います。
会計監査人は、株式会社の計算書類等の作成が適正に行われているかを監査する機関です(396条1項)。
■ 会計監査人の選任
株主総会の普通決議(329条1項)。
■ 任期
選任後1年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(338条1項)。ただし定時株主総会で別段の決議がない場合は再任されたものとみなされます(338条2項)。
■ 資格
公認会計士または監査法人であること(337条1項)。税理士・税理士法人はなることができません。
■ 員数
1人でもよい。
■ 設置義務
公開会社かつ大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社・2条6号)では会計監査人の設置が必須です(328条2項参照)。

会計監査人の選任・任期・資格
重要メモ
- ・「会計監査人:計算書類等の監査をする専門家(公認会計士・監査法人のみ)・任期1年だが決議なければ自動再任(338条2項)・大会社は設置義務」
- ・会計監査人の資格(337条1項):公認会計士または監査法人のみ
- ・会計監査人の選任(329条1項):株主総会の普通決議で選任
- ・会計監査人の任期(338条1項):1年——ただし定時株主総会で再任の決議がなければ自動的に再任とみなされる(338条2項)
- ・会計監査人の設置義務(328条):大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)は設置義務あり
- ・会計監査人の業務:計算書類(貸借対照表・損益計算書等)の監査——業務監査は行わない
❶指名委員会等設置会社
簡単にいうと
通常の株式会社とは異なる特殊な会社形態です。3つの委員会(指名・監査・報酬)と執行役が置かれます。
通常の株式会社(公開会社)は、株主総会・取締役役会・監査役を置くのが基本ですが、指名委員会等設置会社では、①指名委員会、②監査委員会、③報酬委員会の3つの委員会が設置され、それぞれ取締役役会から選ばれることになります。
■ 指名委員会等設置会社の特徴
①監査役を置いてはなりません(327条4項)
②各委員会の取締役の過半数は社外取締役でなければなりません
③業務の執行は取締役役会ではなく執行役(代表執行役)が行います
■ 3委員会の役割
指名委員会:取締役の選任・解任に関する議案の内容を決定する委員会
監査委員会:執行役等の職務執行の監査、監査報告の作成などを行う委員会
報酬委員会:取締役個別の報酬内容の決定などを行う委員会

指名委員会等設置会社の機関構造
重要メモ
- ・「指名委員会等設置会社:①指名委員会②監査委員会③報酬委員会の3委員会を設置——各委員会は3人以上・半数以上が社外取締役・業務執行は「執行役」が担当」
- ・3委員会の設置(400条):指名委員会・監査委員会・報酬委員会——各委員会は取締役の中から選任
- ・各委員会の構成(400条3項):3人以上・過半数が社外取締役
- ・指名委員会の権限(404条1項):株主総会に提出する取締役の選任・解任に関する議案の内容を決定
- ・報酬委員会の権限(404条3項):取締役・執行役の個別報酬の内容を決定
- ・執行役(418条):取締役会から委任された業務執行の意思決定と業務執行を行う——代表執行役が会社を代表
- ・監査役の不設置:監査委員会が監査役の機能を果たす——指名委員会等設置会社では監査役を置けない
❷監査等委員会設置会社
簡単にいうと
指名委員会等設置会社の普及が進まなかった反省から生まれた会社形態です。監査等委員会のみ設置します。
監査等委員会設置会社は、日本で指名委員会等設置会社の導入が進まなかった点を考慮して、監査等委員会の設置のみ行えばよいという特徴を持つ会社形態です。
■ 監査等委員会設置会社の特徴
①取締役役会と監査等委員会が設置されます
②監査等委員会は、監査等委員である取締役3人以上で構成され、その過半数は社外取締役でなければなりません(331条6項)
③監査等委員ではない取締役と、監査等委員である取締役とは別々に株主総会で選任します
④監査等委員会設置会社には監査役を置いてはなりません
⑤監査等委員である取締役の任期は2年(短縮不可)、監査等委員でない取締役の任期は1年
■ 指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社の比較
指名委員会等設置会社:3委員会(指名・監査・報酬)設置、執行役が業務執行
監査等委員会設置会社:監査等委員会のみ設置、代表取締役が業務執行

監査等委員会設置会社
重要メモ
- ・「監査等委員会設置会社:指名委員会・報酬委員会を設置せず「監査等委員会」のみ設置——日本企業向けの簡略版・監査役不要」
- ・監査等委員会の設置(399条の2以下):監査等委員(取締役)で構成される委員会——3人以上・過半数が社外取締役
- ・指名委員会等設置会社との違い:指名委員会・報酬委員会の設置が不要——より設置ハードルが低い
- ・監査等委員の任期(331条の2):2年——短縮不可(通常の取締役の任期とは異なる)
- ・意見陳述権(342条の2等):監査等委員会は取締役の人事・報酬について株主総会で意見を陳述できる
まとめ
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