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テキスト/商法/第4節 機関

第4節 機関

第2章 会社法

会社法における機関とは、会社の意思決定や業務執行、監督を行う組織のことです。株主総会、取締役、監査役などがこれに該当します。この節では、各機関の権限・責任・相互関係を学び、会社がどのように運営されるかの基本構造を理解します。試験では機関設計の組み合わせや各機関の権限範囲が頻出です。

1

株主総会

295-325

株主総会とは、株主で構成される会社の最高意思決定機関です。会社法や定款で定められた重要事項を決議します。普通決議(過半数の賛成)と特別決議(3分の2以上の賛成)があり、事項の重要度により使い分けられます。

具体例

A株式会社の株主Bさんは、総会で新規事業への進出議案に賛成票を投じました。議決権の過半数が賛成したため可決されました。一方、定款変更は特別決議が必要で、3分の2以上の賛成が必要でした。

要件

  • 株主への招集通知(原則2週間前)
  • 定足数の充足(普通決議は過半数、特別決議は議決権の過半数の株主出席)
  • 議決要件の充足

効果・結論

  • 決議に基づき会社の意思が確定
  • 取締役・監査役の選任・解任が可能
  • 定款変更、合併等の組織再編が実行可能

条文(第295-325条)

309条1項:株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。309条2項:特別決議は、議決権の過半数の株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する。

場合
効果
普通決議(原則的事項)
議決権過半数の株主出席、出席株主の議決権過半数で可決
特別決議(定款変更、合併等)
議決権過半数の株主出席、出席株主の議決権3分の2以上で可決
特殊決議(株式譲渡制限会社の定款変更等)
議決権の過半数かつ総株主の半数以上の賛成

試験のポイント

  • 普通決議と特別決議の要件の違いを正確に覚える(定足数と賛成要件)
  • 株主総会の決議取消しの訴え(瑕疵ある決議、3か月以内)と決議無効・不存在確認の訴えの違い
  • 議決権の代理行使は株主に限られない(他人でも可)が、書面による委任状が必要
2

取締役・取締役会

348-373

取締役は会社の業務執行を担う機関です。取締役会は3名以上の取締役で構成され、重要な業務執行の決定と取締役の職務執行の監督を行います。代表取締役は会社を代表し対外的な法律行為を行います。社外取締役は経営の透明性確保のため設けられます。

具体例

A株式会社の取締役Bさんは、重要な設備投資案件を取締役会に提案しました。取締役会で過半数の賛成を得て可決され、代表取締役Cさんが契約書に署名しました。

要件

  • 取締役の選任は株主総会の普通決議
  • 取締役会の招集通知(原則1週間前)
  • 取締役会決議は過半数の賛成

効果・結論

  • 業務執行の決定権限を持つ
  • 代表取締役は会社を代表して契約等を行う
  • 取締役は会社に対して善管注意義務・忠実義務を負う

条文(第348-373条)

362条1項:取締役会は、すべての取締役で組織する。362条2項:取締役会は、次に掲げる職務を行う。一 取締役会設置会社の業務執行の決定 二 取締役の職務の執行の監督 三 代表取締役の選定及び解職

場合
効果
取締役会設置会社
取締役会が業務執行を決定、各取締役への委任は原則不可
取締役会非設置会社
各取締役が業務執行権限を持つ

試験のポイント

  • 取締役会設置会社では、原則として取締役会決議で業務執行を決定(各取締役への委任は不可)
  • 代表取締役の行為は会社の行為とみなされ、制限を加えても善意の第三者に対抗できない(表見代表)
  • 社外取締役の要件(過去10年間その会社や子会社の業務執行者でないこと等)を正確に
3

監査役・監査役会

381-389

監査役は取締役の職務執行を監査する機関です。取締役会への出席義務があり、不正行為の報告義務を負います。監査役会は3名以上の監査役(半数以上は社外監査役)で構成され、監査の方針を決定します。会計監査と業務監査を行います。

具体例

A株式会社の監査役Dさんは、取締役会に出席し、取締役の業務執行をチェックしました。不適切な取引を発見したため、取締役会で意見を述べ、株主総会に報告しました。

要件

  • 監査役の選任は株主総会の普通決議
  • 監査役の任期は4年(取締役は2年)
  • 監査役は取締役や支配人を兼任できない

効果・結論

  • 取締役の職務執行を監査し、違法行為を差し止め可能
  • 株主総会で監査報告を行う
  • 取締役の選任・解任・報酬について意見陳述権を持つ

条文(第381-389条)

381条1項:監査役は、取締役の職務の執行を監査する。これには、取締役会への出席義務及び意見陳述義務が含まれる。

場合
効果
監査役会設置会社
3名以上の監査役、半数以上は社外監査役、常勤監査役1名以上
監査役設置会社(監査役会なし)
監査役1名以上、社外要件なし

試験のポイント

  • 監査役の任期は取締役より長い(4年)ことに注意
  • 監査役は取締役の違法行為を差し止める権限があるが、経営判断の適否には介入できない
  • 監査役会設置会社では常勤監査役を置く必要がある
4

機関設計と八幡製鉄政治献金事件

326-327

機関設計とは、会社の規模や公開性に応じて、株主総会・取締役・監査役等の組み合わせを選択することです。公開会社は取締役会・監査役(会)が必須、非公開会社は柔軟な設計が可能です。八幡製鉄政治献金事件は、会社の政治献金が定款の目的の範囲内かが争われた重要判例です。

具体例

非公開会社のA社は取締役1名のみで運営していますが、上場を目指すB社は取締役会・監査役会・会計監査人を設置しました。

要件

  • 公開会社:取締役会・監査役(会)設置義務
  • 大会社:会計監査人設置義務
  • 非公開会社:取締役1名以上で可

効果・結論

  • 機関設計により会社の統治体制が確定
  • 不適切な機関設計は登記できない
  • 八幡製鉄判決により、政治献金は定款目的の範囲内と解される

条文(第326-327条)

327条1項:株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければならない。2項:公開会社は取締役会を設置しなければならない。

場合
効果
非公開会社(小規模)
取締役1名以上、監査役任意
公開会社(非大会社)
取締役会・監査役必須
大会社(公開会社)
取締役会・監査役会・会計監査人必須
監査等委員会設置会社
監査等委員である取締役と他の取締役を分離、監査役不要
指名委員会等設置会社
指名・監査・報酬の3委員会+執行役、監査役不要

試験のポイント

  • 公開会社と非公開会社の機関設計の違いを表で整理する
  • 監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社の特徴(執行役の設置等)
  • 八幡製鉄判決:会社の政治献金は、社会通念上相当な範囲内であれば定款目的の範囲内として許容される

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
株主総会
最高意思決定機関、普通決議と特別決議の区別
決議要件の数字(過半数、3分の2)を混同しない
取締役・取締役会
業務執行の決定と監督、代表取締役の代表権
取締役会設置会社では各取締役への委任は原則不可
監査役・監査役会
取締役の職務執行を監査、任期4年
経営判断の適否には介入できない(違法性監査のみ)
機関設計
公開会社は取締役会・監査役必須、非公開会社は柔軟
会社の規模・公開性で必須機関が変わる
八幡製鉄政治献金事件
政治献金は社会通念上相当な範囲なら定款目的の範囲内
会社の権利能力の範囲に関する基本判例

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