第2節 株式会社の設立
第2章 会社法
株式会社の設立は、会社法のなかでもよく出題される分野です。設立には、発起人だけがお金を出す発起設立と、発起人以外にも出資を募る募集設立の2つがあります。途中までは同じ流れで、株主を募集するところから枝分かれします。この節では、まず全体の流れを地図として押さえ、そのうえで発起設立と募集設立をそれぞれ順に追い、最後に設立に関わった人が負う4つの責任を確認します。自分が会社をつくるつもりで読むと、ばらばらの知識がつながります。
会社設立の手続
会社法25条簡単にいうと
会社をつくる道は2本あります。発起人だけで出資するか、外からも出資者を募るかの違いです。
株式会社を立ち上げるには、事前に決めておくことがたくさんあります。会社法は設立の方法を2つ用意しました(会社法25条1項)。発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける発起設立と、発起人が引き受けたうえでさらに引受人を募集する募集設立です。
途中までは共通の流れ
どちらの方法でも、最初の道のりは同じです。発起人が定款を作成し(26条1項)、公証人の認証を受けます(30条1項)。次に、設立時発行株式に関する事項を発起人全員の同意で決めます(32条1項)。そして発起人が株式を引き受け(25条2項)、出資を履行します(34条1項)。そして最後は、本店の所在地で設立の登記をすることで会社が成立します(49条)。
枝分かれするところ
違いが出るのは、出資の履行が終わったあとです。発起設立では、発起人の議決権の過半数で設立時取締役等を選び(40条1項)、その設立時取締役が設立手続を調査して(46条1項)登記に進みます。募集設立では、株主を募集して申込みと割当てを行い(57条〜60条)、引受人に払込みをさせたうえで(63条1項)、創立総会を開きます(65条1項)。創立総会では設立事項の報告、設立時取締役等の選任、調査結果の報告などを行い、それから登記に進みます。
どちらを選ぶかの意味
募集設立は外部から資金を集められる反面、創立総会を開いたり払込金の保管証明を用意したりと手続が重くなります。実務で多いのは手続の軽い発起設立です。試験では、どの行為がどちらの方法に固有のものかを問う出題が繰り返されます。
具体例
Aが1人で会社をつくり、資本金はすべてA自身が出すというときは発起設立です。Aが自分でも出資しつつ、知人BとCからも出資を募って株主になってもらうときは募集設立になり、創立総会を開く必要が生じます。

株式会社の設立手続
ポイント整理
- ・発起人が定款を作成して公証人の認証を受けること(26条1項・30条1項)
- ・各発起人が設立時発行株式を1株以上引き受けること(25条2項)
- ・本店の所在地で設立の登記をすること(49条)
効果
- ・設立の登記が完了したときに株式会社が成立する(49条)
- ・発起設立では設立時取締役を発起人が選任する(40条1項)
- ・募集設立では創立総会の開催が必要になる(65条1項)
条文(会社法25条)
会社法25条:株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。一 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法 二 発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法。2 各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。
重要メモ
- ・設立には発起設立と募集設立の2つがあることがポイント(25条1項)
- ・定款作成から出資の履行までは両方に共通する流れ
- ・創立総会を開くのは募集設立だけ(65条1項)
- ・どちらの方法でも各発起人は1株以上引き受ける(25条2項)
- ・会社が成立するのは本店所在地での設立登記の時点(49条)
定款の作成
会社法26条・27条・28条・30条・33条簡単にいうと
定款は会社の基本ルールを書いた設計図です。書き漏らすと定款そのものが効力を持ちません。
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員が署名または記名押印しなければなりません(会社法26条1項)。作成した定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じません(30条1項)。ここでいう発起人とは、実際に設立の作業をしたかどうかではなく、定款に発起人として署名した人を指します。作業を手伝っただけで署名していない人は発起人ではありません。
絶対的記載事項
定款に必ず書かなければならない事項が5つあります(27条)。目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所です。これに発行可能株式総数を加えた6つが、会社の骨格になります。ただし発行可能株式総数だけは扱いが別で、定款の認証時に決まっていなくてもかまいません。発起設立では発起人全員の同意によって(37条1項)、募集設立では創立総会の決議によって(98条)、会社が成立するまでに定めれば足ります。
変態設立事項
発起人が会社の財産を不当に減らしてしまうおそれのある4つの事項は、定款に記載しなければ効力を生じません(28条)。金銭以外の財産で出資する現物出資、会社の成立を条件に財産を譲り受ける財産引受、発起人が受ける報酬その他の特別の利益、会社が負担する設立費用の4つです。これらは変態設立事項と呼ばれ、定款に書いたうえで、原則として裁判所が選任する検査役の調査を受けなければなりません(33条1項・2項)。発起人が会社を食い物にするのを防ぐための仕掛けです。
検査役の調査がいらない場合
毎回検査役を選任していては手間がかかりすぎるので、3つの例外が置かれています(33条10項1号〜3号)。第一に、現物出資財産等について定款に記載した価額の総額が500万円を超えない場合。第二に、市場価格のある有価証券で、定款記載の価額がその市場価格を超えない場合。第三に、その価額が相当であることについて弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人・税理士または税理士法人の証明を受けた場合です。第三の場合で対象が不動産のときは、証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価も必要になります。なお、発起人自身や財産の譲渡人、設立時取締役などはこの証明をすることができません(33条11項)。
具体例
AとBが会社をつくり、Aが所有する営業車(定款記載の価額300万円)を現物出資することにしました。現物出資は変態設立事項なので定款への記載が必要です。ただし記載した価額の総額が500万円を超えないため、検査役の調査は不要です(33条10項1号)。同じ車を800万円と記載したときは、税理士等の証明を受けるなどしない限り検査役の調査が要ります。

定款の作成と認証
ポイント整理
- ・発起人が定款を作成し、全員が署名または記名押印すること(26条1項)
- ・公証人の認証を受けること(30条1項)
- ・27条各号の絶対的記載事項をすべて記載すること
- ・変態設立事項を設けるときは定款に記載すること(28条)
効果
- ・公証人の認証を受けなければ定款は効力を生じない(30条1項)
- ・絶対的記載事項を欠く定款は無効となる
- ・変態設立事項は定款に記載しなければ効力を生じない(28条)
- ・変態設立事項には原則として検査役の調査が必要(33条1項)
条文(会社法26条・27条・28条・30条・33条)
会社法27条:株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。一 目的 二 商号 三 本店の所在地 四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 五 発起人の氏名又は名称及び住所
重要メモ
- ・定款は公証人の認証がなければ効力を生じない点がポイント(30条1項)
- ・発起人かどうかは定款に署名したかどうかで決まる
- ・発行可能株式総数は認証時でなく会社成立時までに定めればよい(37条1項・98条)
- ・変態設立事項は現物出資・財産引受・発起人の報酬・設立費用の4つ(28条)
- ・検査役の調査は500万円以下・市場価格ある有価証券・専門家の証明のいずれかで不要(33条10項)
設立時発行株式に関する事項の決定
会社法32条1項・25条2項簡単にいうと
定款の認証が終わったら、次は誰が何株をいくらで引き受けるかを決めます。ここは発起人の全員一致です。
定款の認証を受けたあと、発起人は設立時に発行する株式について具体的な中身を決めます。決めるのは、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、その株式と引換えに払い込む金銭の額、そして成立後の株式会社の資本金および資本準備金の額に関する事項です(会社法32条1項各号)。定款にすでに定めがある事項は、あらためて決める必要はありません。
発起人全員の同意が必要
この決定には発起人全員の同意が要ります(32条1項柱書)。過半数ではなく全員一致である点が出題されます。誰が何株を持つかは会社の支配関係を直接左右するので、多数決で押し切れないようにしたものです。種類株式発行会社をつくる場合で、その設立時発行株式に一定の定款の定めがあるときも、やはり全員の同意で内容を定めます(32条2項)。
各発起人は1株以上
忘れてはならないのが、各発起人は設立に際して設立時発行株式を1株以上引き受けなければならないという原則です(25条2項)。これは発起設立か募集設立かを問いません。発起人のうち1人だけが引き受ければよい、という選択肢が過去に出題されていますが誤りです。発起人になる以上、全員が少なくとも1株の株主になります。
手続のどこに位置するか
この決定は、定款の認証が終わったあと、発起人が株式を引き受けて出資を履行する前の段階にあります。前後の順番を入れ替えた出題もあるので、定款認証→設立時発行株式の決定→株式引受と出資の履行、という並びで覚えてください。
具体例
発起人A・B・Cの3人で会社を設立し、設立時発行株式を300株、1株1万円と決める場面です。この決定にはA・B・C全員の同意が必要で、Aとbの2人が賛成してCが反対していれば決められません。また、Cも最低1株は引き受けることになります。
ポイント整理
- ・定款の認証が終わっていること
- ・定款に定めのない事項について、発起人全員の同意があること(32条1項)
効果
- ・発起人が引き受ける株式数・払込金額・資本金等に関する事項が確定する
- ・全員の同意を欠く決定は効力を生じない
- ・各発起人は1株以上の設立時発行株式を引き受ける(25条2項)
条文(会社法32条1項・25条2項)
会社法32条1項:発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。一 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数 二 前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額 三 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
重要メモ
- ・設立時発行株式に関する事項は発起人全員の同意で決めることがポイント(32条1項)
- ・決める内容は株式数・払込金額・資本金および資本準備金に関する事項
- ・定款にすでに定めがある事項は改めて決める必要がない
- ・各発起人は1株以上引き受ける。発起設立でも募集設立でも同じ(25条2項)
- ・順番は定款認証→設立時発行株式の決定→株式引受・出資の履行
発起人の株式引受・発起人による出資の履行
会社法34条・36条簡単にいうと
引き受けたら全額を払い込みます。分割払いは認められず、払わなければ株主になる権利を失います。
設立時発行株式に関する事項が決まったら、発起人は引き受けた株式について出資を履行します。金銭出資であれば全額を払い込み、現物出資であれば財産の全部を給付しなければなりません(会社法34条1項)。一部だけ払っておいてあとは会社成立後に、という扱いは認められません。払込みは、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所で行います(34条2項)。
払わない発起人が出たとき
出資を履行しない発起人がいる場合、ほかの発起人は期日を定めて、その期日までに履行するよう通知しなければなりません(36条1項)。この通知は期日の2週間前までにする必要があります(36条2項)。通知を受けた発起人が期日までに出資を履行しないときは、その株式について株主となる権利を失います(36条3項)。ここが試験の急所です。払わなかった瞬間に当然失権するのではなく、通知と期日の経過という段階を踏んで初めて失権します。
募集設立の引受人との違い
同じ「払わなかった」でも、募集設立で株式を引き受けた引受人の場合は、期日までに払込みをしないと当然に株主となる権利を失います(63条3項)。通知は要りません。発起人は会社をつくる張本人なので猶予が与えられ、外から参加した引受人にはその猶予がない、と整理すると覚えやすくなります。
現物出資ができるのは発起人だけ
もう1つの違いが出資の方法です。発起人は現物出資ができますが、募集設立の引受人は金銭で払い込まなければなりません(63条1項)。引受人が現物出資できるかを問う出題が出たら、できないと答えます。
具体例
発起人A・B・Cのうち、Cが100万円の払込みをしないままでいます。AとBは期日を定め、その2週間前までにCへ通知しました。それでもCが期日までに払い込まなければ、Cは株主となる権利を失います。このときAとBがCの分を引き受け直す義務はありません。

出資の履行と失権
ポイント整理
- ・発起人が設立時発行株式を引き受けていること(25条2項)
- ・金銭出資は全額の払込み、現物出資は全部の給付をすること(34条1項)
- ・払込みは発起人が定めた銀行等の払込取扱場所で行うこと(34条2項)
効果
- ・出資の履行をした発起人は設立時発行株式の株主となる権利を得る
- ・履行しない発起人には期日を定めた通知がされる(36条1項・2項)
- ・期日までに履行しないと株主となる権利を失う(36条3項)
条文(会社法34条・36条)
会社法34条1項:発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。
重要メモ
- ・払わなかっただけでは当然には失権しないことに注意(36条)
- ・出資は全額の払込みまたは全部の給付。分割は認められない(34条1項)
- ・失権には期日を定めた通知と期日の経過が必要(36条1項〜3項)
- ・募集設立の引受人は通知なしに当然失権する(63条3項)
- ・現物出資ができるのは発起人だけ。引受人は金銭のみ(63条1項)
設立時役員等の選任・調査
会社法40条・46条・47条簡単にいうと
出資が済んだら会社の役員を決めます。ただし設立時取締役ができることは、思っているよりずっと少ないです。
発起人の出資が終わると、設立時取締役などの設立時役員等を選任します。選任は発起人の議決権の過半数で決めます(会社法40条1項)。ここでいう議決権は、出資の履行をした設立時発行株式1株につき1個です(40条2項)。発起人の頭数の過半数ではありません。3人の発起人がいても、持株数が大きく違えば1人で過半数を取ることもあります。
設立時取締役ができること
設立時取締役という名前から幅広い権限を想像しがちですが、できることは限られています。第一に、設立手続の調査です。現物出資財産等の価額が相当であること、専門家の証明が相当であること、出資の履行が完了していること、設立の手続が法令や定款に違反していないことを調べます(46条1項)。第二に、設立の登記の申請です。第三に、取締役会設置会社であれば設立時代表取締役を選定し、また解職することです(47条1項・2項)。この選定と解職は設立時取締役の過半数で決めます(47条3項)。
「調査」であって「執行」ではない
設立時取締役の役割は調査であり、設立の業務を執行するのは発起人です。ここを入れ替えた出題が繰り返されています。「設立時取締役が選任されたら、設立の業務は設立時取締役が執行する」という文を見たら誤りだと判断してください。調査の結果、法令や定款に違反する事項や不当な事項が見つかったときは、設立時取締役は発起人に通知します(46条2項)。会社成立後の取締役のように、自分で是正して業務を進めるわけではありません。
募集設立との違い
募集設立では、設立時取締役等の選任は創立総会の決議で行います(88条1項)。調査事項もほぼ同じですが、報告先が発起人ではなく創立総会になります(93条2項)。誰が選び、誰に報告するのかという対応関係を整理しておくと混乱しません。
具体例
発起人A・B・Cが、それぞれ60株・30株・10株を引き受けたとします。設立時取締役の選任はA1人の賛成で決まります。議決権が1株1個で、Aが過半数の60個を持っているからです。頭数ならBとCの2人で過半数ですが、それでは決まりません。
ポイント整理
- ・発起人全員の出資の履行が完了していること
- ・発起人の議決権の過半数による決定であること(40条1項)
効果
- ・設立時取締役・設立時監査役等が選任される
- ・設立時取締役は設立手続を調査する義務を負う(46条1項)
- ・違反や不当な事項があれば発起人に通知する(46条2項)
- ・取締役会設置会社では設立時代表取締役を選定する(47条1項)
条文(会社法40条・46条・47条)
会社法40条:設立時役員等の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定する。2 前項の場合には、発起人は、出資の履行をした設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。
重要メモ
- ・選任は発起人の議決権の過半数。頭数の過半数ではない点に注意(40条)
- ・議決権は出資の履行をした株式1株につき1個(40条2項)
- ・設立時取締役の役割は調査であり、業務を執行するのは発起人
- ・違反や不当な事項があれば発起人に通知する(46条2項)
- ・募集設立では創立総会が選任し、報告先も創立総会になる(88条・93条2項)
設立の登記
会社法49条・911条1項簡単にいうと
会社が生まれる瞬間は、契約でも払込みでもなく、本店所在地での登記が完了したときです。
設立に必要な事項がすべて決まったら、本店の所在地で設立の登記をします。株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(会社法49条)。定款を作った時点でも、出資を払い込んだ時点でもなく、登記の時点で法人格が生まれます。
登記までの期限
発起設立の場合、設立の登記は、設立時取締役による調査が終了した日と発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければなりません(911条1項)。「調査が終わったらいつでもよい」わけではなく、期限が定められています。なお、この期限を定めているのは911条であって、912条ではありません。912条は合名会社の設立の登記に関する規定です。条文番号のすり替えに注意してください。
成立前の会社はどうなっているか
登記が終わるまでの会社は「設立中の会社」と呼ばれ、法人格を持ちません。この段階で発起人が会社の名を使って取引をしても、その効果が当然に成立後の会社へ引き継がれるわけではありません。会社の成立を条件に財産を譲り受ける約束をしたいのであれば、財産引受として定款に記載しておく必要があります(28条2号)。定款に書かずに結んだ財産引受の契約は効力を生じません。
登記される内容
登記事項は911条3項に列挙されており、商号、目的、本店および支店の所在場所、資本金の額、取締役の氏名などが含まれます。登記によって会社の基本情報が公示され、取引の相手方が会社の存在と内容を確認できるようになります。
具体例
発起人Aが設立手続を進め、設立時取締役Bの調査が4月1日に終わりました。設立の登記は原則として4月15日までに申請する必要があります。登記が4月10日に完了すれば、会社が成立するのはその4月10日です。4月5日にAが会社名義で結んだ契約は、当然には会社に引き継がれません。
ポイント整理
- ・設立に必要な事項がすべて決定していること
- ・本店の所在地において設立の登記をすること(49条)
- ・調査終了日等から2週間以内に登記を申請すること(911条1項)
効果
- ・登記の完了によって株式会社が成立し、法人格を取得する(49条)
- ・登記前の会社には法人格がなく、権利義務の主体になれない
- ・商号・目的・資本金の額・取締役の氏名などが公示される(911条3項)
条文(会社法49条・911条1項)
会社法49条:株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。/会社法911条1項:株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。一 第四十六条第一項の規定による調査が終了した日 二 発起人が定めた日
重要メモ
- ・会社が成立するのは本店所在地での設立登記の時点であることがポイント(49条)
- ・登記の期限を定めるのは911条1項。912条は合名会社の規定
- ・発起設立では調査終了日と発起人が定めた日の遅い日から2週間以内
- ・登記前の会社には法人格がない
- ・会社成立を条件とする財産の譲受けは財産引受として定款への記載が必要(28条2号)
設立時発行株式を引き受ける者の募集等
会社法57条〜60条簡単にいうと
ここから募集設立の話です。発起人だけでは足りない資金を、外の出資者から集めます。
募集設立では、発起人が株式を引き受けたあと、さらに設立時発行株式を引き受ける者を募集します(会社法57条1項)。募集をするかどうかを決めるには、発起人全員の同意が必要です(同条2項)。
募集事項の決定
募集をすることにしたら、設立時募集株式について、その数、払込金額、払込みの期日または期間などを定めます(58条1項各号)。この決定にも発起人全員の同意が要ります(同条2項)。また、募集の条件は募集ごとに均等に定めなければなりません(同条3項)。特定の人だけ有利な条件にすることはできないという趣旨です。
申込みと割当て
募集に応じようとする者に対し、発起人は定款の認証年月日や払込取扱場所などの事項を通知します(59条1項)。引受けを申し込む者は、氏名または名称と住所、引き受けようとする株式の数を記載した書面を発起人に交付します(59条3項)。発起人は申込者の中から割当てを受ける者と株式数を定めます(60条1項)。誰にどれだけ割り当てるかは発起人が決めてよく、申し込まれた数より減らすこともできます。これを割当自由の原則といいます。
発起人も1株以上を引き受ける
募集設立だからといって、発起人が株式を引き受けなくてよいわけではありません。各発起人は設立時発行株式を1株以上引き受けなければならず(25条2項)、これは発起設立と共通です。「募集設立では発起人のうち1名が1株以上引き受ければ足りる」という選択肢は誤りです。過去問でそのまま問われています。
具体例
発起人A・Bが会社をつくり、資金が足りないため200株を募集しました。Cが150株、Dが100株の申込みをした場合、発起人はCに120株、Dに80株というように減らして割り当てることができます。A・Bもそれぞれ1株以上を引き受けている必要があります。
ポイント整理
- ・募集をする旨について発起人全員の同意があること(57条2項)
- ・設立時募集株式の数・払込金額・払込期日等を発起人全員の同意で定めること(58条)
- ・募集の条件を募集ごとに均等に定めること(58条3項)
効果
- ・申込者の中から発起人が割当てを受ける者と株式数を決める(60条1項)
- ・割当てを受けた者は設立時募集株式の引受人となる
- ・申込者に割り当てる株式数を申込数より減らすこともできる(60条1項後段)
条文(会社法57条〜60条)
会社法57条:発起人は、この款の定めるところにより、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めることができる。2 発起人は、前項の募集をする旨を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
重要メモ
- ・募集をする旨も募集事項も発起人全員の同意が必要な点がポイント(57条2項・58条2項)
- ・募集の条件は募集ごとに均等に定める(58条3項)
- ・誰にどれだけ割り当てるかは発起人が決めてよい(割当自由の原則・60条1項)
- ・募集設立でも各発起人は1株以上引き受ける(25条2項)
- ・発起人のうち1名だけが引き受ければよいとする出題は誤り
株式引受人の出資の履行
会社法63条・64条簡単にいうと
割当てを受けた引受人は、期日までに払い込みます。1日遅れれば、それだけで株主になる権利を失います。
発起人から設立時募集株式の割当てを受けた引受人は、払込みの期日または期間内に、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所で、払込金額の全額を払い込まなければなりません(会社法63条1項)。
現物出資はできない
条文が求めているのは「払込金額の全額の払込み」です。つまり引受人が出せるのは金銭だけで、財産そのものを給付する現物出資はできません。現物出資ができるのは発起人に限られます(34条1項)。両者を比較する出題がよく作られます。
払わなければ当然に失権する
引受人が期日までに払込みをしないときは、その株式について株主となる権利を失います(63条3項)。発起人の場合のように期日を定めて通知する手続はありません。払い込まなければそれで終わりです。この場合、発起人が代わりにその株式を引き受けなければならないわけでもありません。過去問で問われた論点なので、失権した株式の穴を発起人が埋める義務はないと覚えておいてください。なお、払込みによって株主となる権利を譲り渡しても、成立後の会社に対抗することはできません(63条2項)。
払込金の保管証明
募集設立では、発起人は払込みの取扱いをした銀行等に対し、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求できます(64条1項)。証明書を交付した銀行等は、記載が事実と異なることや払込金の返還に制限があることを、成立後の会社に対抗できません(同条2項)。発起設立にはこの仕組みがありません。外部の出資者が入る募集設立では、払込みが本当にあったことを担保する必要が高いからです。
具体例
発起人Aから80株の割当てを受けたBが、払込期日を過ぎても払い込みませんでした。Bは通知を受けるまでもなく、その時点で株主となる権利を失います。AがBの分の80株を自分で引き受けなければならないわけではありません。
ポイント整理
- ・発起人から設立時募集株式の割当てを受けたこと(60条1項)
- ・払込期日または払込期間内であること(58条1項3号)
- ・発起人が定めた銀行等の払込取扱場所で全額を払い込むこと(63条1項)
効果
- ・払込みをした引受人は設立時発行株式の株主となる権利を得る
- ・払込みをしないときは当然に株主となる権利を失う(63条3項)
- ・発起人が失権した株式を引き受け直す義務はない
- ・募集設立では払込金の保管証明の仕組みがある(64条)
条文(会社法63条・64条)
会社法63条:設立時募集株式の引受人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間内に、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの設立時募集株式の払込金額の全額の払込みを行わなければならない。3 設立時募集株式の引受人は、第一項の規定による払込みをしないときは、当該払込みをすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失う。
重要メモ
- ・引受人は金銭で払い込む。現物出資はできないことに注意(63条1項)
- ・期日までに払い込まなければ当然に失権する(63条3項)
- ・発起人が失権分を引き受ける義務はない
- ・株主となる権利の譲渡は成立後の会社に対抗できない(63条2項)
- ・払込金の保管証明は募集設立にだけある仕組み(64条)
創立総会
会社法65条・66条・73条・87条・88条・93条・96条簡単にいうと
創立総会は、会社が生まれる前に開かれる株主の集まりです。決められることは設立に関する事項だけです。
募集設立では、発起人は払込期日または払込期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく創立総会を招集しなければなりません(会社法65条1項)。創立総会は、会社成立時に株主となる設立時株主で構成される会議体です。必要があると認めるときは、発起人はいつでも創立総会を招集できます(同条2項)。
決められることは設立に関する事項だけ
創立総会が決議できるのは、募集設立に関する規定に定める事項と、株式会社の設立の廃止、創立総会の終結その他株式会社の設立に関する事項に限られます(66条)。成立後の会社の経営方針のような事項を先取りして決めることはできません。主な議題は、発起人による設立に関する事項の報告(87条1項)、設立時取締役等の選任(88条1項)、設立時取締役等による調査結果の報告(93条2項)、そして定款の変更(96条)です。
決議の要件
創立総会の決議は、議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上にあたる多数で行います(73条1項)。定足数にあたる部分と可決要件にあたる部分の両方を満たす必要があり、成立後の株主総会の特別決議より重い要件です。全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更をするときは、さらに重い要件になります(73条2項)。
定款変更ができるのは創立総会の特色
公証人の認証を受けた定款は、会社の成立前は原則として変更できません(30条2項)。ところが創立総会では、その決議によって定款を変更することができます(96条)。発起設立には定款を自由に変更する仕組みがないので、ここは募集設立に固有の特色です。また、発行可能株式総数を定款で定めていないときは、募集設立では創立総会の決議で定めます(98条)。発起設立で発起人全員の同意によるのと対応関係にあります。
具体例
募集設立で設立時株主A・B・Cの議決権がそれぞれ60個・30個・10個あるとします。創立総会でA(60個)とC(10個)が出席し、両方が賛成すれば、議決権の過半数が出席し出席議決権の3分の2以上の賛成があるので決議は成立します。Bだけが出席した場合は議決権の過半数に届かず、決議できません。

創立総会の役割
ポイント整理
- ・募集設立であること(57条1項の募集をしたこと)
- ・払込期日または払込期間の末日のうち最も遅い日以後であること(65条1項)
- ・発起人が招集すること(65条1項)
効果
- ・設立時取締役等が創立総会の決議で選任される(88条1項)
- ・決議できるのは設立に関する事項に限られる(66条)
- ・決議は議決権の過半数かつ出席議決権の3分の2以上で成立する(73条1項)
- ・創立総会の決議によって定款を変更できる(96条)
条文(会社法65条・66条・73条・87条・88条・93条・96条)
会社法66条:創立総会は、この節に規定する事項及び株式会社の設立の廃止、創立総会の終結その他株式会社の設立に関する事項に限り、決議をすることができる。/会社法73条1項:創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行う。
重要メモ
- ・創立総会は募集設立にだけ開かれることがポイント(65条1項)
- ・決議できるのは設立に関する事項に限られる(66条)
- ・決議要件は議決権の過半数かつ出席議決権の3分の2以上(73条1項)
- ・創立総会の決議で定款を変更できる(96条)。発起設立にはない仕組み
- ・発行可能株式総数は募集設立では創立総会の決議で定める(98条)
設立の登記(募集設立)
会社法49条・911条2項簡単にいうと
募集設立でも、ゴールは同じ設立登記です。違うのは、登記までにたどる道のりと期限の起算点です。
募集設立でも、会社が成立するのは本店の所在地で設立の登記をしたときです(会社法49条)。この点は発起設立と変わりません。違うのは、そこにたどり着くまでの手順と、登記の期限をいつから数えるかです。
期限の起算点が違う
募集設立の場合、設立の登記は創立総会の終結の日と、種類創立総会の決議をしたときはその決議の日のうち、いずれか遅い日から2週間以内にしなければなりません(911条2項)。発起設立が設立時取締役の調査終了日等から数える(911条1項)のと対照的です。募集設立では創立総会という節目があるので、そこを起算点にしたわけです。
登記までの流れ
募集設立では、株主の募集と割当てを終え、引受人に払込みをさせ、創立総会を開いて設立時取締役等を選任し、その設立時取締役が設立手続を調査して結果を創立総会に報告します(93条2項)。ここまで終えてはじめて登記に進みます。発起設立に比べて段階が多いぶん、成立までの時間もかかります。
発起設立との違いのまとめ
募集設立に固有のものは4つです。株主の募集と割当て、払込金の保管証明、創立総会の開催、そして創立総会による定款変更です。逆に、現物出資ができるのは発起人だけという点や、各発起人が1株以上引き受けるという点は両方に共通します。どちらか一方だけの制度か、両方に共通する制度かを仕分けできれば、この分野の出題はかなり取れるようになります。
具体例
募集設立で、5月20日に創立総会が終結したとします。設立の登記は6月3日までに申請する必要があります。発起設立であれば起算点は設立時取締役の調査終了日になるので、同じ2週間でも数え始める日が変わります。
ポイント整理
- ・創立総会が終結していること
- ・本店の所在地において設立の登記をすること(49条)
- ・創立総会の終結の日等から2週間以内に登記を申請すること(911条2項)
効果
- ・登記の完了によって株式会社が成立する(49条)
- ・登記の期限の起算点は創立総会の終結の日等になる(911条2項)
条文(会社法49条・911条2項)
会社法911条2項:前項の規定にかかわらず、第五十七条第一項の募集をする場合には、前項の登記は、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。一 創立総会の終結の日 二 第八十四条の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
重要メモ
- ・募集設立の登記の起算点は創立総会の終結の日であることに注意(911条2項)
- ・会社が成立するのは登記の時点。発起設立と同じ(49条)
- ・募集設立に固有なのは募集・割当て、保管証明、創立総会、創立総会での定款変更
- ・現物出資ができるのは発起人だけという点は両方に共通
- ・各発起人が1株以上引き受ける点も両方に共通(25条2項)
財産価額填補責任
会社法52条・55条・103条1項簡単にいうと
現物出資した物の値打ちが定款の記載より大きく足りなかったとき、その差額は発起人たちが埋めます。
会社が成立したときの現物出資財産等の価額が、定款に記載された価額に著しく不足するときは、発起人および設立時取締役は、会社に対して連帯して不足額を支払う義務を負います(会社法52条1項)。300万円と書いた自動車が実は100万円の値打ちしかなかったのに、300万円分の株式が交付されてしまった、という事態を金銭で埋め合わせる仕組みです。
免れられる場合と免れられない場合
52条2項は2つの免責事由を定めています。1つは、その事項について検査役の調査を経た場合。もう1つは、その発起人または設立時取締役が職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合です。ただしこの免責は、現物出資をした本人と財産引受の譲渡人には適用されません(52条2項柱書かっこ書)。自分が出した財産の価額が足りなかったのですから、言い訳はできないということです。
募集設立では免責が狭くなる
さらに注意したいのが募集設立です。募集設立では52条2項の適用が「第一号に」限定されます(103条1項)。つまり、検査役の調査を経た場合の免責は残りますが、注意を怠らなかったことの証明による免責は使えません。外部から出資者を集めている以上、責任を重くしたわけです。発起設立には無過失証明による免責の余地があるのに、募集設立にはない。この違いが出題されます。
総株主の同意による免除
財産価額填補責任は、総株主の同意があれば免除することができます(55条)。会社の所有者である株主全員が許すのであればよい、という考え方です。過去問では「総株主の同意によっても免除することができない」という誤りの選択肢が出ています。免除できるのは会社に対する責任だからで、第三者に対する責任(53条2項)が免除できないのとは扱いが違います。
具体例
発起人Aが自分の車を300万円と定款に記載して現物出資しましたが、成立時の価額は100万円でした。Aは出資した本人なので、不足する200万円について免責されません。もう1人の発起人Bと設立時取締役Cは、発起設立であれば注意を怠らなかったことを証明して免れる余地がありますが、募集設立ではその証明では免れられません。

財産価額填補責任
ポイント整理
- ・現物出資または財産引受の目的となった財産であること(28条1号・2号)
- ・会社成立時の価額が定款記載の価額に著しく不足すること(52条1項)
効果
- ・発起人および設立時取締役が連帯して不足額を支払う義務を負う(52条1項)
- ・検査役の調査を経た場合と無過失を証明した場合は免責される(52条2項)
- ・現物出資者・財産引受の譲渡人はこの免責を受けられない(52条2項柱書かっこ書)
- ・募集設立では無過失証明による免責が使えない(103条1項)
- ・総株主の同意があれば免除できる(55条)
条文(会社法52条・55条・103条1項)
会社法52条1項:株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
重要メモ
- ・現物出資者と財産引受の譲渡人は免責されないことがポイント(52条2項かっこ書)
- ・免責事由は検査役の調査を経た場合と無過失を証明した場合の2つ(52条2項)
- ・募集設立では無過失証明による免責が使えない(103条1項)
- ・責任は発起人と設立時取締役の連帯責任(52条1項)
- ・総株主の同意があれば免除できる(55条)
任務懈怠責任
会社法53条1項・54条・55条簡単にいうと
設立の仕事をきちんとやらずに会社に損をさせたら、その損は自分で埋めることになります。
発起人、設立時取締役または設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、会社に対して、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法53条1項)。財産価額填補責任が現物出資の価額不足という特定の場面の責任であるのに対し、こちらは設立の仕事全般について広く適用される一般的な責任です。
誰が責任を負うか
名宛人は発起人・設立時取締役・設立時監査役の3者です。複数の者が同じ損害について賠償責任を負うときは、これらの者は連帯債務者になります(54条)。1人が全額を払ったあと、内部で負担を分け合うという処理になります。
免除できるかどうか
任務懈怠責任は会社に対する責任なので、総株主の同意があれば免除できます(55条)。損をしたのは会社であり、その会社の所有者である株主全員が許すのであれば、あえて責任を追及させる必要はないからです。同じ条文が財産価額填補責任も免除の対象にしているので、まとめて覚えると効率がよくなります。
第三者に対する責任との切り分け
53条は1項と2項で別の責任を定めています。1項が会社に対する任務懈怠責任、2項が第三者に対する責任です。55条が免除の対象にしているのは1項だけで、2項は含まれていません。会社に対する責任は免除できるが、第三者に対する責任は免除できない。この対比が出題の中心になります。
具体例
発起人Aが、必要な調査をせずに相場より明らかに高い賃料で事務所の賃貸借契約を結び、成立後の会社に損害が生じたとします。Aは会社に対して損害賠償責任を負います。同じ判断に加わった発起人Bも責任を負うときは、AとBは連帯債務者になります。
ポイント整理
- ・発起人・設立時取締役・設立時監査役のいずれかであること
- ・株式会社の設立について任務を怠ったこと(53条1項)
- ・それによって会社に損害が生じたこと
効果
- ・会社に対して損害賠償責任を負う(53条1項)
- ・複数の者が責任を負うときは連帯債務となる(54条)
- ・総株主の同意があれば免除できる(55条)
条文(会社法53条1項・54条・55条)
会社法53条1項:発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
重要メモ
- ・会社に対する責任なので総株主の同意で免除できることがポイント(55条)
- ・名宛人は発起人・設立時取締役・設立時監査役の3者(53条1項)
- ・複数の者が責任を負うときは連帯債務になる(54条)
- ・53条1項は会社に対する責任、2項は第三者に対する責任で扱いが違う
- ・財産価額填補責任と違い、設立の仕事全般が対象になる
第三者に対する責任
会社法53条2項・54条・55条簡単にいうと
設立の仕事で外部の人に損害を与えたとき、株主全員が許しても、この責任だけは消えません。
発起人、設立時取締役または設立時監査役がその職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います(会社法53条2項)。取引先や債権者のように、会社の外にいる人が受けた損害を対象とする規定です。
悪意または重過失が必要
会社に対する任務懈怠責任(53条1項)が任務を怠ったことだけで成立するのに対し、第三者に対する責任には悪意または重大な過失が要ります。軽い過失にとどまるときは、この規定による責任は生じません。第三者は会社との関係で直接の契約相手ではないことも多く、責任の範囲を広げすぎないよう主観的要件を重くしたものです。
総株主の同意でも免除できない
55条は、総株主の同意による免除の対象として52条1項の義務と53条1項の責任を挙げていますが、53条2項は入っていません。つまり、株主が全員で許しても第三者に対する責任は消えません。理由は単純で、損害を受けたのは第三者だからです。許すかどうかを決められるのは損害を受けた本人であって、株主ではありません。ここは過去問でそのまま正誤を問われています。
連帯責任になる場合
複数の者が同じ損害について第三者に賠償責任を負うときは、これらの者は連帯債務者になります(54条)。第三者はそのうちの誰に対しても全額を請求できます。なお、会社が成立しなかった場合の責任(56条)とは場面が違うので、混同しないようにしてください。
具体例
発起人Aが、資金の裏づけがないことを知りながら取引先Bと大口の仕入契約を結び、会社成立後にBが代金を回収できなくなったとします。Aには悪意があるので、BはAに対して損害の賠償を請求できます。会社の株主全員がAを許したとしても、Bの請求は妨げられません。
ポイント整理
- ・発起人・設立時取締役・設立時監査役のいずれかであること
- ・職務を行うについて悪意または重大な過失があったこと(53条2項)
- ・それによって第三者に損害が生じたこと
効果
- ・第三者に対して損害賠償責任を負う(53条2項)
- ・総株主の同意があっても免除できない
- ・複数の者が責任を負うときは連帯債務となる(54条)
条文(会社法53条2項・54条・55条)
会社法53条2項:発起人、設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
重要メモ
- ・総株主の同意があっても免除できないことがポイント(55条の対象外)
- ・成立要件は悪意または重大な過失。軽過失では責任を負わない(53条2項)
- ・会社に対する任務懈怠責任(53条1項)は免除できる点と対比する
- ・複数の者が責任を負うときは連帯債務になる(54条)
- ・許すかどうかを決められるのは損害を受けた第三者であって株主ではない
会社不成立の場合の責任
会社法56条簡単にいうと
設立が途中で頓挫しても、それまでに結んだ契約や使った費用が消えるわけではありません。
設立の途中で問題が起きて株式会社が成立しなかったときは、発起人は連帯して、株式会社の設立に関してした行為について責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担します(会社法56条)。
なぜ発起人が背負うのか
会社が成立していない以上、権利義務の主体になるべき法人はどこにも存在しません。それでも設立の準備として事務所を借りたり、印刷物を発注したりといった取引はすでに行われています。この取引の相手方を放り出すわけにはいかないので、設立を進めた発起人に責任を引き受けさせました。
責任の中身は2つ
1つは、設立に関してした行為についての責任です。発起人が会社設立中の会社の名で結んだ契約について、相手方に対して責任を負います。もう1つは、設立に関して支出した費用の負担です。定款の認証にかかった手数料や、公告の費用なども発起人が負担します。会社が成立していれば会社に請求できたはずの設立費用を、成立しなかった以上は自分たちでかぶる、ということです。
出資はどうなるか
会社が成立しなかった場合、出資した株式引受人に払い込んだ金銭を返さなければなりません。返還の負担も発起人が連帯して負います。設立に失敗したときのリスクを発起人に集めることで、出資者と取引の相手方を守る仕組みになっています。
具体例
発起人AとBが設立準備として事務所を借り、定款の認証手数料も支払いましたが、出資が集まらず設立を断念しました。賃料も認証手数料もAとBが連帯して負担します。出資した引受人Cには払込金が返還されます。
ポイント整理
- ・株式会社が成立しなかったこと(56条)
- ・設立に関してした行為または設立に関して支出した費用があること
効果
- ・発起人は連帯して設立に関してした行為の責任を負う(56条)
- ・発起人は設立に関して支出した費用を負担する(56条)
- ・払い込まれた出資は引受人に返還される
条文(会社法56条)
会社法56条:株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。
重要メモ
- ・会社が成立しなくても発起人が責任を負うことがポイント(56条)
- ・責任の中身は設立に関する行為の責任と設立費用の負担の2つ
- ・発起人は連帯して責任を負う
- ・定款の認証手数料も発起人の負担になる
- ・払い込まれた出資は引受人に返還される
まとめ
独学でも合格をつかみ取れる!
判例解説・テキスト・解説動画・演習まですべて網羅!
予備校代の1/30で、独学の不安をまるごと解決できます
無料登録後、アカウントページからかんたんにプレミアムへ切り替えられるよ。音声解説・解説動画・過去問・AI記述採点まで全機能が使えるようになるの!
- 行政書士試験に出る判例のわかりやすく丁寧な解説を、動画と音声で無制限に見放題・聞き放題!プレミアム限定

- テキスト各テーマの解説動画が見放題!連続再生・科目別・ブックマーク再生でスキマ時間に効率よく学べます。プレミアム限定

- 過去問の年度別・肢別演習無制限!何度も解きなおせます。マイページで苦手管理もばっちり。プレミアム限定

- 科目別テキストPDFダウンロード可能!ダウンロード後は半永久的に利用可能で、印刷したりご自身の好きな使い方で合格に近づけます。プレミアム限定

- テキストのブックマーク管理で苦手分野・何度も確認したい部分を徹底管理可能!プレミアム限定

- 記述式問題をAIで添削採点可能!最適なフィードバックで自分だけの強み・弱みを把握できる。プレミアム限定

プレミアムプラン
¥7,800〜 / 対象年度の本試験まで(税抜)
自動更新なし
決済は Stripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。全世界で利用されているStripeの厳格な審査をクリアした決済サービスなので安心です。カード情報は当サービスに保存されません。
スマホアプリで、いつでもどこでも。行政書士合格を、スキマ時間で。
判例解説の音声再生・過去問演習・AI記述採点をスマホ1台に。通勤・休憩中に1問だけでも。独学でも仕事と両立しながら、合格を目指せます。
✓ Webでプレミアム登録済みの方は、アプリでも全機能をそのままご利用いただけます。
- 判例の動画・音声解説をながら学習

- テキストPDFダウンロードで、紙でもオフラインでも

- 過去問・記述式演習がいつでも

- 苦手ブックマーク管理で弱点を集中復習

無料ダウンロード・iOS対応
